虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

20/10/02(金)22:13:04 No.733210564

蟲毒と言う毒がある 沢山のぴるす君を用意して地下深くの穴倉に放り込み、出入り口諸共土に埋める 初めは身を寄せ合って震える彼らは、やがて自らの命が長くないことを悟る 生き永らえる方法はただ一つ、肩を寄せるこの同胞を喰らうことだ かくして凄惨な殺し合いが闇の中で始まる 拳て同志の頭を打ち砕き、爪で仲間の腹を切り開く 敗れた朋の呪詛を聞きながら、その肉で腹を満たし、その血で喉を潤す それを繰り返すこと幾十、幾百、最後に残ったぴるす君は顔が赤く歪んだ憎悪の化身となる だが、彼の運命もここまでだ、そのころには地下の空気は失われ、血や肉では癒せぬ緩慢な死が襲いかかる 悶え苦しむ彼は最後に全てを――それこそ自分を地下に閉じ込めた歌舞伎役者から、襲い掛かる同胞、果ては自分自身まで恨んで絶命する 最期の瞬間吐いた彼の呪詛は、血に塗れた地下に澱み、あらゆる命を奪う毒となる、これが蟲毒だ その正体はボツリヌス菌が生み出す毒素だと考えられている 嫌気性のこの菌は、このような酸素が欠乏した環境で繁殖し、猛毒を生み出す 身近な例だとカレー鍋の底や蜂蜜瓶の底などで発生する、わざわざぴるす君を使う必要はない