虹裏img歴史資料館

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20/07/26(日)23:36:32 「じゃ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1595774192441.jpg 20/07/26(日)23:36:32 No.712209142

「じゃあ、行こうか」 「ええ」 夜の寮をこっそりと抜け出し、学校への道を二人でただ黙って歩く。ふと見上げた空には、低い位置に禍々しい赤色をした月がぽっかりと浮かんでいた。薄曇で星もろくに見えないような空模様の癖に、その月だけはやけにはっきりと見える。 そうしてたどり着いた学校は昼間の賑やかな雰囲気とはうってかわって、やけに物々しい威圧感を放っていた。当然、先生や生徒などはとっくのとうに帰宅しており、人の気配など当然あるはずもない。もちろん、玄関などの入り口も本来ならば施錠されているはず──なのだが。 「……開いてる」 一応試してみるという程度のものだったのだが、抵抗は特になくあっさりと扉は開いた。 「向こうも準備万端で待ち構えている──ということですか。……ちなみに開いていなかった場合はどうするつもりだったのですか?」 「裏に回って昼間あらかじめ開けておいた裏口から侵入する──予定だったよ」 「なるほど」

1 20/07/26(日)23:37:20 No.712209450

昇降口から校内に侵入すると、背後でバタン! という音と共に扉が閉まる。案の定鍵が閉まっており、内鍵も何らかの力で回らなくなっていた。 「逃がすつもりはない、って感じだね」 「向こうがそう来るなら、こちらも」 ……夜間の校内は不気味なほどしんと静まりかえっており、以前のように死霊やらのエネミーが襲いかかってくる気配もない。ただ二人分の足音のみが廊下に響いている。一階、二階、三階──とくに敵襲もなく、ただひたすら無言で階段を上がった。この学校は三階建てである。本来ならば。 「やっぱり」 「……これは」 三階まで上がればあとにあるのは屋上に通じる階段のみ──のはずの三階の踊り場には「3/4」という階数表示があった。 「夏の七不思議──ええと、何番目かは分からないけど……『あるはずのない教室』」

2 20/07/26(日)23:38:51 No.712210043

「教室といいますか……。階ごと増えてないですかこれ……」 「違法建築だよ」 せめてもの虚勢として軽口を叩くと、彼はなんとも微妙な顔をして軽いため息をつく。 「その意気は結構ですが……。ここから先は恐らく完全に敵の領域。今まで以上に慎重にいきますよ」 「おっけー」 「返事は『はい』ですよ、マスター」 「はいはい」 「『はい』は一回」 「……はい」 「よろしい」 満足げに頷いたアルジュナは、先んじて四階への階段を上り始める。後を追うように自分も階段を上ると──そこには異様な景色が広がっていた。 構造自体は今までの階と同じだ。廊下があって、教室が並んでいて、窓がある。ただ、材質(といっていいのだろうか)が明らかに違っていた。今、自分が踏み締めている廊下はリノリウムでコーティングされた硬質なそれではなく、肉色をしておりそれにふさわしいグニグニとした弾力性を有している。廊下も教室も至る所全てがそんな調子であり、なんならその肉色の表面には血管が這い回っており、ピクピクと脈動に合わせて蠢いていた。 何気なく天井を眺めれば、血走った目がぎょろり、とこちらを睨め付けてくる。

3 20/07/26(日)23:39:16 No.712210246

真っ先に浮かんだのは何か大きな生き物の体内のようだ──という感想だった。いや、体内に目がある生き物など魑魅魍魎の類でしかないのだが。 「きも……」 「……」 アルジュナが一歩踏み出すと何処かでキィ、と耳障りな鳴き声がする。二人でグニグニとした不安定な廊下を進んでいくと、そこに何かが"い"た。真っ黒に塗りつぶされた人影、といった調子のそれは目鼻立ちすら判然としない。単純に逆光とかそういうものではなく、影がそのまま人の形をとったという印象を受けた。 大袈裟でともすれば道化めいた仰々しい仕草でそれは一礼する。 「カルデアのマスター殿のお越し──拙僧心よりお待ちしておりました」

4 20/07/26(日)23:39:45 No.712210446

口すらどこにあるかわからない影が朗々とした声で喋りだす。表情などは一切こちらから読み取ることは出来なかったが、ただ確実に奴は笑って──否、嗤っている事だけははっきりと理解した。横のアルジュナを見やれば、その手にはすでに「炎神の咆哮」が構えられている。 「……お前がこの特異点を歪めた元凶か」 「ン、ンンンン! 拙僧は哀しいですカルデアのマスター殿! ただ、拙僧はあなた様と『おはなし』がしたかっただけだと言うのに──」 「なら、交渉は決裂だ。もう黙れ」 「交渉の余地すら与えていただけないとは……ン? おやおやおやァ? そちらにいらっしゃるのは……いつぞやの……」 影の目線(なのだろうか?)がアルジュナに移る。何か不穏な空気を感じて咄嗟に彼の前に出ると奴はニンマリと唇を歪めた、ような気がした。 「素晴らしい! 大変美しい主従愛哉! 拙僧はええ、とても良いものを見せていただきましたァ! ええ、ええ、ならばァ! それが壊れる時はどれほど素晴らしいモノを見せていただけるのだろうかと考えるだけで、拙僧昂ぶって参りましたァ!」

5 20/07/26(日)23:40:06 No.712210571

「アルジュナ!」 「ぐっ……!」 紅い魔法陣のようなものが作動したのをかろうじて確認できたが、それがなんなのか考える暇もなく後頭部を廊下にしたたかに打ち付けた。いや、打ち付けられた。眼底で火花が散る。 「アル、ジュナ……」 首にヒヤリ、とした感覚が走る。かろうじて目線だけ下にずらせばいつぞやのナイフが自分の頸動脈にそえられていた。……前髪のせいで彼の表情は窺えない。背後では影がけたたましい哄笑を上げていた。 「信頼しあうマスターとサーヴァント! ンンンンン! しかァし、しかし! そんな二人がもしも、もしもォ! 殺し合う! そんなことになったらァ、一体どんな愁嘆場を拝むことが出来るのでしょうかァ……? 信頼しているサーヴァントに今から殺される気持ちはどうですかなァ! カルデアのマスター殿? 辞世の句などお読みになっては如何ですかなァ?」

6 20/07/26(日)23:43:08 No.712211864

>辞世の句などお読みになっては如何ですかなァ? よりにもよって小太郎くんの決め台詞パクるとか本当に煽りスキルだけは高いなこの自称安倍晴明…

7 20/07/26(日)23:44:33 No.712212513

ワラビマンは色んな所で大暴れだな 直接しばける日を楽しみにしてるぞ

8 20/07/26(日)23:45:25 No.712212830

血管建築だな…RPGのダンジョンでたまに見る

9 20/07/26(日)23:48:42 No.712214400

自分の手でマスター殺したらアルジュナはめちゃくちゃ曇る

10 20/07/26(日)23:49:37 No.712214843

しかしアルジュナが自らマスターを殺すところは見てみたいもっとやってくれリンボマン

11 20/07/26(日)23:50:38 No.712215317

曇らせ隊きたな…

12 20/07/26(日)23:53:55 No.712216778

アルジュナはいくら曇らせても良い

13 20/07/27(月)00:19:05 No.712226263

どうしても曇らせられる運命の最高のサーヴァント…

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