20/07/27(月)23:32:36 「カル... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1595860356655.jpg 20/07/27(月)23:32:36 No.712489021
「カルデアのマスター殿? 辞世の句などお詠みになっては如何ですかなァ?」 「誰が詠むか、そんなもん!」 一言そう投げつければ、影の哄笑はますます大きくなった。より近くで影曰く『愁嘆場』を見物してやろうという魂胆なのか、影が近寄ってくる。 「おやおやおやおや殺されかけているというのに随分とまた余裕があるのですねェカルデアのマスター殿? まさかまさかまさかァ! 信じておられます? 『敵の術を絆の力で打ち破る』などと夢を見ておられます? それはそれは、いささかフィクションの見過ぎではないでしょうかァ? いやまだ年若い少年少女の身であらせられるカルデアのマスター殿がフィクションに影響を受けるというのはそう不自然ではないでしょうが残念ながらァ! それはあり得なァい! 哀れ、拙僧の術中に嵌まったサーヴァントの手によって──」 ──その閃きは神鳴りの如く。空間ごと抉り取るような強烈な一閃は、影の上半身を一撃で消しとばした。カラン、と手に握られていたナイフが落ちる。
1 20/07/27(月)23:33:31 No.712489281
「──サーヴァントの手によって、なんですって?」 「ンンンンンンンンン! 馬鹿な、拙僧の術が破られるなど!」 「香子さん達の護符、効果バッチリだよ」 「『効いていないのに効いているフリをして』とは……マスターもなかなか意地が悪い」 「下らない猿芝居で拙僧の術を愚弄するとは……まさか、まさかァ! その術は! 此度も拙僧を阻むか清明ィィィィィィィ!」 上半身を消し飛ばされてもなお未だ影は蠢いて元の形を取り戻そうとしている。やはり、元を断たなければこの影は何回でも復活するのだろう。回復までの時間稼ぎのつもりだろう死霊の群れが召喚される。死霊に守られるように埋もれた影は元の姿を取り戻しつつあった。 「まだまだまだァ! 拙僧の術がこれだけだと思われるのは実に心外! ええ、人の精神など脆いもの! 特にカルデアのマスター殿は呪詛怨念の類いの廃棄孔のようになっているご様子でェ! ちょうどお誂え向きにナイフなど落ちているのならば有効活用しない手はないでしょう! ならばァ、ならばァ! そこにほんの少し、拙僧の呪詛を混ぜ込んでやればァ、実に簡単に──」
2 20/07/27(月)23:34:03 No.712489431
「『まだ』か──次があると思うな」 炎神の炎を纏った弓矢に焼き尽くされ、次々と死霊が蒸発していった。複数放たれた矢のうち一射──それが死霊の群れを突破して影を貫き、焼き尽くそうとした瞬間。 キィン、と耳障りな音がして赤い魔法陣が再び発動する。何かの壁に阻まれたように矢はそこで止まり、影に届くことはない。 「神代の弓使いと伺っていましたがこれはァ」 あからさまな挑発に乗ることもなく、アルジュナは二射目、三射目と続け様に矢を放つ。その様子はさながら流星のように鮮やかで、とにかく目を引いた。しかし、一射目同様術式に阻まれ届くことはない。 「いささか火力不足のようで」 「いや──これでいい。何故なら」 「これで、終わりだ!」
3 20/07/27(月)23:35:43 No.712489931
アルジュナの弓の防衛でガラ空きの背後に回り込む。香子さん達が作成したこの特異点に蔓延るその元凶、術式を無効化し破壊するという護符。それを影に向かって叩きつける。途端、護符の紋様が青く光り出し、影がボロボロと崩れ出した。 「ンンンンンンンンン! 小賢しい真似をォォォォ! ただの、ただの人間に拙僧が──」 影はサラサラと黒い塵となって消え、歪んでいた空間も元に戻る。「3-A」と書かれたプレートが自分達が元の学校に戻ってきたということを知らせていた。 「お、終わった……」
4 20/07/27(月)23:36:23 No.712490129
安心感からか全身から力が抜けて、その場にへたり込んでしまう。全力疾走した後みたいに心臓はバクバクとうるさい。 「お疲れ様です。……正直肝が冷えましたよ、あなたの作戦。上手くいったからよかったものの……」 「あはは……」 「笑い事じゃありません! なんですか! 『とにかく派手に動いて引き付けて、あとはなんとかする。信じて』じゃ、ないんですよ! 囮にこのアルジュナを使おうなどという作戦を立てる人間、世界中探したってあなたぐらいしかいません」 「えへへ」 「いや、褒めてないですから」 じっとりとした目でこちらを見てくるアルジュナにVサインを返せば、ますます彼の眉間にシワが寄る。むにむにとそのシワを解すように指を伸ばせば、彼は『しょうがないなぁ』とでも言いたげに軽いため息をつく。しばらくしてから眉尻を下げ、口元を緩めたアルジュナがこちらに手を差し伸べつつ、柔らかい口調でこう告げる。 「……帰りましょうか、リツカ」
5 20/07/27(月)23:38:24 No.712490666
「そうしたいのはやまやまなんですけど、足が……」「足が? ……もしや怪我でもしましたか」「その、今更なんだけど……。時間差で……」 アルジュナの目線が自分の足に落ちる。今更恐怖でガクガクと小刻みに震えて使い物にならない足の様子を見て、彼は納得したように頷く。 「背中に背負うのと、肩を貸すの──どちらがいいですか?」 「……肩で、お願いします」 アルジュナに肩を貸して貰って、寮への道を二人で歩く。まだ上手くいうことを聞かない足のせいでちょっとふらついてしまうのはご愛嬌だ。行く時は薄曇だった空模様もいつの間にか澄んだ夜空になっており、雲に阻まれて見えなかった星々が顔を出していた。月もいつも通りになっている。 「星が綺麗だね」 「……ええ、本当に」 「あ! あれがアルタイルだから……」 「あちらがベガ、でしょうか?」 「やっぱ、アルジュナは目がいいから見つけるの早いね。……なら、あれがデネブだ」 「夏の大三角、でしたっけ」 「うん。『あれがデネブ、アルタイル、ベガ 君は指差す 夏の大三角』なんて」 「……ふふ、なんですかそれ」 「夏の大三角って言えばこの曲だからね」
6 20/07/27(月)23:40:19 No.712491234
君の知らない物語いいよね…
7 20/07/27(月)23:40:44 No.712491366
見切り発車で始めたせいでなんも考えてなかったのでここらへんで一区切りとします ちゃんとストーリー考えてくれる人が書いた方がいいですね! 思いついたらまた書きます お付き合いいただきありがとうございました
8 20/07/27(月)23:43:49 No.712492311
爽やかな青春って感じでこのアルジュナのシリーズ好きだったよ… スレ「」ありがとう…
9 20/07/27(月)23:49:27 No.712494052
星空を見ながら帰るの青春していていいよね… スレ「」お疲れ様!
10 20/07/28(火)00:03:37 No.712498338
気安いやり取りで友人っぽい雰囲気いいよね…