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20/08/14(金)23:56:10 su41254... のスレッド詳細

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20/08/14(金)23:56:10 No.718105984

su4125405.txt ホプマリの続きです

1 20/08/14(金)23:56:27 No.718106090

・・・・・ いつの間にか、初めて研究所に行ってから1年が過ぎていた。 あたしは今日もホップと一緒にお昼ご飯を食べている。 「やっぱりジムリーダーって大変なのか?」 「そりゃあもちろん。大変じゃない事なんてなか」 「やっぱりなぁ。でも、それでもちゃんとジムリーダーとして頑張ってるんだ。流石だな、マリィ」 「ふふっ、ホップがそう言ってくれるなら……うれしい」 最初の頃は自分の事なんて全然話さなかった。 ホップがユウリの事をよく聞いてきたから、あたしもそれに合わせていた。 共通の友人で、何よりもあたしたちが目指すチャンピオンだから。 だけど、いつの間にかユウリを話題にすることはなくなっていた。 それはたぶん、あたしがユウリの事を話さなくなったから。

2 20/08/14(金)23:56:39 No.718106177

ホップがユウリの事を聞く前に、あたしが別の話題を話し出すようにしたから。 だって、ユウリの事を話す時のホップはどこか寂しそうで、だけど嬉しそうで。 彼の話すなんて事ない思い出が、あたしの知らないユウリを教えてくれて、 きっとユウリも、あたしの知らないホップを知ってるんだなってわかってしまって。 ホップは、あたしの事全然知らないんだろうなって気づいてしまって。 今、あたしたちの話題はホップの事か、あたしの事。 ジムリーダーは大変だとか。ポケモンを育てるとき何を考えているか。 ホップはポケモン博士を目指しているから、あたしなりの育成論みたいなのを話すと興味深そうに聞いてくれる。 ホップが話すポケモンの色んなあれこれは、悪タイプのポケモンばかり育ててるあたしにとって新鮮で、勉強になる。 そうやって彼との会話に熱中していると―――――罪悪感を忘れていられた。

3 20/08/14(金)23:56:50 No.718106254

・・・・・ 「マリィはどうしてオレに弁当を作ってくれるんだ?」 そう尋ねられた時、心臓が止まるかと思った。 「……迷惑?」 卑怯な答えだ。そんな事言われて頷く人じゃないって知っているのに。 案の定、ホップは直ぐにあたしの言葉を否定する。 「そんな事ない。そんな事ないが……ただ、どうしてなんだって」 碌に会ってなかった女が急にお弁当を作ってきた。疑問に思って当然だ。 そして、その理由を考えた時一番正解に近いと思う理由は一つだろう。 「ユウリに頼まれたのか?」 「………………うん」 「……そうか」

4 20/08/14(金)23:57:00 No.718106325

嘘だ。 ユウリはそんな事言ってない。もう、あたしにホップの様子を見てくれなんて頼んでない。 お弁当はあたしが勝手に作ったものだ。 それを渡す理由を、あたしは嘘で作った。 そして今また、嘘で嘘を塗り固めた。 あたしは……大ウソつきだ。 ホップに嘘をついてる。 ユウリに嘘をついてる。 あたしに、嘘をついてる。

5 20/08/14(金)23:57:13 No.718106421

自分がユウリを裏切っていることに気づいているのに、気づいてない振りをしている。 自分の想いに気づいているのに、気づいてない振りをしている。 だって、あたしはユウリの親友だから。 ユウリは、ホップの事が好きだから。 ホップは……ユウリの事が好きだから。 だって、気づいちゃったから。 一緒にお昼ご飯を食べて、ユウリの事をあれこれ話していて、ホップはあたしと話しているのに、時折あたしではない誰かを見ていた。 寂しそうな瞳でここにいない『ユウリ』を見ていた。 それに気づいた瞬間、胸が抉られるような痛みを覚えた。

6 20/08/14(金)23:57:36 No.718106589

「…………ホップ」 「……なんだ?」 だからあたしは、 「明日も、来てよか?」 「もちろんだ」 今日も親友を裏切っている。

7 20/08/14(金)23:58:09 No.718106803

・・・・・ こんな事もうやめよう。今更過ぎる決意を固めたきっかけは、一通のメールが来たからだった。 送ってきたのはあたしの親友にして遠征中のチャンピオン、ユウリ。 内容は……『もうすぐ帰れそう!』。 ……終わりの時が来たんだ。 勝手に間借りしていた彼女の居場所を返す時が来たんだ。 だからもう、ホップとは会わない。 あたしのしてきた事を知ったらきっとユウリは傷つく。 あたしがどうしてそんな事をしてたのか考えて、答えに気づいてしまう。 そうなったら、もうユウリと親友でいられない。 そんなの、嫌だ。 チャンピオンでも、ライバルでも、あたしはユウリと友達でいたい。 一緒にご飯食べたり、買い物したり、愚痴ったり、思った事を気兼ねなく話せる。 そんな関係でいたい。 だから――――ホップと会うのは今日で最後にしよう。

