虹裏img歴史資料館

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20/11/28(土)13:50:00 泥りが... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1606539000532.jpg 20/11/28(土)13:50:00 No.750220651

泥りがとう https://seesaawiki.jp/kagemiya/ https://zawazawa.jp/kagemiya/

1 20/11/28(土)13:59:14 No.750222928

泥にちは

2 20/11/28(土)14:00:35 No.750223273

泥ばんは

3 20/11/28(土)14:13:56 No.750226326

魔法の泥葉で

4 20/11/28(土)14:26:21 No.750229193

それはくににとって完全に未体験の部屋だった。 足を踏み入れた瞬間に、自分がそこにいるべきかどうか悩んでしまうほどだった。調度品のひとつひとつが高級であることを厳かに誇っているようだ。 間取りは一緒なのに、箪笥だとか棚だとか、ちょっとした小物さえも贅を尽くしたものであることが幼心にも感じ取れるくらいだった。 部屋に案内した張本人は何でもないことのように奥へと進み、振り返ってくにをベッドへと誘う。 「さあ、どうぞ。落ち着かないかもしれませんが、どうか寛いでください」 「は、はひっ!よろしくお願いしますっ!」 くにはつい畏まってしまい、その場でぺこりと頭を下げた。 だって雨萱は中国の高貴なお姫様なのだ。くにはその想像をまだ捨てきれていなかった。それほど雨萱は桁外れに美しい人だった。 事の始まりは単純だ。くにが降霊術の授業を受けたことからだ。 悪霊を呼び出すその儀式においてくには呼び出される悪霊へ大層恐怖心を抱いてしまった。どれもおどろおどろしい姿をしているのだもの。 脳裏に焼き付いたそれはしつこく脳裏に絡みつき、くにの眠りを妨げたのだった。 無性に夜の闇が怖かった。目は冴えるばかりだった。

5 20/11/28(土)14:26:33 No.750229240

眠らなければと念じるほど余計に眠れない。 ふと思いついた。温めた牛乳を飲むのは安眠に効くとか聞いたことがある。でも真っ暗な寮の階段を上り下りしなければならない。 くには勇気を振り絞った。自分の想像が生み出す邪霊へ必死で抗った。 自分の部屋を抜け出し、闇に満ちた廊下を歩んで食堂へと向かった。 どうにか階段ひとつを降りた時、突然横合いから声をかけられて「ぴぃ」と小鳥のような悲鳴をあげるまでよく頑張ったと思う。 暗闇の中からくっきりと輪郭を伴って現れたのはあのお姫様だった。 ひらひらとしたまるで羽のような服を着ているものだから、まるで古いお城に出る幽霊みたいに見えたのは内緒だ。 雨萱は足が竦んでしまったくにの手を握り食堂までついてきてくれた。 ホットミルクを口にするのも付き合ってくれたし、恐怖を告白したら一緒に寝ますかと優しく提案してくれた。 遠慮する気持ちがあったはずなのに気がついたらくには首を縦に振っていた。 「そ、その。すみませんユィお姉様。突然こんな…」 「いいえ。分かります。怖いお話を聞かされた後にひとりぼっちで眠るのは恐ろしいことです」 そう言って雨萱は穏やかに微笑んでくれた。

6 20/11/28(土)14:26:47 No.750229306

おやすみなさいという一言と共にランプは消された。 カーテンも窓にかかり、部屋の中に残った光は何ひとつない。暗闇だけがあった。 雲で出来ているようなふかふかの布団に包まれながらくには胸をときめかせていた。 夢の中にいるみたいだ。横で眠っているお姫様はやっぱりとても暖かくて、くにへ親切にしてくれる。 本当に幻なんじゃないだろうか。くには布団の中で腕を滑らせ、こっそりと探ってみた。 伸ばした指先にこつんと何かが当たった。するとそれは靭やかに動いてくにの手をそっと包み込んだ。 「まだ怖いですか?」 「う、ううん。だ、大丈夫です。でも…」 ほんの少しだけ雨萱の手を握る力を強くすると、くすりと小さな笑い声が闇を通して微かに聞こえた。 雨萱が少しだけ擦り寄ってきてくれた。清涼な甘い香りが強くなった。 わたしなんかがこんなに綺麗で特別な人からたくさん優しくしてもらっていいのだろうか、という疑問がくにの胸中をよぎる。 でもだからといって遠慮が出来ないほど雨萱はくににとって魅力的なお姉さんだった。 心の中で恐怖を安心感が見る見るうちに追い払っていき、やがてくには雨萱の肩を枕にして小さな寝息を立てていた。

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