20/10/11(日)23:37:16 ホプマ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1602427036952.png 20/10/11(日)23:37:16 No.736065556
ホプマリ後日談の続き su4271846.txt 今日で終わらせます
1 20/10/11(日)23:37:26 No.736065642
・・・・・ 「お前は、オレ……の、親、友……だもの、な」 そう言い残しカウンターに突っ伏したホップ君を、私はじっと見下ろす。 「親友、か」 呟いた言葉にどんな感情が乗っていたのか、私にはわからなかった。 ・・・・・ 「っ……っと」 荷物置き場代わりにもう一部屋借りといて正解だった。 少なくとも、私の部屋にいたわけじゃないと分かればホップ君は安心するだろうから。 ぐったりとしたホップ君をなんとか部屋へと運び込みベッドに寝かせる。 「……ほんと、背伸びたよねホップ君」 初めてジムチャレンジに参加した時は私とそう変わらない背丈だったのに、今や頭一つぐらい余裕で超えられてしまった。 それだけの時間が過ぎてしまった。
2 20/10/11(日)23:37:36 No.736065719
「……思ってたより『効く』の早かったな」 出来ればもう少し彼と話していたかったけど仕方がない。 私はホップ君のポケットからスマホロトムを取り出し電源を落とす。 そして、彼を優しく揺すると、ゆっくりと目を覚ます。 「……ホップ君」 「ユ、ウリ……?」 「ごめんね」 どういう意味かと尋ねられる前に、私は命令する。 「――――カラマネロ」 待機させていたカラマネロがその姿を現し、無言でその体から怪しげな光を出す。 その光に当てられたホップ君は何も言葉を発することが出来ない。 私は彼の頬をそっとなでながら、そのままその瞳から意志が消えていくのを眺める。 そして、彼の体から力が抜けた。
3 20/10/11(日)23:37:47 No.736065798
「もういいよ。ごめんね。カラマネロ」 そう言うと、カラマネロは悲しそうな表情で私を見る。 「……あなたは悪くないよ。悪いのは、私」 そう言ってカラマネロをボールへと戻す。 その時のカラマネロはやっぱり、悲しそうで……心配するような眼で私を見ていた。 「……」 ホップ君を見下ろす。 瞳は開いたまま、だけどどこを見ているわけでもない虚ろな瞳。 「……っはぁ」 呼吸が早くなる。鼓動が強くなる。 今なら、まだ間に合う。今なら、まだ止められる。 ……でも。 「ごめんね、ホップ君」 言い訳のように呟いて、私は彼のシャツに手をかけた。
4 20/10/11(日)23:37:58 No.736065888
・・・・・ バスタオルを纏っただけのあられもない姿で、私は窓から夜空を眺める。 そして、スマホを取りだし操作する。 電話はコールが鳴った瞬間に繋がった。 「……」 『どこにいるの』 「何が?」 私がとぼけると、電話の向こうのマリィちゃんは怒りに満ちた声を出す。 『ホップはどこッ!?』 「……うるさいなぁ。そんな大声出さないでよ」 『ホップが行くって言ってたバーにあんたも、ホップも行ってない。一体どこにいるっ……!』 「ああ、やっぱり張ってたんだ。エール団の人にでも頼んでたの?」 『……なんの、こと』 白々しい。 相変わらずの小賢しさだね、なんて思っているとマリィちゃんが今にも泣き出しそうな震えた声を出す。
5 20/10/11(日)23:38:09 No.736065973
『ユウリっ……もう、もういいでしょっ……?』 「何が」 『あたしは、ホップの事が、好き』 舌打ちしそうになるのを必死で堪える。 『ホップも……あたしの事が好き、たい』 「……うん、知ってる」 忌々しいけど認める。ホップ君はマリィちゃんの事が好きだ。 大事で、大切で、大好きで、ずっと守りたい。そう思ってる。 それは、それだけは。間違いなかった。 『なら、もうホップの事は諦めてっ……ホップが知ったらきっと』 「知ったら、何?」 『ホップが……悲しむたい……そんなの、あんただって嫌でしょっ……?だから……』 すっと、血の気が引くのを感じた。 怒りを通り越し、ただただ冷静になる。
6 20/10/11(日)23:38:20 No.736066077
