虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

20/10/20(火)00:05:17 No.738486876

開けた窓から入る風が肌寒い。だが今日は文を書くのに冴えて居たかったから、そのままにしておいた。 自然の音が、匂いが。インスピレーションを与えてくれる気がするのだ。 だがその日は如何な巡り合わせか、奇怪な事が起こった。 風の中に声がする。けお、けおと。風に乗って匂いがする。腐り果てた土の匂いが。 ぴるす君の影。迷って出たとはこのことか。あの世への道行きを誤り、肉体すらどこかに置き忘れ、質量を感じさせぬ無音の足音で我が部屋に忍び入る。そこに君の望むものは無いのに。 ｸﾝﾘﾆﾝｻﾝ ｸﾝﾘｹﾝ ｾｲｷﾞﾜﾏｹﾅｲ ｾﾞｯﾀｲﾏｹﾅｲ 意味の分からぬ言葉の中、一言だけはっきりと聞こえた音声があった。 「助けて。」 お前は影。哀れな影。人の中にある本音と建前の歪んだ融合、その曇った鏡像。お前はもういない。残っているのは誰かが語るお前の影だけだ。 窓を閉め部屋の蛍光灯を明るく照らす。それだけで掻き消えた。 無無明亦無無明尽、か。ありもしない苦痛など、当然救い得るはずもない。ただ空に消えるだけだ。 窓はもう閉じた。明日は本物のぴるす君に見得を切り八つに割こう。醜い華を思い床に就いた。