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21/03/10(水)06:38:36 この怪... のスレッド詳細

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21/03/10(水)06:38:36 No.782044356

この怪文書はゆかりさん(19歳↑)がきりたん(11歳)となにかする怪文書となっています 前回のあらすじ 食事の話と、明日買いに行くものについて話をしました。

1 21/03/10(水)06:38:46 No.782044361

玄関を抜けて道路に出ると、暖かな陽光が降り注ぎます。 風は日増しに弱くなり、日差しは徐々に強くなっているようです。 そろそろ、日傘を差したほうが良いのでしょうか。 私はそんな事を思いながら掌を額にかざすと、きりたんさんが私の手を引いて歩きだしました。 彼女はどうして体が小さいのに、こんなに強い力を持っているのだろう、なんてぼんやりと思いながら私は手を引かれて歩きます。 道の途中には垣根を超えて、少し道路に差し掛かるほどの桜の木が幾つかの花びらを残して聳えていました。 そろそろ、春も終わりかしら。 そう思うと春の終わりに侘しさを感じます。 何時しか終わるものでも、例え何度経験したとしても、形として散りゆく姿には侘しさを覚えるものです。 「ゆかり、今日は一通り色々と買い揃えますよ」

2 21/03/10(水)06:38:58 No.782044372

彼女は大きなバッグを背負いながらそんな事をぼんやりと呟きます。 「えっと……確か、調理器具とかを買うんでしたっけ」 私がそう言うと、きりたんはそうですと短く言葉を返しました。 そんな彼女は私の手を引きながら、暖かな陽光の中を嬉しそうに歩きつつ、日差しを体に受けて私に微笑みを返します。 「お鍋に、菜箸、本当はスキレットなんかも欲しいですが……準備が面倒なので、止めておきましょう」 「お箸やフライパンじゃあ、駄目なんですよね」 私がそんな事を言うと、きりたんは少しだけなんと言おうかという顔をしながら首を傾げます。 「確かにフライパンは万能器具ですが、鍋にするには底が浅すぎますし、専用性を求められる料理には向きません」 そう言いながら、彼女はこちらに微笑みかけます。 「お菓子を作る時はお菓子用の器具を使いますし、用途が広いと言っても、やはり汁物を作るには向いていないのです」

3 21/03/10(水)06:39:15 No.782044382

うまく言えたとばかりに会心の笑みを浮かべる彼女に、私は浅く笑顔を返します。 「きりたんさんは、物知りですね」 そんな事を私が言うと、彼女は少し恥ずかしそうに首筋を掻きました。 「家族の受け売りでもあるのですけどね」 ……いい家族なんだろうな、と私はぼんやりと思いました。 そんな会話をしている内にも、私達はどんどんと市街へと入り込みます。 静かな町並みは徐々に人の通りが多くなり、色々な人が道を歩いて居るのが目に付き始めました。 人々は特に会話もなく、つらつらと道を行き交い歩いて行きます。 近くの駅から降りてきたのでしょうか、それとも私達と同じ様に住宅街から歩いてきたのでしょうか。 何処からともなく通り過ぎる人々は、私がきりたんさんに手を引かれて歩いている姿にも無関心です。

4 21/03/10(水)06:39:47 No.782044404

「もうすぐ、百貨店ですね」 私がきりたんさんに語りかけると、彼女は頷きを返します。 「ええ、今日は色々買うので少々荷物が重くなるかもしれませんね」 そんな事を言いながら、私は目線を上げて数階建てにもなる大きなビルを見ました。 ビルの外面には時流の商品についての宣伝や、色々な柄の衣服等が広告として並べられていました。 どれもこれも少しばかり小洒落ていて、ああいうのを見て人々は商品を手に取るのだろうな、とぼんやりと思います。 「それじゃあ、行きましょうか」 そう言いながら、きりたんさんは私を一度振り返り様子を少し伺います。 私はビルから目線を下げて彼女に頷きます。 「ええ、お願いしますねきりたんさん」

5 21/03/10(水)06:39:59 No.782044419

私がそう言うと、彼女は少しだけ胸を張って微笑みかけます。 「任せて下さい」 そう言って彼女は自動ドアをくぐって、私をお店の中へと連れて行きました。 百貨店の中では入り口のすぐ近くにガイドコーナーが設けてあり、人々はそこを避けて思い思いのお店へと向かいます。 誰も彼もが他人に無関心で、それはある意味お店として正しいのかもしれません。 まるで水の流れのように私達は人の流れに揉まれながら、エスカレーターを乗り継いでいきます。 二階、三階、四階。 登っては別れ、また別の小さな流れと合流し、また分かれる。 それぞれのざわめきは、激しい川のさざめきにも似ています。 ああなるほど、お店とは人々の濁流の流れる河川敷のようなものなのかもしれません。

