虹裏img歴史資料館

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20/07/20(月)23:13:43 【夏休... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1595254423392.png 20/07/20(月)23:13:43 No.710317927

【夏休み怪文書】学校で遊ぶ一日 導入

1 20/07/20(月)23:13:53 No.710317996

喧しく鳴く蝉。 じりじりと肌を焼く日の光。 教室の窓を全開にしても、入ってくる風は生温く、体感温度を上げるだけ。 「……コレは死ぬな」 「熱中症で本当に死ぬぞ、キリシュタリア。その暑苦しい格好を止めたらどうだ」 「おや、心配してくれるのかい、カドック」 「誰が。だがお前が熱中症で倒れると僕も面倒だ。わざわざカイニスを呼ぶのも、藤丸を呼ぶのも手間がかかる」 「君が運んでくれもてもいいんだが」 「嫌味か? 今の僕にお前を運ぶような力なんかない。ニホンの夏はどうしてこうも人から力を奪うんだろうな、汗が止まらないし、嫌に体内に熱が籠る」 「ああ、祖国の夏季と呼べる時期はもう少し過ごしやすいんだがな……」

2 20/07/20(月)23:14:05 No.710318064

実際のところ日本の夏というのは酷く過ごし難い。 気温が高いのはともかくとして、湿度が非常に高く、熱が逃げ難いからだ。 汗をかくと涼しくなるというのは、汗が気化する際に周りの温度を奪うからであって、湿度が高いとその効果は望めない。結果として唯々ダラダラと汗を流すだけとなる。 そしてキリシュタリア=ヴォーダイムは輪を掛けて酷い。なんでこのクソ暑い夏の日にこんな長袖なんだコイツ……。補修に呼び出されたのは僕の落ち度だ。コイツが呼び出されていたのは意外だが。そういうと、『日本史は苦手だし、語学は、まぁ……多少はふざけた面がある』と宣いやがった。 「どんなふざけ方をしたんだ、優等生徒会長」 「いや、ただただ解りやすく書いただけだ。要するに喋り言葉で、短く、簡潔に」

3 20/07/20(月)23:14:18 No.710318139

永遠に補修を受けてろ。 そう突っ込む気力すらなく項垂れて、上がる気温と温い風、染み入る蝉の声に体を委ねる。 それにしてももう九時だが――あるいは、まだ九時だが――教師が来ない。まぁ、この気温だ。来たくない気持ちは、よく解る。僕だって来たくなかった。 キリシュタリアが何を面白がったのか、『教師が来る前に来て今日の課題を先に終わらせてしまおう! そうすれば自由だ!』なんて僕を引っ張り出さなければ、僕はもう少しだけ冷房に当たっていられた。 「あ、二人ともいた」 「おや、藤丸立香」 「藤丸? どうした、お前も補習か?」 「いや……今日は補修無いよ、二人とも」 キリシュタリアが目を丸くする。僕は只恨みがましい目を彼に向けた。

4 20/07/20(月)23:14:32 No.710318216

「はははは! お前でもこんな失敗するんだな、キリシュタリア!」 「カイニス、家を出る前に教えてくれても良かったんじゃないか」 「口をとがらせても可愛げはねぇ! 生憎俺様は補修なんてものは受けてないんでな、予定までは知らねぇよ」 藤丸の後ろにはカイニスもいた。それに、もう一人。 金髪に、真白の装束。確か……リリィだったか? 「藤丸立香、君はどうしてここに」 「いや、カイニスさんに、キリシュタリアさんが補修に来てるって聞いて、今日は無いよって伝えに。図書室と保健室にも用事があったし」 「図書室はともかく、保健室? 誰か務めているのかね?」 「ああ、うん。なんだか俺もぼんやりとしか覚えてないんだけど」 「……お前まで日差しにやられたか?」

5 20/07/20(月)23:14:47 No.710318299

この夏の日差しは強力で、どこか景色が揺らいでさえ見える。 ああ、確かに、少しくらいぼんやりとすることだってあるだろう。打ち水すれば陽炎だって見えるかもしれない。 「ありがとう、藤丸。そしてすまなかったな、カドック。とりあえず、飲み物とかき氷を奢ろう。源屋の宇治金時でいいかね?」 「……ああもういい。とにかく僕は帰るぞ」 「図書室で少し涼んでから帰らない? 冷房、利いてるよ。これからまだ日差し強くなるし、司書さんも少しなら飲み物を飲んでもいいって言ってくれるから」 藤丸からそう提案を受けて外を見る。 うだる熱気。強くなる日差し。蝉は益々喧しさを増している。 ……魅力的な提案だった。少しくらい体を冷やしてから帰ってもいいだろう。

