ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/02/23(火)21:27:17 No.777721734
こんばんはお乗様です。「」嬢様寝落ちしたみたいなので予定を変更してダイマズ怪文書リメイクしたものを公開します。どうぞごゆるりと。
1 21/02/23(火)21:27:44 No.777721963
それは初夏も直前ー具体的に言えば六月のある日の事だった。 その日オイラは興味本位から故郷フタバの側にある湖に出かけていた。 理由は二つ、一つ目は冒険のキッカケになったかもしれないある出来事を確かめたかったから。 二つ目は気持ちに整理をつけるためだ。 最近オイラとパールは漫才大会で銅賞を貰った。 この件が呼び水となってオイラ達は大型新人としてそこそこの有名人となったのだ。 心の用意が出来ていないのにこんな事になってしまったけど、オイラもパールも気合は十分。 でも四年ほど前の三人での旅が何故か無性に懐かしくなってしまってここに来てしまった。
2 21/02/23(火)21:28:07 No.777722193
*** 「あーーっ!あなた!」 チョコフォンデュのように溢れ出した思い出を整理していると、ちょうどここシンジ湖での激闘を思い返したところで今でも胸に残っている声が聞こえた。 マーズだ。ギンガ団のマーズ。 「テレビ見たわよ!」「いつの間にあんな面白いもの作れるようになったのよ!」「サイン頂戴!」 山のような質問責めにあった。無理もない、やぶれたせかいでの決戦から四年も経っていたのだから。 「ど……どうしてこんなところに……」 「なんとなくあなたのサインが欲しくなったの!で、貴方が私ならこんなところを散歩してるんじゃないかと思ってね!」 鋭い読みに言葉が詰った。失礼だけどいわゆる「頭が軽い」タイプの人だと思っていたからだ。 「……また何か企んてるの。」 「企み?ないない!アタシ普通の女の子に戻ったの!」
3 21/02/23(火)21:28:22 No.777722315
ちょうど光が差し込んでわかったんだけど、服は微妙にギンガ団のしたっぱの物に似てる灰色のワンピースだった。きっぱり手を切ったようだけど…… 「本当の本当?」 情けないことにオイラは信じられなかった。正義のヒーローだったら「罪を憎んで人を憎まず」ということが出来たのに。 「じゃあイイコトしてあげるわ!」 「イイコト?」 「そう!明日何かしらあなたに喜んて貰える事をしてみるわ!」
4 21/02/23(火)21:28:42 No.777722515
*** 時間は九時を回った辺り。 今オイラは自分の部屋のベッドにいる。 やはり今日の昼間起こった出来事は信じられなかった。 パールはお父さんのところに行ってるし、お嬢様は妹に付き合ってるから相談も出来ない。 久しぶりの自分だけで解決しないといけない問題だ。 「どうすればいいんだろう……」 でもオイラは逃げない。 これを乗り越えれば一人の男としてもっと成長出来る筈だから。 そう思ってオイラは寝落ちした。
5 21/02/23(火)21:28:53 No.777722636
*** 約束を破ってしまえば悪党と同じ、オイラは約束を守りにマーズを探す事にした。でも手掛かりは全くない。 こんな時オイラが女の子だったら何処に行くんだろうか…… オイラがイイコトをするのだったら笑顔になってもらう。笑顔になるには……食事? そう思った途端オイラはここシンオウのフタバタウンから五番目のジムのある場所ーヨスガシティに向かった。
6 21/02/23(火)21:29:07 No.777722724
*** オイラの目的地はコンテスト会場だ。 あそこはポフィン用のキッチンが無料貸し出しになってた筈…… 「よし、完璧!」 入ってすぐのキッチンから大声が出た。 マーズだ。三角巾やエプロンをするなどしっかりと準備をして料理をしている。 「あ!ちょうど良かった!昨日の約束通り作ってみたのよ!」 渡されたのは出来たてホヤホヤ、湯気が立っているポフィンだった。 「食べてみてよ!」 オイラは言われるまま齧った。 「……美味しい!」 「でしょでしょ!木の実の使い方を工夫したの!」 「どうやったの!?」 「ここで成形するときにこう……」
7 21/02/23(火)21:29:29 No.777722955
*** しばらくオイラ達はポケモンの愛で方等について語り合い、出発した頃は最大まで登っていた太陽もすっかり沈んでいた。 「あー楽しかった!」「ワルイわね、サインまで貰っちゃって。」 「いいんだ。オイラもお昼ご馳走になっちゃったし。」 「……ん?オイラもしかして……」 ふと昨日今日で起こった出来事を振り返ってみると、まるで恋人同士でデートした状態だったのに気づいた。 「ま……まさか……!?」 マーズの方を見た瞬間オイラは顔に指を添えられて……
8 21/02/23(火)21:29:42 No.777723062
*** 気づいた時にはもう彼女の姿は見えなかった。 もしかしたら夢の中の出来事だったのかも。 でもそんな考えはすぐに打ち砕かれた。 オイラの腰についてるポフィンケースにはマーズと一緒に作ったポフィンがしっかり入っていたから。 お昼を食べながら聞いた話なんだけどギンガ団幹部はハンサムさんに捕まったプルートを除いて全員行方不明になっていたらしい。他の幹部の家に上がり込んだりもしたと言う。能天気と言えばそれまでだけどそんな彼女だからこそあんな出会い方をしてしまった。けどこういう出会い方でなければきっとオイラ達は今ほど仲良くなれなかったかも知れないし、そもそも出会ってないかも知れない。 「ぐるるぅ~~」 腹の虫が鳴いてしまった。時刻も六時を少し過ぎた辺りで、夕食が気になってしまった。 「恋のことなんて考えても仕方がない、お腹が減るだけだ」と自分の中でとりあえずの結論を出してオイラは帰路についた。