虹裏img歴史資料館

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20/08/12(水)23:35:12 オレが... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1597242912675.png 20/08/12(水)23:35:12 No.717433647

オレがポケモンの研究者を目指し始めて、もう5年くらい経つ。 そこそこトレーナーとしては実績を積んだと自負していたが、研究者に求められるのはそれとはまた質の違う知識ばかりで、 勉強を始めた当初は色々苦労した記憶しかない。 それでも、知らない知識を知り、その知識が新たな知識の理解に繋がるととても嬉しく、何よりも楽しかった。 そうやってちょっとずつ勉強をして、同時に自分なりに研究もしていって、 その研究が少しずつ認められるようになってきたのがここ最近のことだ。 上司にして先輩研究者のソニアはガラルの歴史研究においてそれなりの地位を得て、今や大学の講師も兼任している。 昔のソニアが見たらたぶん信じられない!と驚くだろう。 正直俺も未だにソニアが大学で教鞭を振るっている姿が想像できないが。

1 20/08/12(水)23:35:25 No.717433723

まぁとにかく、お世話になってる先輩が出世してることはとてもめでたいことだ。それは良い。 ただ、ソニアが大学の講師を受けて以降、この研究所は半ばオレ専用となっていた。 慣れない講師の仕事が大変なのに加え、講師として閲覧できる大学の所蔵する色々な資料はソニアにとってとても有難いものらしく、 最近は研究所に顔を出すのは週一といったところだ。 だから、今日もオレは一人でパソコンと資料に向き合いながら自分の一人自分の研究を進めている。 これがひと段落したら、またフィールドワークに出たいんだが…… 「ホップ」 キーボードを叩いていると、入口からどこか朴訥とした声が響いてきた。 「マリィ」 入口に立っていたのはスパイクタウンのジムリーダー、マリィ。 一応、俺のトレーナーとしての同期といった存在だ。 「来たのか」 そう言うと、マリィはムッと口を曲げる。

2 20/08/12(水)23:36:34 No.717434123

「そういう言い方はなか。わざわざ忙しい合間を縫ってスパイクタウンから来てやってるたい。もっと感謝して」 マリィの言う事はもっともだ。今の言い方じゃまるでめんどくさがってるみたいだな。オレは慌てて謝罪の言葉を口にする。 「あ、ああ。ごめん、悪かった」 「そうそう、喜ぶたい。ほら、今日のお弁当」 「また作ってきてくれたのか。いつも悪いな」 「あたしの分作るついで。別に大した手間じゃなか」 「そうは言うが……」 「あーもう。その話はもう何度もしたと。ホップ、あんたあたしがお弁当作ってくるの迷惑なん?」 「そんな事ないっ!」 反射的にそう答えると、マリィはニッコリ……いやニンマリと笑う。 「なら、問題なか。ほら、丁度お昼たい。一緒に食べよ」 そういって、マリィは談話室のテーブルに弁当を広げると、慣れた手つきで紅茶を入れる。 「ほら、さっさと来る。お腹減ったら研究なんて出来ないでしょ」 「ああ、今行く」 今では当たり前となった二人きりの昼食会。どうしてそれが当たり前になったのか、オレはふと記憶を手繰り寄せてみた。

3 20/08/12(水)23:36:48 No.717434199

・・・・・ 一年ほど前、突然マリィが研究所にやってきた。正確に言うと研究所の入口の前に。 その時、オレがマリィと会うのは随分久しぶりというか、多分三年前のファイナルリーグ以来だ。 驚くオレが『どうしたんだ』と尋ねると、マリィは昔と変わらずの無表情で、『ユウリからの依頼で様子を見に来た』と答えた。 その言葉の通り、マリィはオレに『ご飯食べてる?』、『研究は大事だけど体動かすことも大事たい』、『たまにはユウリに顔見せてあげて』、 などとあれこれ聞いたりアドバイスしたりなどして、そのまま研究所に一歩も入らず帰っていった。 その後、オレはマリィに言われた通り食事や運動にも気を使い始めたのだが……ユウリとは会わなかった。 いや、会えなかったと言うべきか。 あいつはチャンピオンとして毎日毎日忙しく働いている。 それがどれだけ大変なのかはアニキの事でよく知っている。 オレもまた研究者として中々に多忙の日々を送っていた。 時にフィールドワークに出て、時に他所の地方の学会に出て、時に研究所でパソコンとにらめっこして、と。 そんな状態のオレたちがまともに休日が合うって事はほぼ無いと言ってよかった。

