虹裏img歴史資料館

1 21/02/14(日)05:10:24 No.774600000

私は会社から家に帰った後、何時ものようにゆかりさんに抱きつかれて蹌踉めきながら彼女の抱擁と、キスを受け入れます。 流石に十日目ともなれば多少は慣れたものの、まだ頬は少し赤いままです。 ……受け入れたり、慣れたりするのは良いのかということについてはまだ、直接手は出していないのでセーフとさせて下さい。 一先ず、私はゆかりさんが台所へ戻って夕飯の支度をしている間、彼女の書いた日記帳を手に取り中身を見始めました。 まだ書いてから十日も立っていないため、数ページで内容は読み切れてしまいますが、兎も角彼女はその日に考えたことや、思ったことの一部をこの日記に書き写してくれているようです。 そして今日書かれた内容は、昨日の母親のお参りの影響を受けた上で、普段熱心に考えている愛情について記載しているようです。

2 21/02/14(日)05:11:02 No.774600027

母の愛情に対しては疑いようもなく真実であると言いながら、その母自身の幸せについて考えているようです。 いえ、考えていると言うには少し思い悩んでいる、とも受け取れます。 自分の幼さ故、出来なかったことを諦めるのではなく、あの時になにか行動を起こせたのではないか、そんな思いを感じます。 貧困に喘いでいるはずでありながら、社会に不平を言うわけでもなく、ただただ正しくあろうとする彼女たちの姿勢は立派でしょう。 とはいえ、彼女の母は良き母でありながら、社会保障というものについてはさほど足りたがらないタチだったようです。 今であれば生活保護や、教育に関する社会制度、または複数の社会福祉が有ったはずでしょう。

3 21/02/14(日)05:11:47 No.774600058

ですが彼女がそれを受けたがらなかった理由について、ぼんやりと思いを馳せます。 ……もしかしたら、それは社会の目線だったのかもしれません。 ただただ生き延びるだけであれば、きっとゆかりのお母様は社会保障を満遍なく受け入れていたでしょう。 ですが、彼女の母は周囲の目や、自身の娘を立派に社会の一員として送り出したかったのかもしれません。 昔、道徳や倫理の授業で社会保障を受けずに、自殺した一家の話を聞いたことがあります。 あの時は子供心に受け入れれば良かったのに、なんて気楽に考えてしまったものです。 問題は、受け入れた後周囲の社会の目や、本人自身の精神の問題など気が付かなかったのです。 彼女の日記に視線を戻し目を這わせると、読み取れるのはあの時に出来たことはなにかなかったのか、という自責の念を感じます。

4 21/02/14(日)05:12:36 No.774600080

……今となっては真相を確認する方法はありませんが、お母様はそういう人だったのでしょう。 私はそんな事をぼんやりと思いながら、日記帳を閉じました。 「きりたん、ご飯できましたよ」 「はーい」 私は彼女の声に合わせて、少し間延びした声を返し寝室を出て食卓へ向かいました。 彼女は何時もの私の隣に腰掛け、座りながらこちらを見ています。 じっとこちらを見る視線を感じながら、私はすごすごと彼女の隣に腰掛けました。 「いただきます」 私が手を合わせてそういうのと同時に、彼女が同じようにいただきます、と言って食事を摂り始めます。 今日の夕飯はチキンライスに、鶏肉の唐揚げでした。

5 21/02/14(日)05:13:16 No.774600112

ボイスロイドは外見上加齢を重ねないと言いますが、消化器官は悪くなるのでしょうか。 そんな事を思いつつ、チキンライスを頬張ると口の中で鶏肉とご飯、それにケチャップの味が広がっていきます。 会社の先輩なんかが、最近油ものを受け付けなくなったと昼後にぼんやり言うのをふと思い出します。 味自体は美味しいのですが、最近24歳になって段々と追われているのかも分からない加齢に怯えることが多くなりました。 会社の健康診断でも特に体重や身長の変動は無いですが、毎年主治医に何とも言えない表情で軽い運動をするようにと、アドバイスを受けた気もします。 ……ランニングとか、したほうが良いんでしょうか。 私はそんな事を思いつつ、晩ごはんをモシャモシャと平らげていきます。 「きりたん、ご飯どう？」 そう言ってゆかりさんが私の方を見ながら口を開きます。 「うん、今日も美味しいよ」

6 21/02/14(日)05:13:59 No.774600140

健康が気になるとは言えず、私はそのまま彼女の頭を撫でました。 「……明日は野菜とか多めにしてもらえると、助かるかな」 私は彼女の頭を撫でながらそう言うと、ゆかりさんが小さくうん、と言葉を漏らします。 それからは何時も通りご飯を食べ終えて、食器を洗ったり少し世間話をして、お風呂に入りました。 相変わらず彼女とのお風呂を意識しないように、自然にお風呂に入るのには多少苦労します。 「……ねぇ、きりたん」 そう言って浴槽の中私を抱きながら、ゆかりさんが口を開きます。 「私ね、今すごい満足してるんだけど……」 そう言って私の耳に声を耳打ちするゆかりさんの声は、いちいち色っぽくって心臓がきゅぅっと絞られるような感覚に陥ります。 「でもね……何か、まだもうちょっと物足りない気がするんだ」

