20/08/15(土)06:34:13 「お、... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
画像ファイル名:1597440853863.png 20/08/15(土)06:34:13 No.718170763
「お、おい……人が見てるぞ」 あの頃と変わらない声が耳を撫ぜて、それはこの人が間違いなく彼女であるという事を教えてくれて、僕はますます抱きしめる力を強める。 言われた言葉の意味は数秒経ってからどうにか理解したけどそんなことはどうでもよかった。 彼女からはあの頃と同じように木の実の匂いがしてそれが懐かしい。 ただ、あの頃のように煤けた匂いは無くて、それは彼女が彼女の「日常」に戻ったことを示していた。 「大丈夫かお前……」 そういいながらも、カガリさんは僕の背を撫でてくれる。 最初彼女の手が震えているのかと思ったけど、実際には震えているのは僕の背だった。 僕は自分がいつの間にか泣いていた事に気付いた。
1 20/08/15(土)06:34:36 No.718170796
カガリさんと再会したのは全くの偶然だった。 珍しい木の実を仕入れたショップがあると聞いて訪れた――情報が遅かったのでとっくになくなっていた――町のはずれ、せめて海でも見てやろうと登った高台に、彼女は一人立っていたのだ。 陽の沈む海を背にして海風に黒髪を揺らすエプロン姿の女性は、かつて業火と熱風の中に見た赤装束の恐るべき女幹部とはかけ離れていたけど、僕には一目でわかった。 動揺して息をのむ僕に対してカガリさんは「おや。」なんて言って嬉しそうに笑いかけてきて、その不敵な笑みは昔と変わっていなくて、それで僕は気が付いたら彼女を抱きしめていた。
2 20/08/15(土)06:34:49 No.718170809
あの後カガリさんはいつの間にかいなくなってしまっていたので、 僕は彼女と話もできていなくて、それどころかまともにお礼も言えていなかった。 短い間ではあってもあの企ての間彼女は紛れもなく僕の相棒で、彼女は僕と一緒に命すら賭けてくれて、 それに「無かった」事になったとはいえ、実際にはそれを使いきってしまった程で。 だからその事について言うべきことはいくつもあったのに、ろくに話もさせてくれずにいなくなってしまうなんてひどいじゃないか。 いや、それだけじゃない。 美しさとは何かという事への答えだって僕は伝えられていない。
3 20/08/15(土)06:35:01 No.718170819
「そら、飲みな。 落ち着くよ」 「ありがとう、ございます」 目の前には湯気の出ているココアがあって、僕は屋内にいる自分に、機械的に返事をしている自分に気づいた。 「どうしたんだよ、お前急にあんな、人目に付くような事をやって…… いや、私が言えたもんじゃないか」 「あの、いえ……」
4 20/08/15(土)06:35:21 No.718170842
「ん?」 優しい声色で続きを促される。 椅子が一つしかないのでカガリさんはベッドに座っていた。 エプロンは外していて、シャツとジーンズのラフな―――体のラインがよく出る格好。 照れ臭くなって視線を外す。ココアをすするとそれはまだ熱かった。 「いえ、以前はその、お世話になりました。 あんな危険な事に一緒に付き合って貰って」 「ああ、そんな事か」
5 20/08/15(土)06:35:35 No.718170860
「まあ確かに死ぬかとは思ったけど、別に大したことじゃなかったじゃないか。 結局誰も死んだりしなかった……頭領はどっかに行っちまったけどさ。 それに私は早々に脱落して寝てただけで、実際に片付けたのはあの嬢ちゃんの方だろ? あたしは張り切ってみただけ」 「そんなこと、」 そんな事は無い、と言いたかった。彼女がどれほどの事をしてくれたか。僕がどれほど感謝しているか。 けど同時にその無意味さを悟る。事実としてそんなことは「なかった」のだ。 僕と彼女はあの数時間だけは通った時空が違う。 だから僕が彼女のしてくれた事に抱いた想いや執着は、彼女からすれば理解できないものでしかない。
6 20/08/15(土)06:36:09 No.718170902
