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21/03/16(火)02:05:45 結果か... のスレッド詳細

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21/03/16(火)02:05:45 No.783845777

結果から語ると、ディープインパクトは選抜レースにおいて二着以下に10バ身以上の大差をつけて圧勝した。 それはもう、一緒に走った他のウマ娘が可哀想になるくらいの絶望的な力の差だった。 全員が必死で追い縋っているのに差が縮まるどころかぐんぐんと加速してあっという間に遥か彼方。 たったひとりでゴールを駆け抜けたディープインパクト。その圧倒的なレースを目の当たりにした選抜レース会場の全てがしんと静まり返った。 皆唖然としていたのだ。歓声ひとつ聞こえないコースの上で彼女がゆっくりと脚を緩め、そして立ち止まる。 二着のゴールなんて誰も見ていなかった。全ての視線がただ静かに佇むその異次元の生き物に釘付けだった。 それがディープインパクトというウマ娘が産声を上げた時の出来事。 彼女が叩きつけたその衝撃に誰もが酔い痴れた瞬間だ。 その後のトレーナーたちの反応など言うまでもない。 何人かがディープインパクトに駆け寄っていった。その道の名伯楽とされるトレーナーたちがほとんどだ。 それはそうだろう。トレーナーなら誰しもあの走りを見れば心に描いたはずだ。 三冠ウマ娘。それもあの“皇帝”のような、無敗の三冠───。

1 21/03/16(火)02:05:59 No.783845800

そうしてここにひとり戻ってきた。 トレセン学園の練習場。日も落ちて僅かな照明が道を照らす夜闇の練習用コース。 ディープインパクトとガス抜きもとい秘密の特訓を繰り返した場所だ。 (どうしてここに足を運んでしまったんだろう…いや考えるまでもない) ディープインパクトの才能は本物、いや本物以上だ。まるで天井が見えないとさえ言っていい。 トゥインクルシリーズの歴史に名を刻む未来だってきっとあの子にとっては夢物語では無い。 それが花開かずに終わるなんてことがあれば、トレーナーとしての人生はそれで終わりだ。 あれほどの大器をみすみす失った無能のレッテルがそう簡単に払拭出来るとは思えなかった。 レース前は新人の自分ではない立派なトレーナーが彼女には相応しいだなんて考えていたくらいだ。 (けど───) だがそんなのは弱気に過ぎない。 実際にレースを走るディープインパクトを見てしまえばそんな妄言は口に出来なかった。 空を飛んでいくその走りが、心に焼き付いてしまっている。 『どうか視座を共有してあげて欲しい』というシンボリルドルフの言葉が胸中に蘇っていた。 自惚れでもいい。自分以外の誰に、それが出来る?

2 21/03/16(火)02:06:12 No.783845837

「トレーナーさん。こんなところにいたんですか」 「ディープ」 背後からこちらに近づいてくる小さな足音も聞き慣れたものですぐ彼女だと分かった。 念願の初レースを走り抜いた日の夜だというのにもうディープインパクトはいつも通りのクールな表情だった。 「疲れてないか?レースが終わった後すぐにトレーナーたちに囲まれていただろ」 「はい。私を担当にしたいと皆さん物凄い熱意でした。あまり喋ることは少ないので、少し疲れました」 「…ひょっとして、もうトレーナーを決めちゃった?」 不安になって恐る恐る聞くと彼女はふるふると首を振る。 長い髪が薄ぼんやりとした電灯に照らされチカチカと光って綺麗だった。 「そうか。…そうだ、選抜レース一着おめでとう。凄いレースだったな」 それは当然のように口にした賛辞だったが、ディープインパクトから返ってきたのは暫しの沈黙だった。 「ディープ?」 「…ありがとうございます。ただひとつ残念なのです。  私は楽しめなかった。あなたが言ったように私のレースを楽しもうとしましたが、出来ませんでした」 呟くように言った彼女が爪先で小石を弄っている。彼女らしくない無意味な遊びだった。