8 20/08/14(金)23:58:26 No.718106922

・・・・・ 決意を固め、研究所へとやってきたあたしを迎えたのは輝くような笑顔のホップだった。 「マリィ聞いてくれ!」 「な、なに?」 ホップは駆け寄ってきて、あたしの両手を強く握る。 いつもより高い彼の体温があたしの中に流れ込んで、こちらの体温も上がっていく。 動揺するあたしに対して、ホップは感無量と言った様子だ。 「ついにオレの研究が認められたんだ!!オレ、ついに博士になれるんだ!!」 その瞬間、あたしもホップと同じ気持ちになった。 目元が熱くなり、涙さえ浮かんでくる。 「っ……おめでとうホップ!!ほんと、ホント良かったっ……!」 「ああっ!」 たった1年ぐらいだけど、あたしはホップが頑張ってきた事を知っている。 食事さえ疎かにして、研究に没頭してたのを知っている。

9 20/08/14(金)23:58:38 No.718107020

そんな彼の努力が認められた。 彼の夢が叶った。 それが嬉しくて、嬉しくて。 「これなら、来年のジムチャレンジにも参加できるぞ!」 「……え?」 なのに、その言葉を聞いた瞬間、スッと頭から熱が引いた。 「よし、今から特訓しないと……ああでも研究も疎かにしないようにしないと……うーん……ひと段落したと思ったらまたやる事山積みだな……」 ホップは楽しそうに今後の展望を呟く。 きっと、あたしがどんな表情をしているのか見えていないんだろう。 ああそうだ、そうだった。 ホップは、諦めてなかったんだ。

10 20/08/14(金)23:58:52 No.718107096

『ユウリに会ったらオレも頑張ってるぞ。だから……待ってろって伝えて欲しい』 今も、ユウリを追いかけているんだ。 ユウリの事が、好きなんだ。 あたしはそれを応援すればいい。 そしていつか、そう遠くない未来。 彼と彼女が結ばれるのを信じて、祝福すればいい。 それがあたしにとって一番幸せな事で、あたしにとって何よりも大事な友情を守る事で、それが―――――― 「だからオレは絶対に諦めない!!オレは、今度こそユウリに……」 ―――――そんなの、嫌だ。

11 20/08/14(金)23:59:11 No.718107233

「ホップ」 「なんだ?」 「ホップってさ、ユウリの事好き?」 「え?」 唐突な質問にホップは呆気にとられた様子だ。 「ホップってさ、昔っからユウリと一緒だったんでしょ?だから、好きなんかなって」 「…………わからん」 曖昧な返答。 それを聞いたあたしが不機嫌になったとでも思ったのか、ホップは慌てて続ける。 「ああいや、嫌いとかじゃないんだ。好きか嫌いかで言ったら間違いなく好きだ」 そうだろう、ホップがユウリを嫌いなんて事あり得ない。 嫌いな人を何年も追いかけたりしないだろう。 会う事が少なくなっても、それでもお互いの事を心配してたのは想い合ってるからに決まっているだろう。 「ただ……そう、だな。オレはずっとあいつのライバルだ。少し立ち止まったけど、やっとまたあいつを追いかけられる。それは、嬉しい。本当に嬉しいぞ」 ただ、ホップは気づいていないだけなんだ。

12 20/08/14(金)23:59:28 No.718107363

自分がユウリをどう思っているのか。 近すぎて、遠すぎるから。 だけど、その距離はきっとたった一言で縮まる距離で、ユウリはやっとその距離を縮める決意をした。 そしてホップも今、自分がユウリをどう思っているのか気づこうとしている。 このままならきっと、二人は結ばれる。 「……オレは、もしかしたらはユウリの事が――――」 あたしは、そんなの嫌だ。 「ホップ、あたし、あたしね」 ダメ。ダメだ。そんな事、言っちゃいけない。 頭の上っ面にそんな言葉が響く。 あたしがしようとしている事はただの横やりだ。 ユウリの信頼を、友情を裏切る最悪の行為だ。 ………………だから?

13 20/08/14(金)23:59:43 No.718107477

意思が纏まらない、止めたいのに止められない。 止めたくないから止められない。 口が勝手に動く。 何もかもぶち壊すために。 あたしの意志を無視して、あたしの本心に従って。 そして、 「ホップの事、好いとーよ」 何かが砕け散る音が、頭の中に響いた。