「……うん、そうだね。マリィちゃんの言う通りだよ。私も、ホップ君が悲しむ姿なんて見たくないよ」 『ならっ……!』 マリィちゃんの言う事は正しい。 ホップ君はきっと私のした事を知れば、もう私に笑顔なんて見せてくれなくなる。 だけど、 「……でもね―――――あなたにそれを言われると反吐が出る」 自分でも驚くくらい冷たくて怒りに満ちた声が出る。 何がホップが悲しむだ。何があんただって嫌でしょだ。 「私を騙してホップ君を奪ったやつが、正論吐かないでよ。被害者ぶらないでよ」 『っ……』 図星を突かれマリィちゃんは押し黙る。 そのぐらいの自覚はあったんだ。 「……それにね、私はもう選んだの」 そう、選んでしまった。
7 20/10/11(日)23:38:34 No.736066179
「ホップ君は悲しむだろうし、もう……私の前で笑ってくれなくなるだろうって」 そうなったらきっと私は身が引き裂かれるような思いをするだろう。 自分のしたことを後悔して、泣き叫ぶだろう……それでも。 「……それでも、私は……ホップ君が好きなの。ホップ君が、欲しいの」 『ユウリっ……お願い、考え直して?そんな事、そんな事ダメたい』 「なら、ホップ君と別れてくれる?」 『……』 マリィちゃんは、何も言わない。 「……だよね。知ってた。あなたはあの時からずっと口だけなんだもの」 この女はただ頼むばかりで、決して譲ろうとはしない。 そのくせ、他人の譲れないものを簡単に奪う。 あの時から何も変わってない。 『ユウリっ……!お願いっ……!お願い、します……』 きっと、目の前にいたらあの時のように土下座して許しを請うてるんだろう。 それほどまでにマリィちゃんの声は切羽詰まったものだった。
8 20/10/11(日)23:38:44 No.736066268
でも、今更そんな事で私の心は揺らいだりしない。だって、 「……ねぇマリィちゃん。ホップ君、何してると思う?」 『……え?』 「マリィちゃん……ホップ君はね、今私の部屋で寝てるよ」 視線の先、一糸まとわぬ姿のホップ君は小さく寝息を立てている。 「写真も、動画も撮ってある。見せてあげようか?」 嘘。万が一にでも外部に漏れる可能性を考えたら、そんなもの残すわけがない。 だけど、嘘なのはそれだけだ。 私は――――ホップ君を弄んだ。 意識の無い彼を、欲望のままに貪った。 夢にまでみた瞬間。だけど、下腹部に残る痛みが、それをどうしようもなく現実だと教えてくれる。 何かが軋む音が電話の向こうから聞こえる。 呼吸の音が、彼女の怒りを私に伝えてくる。
9 20/10/11(日)23:38:57 No.736066369
『ユウリッ……あんたッ!?』 「ホップ君の名誉のために言っておくけど、彼は何も知らないよ。私がちょっと『手間かけた』だけ」 ……最終的にはカラマネロに頼むことになったけど。 あの子には悪いことをしてしまった。今更良い人ぶるつもりなんて無いけれど、それでも。私を信じてついてきて来てくれた子を利用した事に胸が痛むのを止められない。 「だから、朝になれば何も知らず慌ててあなたに謝罪の電話でもかけるだろうね。その時は慣れないお酒で酔い潰れたって事にしてあげて?」 そう言った所で、納得できるわけないだろう、マリィちゃんは私の耳元でひたすら喚きたてる。 それにうんざりした私は、彼女に核心を告げる事にした。 「ていうかさマリィちゃん。あなた――――私がすることわかってたでしょ?」 『な、何のことっ……』 あくまでシラを切るマリィちゃん。でも、それに付き合う義理は無い。 「自分がした事と私の気持ちを知っていれば、ホップ君と二人でお酒を飲みたいなんてどいういう意味か分かるに決まってるでしょ?」 『違うっ……!私は、あんたを信頼してっ……』
10 20/10/11(日)23:39:11 No.736066515
……どの口が言うんだ。その信頼を裏切ったのは、他でもないあなたなのに。 「待ち合わせ場所に見張り付けてたのに?」 『っ……』 あ、否定しないんだ。さっきは違うって言ってたのに。 「私が何をするか知ってて、それでも彼を送り出した。見張りを付けてたのは何かって時に電話するタイミングでも図ってたのかな?」 まぁそんな事だろうと思ってたから直前になって本来の予定だったロンドロゼに場所を変更したんだけどね。 「そんなに嫌なら止めれば良かったのに。ホップ君言ってたよ?『オレは浮気なんて出来ない甲斐性無しだと思われているのか……?』って」 さっきまでの彼との幸せな時間を思い出して口元が綻ぶ。 そして……それを私が壊した事を思い出して表情が消える。 「マリィちゃんはさ、怖かったんだよね。私に全部暴露されるのが」
11 20/10/11(日)23:39:22 No.736066613
