虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

20/09/23(水)23:30:34 泣き疲... のスレッド詳細

削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。

20/09/23(水)23:30:34 No.730559051

泣き疲れた王子がふと目を開けると、そこは自分の部屋ではなく、蓮の花の咲く池の中でした。頭上には見果てぬ星空が広がっていて、きっとここは夢の中なのでしょう。 「クリシュナ……」 夢の中なので、確かに蟲の体液に塗れていたはずの手も身体も、綺麗になっています。 それでもひと時の激しい感情に任せて、あの蟲を殺してしまったのは紛れもない事実。夢から覚めれば、腕の中には変わらず蟲の死体があるはずです。 「私は……どうして、あんな恐ろしいことを……」 蟲のことなど疎んで憎んで、嫌っていました。確かにそのはずでした。けれどもそれと同じく、王子はあの蟲をとても大切にも思っていたのです。 心を打ち明けられる大切な友として。まるでもう一人の自分のように。 だからこそ、自分の心を覗かれるのが嫌だったのかもしれません。所詮お前も人間なのだと、見限られるのが怖かったのかもしれません。 自分の浅はかさを深く悔いたとしても、なにもかもが今更に過ぎます。腰までを泥と水に浸しながら王子は空を仰ぎ見ました。夜明けが近いのか、空の裾野は白み始めていました。

1 20/09/23(水)23:30:49 No.730559149

その時、王子の視界の端に、ちかちかと煌めく灯が映りました。 見れば蓮池を横切るように、長く続く石の階。終点には白亜の玉座が水面に浮かんでいました。そこからもう一度、王子を導くように灯火が輝きます。 誰かが、私を呼んでいる。 「クリシュナ、お前なのですか!」 叫ぶと、輝きはますます強くなりました。王子を導いてくれる誰かが、玉座にいることは確かです。 脚が手が、泥に塗れることにも構わず、茂る蓮の葉と花を掻き分けて、王子は泥の中を歩み始めます。 泥濘は深く、何度も足を取られました。掻き分ける度に開いた蓮の花托から漂う香は、むせ返るほどでした。それでも王子は歩みを止めません。 「待って、クリシュナ!」 もう一度蟲に会いたかったのです。自分の浅はかな行いを、許してほしかったのです。

2 20/09/23(水)23:31:17 No.730559349

果たして、王子は玉座に辿り着きました。 座る者の居ない空の玉座を守るように、側にふわりと浮いているのは、黒衣の男でした。 癖のある黒髪。淡い青に輝く短い角と、深い青色の尾。顔は不思議なことに、王子と瓜二つでした。四肢はしなやかに伸びていて、姿形は蟲とは異なります。 けれども王子には彼が確かに蟲であったという強い確信がありました。 「クリシュナ」 名前を呼べば、嬉しそうに微笑みを深くします。 「……ああ。私を、まだその名で呼んで下さるのですね。幼きアルジュナ」 風もないのに、男が纏う外套が、蝶の翅のように青くはためきました。 むかしむかし。明けの明星が白む空に輝く夢の中でのお話です。

3 20/09/23(水)23:31:34 No.730559445

童話 むしめずる王子のお話です

4 20/09/23(水)23:32:31 No.730559835

3臨オルジュナ来たな…

5 20/09/23(水)23:36:26 No.730561188

蛹を飛ばして羽化したな

6 20/09/23(水)23:36:49 No.730561355

ジュナオきたな…

7 20/09/23(水)23:38:36 No.730562003

>風もないのに、男が纏う外套が、蝶の翅のように青くはためきました。 言われてみるとあのケープっぽいマント羽根みたいだよね

8 20/09/23(水)23:43:18 No.730563590

あのまま成長続けてたらその内2臨みたいになってたのかな

9 20/09/23(水)23:57:31 No.730568564

>そこは自分の部屋ではなく、蓮の花の咲く池の中でした。頭上には見果てぬ星空が広がっていて アルジュナの宝具演出きれいだよね…

10 20/09/24(木)00:05:27 No.730571140

玉座はあるけどクリシュナが座ってるわけじゃないんだな…

↑Top