虹裏img歴史資料館

1 21/03/05(金)06:29:30 No.780476683

私は目の前に広がる緑色の物体を纏ったお餅を箸で、つんと突きます。 お餅は思っていたよりも固く、私が突いた箸に纏わりつきました。 「……餅」 私はぽつりとそんな事を呟き、余り見たことの無いこの食べ物を観察します。 お餅は恐らく突いたものを、少し冷やして程よく固くしたものでしょう。 では、このずんだとはなんなのか。 それからずんだを箸で掬って嗅いで見ると、ほのかに甘い匂いに混じって、豆類のような匂いが鼻に広がりました。 恐らく、臼で挽かれた豆なのでしょう、ではこの豆は何か？ 色合い的には枝豆やそら豆のような匂い。 そんな私を見ながら、きりたんさんは私の顔を見上げます。

2 21/03/05(金)06:30:14 No.780476715

「ずんだ餅は初めてですか」 そういう少女は私の隣に腰掛け、こちらの様子を見定めるような表情をしていました。 「え、ええ……黄緑色のペーストって、初めてみるものですから」 私はそんな事を言いつつ、流石にお土産を箸でいじくるのは失礼かな……なんて思い、物は試しと、ずんだの部分を箸で掬って口に運びました。 口に含むと広がるのは、豆の味わいと砂糖……ではなく、糖蜜のような味わい。 豆はよく挽かれているせいか、口の中で溶けていきます。 匂いから想像するよりも、お菓子のような味わいに私は少し安堵しました。 お昼にするには少し甘すぎる気がしますが……たまにはこういうものもいいでしょう。 「お味は如何ですか」 そう言ってにこやかに微笑む少女に、私は微笑み返します。

3 21/03/05(金)06:30:36 No.780476740

「思っていたよりもお菓子っぽいのですね」 そんな事を言うと、きりたんさんは首を縦に振ります。 「ええ、ですがお餅もありますので、お昼……にはちょっと物足りないかもしれませんが、お腹の足しにはなります」 「そうなんですか？」 私はそう言いながら、箸で餅を半分に割って一口大に切り分けた後、ずんだをよく絡めて口に運びます。 まろやかなずんだと、ほんのり甘い豆の風味を味わいながら、少し硬いずんだ餅を噛んでいると、私の顔をみながら少女が呟きます。 「……ゆかりには、丁度いいのかもしれませんね」 私は何度か餅を嚥下しようとして、噛み切れない餅に難儀しつつも飲み下すと、口を開きます。 「そ、そうかもしれませんね……」 私はもう一口ずんだ餅を口に運び、もちもちとした食感を噛みながら暫く目を瞑ります。

4 21/03/05(金)06:30:58 No.780476757

歯ごたえのあるお餅は、普段から食の細い飲み込むのに苦労しそうです。 もち、もちと歯で押すと、お餅が私の歯を押し返さんと弾力を私に見せつけてきました。 それから暫く餅を噛んだ後、こくりと喉を鳴らしながら飲み込みます。 普段食べているお餅はお雑煮に少し溶ける位でしたから、本来の餅はこれほど弾力があるのかと暫し嘆息の息を漏らしました。 「……少し、食べるのに難儀していますね」 きりたんさんが少し申し訳無さそうな顔をするのを見て、私は慌てて口を開きます。 「あ、い、いえいえ、美味しいお餅ですから、ゆっくり食べようかと思いまして」 「それならばいいのですが」 聡い彼女のことですから、流石に私の言葉もお世辞だとは気がついているのでしょう。 ……とはいえ、流石にもう一つ食べたら私は満足してしまうかもしれません。

5 21/03/05(金)06:31:49 No.780476796

そんな事を思いながら、もう一個お餅を切り分けて口に運びます。 甘くて美味しいずんだ餅、だけれど少々口が疲れてしまうのが難点かしら。 そんな事を思いつつ、私はもう一個分のずんだ餅を食べ終えて、ふぅ……と一息吐いて箸を置きます。 「ごちそうさまでした」 私がそう言って、もう二個余ったずんだ餅を残すのを見て、きりたんさんがその残りをサッと口に運んで食べてしまいます。 「うん、やはり次はもう少し食べやすいものにしましょう」 そんな事を言う彼女を見て、私は少し申し訳ない気持ちになってしまいます。 「申し訳ないです」 私がそんな事を言うと、彼女は私に笑顔を向けながら口を開きます。 「いえ、丁度お腹が空いていたものですから、こちらこそお土産を食べてしまって申し訳ないです」

