虹裏img歴史資料館

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21/02/07(日)05:59:22 この怪... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1612645162262.jpg 21/02/07(日)05:59:22 No.772386319

この怪文書は社会に疲れたきりたんと、結月ゆかりをてきとーに書いた怪文書です 前回のあらすじ 月曜日に読む本と、電子辞書を買いました。

1 21/02/07(日)06:00:16 No.772386366

それから少し後、私達は夕飯を食べてお風呂に入りました。 月曜日の事を考えると少し憂鬱ですが、今までほどではありません。 その事を考えると、ゆかりさんを引き取ったのは正解だったのかもしれません。 「ねえ、ゆかりさん」 お風呂から上がって、二人でリビングでミルクティーを飲みながら適当な話をしている最中、私はゆかりさんに語りかけます。 「なんです、きりたん」 そういう彼女は肩にタオルを載せながら、下着姿のままコップを両手で掴み紅茶をコクリと一口飲んだ後、私の顔をマジマジと見ました。 「そう言えば、何で私と結婚してもいい、なんて思ってしまったんです?」 私がそう言うと、ゆかりさんはぼんやりと私の顔を見ながら言いました。 「うーん……何となく、優しそうだったから、かな」

2 21/02/07(日)06:00:57 No.772386398

何となくかぁ、そんな事を思いながら紅茶を飲みます。 とは言え、あの日は初対面でしたし、逆に別の印象だったらちょっと怖かったかもしれない。 「そうですか、まあそういうものなんですかね」 私はそう言いながら、テーブルの上の紅茶を飲み干します。 時計を見るとそろそろ寝るには良い時間です、私は椅子を引いて立ち上がるとあくびを一つ零しました。 「そろそろ寝ようか」 「はい、そうですね」 気を利かせて私に語りかけてきたゆかりさんに相槌を返し、私達は並んで歯を磨き今日も布団に潜りながらゆかりさんが私にキスをします。 多分、母親がゆかりさんによくキスをして上げてたんだろうな、そんな事を思いつつ瞳を閉じて眠りにつきます。 ゆかりさんも小さくあくびをすると、私の耳に言葉を耳打ちして目を閉じました。

3 21/02/07(日)06:02:11 No.772386470

「おやすみなさい、きりたん」 「おやすみなさい、ゆかりさん」 ゆかりさんの少し痩けた胸に耳を押し付けると、とくん、とくんと心音が聞こえるのが心地よい。 微かに香る花のような甘い匂いの中、私は静かに寝息を立てた。 ──── 耳元で騒ぐピピピという音に、私が目を覚ますとゆかりさんの腕が私に強く絡む。 ああ、朝かそんな事を思いつつ、私に絡む腕の感触に私は不思議そうな顔をしつつ口を開く。 「どうしたんですか、ゆかりさん」

4 21/02/07(日)06:03:34 No.772386533

私がそう言うと、ゆかりさんの体が少しだけ跳ねる。 「え、あ、いや、何でも……」 そう言って少しだけ恥ずかしそうな顔をする彼女を見ながら、目覚まし時計のアラームを消しゴソゴソと起き上がる。 今の時間は朝の7時、窓のカーテンを開くと明るくなりつつある街の風景が目に飛び込む。 「……もしかして、アラームの音苦手でしたか?」 私がそう言うと、彼女はただ苦笑いしながら首を横に振る。 「ううん、ちょっと驚いただけ」 私は彼女にそうですか、と言葉を返し静かに外を見る。 恐らく……嘘だろう、だが彼女が嘘を付いている場合はまだなにか理由がある筈。 「それじゃあ、朝ごはんを食べて朝の支度を初めましょう」

5 21/02/07(日)06:04:28 No.772386566

そう言って、にこりと笑うと彼女も目を瞬かせながら小さく返事を返した。 それから昨晩のように並んで歯を磨き、順番に顔を洗います。 何事もないかのようにゆかりさんがご飯を作り、ふたりで一緒の机に就いていただきます、と両手を合わせます。 「そうだ、ゆかりさん困ったことがあったら、私の携帯に電話とかメールしてくださいね」 そう言って、私がスマホを取り出すと彼女は暫くぼぅっとしていたのか、少しだけ驚いた顔をしてこちらに向き直ります。 「あ、う、うん、分かった」 私がスマホのアドレス帳を見せて、彼女のPHSに電話番号を登録したのを見つつまた食パンを齧ります。 相対する彼女は今までに無いほど憂鬱げで、何かを考え込んでいるようでした。 「……時計のアラーム、変えたほうが良いですかね」 私がぽつりというと、彼女は少し驚いたような顔をしつつ口を開きます。

6 21/02/07(日)06:05:36 No.772386614

「あ、朝のやつは、大丈夫だから」 「……そうですか、ただもし何か抱えてることがあったら、何時でも良いですから言ってくださいね」 私がそう言うと、彼女は静かに首を縦に振りまたパンを齧りながらなにか考えに没頭しています。 今はそっとしておいたほうが良いかもしれません、ただ余りに長く続くようなら……そんな事を考えながら、私は牛乳でパンを流し込みました。 私は食べ終えた食器を流しに置いて、軽く水で流した後シャツとスーツを着込み、忘れ物が無いかを確認して家を出る準備を整えました。 何時も私より早く食べ終えるゆかりさんは、今日は私が衣服を整えた頃漸くご飯を食べ終え、食器を洗い始めます。 「それじゃあ、ゆかりさん行ってきます」 そう言って洗い終えた食器を乾燥棚に並べながら、ゆかりさんに挨拶をすると、ゆかりさんがこちらを向いてキスをしました。 何時ものような軽く触れるだけのキスではなく、深く確かめるようなキス。 それから私から離れると、ゆかりさんも私に挨拶をして私が玄関から出るのを見送ってくれました。

