21/01/03(日)23:56:47 コン、... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1609685807487.jpg 21/01/03(日)23:56:47 No.761813374
コン、コンと 晴れ渡る青空に、小気味良い音が木霊する 正月の風物詩、羽根つきの音だ 「それ、行くよー!えいっ!」 「なんの!ほら、お返しよ!」 「はー!こっちに来た!…え~い!」 「モフッ!負けないモフ~!」 …お正月。久々に集まったみらいちゃん、リコ、ことは、モフルンの4人は みんなで羽根つきを楽しんでいた
1 21/01/03(日)23:57:16 No.761813568
みらいちゃんとことは、リコとモフルン。2対2に分かれての、チーム戦だ 勝負は接戦を極めていた みらいちゃんが羽を打ち込めば、リコがそれを打ち返し ことはがそれを更に打ち返せば、今度はモフルンがそれを更に更に打ち返す ふたつのチームの戦力は拮抗しており、なかなか勝負はつかない 互いに決め手がないまま、このまま膠着状態が続くと思われていた …だが 「…キュアップ・ラパパ!はー!」 ことはの放った一打が、その拮抗を打ち壊す
2 21/01/03(日)23:57:47 No.761813756
ことはの打ち上げた羽根は、先程の時のそれと同じように、緩やかなカーブを描きながら、リコたちの陣地へと落ちていく 「甘いわ!その程度の速度なら…簡単に打ち返せる!」 自陣に迫るそれを打ち返すべく、リコが走る 緩やかな速度で落ちてくる羽根。それを打ち返すのは、一見容易に見えた …しかし。リコが羽根にめがけて、握りしめた羽子板を振りかぶった瞬間… 「…えっ!?」 …羽根が、まるでリコの羽子板から逃げるように、ぶわっ!っと再び空へと舞い上がる 羽根はまるで生き物のように縦横無尽に空を駆けまわると、やがてすごい勢いで急降下を始め、そしてそのまま地面へと、深々と突き刺さった 「はー♪やった~♪」 「すご~い!やったね、はーちゃん!」 向こうから聞こえてくることはとみらいちゃんの歓声を背中で受けながら リコは、信じられないものを見るような目で、地面に埋まる羽根をじっと見つめていた …さっきの“アレ”は、明らかに、まともな動きではない 羽根がそんなおかしな挙動をとる理由。…その答えは、リコには、ひとつしか思いつかなかった
3 21/01/03(日)23:58:23 No.761813970
「ちょっと!はーちゃん、今、魔法を使ったでしょ!?」 リコは手にした羽子板を放り投げると、怒りの表情を露に、つかつかと、ことはの前に歩み寄る …そう。先程の、明らかにおかしい羽根の動き。それは、ことはのかけた魔法によるものだったのだ 「はー!うん、使ったよ!」 リコに詰められたことはだったが。しかしことはは悪びれる素振りもなく、今、自分が魔法を使った事を認める 「うん、じゃないわよ!ダメじゃない、そんな事しちゃ!」 「はー?どうしてー?」 「…どうして、って…いい?、はーちゃん。羽根つきは、ナシマホウ界のスポーツなの。 だったらちゃんと、ナシマホウ界の流儀でやらないと。魔法を使うなんて、ルール違反よ」 「えー?でも、さっき見た羽根つきのルールブックには、『魔法を使ってはいけません』なんて、どこにも書いてなかったよ?」 「なっ…!はーちゃんったら、そんな屁理屈言って…!」
4 21/01/03(日)23:58:42 No.761814094
「まぁまぁ。まぁまぁ、リコ」 「まぁまぁモフ」 ことはの言葉に激昂し、更に熱くなるリコ そんなリコの前に、みらいちゃんとモフルンが割って入る 「まぁ。そんな細かい事言わなくてもさ。いいじゃない、楽しければ」 「そうモフ。今日は楽しいお正月モフ。そんな事くらいで目くじら立てちゃダメモフ」 「なぁっ!?あなたたちまでそんな事を言うの!? ダメよそんな!なぁなぁにして!はーちゃんの教育にも…」 「まぁまぁ、リコ」 「まぁまぁまぁモフ」 …リコをなだめすかしながら みらいちゃんがリコの肩を、がしっと握り モフルンがリコの両足を、むんずと掴んだ 「…とりあえず今のはリコの負けだから。罰ゲームね」
5 21/01/03(日)23:59:12 No.761814287
「はぁ!?」 みらいちゃんのその言葉を合図に、ことはが、先端に墨のべったりついた筆を持ってくる ことはから筆を受け取ったみらいちゃんは、それをリコの眼前にかざして見せた 「ちょ、待ちなさい、みらい!私、さっきのプレイにまだ納得したわけじゃ…!」 これから我が身に起こる悲劇を想像し、その表情を青ざめさせるリコ 何とかこの危機を脱しようと、懸命に、さっきのプレイはノーカンだったと訴えるリコだったが… …そんなリコの、必死の訴えも虚しく… 「…え~い♪」 …べちゃっ 「…“みらい 大好き♡”…と!」 …リコの顔には、敗者の証である落書きが、べったりと刻まれてしまう
6 21/01/03(日)23:59:37 No.761814446
「……」 …リコは拳をきつく握りしめ、怒りにその体を、ふるふると小さく震わせる ―…おかしい。納得できない。どうして私が、こんな目に…!― 「…よし!じゃあ、試合再開!この調子で、リコとモフルンの顔を墨で真っ黒にしちゃおう!」 「はー♪」 意気揚々と、自陣へ引き上げていくみらいちゃんとことはの背中をじっと見送りながら リコはその心にメラメラと、熱き炎を燃え上がらせていく リコはしゃがみ込み、地面にめり込んだ羽根を掘り出すと それを左手に、ぎゅっと強く握りこむ 「…それじゃあ今度は、こっちから行くわよ、みらい」 「おー!ばっちこーい!」 みらいちゃんとことはが、臨戦態勢を整えたのを確認してから リコは、手にしていた羽根を、ふわりと空に放り投げる