6 20/07/20(月)23:15:02 No.710318394

「ああ、待て。そういうことなら待ちたまえ。藤丸一等兵、補給物資はあるのかね?」 「勿論キリシュタリア大将! 人数分のスポーツドリンクがございます! あと少しですがお菓子も!」 即興でコントを始められるコイツらはなんなんだ。 「流石だな。ならば、私についてくると良い」 言いながら立ち上がるキリシュタリア。不思議そうな顔をしているのは僕と、リリィだけだ。藤丸は了解、と崩れた敬礼をして、カイニスは暇だしな、と笑っている。 そうしてキリシュタリアの先導で辿り着いたのは、めったなことでは来ない教室だった。プレートには『視聴覚室』の文字。

7 20/07/20(月)23:15:19 No.710318496

「キリシュタリア、僕の記憶が確かなら、ここは鍵がかかっているんじゃないのか」 「問題ない。私の役職を忘れたのかね」 言いながらコイツは真新しいカギを取り出す。 ……真新しい、鍵? 「あ、複製したんだ?」 「しかもマスターキーだ、どこでも開けられるぞ」 「お前っ……! それ、許可取ってないだろ!?」 「当然だ、誰が学校のマスターキーを複製するからと言って許可を出してくれるのかね」 「真面目な顔をしていう事か!」 「い、いいんですか、それ?」 「一々コイツのやることに文句つけてちゃ身が持たねぇぞ小娘」

8 20/07/20(月)23:15:39 No.710318591

「普段誰も入らない場所ってワクワクするよね」 「そうとも。こういうのも一夏の冒険さ」 躊躇なく扉を開くキリシュタリア。視聴覚室特有の匂いが空気に混じる。 ブラインドの下げられた部屋は薄暗かった。手慣れた様子で電気をつけて、更に冷房のスイッチを入れるキリシュタリア。常習犯かこいつ! クソ、生徒会長ともなればこの程度当然って事か……!? 「狭いからすぐに涼しくなる。少しくらい汚しても文句は言われない。更に少しだがテレビも見られる。隠れ家として最高じゃないかね」 「普通は入れないんだ! こういう場所は!」 「お前、時々クラスからいなくなると思ったら、こういう場所にいたんだな」 「私の108ある隠れ家の一つさ」

9 20/07/20(月)23:16:00 No.710318707

自慢げに鼻を鳴らすキリシュタリアをしり目に、僕はとにかく適当な場所に腰掛ける。 精神的な疲労が一気に来た。そうして座っていると、目の前に飲み物が差し出された。藤丸の持ってきたスポーツドリンクだ。 「……ああ、ありがとう」 「ううん。ところでさ、このまま駄弁っててもいいけど……」 「おや、何かあるのかね?」 「トランプがあるよ、折角だし少し遊ぶ?」 「へぇ、トランプか。俺様、やったことねぇんだよ」 素晴らしい、とキリシュタリアが笑う。カイニスも乗り気だった。 乗り気じゃないように見えるのはリリィだけだ。少しだけ険しい顔で、真剣にこちらを――キリシュタリアを見ている。潔癖な彼女の事だ、多分、この状況が嫌なのだろう。

10 20/07/20(月)23:16:25 No.710318855

「リリィ、どうかな、一緒にやらない?」 「――その、マスター。余り長居するのは」 「そんなに長居しないよ。陽が落ちる前には帰るさ」 リリィの言葉に応じたのはキリシュタリアだった。 いつの間にやらテーブルを並べ、椅子を並べ、あっという間に五人座れる状況を作り出した。 ……これ、僕もやるんだな。良心に多少 「……はぁ、解りました。折角だし、少し悪いこともしたいですし」 良心は死んだ。くすりと笑ってリリィは椅子に座る。その前に飲み物が差し出された。 僕も諦めて席につく。ああ、全く。

11 20/07/20(月)23:16:36 No.710318921

「でも、私もあまりトランプで遊んだことは」 「かくいう私もだ、カドック、君はどうだろうか」 「……多少は、だな。メジャータイトル位なら知ってる、という程度だ」 「じゃ、俺のお勧めを幾つかって感じでどうかな? 飲み物もあるし、お菓子も少しあるし、折角だから幾つかゲームやってみようか?」 とある夏の一日。 外は茹るような気温、蝉の鳴き声は締め切った室内にも僅かに響いてくる。 学校の一角。普段は入れないような場所で、夏の一日が始まった。

12 20/07/20(月)23:17:29 No.710319222

導入だけだったのに調子に乗って書いてたら偉いことになりました。 という事で今度はトランプで遊びます。 参加メンバーは藤丸立香、キリシュタリア、カドック、カイニス、セイバーリリィとなります。 毎日とはいかないかもしれませんが、よろしくお願いします。

13 20/07/20(月)23:18:47 No.710319644

面白かったよ エミュうまいね…

14 20/07/20(月)23:33:28 No.710324561

>ブラインドの下げられた部屋は薄暗かった。手慣れた様子で電気をつけて、更に冷房のスイッチを入れるキリシュタリア。常習犯かこいつ! キリ様はこういうことする

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