当然だろう。自分の所業を知られたら、ホップ君との幸せな生活は崩れ去る。 ホップ君はあの女を見放したりしないだろうけど、そこにあるのは二人が思い描いていた明るい未来とは程遠い、悲痛で、悲劇的なものになるだろう。 それを恐れるマリィちゃんの気持ちは察するに余りある。 何の関係も無い赤の他人なら同情してあげたかもしれない。 ……でも、私は当事者だ。 「私の機嫌を損ねて、ホップ君に洗いざらいぶちまけられたら、って思ったんだよね。ホップ君を引き留めて『どうしてダメなんだ?』って聞かれるのが怖かったんだよね」 彼がそんな事言うはず無いのに。 誰よりも何よりもマリィちゃんの事を考えているのに。 大好きな恋人すら心の底では信用出来てないマリィちゃんを心底哀れに思う。 『違う……違うッ!?』 マリィちゃんの声が焦りと動揺で揺れる。 「あなたは結局自分の事だけだね。あの時からそう。自分が傷つくのが怖くて、好きな人に悪いイメージを持たれたくなくて」
12 20/10/11(日)23:39:37 No.736066747
そう言って気づく。 もしかしてマリィちゃんが私に黙ってホップ君に近づいたのは、出し抜こうとしたんじゃなくて私に悪く思われたくなかったからなのか。 親友だと思っていたのは本当だったのか。 だとしたら――――本当に救えない。 「寛容な恋人ぶって、ただの保身じゃん。私は……ホップ君が来なくても何もしなかったのに」 彼が来なかったのならそれでも良かった。 その時はマリィちゃんやビート君も呼んで同期会とでも言ってまた集まるつもりだった。 ホップ君と、お酒でも交えて楽しくお喋りしたかったのは本心からだった。 だけど、ホップ君はやってきた。 マリィちゃんは危険だと分かっていたのに、ホップ君を送り出した。 「臆病風に吹かれたのはあなたもだね。まぁ、マリィちゃんはそれよりも酷いけど」 『何……が』 そうだろうね。あなたはちゃんと言葉にしなきゃわかろうとしないだろうね。 だから、私は告げる。
13 20/10/11(日)23:39:49 No.736066823
マリィちゃんの本心を。変わらない本性を。 「私のする事わかってたのに、自分の過去をバラされるのが怖くて、自分の恋人が恋敵の元へ行くのを見送った。マリィちゃん――――あなたは、私にホップ君を売ったんだよ」 ガラスにひびが入るような音がした。 それは、空耳だけど紛れもなく、マリィちゃんから出た音だった。 『違う……違うッ!?あたしはッ!?」』 「何が違うの?あんな真似してまで手に入れた恋人を、自分を守るために差し出した……一体、何が違うの?」 もちろん、マリィちゃんも私がここまで強硬な手段に出るとは思っていなかったのだろう。 だけど、それは危険なのをわかってホップ君を見送ったという事実を変えたりはしない。 『違う違う違うッ!?あたしはッ、本当にっ……ホップなら、大丈夫、だって……あんたが……そこまで、するだなんて……』 狼狽し、言い訳をまくしたてるマリィちゃんの姿をこの目で見られないのは本当に残念だ。 きっと、さぞかし無様なのだろうに。 「……くふっ」 その姿を想像していたら、思わず笑ってしまう。
14 20/10/11(日)23:40:00 No.736066908
それをマリィちゃんは聞いたのだろう。グダグダと述べていた言い訳を止め、今度は私に矛先を向けてくる。 『あんたがっ……あんただってッ!?いつまでもいつまでもいつまでも、ホップの事引きずってっ!?』 自分の事を棚に上げて責任転嫁。そんなところも変わってないんだね。 今更、そんな事で私が引くとでも思ってるのだろうか。 「そうだよ。だって、私の恋は終わってないから。もう、終われないから」 私の時は、止まったままだ。 全てを裏切られたあの日のまま、何も変われずにここにいる。 そんな自分の無様に思わず乾いた笑いが漏れる。 それを嘲られたとでも思ったのだろう。 『このッ……泥棒猫ッ!?』 マリィちゃんは喉が裂けるような声を出す。 泥棒猫。これまた懐かしい言葉だ。 私が、何度も何度もマリィちゃんにぶつけた言葉。
15 20/10/11(日)23:40:11 No.736066988
その度に私にはそんな事を言う資格は無いのだと思い知らされた。 だけど、 「……うん、そうだよ。私は泥棒猫」 今、その言葉は正しく使われた。 他人のモノを奪った私は、間違いなく泥棒の誹りに相応しい人間だ。 「あなたの恋人を奪いたくてしょうがない、ただの卑怯者」 あの日、私を罵倒したマリィちゃんに何も言い返せなかった。 それ以来ずっと抱えていた空虚な気持ち。それが満たされたような気がした。 何もできなかった私は、泥棒猫になる事が出来た。 『なんでっ……なんでそこまでっ……』 開き直ったのではなく、本心からそう思っているのが伝わったのだろう。 マリィちゃんは怯えているようだ。 信じられなくて、理解できなくて、私を恐れているようだ。
16 20/10/11(日)23:40:24 No.736067104
