ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/03/17(水)04:01:49 No.784142279
カチャカチャと、テーブルに何か触れる音で目が覚めた、今横たわってるのはソファ？トレーナー室で寝たんだっけか、お腹にかけてあるブランケット、どこかで見たような 「おはようモルモットくん、まずは昨晩の記憶があるのか確認したいところだね」 着ている服からして風呂にも入ってないみたいだ、頭が痒い、シャワーを借りて、肌着はコンビニで買って、出勤には間に合うだろう… 「ぼんやりしているね、頭に血が巡るよう朝食でも食べたまえ」 なんだか実家暮らしの頃を思い出した、目が覚めたら朝食が用意されてて、いい匂いがして、無防備な私を見る人がいて……タキオンが朝食を！？ 「なんだいラットが尻尾を引っ張られたみたいな顔をして、私だって目玉焼きぐらい焼けるよ」 目玉焼きだけじゃなく、ちゃんと焼き目のついたトーストに、バターとジャムのディスペンパックを添えて、アイスティーまで用意してる、とりあえずホログラムでは無さそうだ 「言っとくけどこれは実験じゃないよ、あれは一旦白紙だ、モルモットくんには悪い事をしたと思ってる」 実験？されたのか、されたんだろうな
1 21/03/17(水)04:02:09 No.784142299
タキオンは眉を顰めた 「覚えてないのかい？無理もないかな、あの調子じゃあ」 珍しくYシャツを着たタキオンは、首元までボタンを閉めている、そのデザインだと1番上のボタンは飾りじゃないか？と指摘すると「これはこれでいいんだ」と言い捨てた 「思い出せないなら、いいんだ、化学的アプローチの実験じゃないから、後遺症も心配しなくていいよ」 こういうことはもはや珍しくもない、タキオンは、上手くいかなかった実験には興味が無いから、飲まされた薬がなんだったのか最後まで教えてくれないこともある 「いただきます」 タキオンに眴して、朝食に手をつけた、目玉焼きはもう冷えてしまっていた、トーストはちょっとかたい、食パンも卵も私が買って冷蔵庫に入れてたものだが、焼き方が変わるだけで別の食べ物みたいだった 「タキオン」 左手にアイスティーを携え、右手のスマホでメールを確認しながら声をかけた 「なんだい？ああ、洗い物は君がやっておくれよ」 「私、お酒を飲んだのかな？」 タキオンの顔が強張る
2 21/03/17(水)04:02:28 No.784142316
「前、他のウマ娘に貰ったチョコにさ、ウイスキーが入ってて、食べるまで気付かなくて、その後たぶん貴女に失礼な事をして、結局ここで戻しちゃって、貴女が保健室に人を呼びに行って……タキオン？」 見たことない顔して怒ってる、と思ったら何かがタキオンの頬を伝って、シャツの襟に落ちて、小さな染みを作った 「だって、おっおざげでものまぜないとっ、きみはっ、わたしをっ」 言ってることはよくわからないが、とにかく普通の状態じゃない、落ち着かせてゆっくり話を聞こう、そう思って立ち上がろうとした瞬間、後頭部を殴りつけるような頭痛に襲われた 「え゛っ……あっ、あああっ」 まずい、パニックになってるようだ、子供を宥めるつもりでゆっくりと声を絞り出した 「人、呼んで、大丈夫」 「うっ……」 聞いてくれたようだ、タキオンの足音が去っていく、意識が途切れた
3 21/03/17(水)04:02:42 No.784142329
意識が戻ると、また違う天井を見上げていた、保健室だろうか 「タキオンが、私にお酒を飲ませたんだね」 「その通りだよ」 タキオンは、いつも実験が失敗した時のバツの悪い表情を、100倍にしたような顔をしている 「アルコールを摂取した君の、振る舞いをもう一度、確かめたかったんだ」 「……どうだったの？」 タキオンは、シャツの襟を緩め、首元を見せてきた、5円玉の穴ほどの赤い点がそこにはあった 「これ以外は、何もされてないよ、保証する」 頭が真っ白になった、本当に何も覚えていない、私じゃない私が、いつもはどうにか蓋をしている欲求を、こじ開けてぶち撒けて 「前、ウイスキーボンボンを摂取した時は、私の事を抱きしめて……嘔吐するまでの30分間、私の頭を撫で続けてたよ」 もう終わりだ 「あの、暖かさが、柔らかさが、忘れられなかったんだ、でも君は覚えてなかった、シラフじゃあんな事できないのもわかってた、君は分別のある大人だから」 「ごめんなさい、私が、私なんかが」 「謝らないでくれたまえよ、1度目は事故だし、それ自体女性同士なら大して問題のある行為じゃないだろう、そして2度目は私が故意にやった事だ」
4 21/03/17(水)04:02:55 No.784142342
私の過失で、タキオンの心に深い傷を与えたのは間違いない、引退、賠償、自殺、償いの方法が思いつかない 「『これ』も、全く、嫌だとは思ってないよ、びっくりはしたけどね、だから、私がモルモットくんをいたずらに二日酔いにさせただけ、君がその事を許してくれればなにも問題はない」 そんなわけない、そんなわけない 「釘を刺すようだけど、この程度の事で私のモルモットを辞めてくれるなよ」 タキオンは、悪戯っぽく微笑んで、私に顔を近づけた、いい匂い、タキオンの栗色のショートカットに、綺麗であって欲しいという私のエゴで買い与えた、シャンプーとコンディショナーを、彼女は律儀に使っているらしい、私も同じものを使っているのに、別ものみたいだった 「『これ』も、私が君に見とめた狂気の一部なんだ、研究の為なら受け入れる、いや、嫌々じゃないよ、君なら……良いと思ってる」 よかった、アグネスタキオンはアグネスタキオンのままだった、私にできることは彼女に見放されないよう、狂気の火に薪をくべ続けることだけ いつまでもつだろうか
5 21/03/17(水)04:03:21 No.784142364
以上です
6 21/03/17(水)04:07:57 No.784142617
男性トレーナー想定で読んでたら女性トレーナーだった事が判明してちょっと脳が揺れた気分がある
7 21/03/17(水)04:09:36 [s] No.784142693
>男性トレーナー想定で読んでたら女性トレーナーだった事が判明してちょっと脳が揺れた気分がある お話ごとに男性/女性/両方可を設定して書くようにしてるから今回は女性トレーナー前提にしました
8 21/03/17(水)04:13:05 No.784142853
混沌のモルモット…
9 21/03/17(水)04:18:34 No.784143122
すごくいい……トレーナーの最後の独白がグッときた……
10 21/03/17(水)04:24:03 No.784143382
ワーオ…
11 21/03/17(水)04:29:20 No.784143661
ちゃんと欲望を理性で抑え込んでる健康な成人女性と抑圧された欲望の中身を見てみたい少女はいい
12 21/03/17(水)04:32:21 No.784143813
ウワーッ！夢女になっちまうーッ！
13 21/03/17(水)06:41:36 No.784149278
薬物は使われているのか？
14 21/03/17(水)06:43:33 No.784149377
トレーナーは見て見たいタキオンの速さのその先を タキオンは見て見たいトレーナーの奥深くに眠る欲望を 似たもの同士ですね
15 21/03/17(水)07:45:58 No.784153605
俺は夢女子のモルモット こういうのが大好きだった
16 21/03/17(水)08:24:54 No.784157795
私が正当な夢モルモット！ 私まじ尊い