虹裏img歴史資料館

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21/02/13(土)23:05:00 まそ鏡... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1613225100382.png 21/02/13(土)23:05:00 No.774511851

まそ鏡、清き月夜の、ゆつりなば、思ひはやまず、恋こそまさめ

1 21/02/13(土)23:05:12 No.774511926

時間は刻々と過ぎていき、気付けば午後10時を回っていた 窓からは月明りは入り込んでいてやや明るい …ダメだ、全然寝付けねえや ベッドの上で何度目かの寝返りを打ちながら、隠れちまった睡魔を探す 身体は疲れている一向に眠気はこない…どうやら謎の病気に侵されちまった 「…こんなんじゃ明日仕事になんねえよう」 腕の良い薬剤師は知ってる だけど、その人じゃあ多分治せない むしろもっと悪化するかもしれねえ けど………ハァ…なにやってんだオレっちは…………… そう思いつつ、通信機のボタンを押す

2 21/02/13(土)23:05:30 No.774512057

====== 「運び屋サンでーす!お荷物お届けに上がりました!」 「ハイよ~サンくんありがとね!」「ハイこれお礼ね、ダラーもどうぞ」 マオさんから渡されたのは小包だった 「お、ありがとうございます!」 「今日は何の日か知ってる?」 「知らね」 「やっぱり!フフフ、今日はバレンタインデーだよー!」 「あぁー、てことはチョコレートかいコレ?」 「そう!ムーンちゃんと協力して作ったの、新作の薬膳チョコレート」「カキたちの分もあるから渡しといて」 そう言っていくつかの小包を渡される 「全部食べちゃダメだよ」 「食べねえよう!」

3 21/02/13(土)23:05:44 No.774512151

ここ数日荷物からやけに甘い匂いがすると思ってたが、バレンタインデーか 確か頑張ってる人がチョコレートを貰える日だよな、理由は知らね カキさんたちとは今別行動だからお昼の時に渡すか 「ムーンちゃんからはまだ貰ってないんだ」 「ん?今日はまだお客さんには会ってないぜ」 「ねえサンくん、ムーンちゃんからチョコ貰えたら嬉しいよね?」 「え、そりゃあタダで貰えるもんは嬉しいに決まってるけどさ」 「そうじゃなくて、まいっか、貰えると良いね♪」 「お?おぉ」 よく分かんねえけどお客さんからもチョコ貰えるってことかな?

4 21/02/13(土)23:05:57 No.774512243

「こ…こんにちは、荷物あ、ありがとうございます」「あ…コレどうぞ…」 「サンくんアローラ~!ムーンちゃんからはチョコ貰った?まだ?あらそう、じゃあコレもどうぞ」 「ちょうど帰省中でしてね、わたしからもおすそ分けです」 マオさん、スイレンさん、ライチさん、カヒリさん、アーカラ島の行く先々でチョコレートを渡される 別に欲しいって訳じゃねえけど貰えるのは悪い気しねえな… そういやまたお客さんの話が出たな、なんでみんなして名前出すんだ?まいっか、仕事仕事 チョコを貰いつつちゃちゃっとアーカラ島の仕事を片付け、メレメレ島に向かった

5 21/02/13(土)23:06:14 No.774512337

「あら、運び屋さんこんにちは」 メレメレ島についたら早速お客さんとバッタリ 「これから博士んとこに荷物をな」 「ちょうど入れ違いね、わたしは今ククイ博士のところから戻るところなの」 「そうかい」 「「………」」 「どうかした?」 「え?いや、なんでも」「んじゃ!」 そう言ってお客さんと分かれる 「あっ、運び屋さん」 「! なんだい?」 「今日は怪我しないようにね」 「…ああ、わ~ったよ」 …まぁいっか

6 21/02/13(土)23:06:35 No.774512477

「よっ配達ご苦労様」 「ハーイ、サンくん、バレンタインチョコよ」 「ありがとうございます」 博士夫婦に荷物を届けたついでにバーネット博士からチョコを貰う 「ちょっと前までムーンがいたんだけど、すれ違いになっちゃったわね」 「お客さんとならさっき道ですれ違ったぜ?」 「あっそうなの、じゃあ薬膳チョコはもう貰った?美味しかったわよ」 「え?博士達は貰ったのかい?」 「ん?ああ、さっきな」 「そうかい」 …別にバレンタインを忘れてるとかじゃないんだな