そうなったらもう、先ほどまでの威勢のよさはどこへ行ったのか。 電話から聞こえてくる声は、今にも消えそうなぐらい弱々しくなっていた。 『あたしが、悪かったからっ……騙して、悪かったから……全部、全部っ……あたしが悪かったからっ……』 今更な謝罪に私の心が揺れる事は無い。 でも、一つだけマリィちゃんに伝えたい事があった。 「……マリィちゃん、私はね。あなたがホップ君と結ばれたのは別に良いと思ってるの」 電話の向こうのマリィちゃんが小さく戸惑いの声を出す。 「ホップ君の気持ちはホップ君のもので、そのホップ君が好きになったのがあなたなら。それで良いと思ってた」 大好きだから。だから、彼の選んだ幸せを祝福したかった。 「でも……それならせめて、ホップ君に想いを伝えたかった」 例え叶わぬ恋であっても、それでも私の想いを知って欲しかった。
17 20/10/11(日)23:40:35 No.736067166
「フラれてもいい。受け入れてもらえなくてもいい。でも……ちゃんと、好きって伝えたかった」 ホップ君はきっと辛そうに唇をかみしめるだろう。 それでも、ちゃんと自分の大切な者のために私を振っただろう。 そうしたらきっと、私の恋は終わっていつかまた、別の誰かを好きになってただろう。 「私が遠征に行く前……ううん行ってる時、あなたがホップ君を好きだって言ってくれれば応援した。負けないよって強がりたかった」 それで、負けたっていい。そうなったら軽口でも叩きながら祝福して、一人になったら泣いて、それでも笑って二人の前途に幸ある事を願っただろう。 だって、 「私たちは、親友だったから」 ハロンを出て初めて出会った同性の友達。 一緒に競い合って、たくさん戦って、たくさん遊んだ。 マリィちゃんは私の、かけがえのない親友だった。
18 20/10/11(日)23:40:50 No.736067282
「でもそうはならなかった。あなたは、私に内緒でホップ君を手に入れた。たとえ裏切っていたとしても、せめて一言言って欲しかった」 ……そうか、やっとわかった。私は、ホップ君を奪われた事よりも、親友に裏切られた事が辛かったんだ。 涙が枯れるまで泣いたのは、喉から血が出るまで叫んだのは、親友の裏切りが何よりも悲しかったからなんだ。 「だから、マリィちゃん――――もう、遅いよ」 友情は確かにあった。信頼も確かにあった。 だけど、何もかも壊れた。 時間は巻き戻らない。やったことを無しにすることはできない。 それは、彼女も。私も。 あるいは私が違う選択肢を選んでいれば。マリィちゃんが別の選択肢を選んでいれば。 ここまで破滅的にならなかったかもしれない。 だけどもう、遅いんだ。 全部全部終わって、今はただの後日談なんだ。 私はもう、ホップ君への恋心を終わらせられない。 マリィちゃんとの友情を取り戻すことはできない。 もう、どうしようもないんだ。
19 20/10/11(日)23:41:16 No.736067452
沈黙が私たちを繋ぐ。どれぐらい時が経ったのだろう、マリィちゃんが乾いた吐息を漏らす。 『お願い……ホップを、返して』 搾りかすのように弱りきった声。 マリィちゃんにはもう、言い返す気力も罵倒する意思も無いのだろう。 ただただ、私に懇願する。 『全部……全部言うから。ホップにも、みんなにも……私のしたこと、全部教えるから……全部、言っていいから……だから、ホップを返して……』 少し、驚いた。ここまで来てもマリィちゃんは保身を優先すると思っていたから。 だけど、彼女は自分の所業詳らかにしても良いという。 それで、ホップ君が帰ってくるなら、と。 きっとそれは今だけの気持ちなのだろう。 私が何も言わなければ、彼女はやっぱり自分の所業をひた隠しにしたままなのだろう。 それでも、それでもだ。 今、彼女は私に命を預けた。 大切な人と引き換えに、自分の全てを私に託した。 それほどまでにホップ君を好きなんだと、理解できた。
20 20/10/11(日)23:41:29 No.736067556
『あたしには、あたしは……ホップが、いないと……ダメなの……』 すすり泣くような声が聞こえてくる。 その言葉にはもう力も何もなく、只々弱々しい少女のものだった。 「……良いよ、言わなくて。今更もう、いいよ」 どうせ、全てが明らかになった所で何一つ元には戻らないのだから。 ホップ君の笑顔が奪われるだけなのだから。 それに、最初からホップ君は帰すつもりだった。だって、 「……返すよ。ちゃんと。だって……ホップ君は、あなたの事を愛してるから」 そう告げると返事は帰ってこなかった。 呻くような泣き声だけが、響いてきた。 私は、何も言わず通話を切った。
