ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
20/09/16(水)23:30:13 No.728371737
「ンン、拙僧としたことが。ご挨拶が遅れました。 私、この世界の王たる神に使えた者。迷うあなた様を導くために、推参した次第です」 神の使いと名乗った男は、王子に向かって、うやうやしく頭を下げました。 怪しい風体をしていますが、神に使える者であったならきっと信頼を置いても良いのでしょう。 だから、王子は尋ねました。 「ここは、どこなのです」 ここは王子がいた世界とは明らかに異なっていますが、けれどもなぜか、懐かしい感じがありました。 まるでほんの少しだけ、なにかが違っていた自分の世界であるような気がするのです。
1 20/09/16(水)23:30:42 No.728371934
「何処かと問われれば、何処でもなく。今ではない未来、或いは遠い過去。 一言で答えればユメ、と。ええ、ええ。とある男の夢想空想の果てた先でありますれば」 「なぜここには誰も居ないのです」 「おお、幼き王子よ! よくぞ、よくぞ! お尋ねになって下さいましたァ! この地はかつて神が愛し望んだ楽園でありましたが、世界の破壊者、悪魔どもによって悍ましい戦いが引き起こされ! そして神は死に! 悪魔は去り! 神も悪魔も降り立たぬ荒野のみが取り残されたのです!」 「なぜ神は死んだのです」 「己が身の不完全さ故です。王子よ」 「あり得ません。神たるものが、完全でないはずがありません。お前は嘘を吐いています」 「おや。おや。なんと、流石は幼年にして既に物の道理を捉えてらっしゃる。 ええ、ええェ。その通り。神へ至るのならば完全でなければならない。余分などあってはならないのです。 どうかその気高き理想を見失うことの無きよう。……今日の思い出に、これを」
2 20/09/16(水)23:31:08 No.728372117
男が握った指をばらりと開くと、いつの間にか、その掌の上には金色の卵がひとつ、載っていました。 王宮でたくさんの宝石や金細工を見てきた王子でさえ、思わずうっとりと見入ってしまうほど美しく輝く卵でした。 「これは異聞の王たる神が、ころり落とした真理を封じた卵にございまして。 普通ならば、割れることすらあり得ぬこと。しかし、しかしあなた様であれば、さて。 鳥の如くに胎に抱き、他人のために祈りを捧げ十日も過ぎれば。あなた様の理想が生まれ落ちるやもしれませんぞ!」 「私の、理想?」 「ええ、ええ! あなた様が内なる心に秘めた、己さえ知らぬ理想の姿が! ……生まれ出ると、いいですねぇ……!」 歯を剥き出した男の笑みは、とてもとても厭らしい悪意の毒に満ちていましたが、不思議な卵を眺めることに夢中な王子は、ついぞ気付くことはありませんでした。
3 20/09/16(水)23:31:44 No.728372332
「ンン、これはあなた様を誰よりも思う、道化からの忠告です。 もしもその中身が……あなた様の理想と程遠ければ、その時は。 ……いっそ殺してしまうのが、宜しいでしょう」 殺せ、という恐ろしい言葉にはっと顔を上げた時には、男の姿は消えていました。 足の裏にあったはずの地面も同じく。世界の底が抜けて、王子は真っ暗な闇に放り出されてしまいました。 慌てて王子が目を開けると、そこは元の通りの王宮の庭でした。どうやら夢を見ていたようです。 ああ、ならば。あの美しい卵のことも夢幻であったのかと思えば、そうではなく。 夢の中で手渡された卵は、王子の手の中にしっかりと。光にかざせば、きらきら空へと輝きを返しておりました。 むかしむかし、蓮の花が咲き誇る池のほとりでのお話です。
4 20/09/16(水)23:32:05 No.728372445
童話 むしめずる王子のお話です
5 20/09/16(水)23:33:21 No.728372900
リンボはこういうことするし アルジュナはこういうことされて気にしちゃうよね
6 20/09/16(水)23:34:43 No.728373401
オルジュナが生まれるのかな
7 20/09/16(水)23:42:42 No.728376339
幼き王子って言われてるからこれショタジュナなのか
8 20/09/16(水)23:48:14 No.728378260
>「ンン、これはあなた様を誰よりも思う、道化からの忠告です。 こいつ相変わらず適当な事しか言わねぇな…
9 20/09/16(水)23:50:49 No.728379208
リンボマンオリュンポスでだいぶオルジュナの事気に入ってるっぽい発言してたからまあこういうタイプの人で遊ぶの好きなんだろうな
10 20/09/16(水)23:59:25 No.728382163
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
11 20/09/17(木)00:02:41 No.728383290
ショタジュナいい…素朴でまだ曇りを知らなかった頃…