3 21/03/16(火)02:06:23 No.783845862

「以前も話した通り、私は走ることに意味を持てないのです。  好きとか嫌いではない。ただ走る。そういう風に私は出来ているよう感じていてそこに疑問を持つことが難しい。  今日のレースを走って思いました。中盤まで前を走るウマ娘の背中へと常に心が叫んでいた。  あれを超えろ。あれより速く走れ。  私が例えレースに臨む理由など無い空っぽでも、相手が例え絶対に勝たねばならない事情を熱意に変えて走っていたとしても。  相手を不幸のどん底に叩き通したとしても、あれを食い千切って屠れ。どうしようもなくそんな風に心が疼くのです。  それでも相手に勝って嬉しいとか楽しいとか、そういう気持ちがあればそんな走りだって正しいのかもしれない。  でも、全然嬉しくも楽しくも無いのです。ただ今私はいるべきところにいると感じるだけなのです。  だから私は…上の舞台へ辿り着けば、私にだって走ることの意味が見いだせるのではと…」 それは傲慢だが哀しい、獣の告白だ。 何かの手違いで走ることに純化し過ぎてしまったウマ娘の嘆きだった。 理性ではなく本能が一着を取ろうとするのに心がそれを受容出来ないから歪が生じる。 だから言った。

4 21/03/16(火)02:06:36 No.783845899

「俺は楽しかったよ」 「え?」 「俺は君のレースを見ていて楽しかったよ。きっと皆一緒だ。ディープの凄い末脚にドキドキしたはずだ。  選抜レースにいた人たちだけじゃない。きっと大舞台で走ればそこにいる全ての人が君の走りを楽しいと思うよ。  その輪の中へ君だけが加われないなんて不公平だ。絶対に許せない。だから…」 レース前にディープインパクトが伸ばしてきた握手の手を、今度はこちらから差し出した。 「俺は君に走ることが楽しいと感じさせてあげたい。君が走っていて良かったと思える、その手伝いがしたい。  俺みたいな新人トレーナーで良ければ、君の担当トレーナーにさせてくれないか」 ディープインパクトがぽかんと口を半開きにして目を丸くしていた。初めて見る少し間抜けな表情だった。 だがその唇が柔らかく綻ぶのにそれほど時間はかからなかった。 「…あなたは私を暗闇から引っ張り上げてくれた。  無我夢中で彷徨っていた私を導いてくれた。  そうすべきという観念だけで走っていた私に微かでもそうしたいという気持ちを与えてくれた。  あなたがその気持ちを本物にしてくれるというのなら、手を取らない理由はありません」

5 21/03/16(火)02:06:49 No.783845930

「あなたに私の全てを預けます。  改めてよろしくお願いします。トレーナーさん。───いいえ。トレーナー」 「こちらこそ。君のために全力を尽くす。  改めてよろしくお願いします。ディープ。───いいや。ディープインパクト」 がっちりと握手を交わす。 ディープインパクト。───後にトゥインクルシリーズへその名の通り激震をもたらすことになる、稀代のウマ娘。 人はいつしか、彼女のことをこう呼ぶようになる。 “英雄”。