6 21/03/10(水)06:40:17 No.782044436

思い思いの果てへと行き果て、また川を乗り継いで人々はお店を出て流れていく。 私はどうでしょう? 流れているのか、それとも流されているのか。 「今日は人が多いですね」 エスカレーターでそんな事をきりたんはぽつりと呟きます。 「そうなんですか?」 私がそう言うと、きりたんさんは苦笑いを零しました。 「前回よりというのもありますが……やはり休日になると、人が多くなるのかもしれませんね」 そんな事を言いつつ、肩のリュックを背負い直す彼女は少し人々に辟易としているようです。 「なんで人が集まるのでしょう」 私がそんな事をポツリと言うと、きりたんさんはまた苦笑いをしつつこちらを見ます。

7 21/03/10(水)06:40:31 No.782044450

「色々な商品がありますからね」 そう言いつつ、私達は目的のフロアについてエスカレーターを降りました。 人の流れが分かれて、目的のお店に別れていく中、私達は少しだけ人気の薄い調理器具のお店へ向かいます。 お店に並んでいるのは菜箸や、フライパンから始まり、鍋、たわし、包丁、または変わって台所用マットなんかも並んでいます。 「どれを買ったほうが良いのかしら」 そんな事を私が言うと、きりたんさんがボウルを押しつぶして少し寸胴にしたような鍋を手に取ります。 「二人分ですから、之くらいが良いのでしょう」 そんな事を言う彼女を見つつ、私はふと口を開きます。 「もう少し大きくなくて良いのですか?」 私がそんな事を言うと、彼女は頭を振って私の言葉を否定します。

8 21/03/10(水)06:40:43 No.782044457

「いえいえ、両手ではなく片手で……そうですね、二人分のお味噌汁や煮物を作る程度で良いのです」 そう言いながら、似たような大きさの鍋を二つ、近くの荷物籠おきから取った籠に入れました。 「では、菜箸はどんな物がいいのですか?」 私がそう言って尋ねると、段々ときりたんさんが得意げになりながら語りだします。 「菜箸は……そうですね、天ぷらがちょうど良く、油がはねても手に届かず、挙げた具材を掴むのが難しくない程度の長さでいいでしょう」 そんな事を言いつつ、彼女はお箸にしては長い菜箸を手に取ります。 手で握る部分が少し色のついた滑り止めが付いていて、滑り止めの輪っかは赤と緑が交互に並んでいました。 「それでは、他にどんなものを買ったほうが良いのでしょう」 私がそう言うと、きりたんさんは店内を歩きながら、小さな少し変な形の小瓶を目に止めます。 「ああいう、小物入れも有って良いのかもしれません」

9 21/03/10(水)06:41:00 No.782044478

ですが彼女はその商品を手に取らず、先を歩きます。 「きりたんさん、先程のは買わないのですか?」 私がそう言うと、彼女は苦笑いを零しました。 「物事には優先順位がありますから、あれは調味料などを入れる物品ですので、今は良いのです」 「確かに……私の家に、あまり調味料はありませんものね」 私が事もなしにそう言うときりたんさんは、はははと苦笑いを零します。 「ゆかりは何が必要なのか、まだ見分けるのは難しいようですね」 そんな事を言う彼女を見て、私は確かにそうかも、などと考えました。 「きりたんさんはよく、買うべきものが分かりますね」 私がそう言うと、彼女は少し頭を傾げながら頬を掻きます。

10 21/03/10(水)06:41:11 No.782044483

「ゆかりにもその内、分かるようになりますよ」 そんな事を言いつつ、彼女は小さい包丁と少し大きな包丁を手に取ります。 私はそんな彼女を見ながら、売り場で彼女について回ります。 それから私は幾つもの商品を籠に入れた彼女と一緒に、商品の会計を済ませます。 私がカードを店員さんに手渡すと、少し眉を細められたのは何故だろう、そんな事を思いつつ私達は買った商品をリュックに詰めていきます。 「少し買いすぎましたかね」 そんな事を私がリュックに詰めながら言うと、きりたんさんは菜箸を持ちながら言います。 「いえいえ、今日はまだ買うものが有るのですよ」 私は彼女の言葉に少し困惑します。 「もうリュックの半分くらいは買いましたよ?」

11 21/03/10(水)06:42:35 No.782044546

きょうはここまで su4670438.txt ……もしかして描写の濃さ的に一話200行だと少し短すぎるのでは……?

12 21/03/10(水)06:50:54 No.782044988

きりゆかいいよね…

13 21/03/10(水)06:52:44 No.782045072

>綺麗ですよゆかり きりたんテメーこれ言いたかっただけだろ!!

14 21/03/10(水)07:31:01 No.782047816

健全いいよね…

15 21/03/10(水)07:55:55 No.782050169

いい……

16 21/03/10(水)09:33:59 No.782061406

美しいね…

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