7 21/02/13(土)23:06:49 No.774512576

「ん…どうした?もしかしてお前、チョコ貰えなかったのか?」 「別に欲しいとは言ってねえけどさ」 「またなんか怒らせるようなこと言ったんじゃないのか?」 「なんもしてねえよう!機嫌も良さそうだったし」 うん、何もしてねえよな?してねえはず 「あらら、サンくんには用意してると思ったんだけど」 「この前も『サンにあげる』とは明言してなかったからなぁ」 「だから別に欲しいわけじゃねえって」 いまイチバン欲しいのはお金だし、チョコじゃ小腹の足しにしかなんねえからな ただ…なんかみんながお客さんの名前出すもんだから、ついくれるもんかと思っちまってただけで というか博士たちには配るのにオレっちにはねえんだな、別に良いけどさ

8 21/02/13(土)23:07:10 No.774512710

「はいコレ、マオさんから預かったチョコね」 「おおポケモン分もあるのか、こっちはハプウとアセロラから預かった分だ」 昼休憩でカキさんたちと合流し、お互いの預かりチョコを交換する 「今日は行く先々でチョコ貰ったからカバンがギッシリだぜ」 「ありがたいことだな、というか本当に凄い量だな…」 オレっちのカバンを見て少し驚くカキさん 「モテモテじゃないか」 「でも換金は出来ねえからな」 「こういうのはお金には替えられない気持ちとして喜ぶべきだぞ」 「勿論嬉しいけどさ…」 「?どうしたんだサン」 「ん?どうかしたかい?…というかアイツ等どうした?」 元スカル団の雇われ二人がなんかグスグス泣いてら

9 21/02/13(土)23:07:29 No.774512837

「あんだぁ?チョコ貰えなくて僻んでんのか?」 「逆だ逆」「今日配達の最中に子どもからチョコ貰ったんだよ『運び屋さんありがとう』って、それが連中としては本当に嬉しかったらしくてな」 『運び屋さん』って呼びに一瞬ドキッとする、いや子どもって言ってからお客さんじゃねえよな 「それは良かったじゃねえか」「確かにアイツ等にとっちゃ感激ものかもな」 「ああ、これでもっと仕事に精出してくれるといいな」 「今日もまだまだあるからな、午後も頼んだぜカキさん」 「うむ、マオとムーンの薬膳チョコを食べてスタミナを回復しておくか」 「だな……ん?」 「え?」 「…お客さんのチョコ?」 「あ、ああ…今朝ムーンからキャプテンのみなさんへって渡されたが」 「…………」 「もしかして、貰ってないのか」 「……オレっちなんかお客さん怒らせるようなことしたっけ…?」 だんだんと自信がなくなってきた

10 21/02/13(土)23:07:53 No.774512998

==== 「オレも貰ったよー!ムーンからチョコ」「もう食べちゃったけど」 「じゃあやっぱり貰ってないのオレっちだけかな…」 ハウも貰ってるらしい、いよいよ自分が何しでかしたのか不安になってきた 「……『本命』ってやつじゃねえのか」 「へっ?」 「特別枠として渡したいから、敢えてまだ渡してない…そういう話じゃねえのか」 グズマが調理器具を片付けながら答える 「『本命』……って何?」 「……はぁ」 「好きな人に上げるのが本命で、お世話になってる人に渡すのが義理だよー、たしか」 「へえ、そんなのがあんのか」「…え?お客さんがってこと?いやいやいや」 お客さんの「本命」がオレっちってことは、お客さんが好きなひとは、オレっち…まっさか~~~~ハハハ 「ケッ…まあ大方何か怒らせるようなことでもしたんじゃねえのか」 そっちの可能性の方が高えんだよなぁ

11 21/02/13(土)23:09:26 No.774514182

まあいいや、取り敢えずチョコのことは忘れて仕事をさっさと済ませねえと そうだよ、大体欲しいなんて言ってねえし、お客さんからくれるなんて一言も聞いてねえし 周りの連中が勝手に盛り上がってるだけだよな チョコよりはお金!よし、張り切っていくか! そうやって気持ちを切り替える一方、胸の奥がモヤモヤするのはどうしても拭いきれなかった

