20/08/15(土)00:13:23 「もう... のスレッド詳細
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20/08/15(土)00:13:23 No.718113535
「もう種火は食べたくない?」 折り入って話があると部屋に来た彼女がこんなことを言い出したのは、彼女がカルデアに来てから少し日が経ってのことだった。 「ごめんなさい、我儘かもしれないですけど、ここ数日はものすごい量を食べたじゃないですか。流石にあの味に飽きた、といいますか、食感が微妙、といいますか…」
1 20/08/15(土)00:13:37 No.718113637
新しく来てくれた彼女は実に有能で、何につけ助けになった。それ故、自然と資源も多めに回されるようになったし、彼女も自分の能力が成長していく様に新鮮な感覚を覚えていたようだった。しかしそれにかまけて、少し急ぎ過ぎたのかもしれない。味にこだわりがある子だとはいえ、リソースの受領に異議を申し立てるほどとは、相当食傷していたのだろう。 「ごめんね、ちゃんと休みもあげられてなかったよね。役に立ってくれるから、つい…」 「いえ、そんなに気にしないでください。クエストは全然苦じゃないんです。マスターの役に立ててるのがわかるのって、すごく嬉しくて」 彼女の気安さといじらしさは、絶えて久しかった同年代の友人との何気ない会話を思い出させた。だからこそ、休むときにはしっかり休んでもらわなくては。親しき仲にも礼儀あり、というやつだろう。 「今日は休みにしようか。友達をずっと働かせておけないし。アルトリアの好きなもの、何か食べに行こう」 「ほんとですか!?ありがとうございます! 私、ずっと前から食べたかったものがあったんです」 喜んでくれたようだ。よかった。
2 20/08/15(土)00:13:54 No.718113772
色とりどりの魚の切身が、テーブルに所狭しと並んでいる。 「すごい…!これが、お寿司なんですね…!」 彼女はまるで財宝の山を目の当たりにしたかのように、燦々と目を輝かせている。 まあ、財宝を前にして涎を垂らす人はいないだろうが。 「本当にありがとう、まさか本当にやってくれるなんて思ってなかった」 「君がいきなり寿司を用意してくれと言い出した時には随分慌てたが、やってしまえば案外と出来るものだな。 気にするな。刺身包丁にも錆が差さずに済むというものだよ」 調理場の主、もとい錬鉄の英雄は、久し振りに使ったという細身の包丁を眺めながら、どこか懐かしげに呟いた。 「他ならぬ、彼女の頼みだからな… では、これにて失礼させてもらおう。あとはゆっくりとご歓談あれ」 仕事人の風格を漂わせるその背中は、今日はどこか安堵したようにも見えた。
3 20/08/15(土)00:14:48 No.718114199
「おいしいです!エミヤさんにはクエストでもお世話になっていますし、後でお礼を言わなくてはいけませんね。 これが…しょうゆ、ですか?」 新鮮なネタに舌鼓を打ちながらも、小皿に注がれたそれを指差して、彼女は興味ありげに呟いた。 「よく知ってるね。ヨーロッパでは醤油はあんまり有名じゃないと思ってたんだけど…」 寿司をリクエストしたことといい、やけに彼女は日本のことに詳しい。全てのアルトリアの記憶を持っているという触れ込みだったが、日本に召喚されていたらそのときのことを覚えていたりするのだろうか。
4 20/08/15(土)00:15:02 No.718114302
「それは、あのときに貴方から聞きまして… …いえ、何でもないです、気にしないで」 彼女に醤油の話をしたことなどあっただろうか。覚えがないが、彼女本人がそう言っているのだ。きっととりとめもない会話の中に紛れていたのだろう。 「今日はずっと、あなたとお話ししていていいんですよね。人理修復のお話、また続きを聞かせてください。 あなたのこと、今日はひとりじめしちゃいます」 「いいよ。いつも頑張ってくれてるお礼に、今日はアルトリアの気が済むまで付き合うから。 あれは確か、イェルサレムに行ったとき…」 聞いてくれる人がいると、話す方も楽しい。 彼女といると、時間が飛ぶように過ぎていく。
5 20/08/15(土)00:15:25 No.718114461
「今日は本当にありがとうございます。デザートまでいただいちゃいました」 食後にチョコレートパフェまで食べて、その間もずっと話をして。 そんなことをしているうちに、すっかり日が暮れた。 「前に食べたときから、あの味がずっと忘れられなくて。もう一度食べられるなんて、思ってませんでした」 「前に食べたことあったの?」 彼女の瞳は、ひどく遠く、美しい思い出に思いを馳せているようで。 そんな彼女に魅きこまれてしまって、つい言葉を忘れた。 「はい。とても、とても甘くて、忘れられない味でした。大切な人がおいしいよって、食べさせてくれたんです。 あれより美味しいものを、私は知りません」 「そっか。その人、きっと好い人だったんだろうね」 「はい。一緒にいると安心する、とても素敵な人でした。 その人と一緒にいると、お腹が空いてても幸せな気持ちになれるんです。 あ、でも、その人と一緒にご飯を食べると、すごく楽しいんです。お話がとても上手で…」
