虹裏img歴史資料館

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20/12/22(火)20:53:30 ブリリ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1608638010405.jpg 20/12/22(火)20:53:30 No.757696213

ブリリア泥 https://seesaawiki.jp/kagemiya/ https://zawazawa.jp/kagemiya/

1 20/12/22(火)20:55:17 No.757696977

「おや、スヴェータじゃないか。こんにちわ」 「まあホロシシィお姉様先生、御機嫌よう。…寮に何か御用でしたの?」 寮へと戻ってきたスヴェトラーナは珍しい人物の来訪に小首をかしげた。 玄関にはすれ違いで出ていこうとするホロシシィの姿があったのだ。 ローブ姿の"魔女"はさも力仕事でもしたかのように自分の肩を揉んだ。 「ちょっとした保守点検といったところかな。あまり気にしないでいいよ。  そう言うスヴェータこそ今日は講義中に気もそぞろといった様子だったじゃないか。どうしたのかな」 「がう、申し訳ありませんわ。でもホロシシィお姉様先生ならご存知かもしれませんわね」 ぽん、と手を叩くスヴェトラーナ。今度はホロシシィが首を傾ける番だった。 「ペトラお姉様をご存知ありません?  あのお方は寝坊助ですけれど講義には必ず出席しますの。でも今日は欠席していて…」 「ああ…あの子なら今日は休みだよ。体調を崩している…と言うべきかな」 「体調を…?なんてこと!気付かないなんてスヴェトラーナのお馬鹿!」 聞いた途端、突然スヴェトラーナが血相を変えた。 こうしてはいられないとばかりにホロシシィの目の前で踵を返す。

2 20/12/22(火)20:55:28 No.757697061

「失礼しますわホロシシィお姉様先生!スヴェトラーナはペトラお姉様の看病をして差し上げないと!」 「あっ、おいおいちょっと待っ…いや、なんでもないよ」 呼び止めかけたホロシシィは途中で口をつぐんだ。 それでは、とスヴェトラーナが一礼して早足で寮の廊下の奥へと消えていく。 その背を見送りながらホロシシィはくすりと妖しく微笑んだ。 「なるほど、なるほど。あの竜の娘がね。悪くないぞぅ。全く悪くない。  さぁて、"あんな"ふうになってるペトラを前にして君はどう思うのかな…?」 スヴェトラーナは一目散だった。2階の角部屋であるペトラの部屋へと急いだ。 「ペトラお姉様!スヴェトラーナですわ。失礼しま…あら?」 ノックをしたスヴェトラーナがドアノブを押そうとしたが、扉はびくとも動かない。 ペトラが中にいるのなら施錠はされていないはずなのに。 仕方無しにスヴェトラーナは"匂い"を嗅いだ。留守ではない。中にペトラはいる。 ただいつもと香りが違う。変な匂いが混じっている。何か…嫌な感じだ。 吸い込むだけで頭がくらくらとしてきそうな、思考が霞がかってぼんやりとしてくるような───べったりと濡れた魔的な甘さ。

3 20/12/22(火)20:55:38 No.757697127

…熱心に嗅ぐとマズいとスヴェトラーナの本能が伝えていた。だってこれを嗅いでいると…。 ───あの柔肌を滅茶苦茶にして、貪りたくなる。 「っ…何を考えていますの、わたくしは」 違う。スヴェトラーナが思ったのではない。そう思わされた、という不快感がある。 かぶりをぶんぶん振ってそれを追い出したスヴェトラーナは、ふといつの間にか扉越しに気配があるのを感じ取った。 「ペトラお姉様?」 「…すみません…今日は…帰って、もらえません…か…」 ペトラの返事は明らかに普通ではなかった。 ぜぇぜぇと深い鈍痛を堪えるかのような不揃いの呼吸。ひゅうひゅうと喉が潰れているかのような掠れた声。 これがただの体調不良であるものか。スヴェトラーナの心配は最高潮に達した。 「いけませんわ!どう考えてもペトラお姉様はとても苦しんでいます。  スヴェトラーナをお側に置いてください。介抱させてくださいませ!」 「…いえ…本当に…お願い、します…ひとりに…させてください…お願い、します…」 必死さが滲む声だったが、スヴェトラーナの耳には入っていなかった。 ペトラを助けてあげなければといういつもの世話焼き癖に火がついていた。

4 20/12/22(火)20:55:50 No.757697196

「いいえ!ペトラお姉様が鍵を固く締めるというなら外からベランダへ飛び込んででも、」 「来ないでぇッッ!!」 だから、扉越しに聞いたペトラの物凄い剣幕にびっくりして呆然としてしまった。 いつも陰気に喋るペトラから初めて聞いた叫び声だった。 そこには凄まじい悲壮感が込められていて、そう、スヴェトラーナは…。 こんなに悲しそうな懇願を生まれて初めて聞いたのだ。 「お願いします…嫌われたくないんです…お願いします…見ないでください…こんな…私を…」 声は殆ど涙混じりだった。へたり込んでいるのが扉越しにも分かった。 ぱくぱくと口を開閉したスヴェトラーナはやがてどうにか言葉を絞り出した。 「…わ、分かりましたわ…ならスヴェトラーナはこの扉の前に座ってますの…それならいいでしょう…?」 返事は無かった。せめて一緒にいてあげたいという気持ちだった。 嗚咽と荒い息遣いと時折響く湿った何かの水音。扉の向こうでペトラが死にそうなくらい苦しんでいる。 だんだんスヴェトラーナは泣けてきた。衝撃と、動揺と、自分への情けなさで。 その日の夜も、ずっとスヴェトラーナの耳にはあの啜り泣きの声がこびり着いて離れなかった。

5 20/12/22(火)21:49:55 No.757717968

これは竜が攻略している…?

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