21/03/09(火)01:28:16 泥のガ... のスレッド詳細
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21/03/09(火)01:28:16 No.781732427
泥のガレス http://seesaawiki.jp/kagemiya/ https://zawazawa.jp/kagemiya
1 21/03/09(火)01:32:01 No.781733181
円卓
2 21/03/09(火)01:38:56 No.781734631
夜闇に満ちた外では滝のような雨がごうごうと音を立てて降り注いでいた。 「パーシヴァル卿。…ガレス卿もいましたか。お二方、少々よろしいですか」 天幕を潜って顔を覗かせたトリスタンにパーシヴァルとガレスは視線を向けた。 ふたりともいささか普段より鈍い調子だった。しかし無理もないことだ。 それは雨でずぶ濡れになりながら青い顔を晒してきたトリスタンも同じだった。 普段は整えられている雅な男の髪は雫に濡れてべったりと張り付き、焦燥の空気を醸し出している。 嫌味なほどの伊達男ぶりこそ失われていなかったが目の下に隈が浮かんでいた。 「どうしましたかトリスタン卿」 「パーシヴァル卿に…いえ、お手隙ならばガレス卿もいらっしゃった方が良いでしょう。 お二方とも申し訳ないがご同行願えますか」 「…」 「…」 パーシヴァルとガレスから返事はなかった。それくらい疲れ切っていた。特にガレスはふらついていたくらいだ。 だがふたりとも黙って木組みの簡素な椅子から腰を上げた。ぎぃ、と天幕の中に軋んだ音が寒々しかった。 マントを雨よけのフード代わりにしてふたりはトリスタンに導かれるまま雨天の中を具足を鳴らして歩いた。
3 21/03/09(火)01:39:07 No.781734666
「大丈夫ですか、ガレスちゃ…ガレス卿」 「へ、平気だよパーシヴァルちゃ…パーシヴァル卿。このくらい円卓に選ばれた騎士なら問題ありません…」 肩を貸そうとしたパーシヴァルに対しガレスは無理やり元気そうな声音を作って断った。 足取りもたつきながらも泥濘と化した野営地の地面を雨に打たれながら歩む。 それほどまでに日中のピクト人たちとの戦いは激烈であった。 無我夢中とはこのことだろう。倒れても倒れても襲いかかってくるピクト人たちを相手に斬って捨て斬って捨て…。 ピクト人たちの攻勢が途絶えたのは太陽が山陰に沈んで間もない頃だった。 どれほどの激戦だったか例える言葉をパーシヴァルは多く持たない。 だが全てが終わった時、周囲にいた騎士たちがどこの隊のどこの所属だか…それすら分からないほどに混迷していたのは確かだった。 今頃はこの海峡の荒波をひっくり返したかのような大雨の中、ガウェインとモードレッドの部隊が奇襲に対する防衛網を強いているはずだった。 やがてトリスタンがひとつの天幕の元に辿り着いて潜っていく。 その後姿に続いたパーシヴァルはつい息を呑んでしまった。それは後に続いてきたガレスも同じだった。
4 21/03/09(火)01:39:20 No.781734719
天幕の中にずらりと並べられていたのは鎧を纏った騎士たちだった。 ただし彼らは簡素な木組みの台の上に横たわり、そして息をしていない。 パーシヴァルはふと思った。ここはまるで天上へと戦士の魂を連れて行く船の上にいるようだと。 「今この野営地にいる円卓の騎士は我々のみであり…。 そして彼らを天へと送るのに、円卓随一の麗しき声であるパーシヴァル卿、あなたの言葉が添えられているのならば彼らも浮かばれましょう。 曲は私が奏でます。ガレス卿、どうか祈りを。パーシヴァル卿、葬送の歌をお願いします」 「…私でよろしいのですかトリスタン卿」 「ええ、あなたであればこそ」 歌唱法の師たるトリスタンから視線を移してパーシヴァルがガレスの方を向くと、ガレスも疲れ切った眼の中に決然たる炎を灯してこちらを見つめていた。 雨除けにしていたマントを脱いだ。一度深呼吸をし、天を仰いだ。 歌を。歌を、届けなくてならない。 勇敢に戦い、そして天に召される彼らが少しでも己が勲を感じ取れる歌を。 声を発する一瞬、自然と瞳に涙の幕が浮かんだ。竪琴に指を滑らせるトリスタンも、ただ起立するガレスも、抱く思いは似ていると信じられた。
5 21/03/09(火)01:39:34 No.781734770
オーダー完了
6 21/03/09(火)01:44:00 No.781735696
Q2
7 21/03/09(火)02:25:45 No.781743174
レクイエムを奏でるのいい…