6 20/08/15(土)00:15:41 No.718114581
好き放題食べて話したお陰で、瞼が重くなってきた。 「眠い…」 「そうですね。 一緒に、寝ちゃいましょうか」 心地よい眠気のお陰で、考えが纏まらない。 けど、彼女と一緒にいるなら、きっとどんな時間だって幸せだろう。 「おやすみ、アルトリア。 また、明日…」 明日も、この先も、ずっと。
7 20/08/15(土)00:16:30 No.718114985
彼と一緒に一夜を過ごすのは、これが初めてのこと。 でも、あどけないその寝顔は、確かに私の記憶にある。 ここに来て、いろいろなものが見えるようになった。 私と、彼の未来。彼とこの先の旅で出逢って、話をして。 一緒に過ごして、一緒に戦って、そして──
8 20/08/15(土)00:16:46 No.718115089
「やだ…一緒にいてよ…!」 涙をこらえるように、彼を抱きしめた。 私に起こることも、彼に起こることも、私は知っている。 それが、どれほど過酷なものかも。 だから、今は私が守らなくては。 もう二度と、彼の悲しむ顔は見たくないから。 それが私達の運命ならば、受け入れるしかないのだろう。 だから、どうか今だけは、私と彼の間に入らないでください。 せめてもう少しだけ、私たちを、このままでいさせてください──
9 20/08/15(土)00:16:58 No.718115170
ふ ま 経
10 20/08/15(土)00:17:56 No.718115690
純愛系怪文書初めて見た これはいいものだ…
11 20/08/15(土)00:17:58 No.718115712
いつでは犯しますねって言い出すかと思ったら割とシリアスでござったか
12 20/08/15(土)00:18:10 No.718115801
キャストリアと一緒にごはんを食べると幸せになれそうだよね怪文書です su4125459.txt
13 20/08/15(土)00:18:40 No.718116018
はいはい独自魔術独自魔術
14 20/08/15(土)00:19:58 No.718116731
キャストリアにこの先何があるんだ…と思ってたけど まあそりゃぐだも未来があるとも知れん身だったな…
15 20/08/15(土)00:20:23 No.718116927
あれ…? 唐突においでよアヴァロンされたり独自魔術えーいっ!されたりしない…?
16 20/08/15(土)00:21:19 No.718117370
本編の前に自分から傷を作っていくのか…
17 20/08/15(土)00:23:20 No.718118237
未来の話から無理矢理するんでしょ知ってる
18 20/08/15(土)00:31:09 No.718121438
友達のくせにやけに湿度高いな…
19 20/08/15(土)00:32:43 No.718121995
ただ彼女は旨そうに白く鈍い光を放っていたネタが日本でバラムツと呼ばれている魚だとは翌朝まで知らなかった
20 20/08/15(土)00:40:49 No.718124811
キャストリアブームをみんなが忘れたころに六章が来るんだ そして本編で心を壊されるんだ
21 20/08/15(土)00:47:56 No.718127084
村娘マインドに未来の記憶と王の逸話をインストール 重力ができた
22 20/08/15(土)00:56:29 No.718129815
限りなく自由に近い不自由へと向かってる未来 選ぶことを諦めたらもう引き返せない あの鐘の音に 耳を澄まして
23 20/08/15(土)00:56:43 No.718129878
まず来週どうなるかだな…
24 20/08/15(土)01:02:45 No.718131564
メルトとコルデーが残した傷跡は深い
25 20/08/15(土)01:08:48 No.718133207
>「やだ…一緒にいてよ…!」 普通の女の子曇らせるのいい…
26 20/08/15(土)01:10:55 No.718133832
未来の時間に生きる自分の記憶を持っているといつか来る別れに気づいたりしちゃうのかな… ホントに全部見えているとつらいことばかりじゃない
27 20/08/15(土)01:12:31 No.718134302
忘れてた、そうだこの子湿度高いんだった