6 21/03/16(火)02:07:13 No.783845983

最終回 これまで su4688538.txt

7 21/03/16(火)02:08:35 No.783846157

長えよ

8 21/03/16(火)02:09:49 No.783846318

こんな娘が継承のし過ぎで…

9 21/03/16(火)02:12:39 No.783846690

強すぎるがゆえの苦悩いいよね

10 21/03/16(火)02:14:02 No.783846871

そんなプイプイを心配して旅行の時に風邪薬を持たせてくれる優しいウララちゃんだ

11 21/03/16(火)02:15:21 No.783847022

あとからタキオン先生に滅茶苦茶叱られるやつ

12 21/03/16(火)02:18:11 No.783847403

専用二つ名が「英雄」なんだ

13 21/03/16(火)02:18:25 No.783847429

濃厚なプイ文書をありがとう…

14 21/03/16(火)02:18:58 No.783847498

原作はハーツクライに負けた印象が強い

15 21/03/16(火)02:20:19 No.783847694

むしろハーツに負けたからこそ語るに足るところある

16 21/03/16(火)02:21:52 No.783847878

アーモンドアイはちょっと強すぎたからな…

17 21/03/16(火)02:22:18 No.783847921

この後プイプイの走り見て無敗三冠とりたい!って子に会ったりもするんだろうか… ティアラ路線で三冠目指す子とも

18 <a href="mailto:s">21/03/16(火)02:27:00</a> [s] No.783848486

>この後プイプイの走り見て無敗三冠とりたい!って子に会ったりもするんだろうか… >ティアラ路線で三冠目指す子とも この後は結局ディープに走ることの理由を与えられないまま強すぎる彼女は三冠を取ってしまう 関係に亀裂が入りかけたところで有馬で敗北 亀裂が決定的なものになりかけたところでトレーナくんの頑張りや周りの支えにより雨降って地固まる 海外遠征のあれこれのともかく次の年の有馬で物凄い走りを見せるのがゲームシナリオでのラストシーンとなります ちょっと待たせるけど次回予告今からちゃちゃっと書くんじゃ

19 21/03/16(火)02:28:48 No.783848714

次回あんの!?

20 21/03/16(火)02:46:27 No.783850572

書き込みをした人によって削除されました

21 <a href="mailto:s">21/03/16(火)02:47:25</a> [s] No.783850676

「確かにあなたの能力はなかなかです。それは認めざるを得ません。  しかしトゥインクルシリーズに出走するウマ娘というものには相応の振る舞いが求められるという自覚が必要になります。  ですがこの際はっきり言っておきますが…そんな態度を続けるようならこちらから選抜レースに推挙することは出来ませんよ」 「…はぁ」 教官のそれはきつい声音だった。しかし聞いていたウマ娘は生返事を返すだけだった。 指で口元を覆うマスクの位置を直す。心の何処かでやる気の萎えた言葉が虚ろに響いていた。 “───そんなこと分かってるっつの。はいはい、どうせキレたら何するか分からない素行不良のウマ娘ですよ” 「次こうしたことがあれば厳正に対処します。いいですね?」 「…はぁ。分かりました」 本当に分かっているのかしら、と疑いの視線を送りながら教官は去っていく。 指導室の椅子に腰掛けていたそのウマ娘はそこで重い溜息を付き、マスクをずらした。 「…ま、いっか。どーせ誰もアタシなんかに期待しちゃ無いし。  今更叶いもしない夢を追いかけるほど夢見がちじゃねーしなァ」 嘯くそのウマ娘の名はオルフェーヴル。ただの、不良ウマ娘だった。

22 <a href="mailto:s">21/03/16(火)02:48:17</a> [s] No.783850780

情報とか拾って気が向いたら書きます

23 21/03/16(火)02:50:16 No.783850985

ikze…

24 21/03/16(火)02:54:46 No.783851435

楽しみにしてるよ

25 21/03/16(火)02:54:59 No.783851459

今日この時間に起きてて良かった いいものを見た

26 21/03/16(火)02:58:25 No.783851776

プイプイはなんだかんだでやっぱり特別なんだよね…

27 21/03/16(火)03:06:13 No.783852524

何か背負っていなければ戦ってはいけないのか?ってテーマいいよね

28 21/03/16(火)03:12:52 No.783853152

良かったねプイプイ…

29 21/03/16(火)06:54:48 No.783864089

長いだけで全然面白くない

30 21/03/16(火)07:01:06 No.783864453

オルフェーヴル「そんな私にも理解ある彼くんがいます」

31 21/03/16(火)07:09:49 No.783864968

>オルフェーヴル「そんな私にも殺したい彼くんがいます」

32 21/03/16(火)07:17:54 No.783865488

いつの間にか完結してた

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