21 20/10/11(日)23:41:41 No.736067672
・・・・・ あられもない姿のホップ君は気持ちよさそうに寝息を立てている。 その胸板にそっと触れる。 輪郭をなぞるように指を這わせ、ゆっくりと抱きしめる。 触れ合う肌と肌。 彼と私の温度が混ざり合う心地よい感覚。 それは、私がずっと求めていたもので、なのにどうしようもなく、胸が痛い。 「なんで、かなぁ……?私は、私はただ……普通に、恋してただけなのに」 眠る彼に囁く。 ずっとずっと好きだった。 いつから?なんてわからない。気づいた時には好きだった。 色々あったけど、彼の隣にいたいって思ってた。 きっといつか、そうなると思ってた。 彼を好きなのは私だけ。いつか、家族や親友に祝福される中、永遠の愛を誓うのだと、何の根拠もなく信じてた。 だけど、そんな風に油断してたから、驕っていたから、私は彼を永遠に失った。
22 20/10/11(日)23:41:53 No.736067765
「なんで、こんな事になっちゃったのかなぁ……」 大好きだったから。愛してたから。 「好きな人とキスしたり、結ばれるって、とっても幸せな事なのに……なんで、こんなに痛いのかなぁ……」 決まってる。私は、彼を汚したから。 大切な人に一途で、親友へ真摯で、ただただ善良な彼を一方的な欲望で汚した。 私は、マリィちゃんと何も変わらない。 自分勝手な理由で大切な人を裏切って、大切な仲間まで巻き込んで、自分が傷つきたくないからこうやって小賢しい真似で誤魔化す。 私は――――どうしようもなく悪だ。 今更自覚したところで何の意味も無いけれど。 「……ホップ君が目を覚ます前に服を着せないと」 目が覚めた時、何もなかったと思えるように。 彼が、何も気づかないように。 私は出来るだけ彼の肌に触れるように、服を着せていく。
23 20/10/11(日)23:42:04 No.736067838
そうして思う。 きっと、遠くない未来。ホップ君はマリィちゃんにプロポーズするのだろう。 マリィちゃんはそれを涙ながらに受け入れるのだろう。 そうして、二人は幸せに暮らし、いつか子供にも恵まれて、絵に描いたような理想の家族になるのだろう。 そして―――私はいつかそれをぶち壊すのだろう。 ホップ君は悲しむだろう。どうしてそんな事をしたのか問い詰めるだろう。 でも……きっと、私を恨んだりはしない。 ただただ自分を責めるのだろう。どんな理由があったって、悪いのは私なのに。 私がどれだけ恨まれようとしても、そんな事してはくれないのだろう。 それがわかっていても私はもう、止まる事が出来ない。
24 20/10/11(日)23:42:20 No.736067977
「……ホップ君」 私は、最後にもう一度彼に唇を重ねる。 一瞬で、だけど私にとっては永遠のような時間。 そして、名残惜しそうに唇を離す。 「……ホップ君?」 その時、何かを言おうと彼の唇が小さく動く。 口元に耳を寄せると、 「……マリィ」 愛する人の名を呟く。きっと彼は、夢の中でも彼女と一緒なのだろう。 「―――――ははっ」 乾いた笑いは、夜の闇に吸い込まれていった。 朦朧とする彼は、一度だって私の名前を呼んでくれなかった。
25 20/10/11(日)23:42:31 No.736068081
・・・・・ ガラス越しに朝日を眺める。 この部屋にはもう、私しかいない。 ――――大丈夫、ホップ君は気づいてない。 目覚めた時の彼は何も変わらず、私の知っているホップ君のままだった。 私にされた事なんて知りもせず、笑いかけてくれた。 心臓が張り裂けそうになった、泣き崩れそうになった。 それでも、必死で堪えて笑顔を返した。 きっとマリィちゃんも大丈夫だろう。 彼女は腹芸が得意だから、帰ってきたホップ君に対していつも通りのままでいられるだろう。 「あ……」 ホップ君がエントランスから出てくる。 飛び込むようにタクシーに乗り、すぐに飛び立っていった。
26 20/10/11(日)23:42:41 No.736068167
愛する人の元へと真っ直ぐ帰っていく彼を窓越しに見送る。 そうして気づく。私はもう、マリィちゃんを恨んではいないという事に。 ホップ君が彼女といると思うだけで煮えたぎるような怒りを覚えていたのに。 今は凪のように穏やかだ。 それはつまり、私はもう被害者じゃないという事で、彼女と同じただの加害者に成り果てたんだ。 「ホップ君」 名前を呼ぶ。届くわけ無いのに。 「ホップ君」 そして悟る。 私はもう彼と未来を語り合ったまどろみの森には、想い出の詰まった故郷には、二度と戻れないんだと。 何も知らなくて、何でもできると思っていたあの頃の記憶は私には眩しすぎて、もうどこにも行けなくなった私が居ていい場所じゃないから。 「ホップ君」 そして、私は繰り返すのだろう。