4 20/08/12(水)23:37:18 No.717434375

結局、ユウリと会えないままその年のジムチャレンジが始まって、いつの間にか終わっていた。 他人事みたいに聞こえるかもしれないが、実際オレはその年のジムチャレンジには参加してないから仕方がない。 別にトレーナーの道を諦めたわけじゃない。 ただ、まずは研究者としてちゃんと認められなければと思ったからだ。 二足の草鞋を履くにはオレはまだ足りないものが多すぎる。 ならばまずは一つの事に集中してと思ったから。 『今年はジムチャレンジに出ない』 それを電話で伝えた時ユウリは『そっか』と寂しそうに言った。 その一言がどうにも胸に刺さった。 ジムチャレンジには不参加となったが、それでも、チャンピオンの試合だけはちゃんと見ていた。 テレビの向こうで堂々と戦い、華々しく勝利を飾るチャンピオンの姿に感動して、興奮して、 自分が、あの場に立ててない事に、あいつの前に立てなかった事に寂しさを覚えた。

5 20/08/12(水)23:37:31 No.717434458

それでも、感傷的だったのはその日だけで、次の日からオレは頑張って研究を進めていった。 そんなある日、マリィが再び研究所へとやってきた。 『お昼食べた?』 突然の来訪に呆気に取られていたものの、辛うじて首を横に振る。 マリィは無表情のまま、オレに弁当の入った包みを差し出した。 『なら、これ食べて』 それを受け取ると、オレが何か言う前にマリィはさっさと帰っていった。 包みの中に『ユウリが「ホップ君、私頑張ってるよ。それと……待ってる」って言ってた』と書かれた紙が入っていた。 ユウリが何を待っているのか、言わなくてもわかった。 次の日、弁当箱を受け取りにまたやってきたマリィにオレは『伝言、ありがとうユウリに会ったらオレも頑張ってるぞ。だから……待ってろって伝えて欲しい』と言った。 『わかった』と頷いてそのまま弁当箱を受け取って帰ろうとしたマリィにオレは慌てて『弁当美味しかった!!ありがとう!!』と言った。 マリィは、何も言わず恥ずかしそうに微笑んだ。

6 20/08/12(水)23:37:50 No.717434562

何日かしたあと、マリィはまたやってきてこう言った。 『一緒にお昼食べない?』 断る理由も無かったのでオレは頷き、談話室へと促した。 4度目の訪問にしてようやくマリィは研究所へと足を踏み入れた。 その後は毎日のようにマリィは研究所にやってきてオレと昼食を食べた。 その間の会話は大体ユウリの近況とオレの近況が主なテーマだった。 だけど、昼食会の回数が増えていくうちにユウリの話題は減っていって、代わりにマリィの話題が増えていった。 『ジムリーダーは大変』だとか、『だけどやりがいがある』、とか、 『アニキ以上に頑張ってスパイクタウンを盛り上げるんだ!』とか。 特に、最後の宣言はオレも力強く頷いて応援した。 マリィはやっぱり恥ずかしそうに笑った。 時折マリィが来ない日があったが、そんな時は必ず電話が来て『今日は仕事で行けない。ごめん』とだけ言って直ぐに切られた。 マリィはジムリーダーなんだから忙しくて当然なのになんで謝るんだろうと思った。 そうやって会ったり会わなかったりを繰り返すうちにいつの間にか一年が経っていた。

7 20/08/12(水)23:38:14 No.717434705

・・・・・ 「……ップ、ホップ!」 気が付くとマリィがオレの顔を訝し気に見つめていた。 まずい、どうやら意識が過去に飛んでいたらしい。 オレは平静を装って聞き返す。 「……ん?なんだ?」 「もう、聞いてなか?」 「すまん、ちょっと研究の事考えてた」 「それじゃあ……しかたなか」 咄嗟に付いた嘘だったが、マリィは納得してくれたみたいだ。 だが嘘を吐いたことと、それをマリィが信じた事で二重の罪悪感に苛まれてしまう。 それを誤魔化すためにオレは前からの疑問を投げかけて見た。