12 21/02/13(土)23:09:43 No.774514445

「ふい~、なんとか終わったな」 『こちらも無事完了だ、お疲れ様』 「ああ、お疲れさん」「今日はこのまま解散でいいかい?」 『了解だ では』 今日の仕事がひと段落したのは、夕暮れ時になってからだった 「さて、家に帰るとするかな」 そう思いつつ、なんとなくお客さんの家の近くの道をウロウロする 別に深い意味はないけど、小一時間くらいウロウロしたあと、諦めて帰宅の途についた ライドスーツから戻ると、大量のチョコがカバンにぎっしり入っており、少し重い 『こういうのはお金には替えられない気持ちとして喜ぶべきだぞ』 カキさんの言葉を思い出す 貰ったチョコの多さは、それだけオレっちが世話になってる人が多いんだなってことを実感させてくれる 1億円稼ぎに必死だった昔に比べて、今は気持ちにどこか余裕が出来たのか、周りの人たちのことにも気を配れるようになった…気がする多分

13 画像ファイル名:1613225487242.png 21/02/13(土)23:11:27 No.774516064

だから、チョコを貰えたことは嬉しいんだ これだけたくさんの人がオレっちのことを労ってくれてるんだってことが分かったからさ オレっちは一人じゃないってことが伝わってくるから ……だけどさ、だからこそさ 「チョコ…欲しかったなぁ」 「どうしたの?」

14 21/02/13(土)23:11:44 No.774516327

不意に声を掛けられてギョッとする 「おわッ…お、お客さん」 「こんにちは、今日は二度目ね」 「どうしたんだい?」 「なんだか浮かない表情をして歩いてたからどうしたのかなって」 そんな顔してたのか 「あ、いや…お客さんもなんかの帰りかい」 オレっちの家の近くだけど、ここら辺でなんか用事あったのかな 「ちょっと野暮用でね」「もし良かったら、ひとつお仕事お願いしても良い?」 「なんだい?」 「わたしの家まで運んでほしいの」 「何をだい?」 「わたしを」

15 21/02/13(土)23:12:07 No.774516629

==== ケンタウロスに乗って元来た道を逆走する 「そういえば、はじめて出会ったとき以来ね」 「え?」 「こうして運び屋さんに運んでもらうの」 「ああ、そういやそうだな」 ビーチでナマコブシをぶつけたお詫びに、お客さんとロトムをククイ博士のとこまで運んだんだった だけど…っかしいな、前にお客さんを乗せて走った時はどうってことなかったのに、デートって言われてもなんとも思わなかったってのに 今はスゲエ緊張してる

16 21/02/13(土)23:12:24 No.774516863

「…身体、大きくなったわね」 「そ、そうかな」 「そろそろ身長も追い抜かれたかしら」 「あとで比べてみようか」 そんな他愛もない会話をしながら気を紛らわす …やっぱり機嫌は良さそうだし、オレっちを嫌がってる様子もない、だったら… 「…そういやさ、お客さん…」 「何?」 「…いや、なんでもねえ」 オレっちにはチョコねえのかい、って聞きたいけど、どうしてか聞けなかった …なんだかビックリするくらい返事を聞くのが怖くてさ …今日のオレっちはおかしい、バレンタインの変な空気に当てられたのかもしれねえ そんなことを考えてたら、早くもお客さんの家に到着した

17 21/02/13(土)23:12:40 No.774517062

「送ってくれてありがとうね運び屋さん」「お代は…」 「ああ、お代はいいよ」 この間もタダで治してくれたし、色々世話になってるし 「そう、じゃあお言葉に甘えようかしら」 「ああ、……」 「「………」」 「どうかした?」 「いや、じゃあ」 もしかして、家の中から持ってきてくれるんじゃ…そんな期待をしてたけど、違ったみたいだ ライドスーツを解いていざ帰ろうとする 「カバン、随分パンパンね、何が入ってるの?」 「ん、これはチョコがさ……今日バレンタインデーだから」 勇気を振り絞ってその名前を出す

18 21/02/13(土)23:13:06 No.774517375

「本命はあった?」 「え!?」 まさか向こうからそんな話題を振られるとは思ってなかった 「いやいや、全部仕事のお礼に貰った奴だしさ」 「それは残念だったわね」 「いや…別に」 そんな会話をしながら、ライドギアをポケットにしまう …?……ん?あんだこりゃ? 四角いゴツゴツしたものがポケットの中に入っていることに気付く 取り出してみると、リボンのついた赤色の包装紙に包まえれた、見覚えのない箱が……いつのまに…もしかして!? 「クスクス…運び屋さんいつ気付くかなって」 そう言って笑うお客さん

