20/08/30(日)21:53:23 「よぉ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1598792003738.jpg 20/08/30(日)21:53:23 No.723068363
「よぉヒロじゃねぇか」 夜中の2時半、羽虫がバチバチと跳ねるコンビニの電光掲示板の元、クラスメイトに会った。 「やぁ、お前こそどうしたんだこんな夜中に」 「眠れなくてさ、それにヤニも切れてたし。アイスも食いてぇしでよ。お前こそどうして」 「似たような理由だよ。熱くてたまんねぇな」 夜でも30度を下らない熱帯夜を敷いて寝れるはずもなく。こうして夜光虫のようにコンビニに群がるのも健康優良な少年にとっては致し方のない事だ。 「そっか、ヒロアイス位おごってやるよ。何がいい？」 「いいよ、最近稼ぎも手に入ったし。アイスよりヤニがいいなぁ」 「コンビニにリベラなんて置いてねぇよ、まったく。わけのわからんガラ吸ってんなぁヒロは」 「俺は味がわかる男なんだよ。わからないのはJTとコンビニの店長くらいなもんだ」
1 20/08/30(日)21:54:59 No.723069043
笑いながら二人、店内に入る。適当に見繕ったアイスと缶コーヒーを籠にいれてレジに並ぶ、一瞬酒のコーナーで足が止まったが今自分が上は半袖とはいえ学ラン姿だと言うのを忘れてた。クラスメートは半袖短パン姿で10mmのマイセンのソフトを3個、コンビニ店員に頼んでいた。分ってはいるがゴネると面倒なのでやる気のない店員は何事もなくタバコのバーコードを読み込む。コンビニ袋を片手に駐車場でタムロする。その様子健全優良少年か不良少年かはオトナ達の判断に任せる。 「お前の芝刈り機、調子はどうだ？」クラスメイトがガツンとミカンを齧りながら聞いてきた。 「ああ、調子いいよ。キャブさえしっかり見とけば元気に走るよ」 芝刈り機とは俺の愛車ベスパの事だ、あだ名の由来は芝刈り機みたいな排気音をかき鳴らして走る事。 「しかし面倒なのに載ってるなぁデュオとかレッツでいいだろ」 「気に入ってるからいいんだよ」「なんでまたベスパ？しかも赤って」 「わかんない、一目惚れ」
2 20/08/30(日)21:55:19 No.723069213
俺も同じくガツンとミカンを齧りながらそう答える。隣の彼はアイスを食い齧りもうタバコに火をつけてた。モクが彼の胸いっぱいに広がる。ふと彼がソフトケースをこちらに向けた 「ヒロ？吸う？」「いやいい、これから買いにいく所だし」「そっか、お前ほんとにアレしか吸わないんだな」 「味、味って奴だよ。こればかりは説明できないな、じゃあそろそろいくわ」 食べさしのアイスを加えて半帽をかぶる。 「おう、じゃあな。明日ちゃんと学校来いよ。センコーうるせぇからよ」 「仕事がなければいくよ。オレ、学校好きだし。」 大手を振って見送る彼をよそにセンタースタンドをおろし、キックを一発。先日キャブ清掃したばかりなのでポンコツでも一発でかかる。 白煙を拭き上げながらここから遠く離れたタバコ屋の自販機へと向かう。ここは親切に夜中でも売ってくれて、なおかつ半分俺専用にリベラを置いてくれている。この夜中のお出かけもそれが理由だ。 ぬるいとはいえ夜風を切り、走るのはとても心地良い。澄み切った郊外の緑地の匂いに2スト独特の紫煙の香りが混ざっていい気分だ、ふと背中からどくどくのヌメッとした感触が広がる。
3 <a href="mailto:ヒロ君…いいよね🐙">20/08/30(日)21:55:58</a> [ヒロ君…いいよね🐙] No.723069520
”彼女”だ。呼んでもいないのに俺の背筋を撫でる彼女は悪魔だというのに何故か愛嬌が湧いてくる。彼女との契約それは「墨になる物を吸う」つまりヤニを吸う事。彼女もヤニが切れて痺れを切らしていたのかも知れない。そんな彼女にふと聞かれたような気がする 「どうして赤いバイクなの？」そう尋ねられた、だから俺は答えた。 「お前と同じ赤色だからさ、赤くなるのは茹でた後だけど。俺の相棒はおまえだけだよ」 その一言を聞くと満足したのか彼女は消えてしまった。俺の相棒は本当にかわいい奴だ ―――暗い夜道の中、自販機の照明がうっすらと見えてきた。アクセルを緩め、ブレーキを踏んでセンタースタンドを斃す。夏の匂いと共に俺と”彼女”の夜はこうして過ぎていく。