8 20/08/12(水)23:38:50 No.717434899

「なぁ」 「何?」 「マリィはどうしてオレに弁当を作ってくれるんだ?」 「……迷惑?」 不安そうに首を傾げるマリィにオレは言い含めるように伝える。 「そんな事無い。そんな事ないが……ただ、どうしてなんだって」 「……」 「ユウリに頼まれたのか?」 「………………うん」 「……そうか」 さて、この時オレはどう思ったのだろうか。 嬉しかったのか、悲しかったのか。 前者ならユウリがオレの事を気にかけてくれていたからだ。 ろくに連絡も取らないお隣さんのオレをあいつは今でも心配してくれている。 チャンピオンとして忙しいだろうに。それは、本当に嬉しい事だ。

9 20/08/12(水)23:39:06 No.717434989

なら、どうして悲しい可能性があるのだろうか。 もしも、マリィがオレのところに来るのにユウリの意志が無かったとしたら、 それはたぶんマリィの意志によるものって事で、なら、それは、つまり――――― 「…………ホップ」 オレの意識がまたどこかへ飛ぼうとしていた時、マリィが呟くような声で呼んだ。 「……なんだ?」 「明日も、来ていい?」 「もちろんだ」 反射のようにそう答えた。 さっきまで何を考えてたのか、何を考えようとしていたのか、もう忘れていた。

10 20/08/12(水)23:39:18 No.717435058

・・・・・ それからまたしばらく経ったある日、マリィがいつものように研究所に入ってきた瞬間、オレは諸手を上げて叫んだ。 「マリィ聞いてくれ!」 「な、なに?」 驚くマリィ。 オレは気にせず彼女の両手を取る。 「ついに俺の研究が認められたんだ!!オレ、ついに博士になれるんだ!!」 無論その研究はオレだけの力で認められたわけじゃない。ソニアはもちろんマグノリア博士からも多大なサポートを受けてやっとといった具合の物だった。 それでも、論文が認められた事には変わりがない。 オレは、やっとあの日夕焼けが照らすまどろみの森でユウリに宣言した目標に一歩たどり着いたんだ。 「っ……おめでとうホップ!!ほんと、ホント良かったっ……!」 「ああっ!」

11 20/08/12(水)23:39:32 No.717435135

マリィは瞳を潤ませ、オレの手強く握り返してくる。 オレもそれが嬉しくて更に強くその手を握る。 やっと、やっとオレの夢に届いた。 まだこれで終わりじゃない。むしろ始まりだってわかってる。 それでも、スタートラインに立てたそれが、どうしようもなく嬉しい。 オレのもう一つの夢にまた走りだせることも。 「これなら、来年のジムチャレンジにも参加できるぞ!」 「……え?」

12 20/08/12(水)23:40:00 No.717435288

あの日、オレはポケモン博士になるとユウリに誓った。 だけど、それはトレーナーを、チャンピオンになる事を諦めたわけじゃない。 もっと勉強して、もっと強くなって、必ずアニキもユウリも超えた最強のチャンピオンになってやる。 そう誓ったんだ。 だけど、オレは不器用だから。どっちも全力で頑張るなんて器用なマネは出来なかった。 だから、まずは博士を目指して、その夢が達成出来たら……今度はチャンピオンになる。 そう決めていた。 「よし、今から特訓しないと……ああでも研究も疎かにしないようにしないと……うーん……ひと段落したと思ったらまたやる事山積みだな……」 研究者を辞めるわけじゃない、むしろもっと力を入れないといけない。 その上でチャンピオンを目指す。 ………………これ二足の草鞋じゃないか? 自分の考えが昔とまるで変っていない事に気づいて愕然とするも、今更チャンピオンを目指すのを再延期するなんて気持ちにはなれない。

13 20/08/12(水)23:40:30 No.717435471

だって、ユウリは今もチャンピオンとして王座を守っている。 今も、オレを待っていてくれる。 「だからオレは絶対に諦めない!!オレは、今度こそユウリに……」 「ホップ」 オレが強い決意を込めて拳を握りしめていると、マリィがそっとオレの名を呼んだ。 「なんだ?」 「ホップってさ、ユウリの事好き?」 「え?」 言葉の意味が一瞬分からなかった。 「ホップってさ、昔っからユウリと一緒だったんでしょ?だから、好きなんかなって」 マリィが聞いてる『好き』の意味を勘違いするほど俺は子供じゃない。 子供じゃないが……彼女の質問に答えられるかというと、 「…………わからん」 オレの回答にマリィは憮然とした表情をする。