7 21/01/04(月)00:00:00 No.761814607
(…いいわ。そっちがその気なら…) そして落ちてきた羽根を、羽子板で打ち付ける瞬間… (こっちだって、やってやろうじゃない!!) リコは羽根に、魔法をかける 「…キュアップ・ラパパ!羽根よ、重くなりなさい!!」 リコの羽子板に弾かれて、羽根はぽーんと、空高くに舞い上がる 緩やかな放物線を描きながら、ゆっくりと、みらいちゃん達の陣地へと落下を始める羽根 「おーらい!おーらい!」 羽根の落下地点を予測したみらいちゃんが駆け出し、すかさずその傍へと陣取る 単純なコース。穏やかなスピード。一見それは、非常に打ち返しやすい攻撃に見えた 「…えいっ!」 羽根の落下に合わせ、みらいちゃんが、勢いよく羽子板を振りかぶる みらいちゃんは下から掬い上げるように、羽子板を羽根へと叩きつけた
8 21/01/04(月)00:00:19 No.761814737
…ところが 「…!?」 ドンピシャのタイミングで当てたにも拘らず。何故か羽根は、上空へと舞い上がらない それどころか、羽根はみらいちゃんの羽子板の上で、更に下まで落ちようと、力をかけてくる (な、何これ!?重っ…!?) 重い。とにかく重い こんな小さな羽根が、何故だかボウリングの玉のように、重く感じられる 何とか羽根を打ち返そうと試みるみらいちゃんだったが、しかしこの重さの前では、成す術もない 「…わぁっ!?」 …とうとう羽根は、みらいちゃんの羽子板ごと地面に落下し その際バランスを崩したみらいちゃんは、つんのめり、派手にすっ転んでしまう
9 21/01/04(月)00:00:41 No.761814888
「…いたた」 強かに打ち付けたお尻をみらいちゃんが手でさすっていると、空から、高笑いが降ってくる みらいちゃんが顔を上げると、そこには、不敵な笑みを湛えたリコが立っていた 「ふっふ~ん!今度は私の勝ちね、みらい!」 みらいちゃんを見下ろしながら、けたけたと、愉し気に笑うリコ その様子からみらいちゃんは、先程の出来事がリコの魔法によるものであったことを瞬時に察する 「むー!何かおかしいと思ったら、やっぱりさっきの、リコの魔法だったんだね! ずるいよ、こんなの!」 みらいちゃんは立ち上がると、きっ!っとリコへ、非難の視線を向ける だがそんなみらいちゃんに、リコは「はぁ?」と呆れたような表情を見せた 「何言ってるのよ!先に仕掛けてきたのは、そっちでしょ!」
10 21/01/04(月)00:01:13 No.761815097
リコが再び、魔法を唱える すると、墨のたっぷりついた筆が、ふわりと、リコのもとへと飛んでくる 「…とりあえず、敗者には罰ゲームよね?」 「わぁ!ちょ、ちょっと待って、リコ!」 「問答無用よ!…えいっ♪」 …べちゃっ 逃げる間もなく。リコの手にした筆が、みらいちゃんの顔へと突き立てられる 「…“リコ 愛してる♡”…と。ふふ、なかなかいい顔になったじゃない、みらい」 敗者の証を刻まれたみらいちゃんの顔を見て、満足気に頷いて見せるリコ それを見てみらいちゃんが、怒りにわなわなと肩を震わせる 「むむー!ひどいよ、リコ!あんなズルしておいて、有無を言わさず罰ゲームなんて!」 「だから!それはそっちが先にやってきた事でしょ!」
11 21/01/04(月)00:01:37 No.761815269
ある種理不尽ともとれるみらいちゃんの言葉に、リコが吼える だがみらいちゃんも、その胸に憤懣やるかたない思いを抱えていた みらいちゃんは地面に転がった自分の羽子板を拾い上げると、それを握りしめながら、きっ!っとリコを睨みつける 「…じゃあ。いいんだね、ここからは。魔法を使っても!」 その言葉に、リコはカッ!と目を見開き、そして手にしていた羽子板をみらいちゃんへと突き付けた 「ええ、そうね。上等だわ、こうなったら、とことんやってやるわよ! あなた達の顔を墨で真っ黒にしてあげるから、覚悟しなさい!」 ふたりの瞳がメラメラと、激しく燃え上がる 負けず嫌いな所があるリコと、ちょっぴり頑固な所があるみらいちゃん そんなふたりの性分が悪い方に噛み合い、この勝負、最早引くに引けない所まできてしまっていた
12 21/01/04(月)00:02:00 No.761815418
長い睨み合いの末、みらいちゃんとリコは自分の陣地へと戻ると 羽子板を片手に、臨戦態勢を整える 「行くよ、はーちゃん!この勝負、絶対勝とうね!」 「はー!うん!私も頑張るー!」 …片や心に、炎を燃やし 「行くわよ、モフルン!私たちの実力、見せてあげましょう!」 「…はぁ。リコもみらいも、大人げないモフ…」 …片や瞳に、闘志を湛え 今、熱い勝負の火蓋が切られようとしていた…
13 21/01/04(月)00:02:20 No.761815535
こうして始まった、魔法ありのエクストリーム羽根つきは大いに盛り上がり 4人の顔が墨で真っ黒になるまで勝負は続けられた なんだかんだで、正月の楽しい思い出ができた、リコとみらいちゃんとことはとモフルンなのであった…