27 20/10/11(日)23:42:51 No.736068269
マリィちゃんへの復讐なんかじゃなくて、ただただ私の欲望のためにまた彼を汚すのだろう。 そうしていつか隠し切れなくなって、全てが壊れた時。 私は―――それでも止まらないんだろう。 私にはもう、終点なんてないから。 そんなものはあの日の夜に親友と共に消えたから。 だから、もうどうでもいい。 「……ふふっ」 そっとお腹を撫でる。 どうなるかわからないけど、確かな『痛み』を私は刻んだ。 この痛みがある限り私は大丈夫。 そして―――――この甘い痛みを忘れた時、私はまた彼を呼ぶのだろう。 何もかもが壊れる日まで。 「愛してるよ、ホップ君」
28 <a href="mailto:s">20/10/11(日)23:43:28</a> [s] No.736068587
なっがいわ…って思ったけど区切れる所ないし明日には回したくないしでやっちゃう事にしました とりあえずホップ君とカラマネロが一番可哀想だなって思います。ずっとどうしてこんなことにっ…!ってなりながら書いてました ちなみに殿堂入りを果たした古参メンバーの一匹って設定です。 色々あったけどこの話でユウリとマリィは対等のステージに立ちました。やったね 誤解されるとアレなんで言っておくと私は別にマリィちゃんが嫌いとかじゃなくてめっちゃ好きです 同時に、男のために醜くなれる女の子が性癖なだけなんです
29 20/10/11(日)23:43:56 No.736068845
おもいよ…
30 <a href="mailto:s">20/10/11(日)23:44:09</a> [s] No.736068942
後日談の完全版 su4271847.txt
31 20/10/11(日)23:45:17 No.736069411
来たか…
32 20/10/11(日)23:45:19 No.736069426
>色々あったけどこの話でユウリとマリィは対等のステージに立ちました。やったね チャンピオンとそのへんのトレーナーが対等だというのかね
33 20/10/11(日)23:45:52 No.736069688
おつらい……
34 20/10/11(日)23:46:03 No.736069761
正直言うとスカッとしたが…スカッとした事で同じレベルまで落ちてしまったんだね…
35 20/10/11(日)23:46:34 No.736070000
…和解できて良かったな、うん!
36 20/10/11(日)23:46:38 No.736070035
ねぇこれもしかしたら確率で何か出来るやつじゃ…
37 20/10/11(日)23:47:23 No.736070365
マリィがこれの後にそれをおくびにも出してないのが怖いよ…
38 20/10/11(日)23:48:36 No.736070882
チャンピオン妊娠のニュースが報じられたときの2人の反応を想像するとワクワクする
39 20/10/11(日)23:49:47 No.736071431
チャンピオンが何故かDNA検査を拒否するのかな…
40 20/10/11(日)23:51:59 No.736072617
父親も明かされないし一人で育てることを固持するだろうな
41 20/10/11(日)23:52:01 No.736072634
女って怖いなぁ……
42 20/10/11(日)23:52:44 No.736072975
こわいよ…
43 20/10/11(日)23:53:57 No.736073572
ガラルリーグどころかマリィ以外誰も分からない子供なんだよね…
44 20/10/11(日)23:54:01 No.736073604
誰の種かは明かさないけどバレたらバレたでそれでいいと考えてそう
45 20/10/11(日)23:54:21 No.736073763
将来ラスボスになりそうな存在を孕むな
46 20/10/11(日)23:55:19 No.736074179
でもバレたらホップが地獄に叩き落とされるし…ガラルから出ていくくらいはやるかな……
47 20/10/11(日)23:55:49 No.736074385
ホップとマリィの幸せをいつか壊すって言ってるし 誰の子供か全国中継でぶっちゃけそう
48 20/10/11(日)23:56:38 No.736074716
ビート君は本当に沈黙守っててね 君は関わったらダメ
49 20/10/11(日)23:57:03 No.736074886
チャンピオンガラルから行方不明か!?