7 21/02/14(日)05:14:45 No.774600168

そう言って私の体を抱きしめるゆかりさんの肌は暖かく、私は思わず気をやってしまいそうになります。 「そ、そうなん、ですか？」 ゆかりさんの柔らかな肌が私の肌と擦れる度、悲鳴を上げる心臓を抑えつつ彼女の言葉に答えます。 「うん……」 そう言って私を抱きしめるゆかりさんの表情は、お風呂の熱で上気しているのか、それとも別の要因で赤くなっているのかわかりません。 「……そ、それは……」 私は咄嗟に言葉に迷い、少し間が開きます。 何かを期待するようなゆかりさんの顔に、私は何とも言えない感情を抱きます。 「……それは、きっと、その……運動不足ですよ！」 私がそう言うと、ゆかりさんがキョトンとしたような顔をしました。

8 21/02/14(日)05:15:21 No.774600188

少し苦しい言い訳でしょうか……と思いながらも私は彼女に畳み掛けるように語りかけます。 「いいですか、今の感覚は少し胸が苦しくって、何かもやもやするなぁ、って感覚ではないですか」 私がそう言うと、ゆかりさんは私の顔をハッとした顔で見ながら頷きます。 「そうです、それは運動不足です」 私はそう言いながら少し後ろめたい気持ちになりつつ、言葉を続けます。 「恐らく慣れない私の家での生活が続いて、今までより長距離を歩いたり、何か力仕事をする機会が減って力を持て余しているのです」 技術のわからないお客様や、上司に説明するときのように少し畳み掛けるように、ゆかりさんに運動不足であることを力説します。 「……そうなのかも」 そう言ってゆかりさんは何となく腑に落ちたような顔をします。 「……それならば、折角ですし今度の土曜日に運動用の衣服でも買って、軽くランニングしたりしましょうか」

9 21/02/14(日)05:15:32 ID:f6cA5v8k f6cA5v8k No.774600192

ちくわ大明神

10 21/02/14(日)05:16:02 No.774600210

私は彼女に対して捲し立てるのを一度止めて、軽く息を整えながら彼女に説得します。 頼むこれで納得してくれ、私がそんな事を思っているとゆかりさんが私の顔を少し眺めた後頷いて口を開きました。 「うん」 少し苦しいかな、なんて思いましたがこの子が素直で本当に良かった。 私はそう言って、少しゆかりさんと軽くランニングの話などをしつつ、私達はお風呂から上がりました。 それから体をタオルで拭って、歯を磨いて一緒に布団に入ります。 「おやすみなさい」 そう言って、ゆかりさんが私を抱きしめるのを感じながら、暗闇の中チュッと私の唇に温かい感触が走るのを感じます。 「お、おやすみなさい……」 少し悶々としながら、私も目を閉じて彼女の体に身を預けます。

11 <a href="mailto:ちくわ大明神">21/02/14(日)05:16:26</a> [ちくわ大明神] No.774600219

そして、ピピピという音で目覚め何時ものように朝の支度をして、ゆかりさんにキスをされて家を出ます。 毎日している筈のキス、最近は少しは慣れたかな……なんて思いましたが、やはりされる瞬間はドキドキしてしまいます。 さて……今日はある商談に関して、営業さんと一緒に向かわなければ行けません。 あるプレ工程に関する検討会があるので、絵空事を叩き潰しに掛かるそうです。 ……問題があるとするならば、まだまだ自分自身の技術力が未熟なので、お客さんに色良い提案が出来るのか。 または、後々突っ込まれる要因になる事を叩き潰して、現実味がありつつお客さんに配慮した内容にしなければいけません。 ……勉強しないとなぁ……そんな事を思いつつ、私は電車に乗って会社へ行くのでした。 ────

12 21/02/14(日)05:17:48 No.774600256

今日はここまで su4597732.txt 気がついたらきりたんの誕生日でしたね…… ちくわ大明神

13 21/02/14(日)06:57:07 No.774603632

ちくわ大明神が二体…誰だ今の 平和いい…

14 21/02/14(日)07:53:38 No.774607249

愚鈍だから今更気づいたんだけど きりたんは日記を通してゆかりさんの感情を直球で毎日食らってんだよね ゆかりさんが少し悪い子になるだけできりたん二度と逃げられなくなるよね？

15 21/02/14(日)08:13:05 No.774608891

もう既に逃げる気概も失ってるから問題ないぞ東北ロリコン