14 20/08/12(水)23:40:53 No.717435585

まずい、とりあえずマリィの気に入る回答じゃ無かったみたいだ。 オレはしどろもどろになりながらあれこれと補足を続ける。 「ああいや、嫌いとかじゃないんだ。好きか嫌いかで言ったら間違いなく好きだ」 そう、好悪で言うなら間違いなく好だ。 昔馴染みだからアイツの性格はよく知っている。 「ただ……そう、だな。オレはずっとあいつのライバルだ。少し立ち止まったけど、やっとまたあいつを追いかけられる。それは、嬉しい。本当に嬉しいぞ」 真面目なようでどこか抜けていて、それでいてポケモンバトルの才能はピカ一で、そんなユウリはオレにとってライバルで、目標で――――憧れだ。 その感情にもしも昔馴染みへの友情や、チャンピオンへの敬意以外のものがあるとしたら。 「……オレは、もしかしたらはユウリの事が――――」 「ホップ、あたし、あたしね」

15 20/08/12(水)23:41:03 No.717435633

瞬間、マリィが両手でオレの顔を挟み自分へと向けさせる。 突然の事で、オレが何を言おうとしたのか吹っ飛んだ時、 「ホップの事、好いとーよ」 畳みかけるようにマリィの笑顔と、告白が脳へと飛び込んできた。 「ホップの頑張ってる姿が好き、いつだってやる気に溢れてて、目標を達成してもまた別の目標を見つけて走り出すあんたが好き」 マリィの顔は真っ赤で、唇は緊張で震えてて、 「あんたと一緒にいると、あたしももっと頑張りたいって思える。もっと、走りたいって思える。もっと……あんたの事を知りたいって思える」 だけど、絶対にオレから目を逸らさなかった。

16 20/08/12(水)23:41:16 No.717435702

「だから、あたしと付き合って」 そう言い切って、オレを解放する。 でも、その瞳は答えを聞くまで絶対に逃がさないとオレを貫いている。 それだけの覚悟を込めた告白だ。 どんな結果になろうと、オレはちゃんと応えないといけない。 大きく息を吸う。 マリィを見つめ返す。 そして、 「…………ぉう」 油の切れたロボットのようにぎこちなく、小さく頷いた。 その日の晩、もっと気の利いた返事が出来ただろっ!?と、ベッドの上をのたうち回る事になった。

17 20/08/12(水)23:42:00 No.717435974

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18 20/08/12(水)23:42:22 No.717436076

むっホプマリキテ…思ったより長いぞこれ!?

19 20/08/12(水)23:42:35 No.717436158

長いです たぶん後4,5回スレ立てます お盆のうちには終わらせるんで また明日もスレ立てるんでよろしくお願いします 人死には出ないので安心してください

20 20/08/12(水)23:42:42 No.717436191

思わぬ大作がお出しされた…

21 20/08/12(水)23:44:06 No.717436661

> たぶん後4,5回スレ立てます なそ にん

22 20/08/12(水)23:44:13 No.717436699

いい… いいけどまた敗北してる…

23 20/08/12(水)23:44:21 No.717436731

あらあら超大作ね

24 20/08/12(水)23:44:22 No.717436738

大作だぁ

25 20/08/12(水)23:44:29 No.717436779

大作すぎる…

26 20/08/12(水)23:44:44 No.717436873

笑顔の練習してるマリィを初対面で自然に笑わせた男だからな…

27 20/08/12(水)23:44:55 No.717436924

分かっておったろうにのう いかに鎧があったところでユウリから歩み寄らねば結ばれることはない

28 20/08/12(水)23:44:58 No.717436941

じっくり読ませてもらう…

29 20/08/12(水)23:44:59 No.717436946

まっとうな2次創作だこれ!

30 20/08/12(水)23:45:49 No.717437209

気ぶれる予感がするわね…

31 20/08/12(水)23:47:49 No.717437837

抱けー!抱くのよー!

32 20/08/12(水)23:49:07 No.717438273

抱けー!抱くペコー! >また明日もスレ立てるんでよろしくお願いします わーい楽しみ! >人死には出ないので安心してください 不穏すぎるわ!

33 20/08/13(木)00:03:06 No.717443036

かーっ!見んねマリィ! 卑しかあたしたい!

34 <a href="mailto:s">20/08/13(木)00:04:21</a> [s] No.717443493

モルペコは空気を読んでボールに入ってます

35 20/08/13(木)00:08:35 No.717444971

突然オーセンティックなホプマリがやってきてこれは… まだまだ活気がありすぎる…

36 20/08/13(木)00:19:23 No.717448774

マリィがこんなことするかァ~!!

37 20/08/13(木)00:22:54 No.717450114

ロンゲはどう思う?

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