6 21/03/05(金)06:32:43 No.780476842

それから少し、私は冷蔵庫から水を取り出しコップに二杯分注いでソファの前のテーブルに載せます。 私がその内の片方のコップを両手で持ち上げて、こくりと水を一口分飲み込むと、きりたんさんが口を開きました。 「そういえば、ゆかりは普段は何をして過ごしているのですか？」 私はその言葉に少し考えた後、口を開きます。 「庭の草木を眺めたり……後は、何でしょう……家事や洗濯をして過ごしていますね」 そう言うときりたんさんは少し首を傾けました。 「……趣味は草木の手入れ……ですか？」 そう言って尋ねられると、私は少し考え込んでしまいます。 「余り水の要らない草木ですから、趣味と言って良いのか……」 「はぁ……なるほど」

7 21/03/05(金)06:33:15 No.780476873

そんな事を言いながら、きりたんさんはまた首を縦に振ります。 「……なんと言ったら良いのか、分かりませんが……こう、辛くはないのですか」 私はそう言って私を見る少女を見返し、首を傾げます。 「辛い……？」 そう言って、ぼんやりと言葉の意味を考えていると、彼女はまた口を開きます。 「そうです、毎日同じことの繰り返し、同じ生活、不安にはならないのですか？」 そんな事を言う彼女を、私は首を捻ったまま見返します。 「辛い……いえ、分かりません……今までこの生活でしたので、特には……」 そんな事を言う私に対して、きりたんさんは少しだけ驚いた顔をした後少し目を閉じます。 それから暫く唸った後、また口を開きました。

8 21/03/05(金)06:34:01 No.780476908

「ゆかり」 そう短く切った彼女の言葉に、私は少し戸惑いました。 「はい」 「……いえ、わかりました」 そう言って彼女は私の手を両の手で握りながら、口を開きます。 「色々な事を私としませんか？」 そんな事を言う彼女に、私は目をパチパチと瞬かせます。 「色々な、事、ですか」 戸惑いながら彼女の言葉を繰り返し、私はきりたんさんの目を見返します。 「そうです、色々な事、です」

9 21/03/05(金)06:34:43 No.780476939

それから暫くの間が開いた後、私はぼんやりと口を開きます。 「ですが……私みたいなつまらない人に構っていると、きっといつか飽きて仕舞いますよ」 思ったままのことを言ってのけると、目の前の少女は頭を振りながらこちらを見上げます。 「いえ、詰まらなくなどないですよ、きっと楽しい筈です」 「楽しい、ですか」 私がそう言うと、きりたんさんはまた口を開きました。 「きっと、いえだからこそ、ゆかりは私に声を掛けたのでしょう」 そう言って断言をする彼女に、私は少し首を傾げました。 「そうなのでしょうか」 少しためらいがちな私の言葉に、彼女は何時もの微笑みを返します。

10 21/03/05(金)06:35:11 No.780476959

「そうですよ」 そう言って私の手を引っ張りました。 「さあ、楽しむのが万薬の祖といいます」 私は手を引かれた調子で立ち上がると、少し困惑しながら彼女を見ます。 なんて元気のいい人だろう、私はそんな事を思いました。 「ゆかり、普段は買い物はどちらで？」 そう言われて私は、ぼんやりと口を開きます。 「いえ、普段は……家族の送ってくれるものを食べています」 私がそう言うと、きりたんさんは驚いたように口を開きます。 「それでは、外へは何の位の頻度で出られるのですか？」

11 21/03/05(金)06:38:15 No.780477138

きょうはここまで su4654748.txt ゆかきりを書くのは楽しいなぁ 葵もPixivの長編みたいな怪文書書くの好きやったよな

12 21/03/05(金)06:42:18 No.780477362

このゆかりさんに手出したらダメだ…えらいことになるぞきりたん… でも出すんだろうなぁ…そんな確信がある 友達って言葉悪用するんだろうなぁ……

13 21/03/05(金)06:51:04 No.780477879

このゆかりさんきりたんに喰われるばかりかと思ってたが… 案外危険な獲物かもしれないな？

14 21/03/05(金)07:17:24 No.780479529

普通に心配でお世話している部分が大半でしかも攻められたら一瞬でやられそう

15 21/03/05(金)07:42:25 No.780481792

大丈夫？きりたん突然黒服に拉致られて覚悟の程を問い詰められる事になったりしない？

16 <a href="mailto:s">21/03/05(金)07:54:40</a> [s] No.780483054

ずっぷり肩までハマったあたりで発動するタイプのトラップ良いですよね

17 21/03/05(金)08:35:07 No.780487609

やっぱ健全も短くなるも嘘じゃねぇかなあ… 健全であってくれそして長続きしてくれ終わるな夏休み

18 21/03/05(金)08:36:28 No.780487775

>葵もPixivの長編みたいな怪文書書くの好きやったよな 書けないよお姉ちゃん