19 21/02/13(土)23:13:19 No.774517546

「…てことは、これ……」 「ええ、わたしからあなたへのチョコよ」 「…オレっちにくれるの?」 「当然です」 一瞬茫然としたあと、さっきまでのモヤモヤが嘘みたいに晴れていき、喜びが身体いっぱいに広がっていく 「サンキューお客さん!!!」 「そ、そんなに喜ばなくても…」 「もうオレっちだけ貰えないのかと思ってたぜ……」 「ごめんなさい、ちょっと色々あってね」 「色々って?」 「…なんだと思う?」 少し艶っぽい表情でそう問いかけてくるお客さんに、思わずドキッとする 「え………」

20 21/02/13(土)23:13:33 No.774517672

『特別枠として渡したいから、敢えてまだ渡してない…そういう話じゃねえのか』 『本命はあった?』 「えっと、『本命だから』…なんちゃって」 浮ついた気持ちもあってか、ほんの軽い冗談の気持ちで言ったつもりだった 「………」 あれ、お客さん?なんで黙るんだ…?え?え?? 「もしかして…本当に…?」 「それは帰ってからのお楽しみです」 ニコーっと笑うお客さん そ、そんなぁ! 「もし本命だったら、どうする?」 「ええ!?えっと、あの…あうあうあう…」 そんなオレっちの様子をお客さんはクスクスと笑いながら、家の中に入っていく 「おやすみなさい」 優しい笑みを浮かべながら、パタンと扉が閉められた

21 21/02/13(土)23:14:09 No.774518009

帰宅して早速包装を解く、と中には手紙が入ってた 『運び屋さんへ お仕事いつもお疲れさま。 目標に向かって頑張っているあなたの姿を応援しています。 だけど、あんまり無茶しちゃだめよ。身体は資本!そっちっも大切にしなきゃ。 もし怪我や病気をしたときはいつでもわたしを訪ねてきてね。勿論無料よ。 チョコレートには疲労回復に効果のあるきのみを混ぜてあります。 それを食べて元気にお仕事頑張ってください。 いつもありがとう。これからもよろしくね。                       ムーンより』 「……」 短い手紙だけど、凄く胸の当たりがアツくなる なんていうか、誰かから貰う手紙って、こんなにも嬉しいんだなって

22 21/02/13(土)23:14:30 No.774518233

「およ?」 よく見ると、一筆箋が入ってた 『月読の、光りに来ませ、あしひきの、山きへなりて、遠からなくに』 んんん?どういう意味だ??全然分かんねえ…お客さん、どういうつもりでこれを挟んだんだろう? こっちも気になるが、まずがチョコレートを確認しねえと…

23 21/02/13(土)23:14:58 No.774518528

蓋を開けると、中には小さなチョコが四つ入ってた それは、太陽と月と星と、ハート ハート…それはどういう意味なんだ?どういう意味で入れたんだよお客さん?? 『もし本命だったら、どうする?』 どうするって…どうすりゃいいんだよ モヤモヤした気持ちが再び体内を席巻する けど日中は重いヘドロみたいなもんが胃の中に沈殿している感じだった いまは全身の血液が活発に全身を走り回って、そのせいで心臓まわりが痛いような感じ この違いは何なんだろうな…? 色んな疑問が沸きすぎて頭がショートしてきた とりあえず食っちまおうと手を伸ばすけど… なんだか勿体なくて手が付けられない…でも食べてって書いてあるし…けど……

24 21/02/13(土)23:15:18 No.774518759

あーもう駄目だ埒が明かねえ、疲れてるしさっさと寝よう…… そう思って布団にくるまって早2時間、全然寝付けねえ いくら目を瞑っても、その笑顔が瞼の裏にくっついて離れない いくら呼吸を整えても、胸のあたりの苦しみが取れない 「こいつはなんかの病気かもしれねえな…」 だったら…と通信機に手を伸ばす もう22時だし流石に…とは思うけど、『いつでも尋ねてきてね』って書いてあったしさ… でも治るのか…?むしろ悪化しねえかな…?なんとなくそんな気がする けど………ハァ…なにやってんだオレっちは……………

25 21/02/13(土)23:15:40 No.774518982

正直にいうよ どうしても声が聴きたくて、顔がみたくて仕方がないんだよ 今すぐ逢いたくて堪らないんだよ だから通信機のボタンを押す この病気を治してもらうためにな おわり

26 <a href="mailto:s">21/02/13(土)23:15:50</a> [s] No.774519106

以上です

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