50 20/10/11(日)23:57:10 No.736074944
でも肌の色でだいたい分かるよね
51 20/10/11(日)23:57:40 No.736075124
最低だよキバナさん…
52 20/10/11(日)23:57:56 No.736075250
育って来たら髪色や顔つきで関係者は察するやつ 身に覚えのないホップ一人だけは気付かないか
53 20/10/11(日)23:58:20 No.736075438
>でも肌の色でだいたい分かるよね 最低だなキバナさん…
54 20/10/11(日)23:58:44 No.736075620
暗い…あまりにも…
55 20/10/11(日)23:58:52 No.736075672
>でも肌の色でだいたい分かるよね 3択!
56 20/10/11(日)23:59:02 No.736075717
ほら…妊娠の確率って結構低いし…
57 20/10/11(日)23:59:12 No.736075788
>育って来たら髪色や顔つきで関係者は察するやつ 最低だなダンデさん…
58 20/10/11(日)23:59:14 No.736075802
お前は泥棒猫じゃない 私が泥棒猫だ!
59 20/10/11(日)23:59:50 No.736076003
書き込みをした人によって削除されました
60 20/10/11(日)23:59:59 No.736076048
女性同士でも妊娠するんだが?
61 20/10/12(月)00:00:20 No.736076205
>女性同士でも妊娠するんだが? 5択まで絞れたな
62 20/10/12(月)00:00:35 No.736076296
チャンピオンが誰との子供が明かさないせいで飛び火してる……
63 20/10/12(月)00:00:58 No.736076452
とりあえずソニアさんがダンデさんぶちころがすのは確定したな…
64 20/10/12(月)00:02:09 No.736077029
チャンピオンの子供ゥ! 何故君がチャンピオンと全く違う髪色なのか! 何故あくタイプのジムリーダーに警戒されるのか! 何故父親の顔も名前もわからないのかァ!!!
65 20/10/12(月)00:02:21 No.736077116
ホップは既婚者なので選択肢から外れる
66 20/10/12(月)00:03:22 No.736077542
妊娠を知ったマリィ 日に日に自分に似てくるユウリの子供に違和感を覚えるホップ 世間や身内から疑惑の目を向けられるユウリ 自分のルーツに気づき始める成長した子供 一粒で何度も美味しい
67 20/10/12(月)00:03:31 No.736077603
ガラルリーグもホップに限ってそんな真似はしないと思ってて少くともすぐ検査対象にら選ばれなさそうなんだよな
68 20/10/12(月)00:04:16 No.736077910
親しい人は9割9分あいつだろ…ってなるけどいやあいつがそんな事をするはず…ってなって結局誰も言い出せなくなる
69 20/10/12(月)00:04:45 No.736078092
昨日見たレスだけど マリィ夫婦にはなかなか子供出来ない中できて欲しい
70 20/10/12(月)00:05:48 No.736078536
チャンピオンの子供はやがて家出同然で出ていくのかな…
71 20/10/12(月)00:06:04 No.736078638
天才か…? しかもユウリが妊娠できたら問題あるのはマリィの方ってことになるし凄くそそるな
72 20/10/12(月)00:07:06 No.736079047
不妊治療って相当金かかるんだってな…
73 20/10/12(月)00:07:09 No.736079066
子供が成長したらホップはダンデさんとネズさんに詰められそう
74 20/10/12(月)00:08:09 No.736079504
ホップは優しいから絶対にマリィを責めないよ 自分の方が原因かもとかきっと大丈夫焦らなくていいからとか励ますよ
75 20/10/12(月)00:08:32 No.736079637
どんだけ詰られても知らないもんは知らないって言うしかない 地獄だ
76 20/10/12(月)00:09:05 No.736079852
あるいはいつかの勝利者インタビューで全世界に向けて暴露するかもしれない
77 20/10/12(月)00:09:44 No.736080147
真実そのまま言ったらチャンピオンが捕まっちゃう…
78 20/10/12(月)00:09:56 No.736080239
大丈夫?この後ほんとに人死に出ない?