14 20/08/14(金)23:59:55 No.718107540

「ホップの頑張ってる姿が好き、いつだってやる気に溢れてて、目標を達成してもまた別の目標を見つけて走り出すあんたが好き」 好き、ずっと好きだった。 数年ぶりに会って、少し大人になったホップを見て、あたしは胸が高鳴った。 ユウリのためだって思ってたのに、いつの間にかあたしがホップに会いたくなっていた。 彼の元へ行く理由を、嘘で作ってでも。 「あんたと一緒にいると、あたしももっと頑張りたいって思える。もっと、走りたいって思える。もっと……あんたの事を知りたいって思える」 唇が震える。 きっと、顔は真っ赤になっている。 だけど、絶対に目は逸らさない。 彼の金色の瞳から、絶対に目を離さない。 だって、あたしは…………ホップが好きだから。 罪悪感なんてもう、塗り潰されていた。 「だから、あたしと付き合って」

15 20/08/15(土)00:00:18 No.718107711

・・・・・ 研究所に静けさが戻る。 あたしはただ、待っている。 ホップの答えを。 それは、どこか判決を待つ罪人のような気持ちだった。 一秒がその何十倍にも長く感じる。 心臓の早鐘は鳴りやむ気配がない。 早く答えて欲しいと思うと同時に、答えなんて聞きたくないと逃げ出したくなる。 そのせめぎ合いに心が悲鳴を上げ始めた時、 「…………ぉう」 ホップが、ぎこちなく頷いた。 その瞬間の気持ちを表現するには、あたしの知っている言葉じゃ足りない。 代わりに、瞳から涙がこぼれた。

16 20/08/15(土)00:00:31 No.718107791

怖かった。 もしも断られたらって。そうなったらもう、あたしはホップのそばにも、ユウリのそばにもいられないって。 今はもう、そんな気持ちは消し飛んでいる。 だって、ホップは頷いてくれたから。 「ホップ……」 「な、なんだ?ていうかその……泣いて、」 ぎゅっとホップに抱き着く。 彼の体がビクリと跳ねるのを感じた。 構わず強く抱きしめる。 何も言わず、じっと彼の体温を感じる。 あたしは、幸せだった。

17 <a href="mailto:s">20/08/15(土)00:01:36</a> [s] No.718108277

明日で終わらせる予定だったけど本来予定していた今回分が30レス超えてしまったので流石に分割します

18 20/08/15(土)00:02:53 No.718108812

>本来予定していた今回分が30レス超えてしまったので流石に分割します なそ にん

19 20/08/15(土)00:03:36 No.718109115

最近の生きがい助かる

20 20/08/15(土)00:07:46 No.718110894

みんな幸せになれ…

21 20/08/15(土)00:07:59 No.718111004

ここから更に増えて13レスあるはずだったってどういうこと…? 窓から見られてたりするやつ…?

22 20/08/15(土)00:10:22 No.718112130

こんな超大作が毎日更新される幸せ

23 20/08/15(土)00:14:35 No.718114100

読み応えあるな

24 20/08/15(土)00:16:12 No.718114843

チャンピオンは幸せになれるのかなこれ…

25 20/08/15(土)00:16:58 No.718115169

女の友情は儚か

26 20/08/15(土)00:21:41 No.718117516

死なないけど生きた屍になりかねない

27 <a href="mailto:s">20/08/15(土)00:27:13</a> [s] No.718119880

>ここから更に増えて13レスあるはずだったってどういうこと…? 今回分は最初10レス程度だったんですが昨日 >昨日も長かった >明日もきっと長いよ… とイキった発言をしたことを思い出したので頑張った結果30レス超えちゃいました

28 20/08/15(土)00:29:08 No.718120625

自分の発言に責任を持つ「」が存在するなんて…

29 20/08/15(土)00:31:16 No.718121482

>とイキった発言をしたことを思い出したので頑張った結果 うn >30レス超えちゃいました 加 莫

30 20/08/15(土)00:32:44 No.718122005

永続キョダイゴクエンはやめてくれんか…

31 20/08/15(土)00:35:39 No.718123066

胃が痛いけど素直に楽しみにしてるよスレ「」…頑張って…

32 20/08/15(土)00:35:49 No.718123129

「」ウリ視点からすると信頼していた親友に昔から好きだった幼なじみをNTRされて… これはおつらい…

33 20/08/15(土)00:38:24 No.718123972

スレ画が何かを見てしまった「」ウリに見えてきた

34 20/08/15(土)00:39:32 No.718124364

チャンピオンになって得たものは義務と裏切りだ どうだすごいだろう しかも裏切ったのは親友だ どうだすごいだろう

35 20/08/15(土)00:43:08 No.718125555

>チャンピオンになって得たものは義務と裏切りだ >どうだすごいだろう >しかも裏切ったのは親友だ >どうだすごいだろう こんな惨めな栄光ってある?

36 20/08/15(土)00:49:02 No.718127448

俺んとこのユウリみたいになんやかんやでキバナさんにホレちゃってる可能性だってあるし…

37 20/08/15(土)00:54:14 No.718129107

>こんな惨めな栄光ってある? 私は誰より強いんだが口癖になるチャンピオン…

38 20/08/15(土)00:54:47 No.718129274

ン・・・ゲ・・・

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