7 21/02/07(日)06:07:57 No.772386724

「……そう言えば、ゆかりさん用の寝間着を買わないといけませんね」 そんな事を思ったのは満員電車に乗ってから、私はゆかりさんのPHSに一本Cメールを送ると死んだ顔で立ち並ぶスーツ姿の人々と同化します。 それに、携帯とかも買ってあげたほうが良いのかな、なんて思いつつ私はポッケからイヤホンを取り出し音楽を鳴らし始めました。 家から出ると、たった二日ほどだったはずなのに、ゆかりさんが近くに居ないことに少し違和感を覚えます。 思ってたよりも、早く馴染めた事に安堵するべきか、それとも思ってたよりも人に依存する質だったのか。 兎に角、家に帰ったら誰かが居るというのは安心するものです。 そんな事を考えながら、私は会社に向かって進み続けるのでした。 ────

8 21/02/07(日)06:09:02 No.772386767

久しぶりにお母さんの夢をみたなぁ。 私はきりたんを会社に送り出した後も、そんな事をずっと考えていました。 体が人一倍丈夫というわけではなかったと思う、だけどお母さんはお父さんが亡くなってからも暫く私を育てるため頑張っていました。 頑張って、頑張ってそれでも足りなくって私も学校に行かずにアルバイトを始めて。 お母さん、あんまり無理しないでね、なんて言っても笑顔で笑うだけ。 お母さんが言うのは何時も私の話ばかり、ゆかりはいい人を見つけて幸せになるのですよ、それだけ。 小学校卒業してからずっとアルバイトの毎日で、そんな人の心配ばかりをしていた母は床の間でぽっくり息絶えていた。 何が原因だったのか、今でもわからないけどお医者様が私を見た後、何とも言えない顔をしていた事だけは覚えています。 それから市役所で簡素な葬儀をお願いして、小さくなった母の入った骨壷を共同墓地に収めてそれっきり。 毎日仕事をして、帰ってきて眠って、今もお母さんが生きてたらななんて時々思います。

9 21/02/07(日)06:10:05 No.772386815

私は冷蔵庫の食材を見て、お昼は簡単にパンだけで良いかななんて思いつつ、リビングに腰掛けました。 「お母さんは、幸せだったのかな」 最近、私を拾って結婚してくれたきりたんは時折、私の顔をみて時折難しい顔をします。 その時によく、幸せにしてあげる、と言いますが私はご飯を食べて温かい布団とお風呂を用意してくれるきりたんがいるお陰で、何となく幸せだと思いました。 お母さんも、よく私に幸せにおなりと言いました。 そう考えると、結婚というのはお母さんみたいな人を見つけるものだったのでしょうか。 私は学校にも行っていませんし、馬鹿だからあまり難しい事は分かりません。 けど、ぼんやり思い出せることは母は何時も、私の頭を撫でながら幸せそうな顔をしていました。 『ゆかり、苦労を掛けてすまないね』 私がアルバイトから帰ると、お母さんがそう言って私にお帰りと言った後に決まったように同じ言葉を言います。

10 21/02/07(日)06:11:12 No.772386864

『ううん、大丈夫』 そう言って私が母に近寄ると、しばしば母の荒れた手が頬をゆっくりと撫で回しました。 『強い子ね、ゆかりは』 そう言いながら母が作るスープと、ご飯は私の好物でした。 何年も続いた記憶と思い出、それなのに母が辛そうな顔をしていたのは見たことが有りません。 若くして死んでしまうほど辛い病気だったはずなのに。 「……幸せって、何だろう」 そんな事をぼんやりと思いながら、きりたんに買ってもらった本を手に取ります。 少しだけ面白い格好をしている婦人と、タイトルの文字が目に並びます。 手に注射器を持っているから、看護師さんかな、なんて思いつつタイトルの文字を調べて違っていたことに頭を傾げつつ本を開きます。

11 21/02/07(日)06:17:52 No.772387169

今日はここまで 今日は筆が乗ったので二日分です 五日目:su4578061.txt 六日目:su4578062.txt 今までのまとめ:su4578058.txt その代わり、夜は有りません 少しずつ、きりたんを追い詰めていこうねぇ……

12 21/02/07(日)06:27:50 No.772387676

毎日ありがたい… >少しずつ、きりたんを追い詰めていこうねぇ…… なごやかおねロリじゃなかったのかよお!

13 21/02/07(日)06:36:50 No.772388094

契約が生きてるPHS… ゆかりさん物持ちがいいな

14 21/02/07(日)06:43:49 No.772388443

いち早く読めたので早起きしてよかった!

15 21/02/07(日)06:44:41 No.772388493

ここからきりたんとゆかりさんに何かあったら俺が耐えられない ねぇ幸せになるんでしょうそうだと言ってください…

16 21/02/07(日)06:57:58 No.772389227

今までずっとッチーのログでしか見れてなかったから言うね 前のシリーズから読ませてもらってるけどとても面白くて好きだよ

17 21/02/07(日)07:03:21 No.772389544

きりたんとしては十分対価をもらっていてもゆかりさんと価値観を共有できていないから… 一方的な関係は段々辛くなってくるよね

18 <a href="mailto:s">21/02/07(日)07:46:48</a> [s] No.772392501

愛、愛は積み重ねですよ 積み重ねた愛の矛先の上できりたんは何時までタップダンス踊ってられるかな……?

19 21/02/07(日)08:05:05 No.772394082

今日初めて読んだけどいい雰囲気なので前のも読んでこよ…

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