79 20/10/12(月)00:10:50 No.736080613
チャンピオンの手持ちに昔からカラマネロがいるらしいから察せる人はいそう スリーパーもいれば役満だったのに
80 20/10/12(月)00:11:43 No.736080969
子供のころから仲が良くて昔から好きだったとか彼は既婚者だから明かせないとか 一部の人にしか分からないけど答えそのものみたいなこと言いそう
81 20/10/12(月)00:12:03 No.736081122
でんせつの方もマリィがマサルにカラマネロ使ってことに及んでたし カラマネロはある意味でスリーパーよりもエグい使われ方してるな…
82 20/10/12(月)00:12:08 No.736081162
犯罪の片棒担いだカラマネロかわいそう
83 20/10/12(月)00:13:25 No.736081688
>でんせつの方もマリィがマサルにカラマネロ使ってことに及んでたし 今最愛の兄も初恋の人も奪われるユウリって言った?
84 20/10/12(月)00:13:25 No.736081691
カラマネロはやばいでしょあれ しかもヨロイ島にはあれ普通にいるし…
85 20/10/12(月)00:17:04 No.736083242
マリィはもちろんチャンピオンも悪タイプが主力の一角か…
86 20/10/12(月)00:17:35 No.736083430
>ポケモンの中でも最も強力な催眠術を操り、相手を自分の意のままに操ることができてしまう。そのため、カラマネロの力を悪用しようとする人間も、後を絶たないのだ! 絶対レイプポケモンとか言われてるじゃん…
87 20/10/12(月)00:17:43 No.736083492
ホップは既婚者になってるだろうから 一番最初に世間から疑われるのはまあダンデさんだろうな
88 20/10/12(月)00:18:16 No.736083700
もしくはなんか悪タイプに対策取ろうとしてるのかフェアリーや格闘多めか
89 20/10/12(月)00:19:08 No.736084052
誰にも明かすことのない夜だけどマリィにだけは秘密を共有させる
90 20/10/12(月)00:19:37 No.736084276
おあつらえ向きに触手まで生えてる!
91 20/10/12(月)00:20:31 No.736084644
でもよぉ…ダンデさんだぜ…?ってなるけどCV櫻井のほうのダンデさんだとなんかあり得なくもない気もしないでもない
92 20/10/12(月)00:20:38 No.736084702
カラマネロへの風評被害は……とっくにあるんだろうな
93 20/10/12(月)00:21:16 No.736084999
>でもよぉ…ダンデさんだぜ…?ってなるけどCV櫻井のほうのダンデさんだとなんかあり得なくもない気もしないでもない でもよぉ…CV櫻井って冨岡さんでもあるしアバン先生でもあるぜ
94 20/10/12(月)00:23:22 No.736085921
ダンデさんが手を出したと勘違いしたソニアさんが曇るまでのセットだ
95 20/10/12(月)00:23:31 No.736085986
ダンデが疑われるのと同時にソニアさんのたいどが急激に冷たく…
96 20/10/12(月)00:24:22 No.736086397
ビートくんはどう思う?
97 20/10/12(月)00:25:39 No.736086975
ホップが全てを知ってもチャンピオンのこと嫌いにならなそうなのは救いがあるのかないのか…
98 20/10/12(月)00:25:43 No.736087004
巻き込まないでください…
99 20/10/12(月)00:25:49 No.736087042
>ビートくんはどう思う? あの12歳の頃のような友達はもうできない もう2度と…
100 20/10/12(月)00:26:28 No.736087292
少なくともチャンピオンは同期会でも良かったってぐらいにはビート君の事も友達だと思ってるから…
101 20/10/12(月)00:27:28 No.736087702
恋愛感情ないのにビートくんへの距離縮まってそう チャンピオン側が一方的に縮めてそう
102 20/10/12(月)00:28:45 No.736088234
なんか一人できた子供を溺愛してそうだなチャンピオン
103 20/10/12(月)00:30:56 No.736089137
マリィに対する仕打ちちょっとパンチ足りなくない?
104 20/10/12(月)00:31:19 No.736089306
>マリィに対する仕打ちちょっとパンチ足りなくない? これ以上強くパンチするとその反動にチャンピオンが耐えられないから…
105 20/10/12(月)00:31:35 No.736089422
二人に愛されてるだけあってホップがいいやつで優良物件するんだよね どうしてこんなことになってしまったんだ…
106 20/10/12(月)00:32:16 No.736089689
>二人に愛されてるだけあってホップがいいやつで優良物件するんだよね >どうしてこんなことになってしまったんだ… 愛されていいやつで優良物件だったから…
107 20/10/12(月)00:33:52 No.736090305
ホップがガハハと笑う鬼畜王みたいな性格ならみんな幸せになれたのに…
108 20/10/12(月)00:35:23 No.736090981
マリィ夫婦はマリィ一人が後ろめたく思いながらそこそこ幸せになっても良いし チャンピオンの親子が青芝に見えるくらい自分達の夫婦生活がうまくいかなくても良い