「……そうかもしれません。でも随分、僕はいろんなことを教わりました。 あの時だけじゃない、トンネルであった時もそうです。 本当の美しさとは何か?と聞いてくれた事も最後に役に立って」 「ああ、あれか。聞いてたよ」 え、と声が漏れる。そんなはずはない。だってカガリさんはあの時もう。 「ノビてたんだけどね。あんな演説されちゃあ聞かないわけにはいかないだろ。 あんな場面なのにこっぱずかしくなるような事を言ってくれて……」 きらきらした目が僕を見る。
7 20/08/15(土)06:36:32 No.718170929
―――本当の美しさは心の美しさだ。誰かを愛し、思いやる心そのものなんだ。 自然に、何度もやって来たかのようにすらすらとカガリさんはその言葉をつぶやいて、それから笑った。
8 20/08/15(土)06:36:48 No.718170943
「まああんたがあんなことを言うから、少し考えてみようかと思ってまたコンテスト始めたんだ。 一から出直して、まだスーパーランクがいいとこだけどね……知らなかったろ?」 「私はおまえが何を思ってるのか知らないし、何を知ってるのか知らない。 けど、私はおまえの言う事は信じるよ。 あんな島があったんだから何があったって不思議じゃない。 だからそんな抱え込んだみたいな、申し訳なさそうな顔するなって。 だんまりはよくないってお前は学んだんじゃないのか?」
9 20/08/15(土)06:40:05 No.718171177
ダーク・龍神様…… なんかカガリさんとルビーが偶然再会してドロドロになるようなのを書く予定だったのに明るく済みそうな感じになってしまいました しかしながらこの後たまにこっそり会って夕暮れ時散歩するくらいの関係になります お納めください
10 20/08/15(土)06:41:39 No.718171286
(その程度でわきまえるったい…)
11 20/08/15(土)06:55:36 No.718172282
またコンテストやるかがルビーの言葉に感化されてだといいよね 一緒にコンテストやろうって言われて返事できずに死んじゃったし
12 20/08/15(土)06:56:30 No.718172371
むっ!
13 20/08/15(土)07:03:18 No.718172919
初めてルビカガみた
14 20/08/15(土)07:10:42 No.718173568
このカガリさんは絶妙に言って欲しいこと言ってくれそう
15 20/08/15(土)07:44:01 No.718176768
imgは世界一のルビカガファンサイト
16 20/08/15(土)07:55:44 No.718178326
ルビカガいいぞ…
17 20/08/15(土)07:55:52 No.718178341
完全になんでも話聞いてくれるムーブじゃん
18 20/08/15(土)07:58:22 No.718178662
昨日の夜からルビカガの炎が燃え盛っているようだ
19 20/08/15(土)07:59:00 No.718178746
小説でもルビカガ見たの初めてかもしれん
20 <a href="mailto:s">20/08/15(土)08:02:36</a> [s] No.718179191
>昨日の夜からルビカガの炎が燃え盛っているようだ そうだ言うの忘れてたけど昨日の夜のルビカガ見てうっちゃってたのを完成させたものがこちらになります ドロドロ要素連続させてもしかたねえなって明るくしようとしたらちょっとうまく行かなかったけど…… それでそのスレにいなかったのでここで感想を述べますが 全体的に身を焦がされるような表現でよかったのですが特に >しなかったけど、サファイアには絶対に言えないようなことはやった。 ここのどうしようもなさがすごく好きでした 以上です
21 20/08/15(土)08:04:35 No.718179460
カガリさんはどこまでも都合の良い女
22 20/08/15(土)08:09:12 No.718180042
シャドウ龍神様は大好きだろうな…
23 20/08/15(土)08:13:17 No.718180596
明るいルビカガもいいものだ
24 20/08/15(土)08:13:42 No.718180655
ちょっと待ってなんでこんな視認性悪いスレ画使ったのやめてよ見落とすとこだったじゃん
25 20/08/15(土)08:19:12 No.718181399
>imgは世界一のルビカガファンサイト これはマジだと思う
26 20/08/15(土)08:22:21 No.718181770
何があっても絶対信じてくれるカガリさん