ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
20/07/15(水)00:54:07 No.708621563
「幸太郎さん！例のアレ、おねがいします！」 さくらが話しかけてきたのは、突然であった。 内容もまた、突拍子も無い事。 「何の事じゃい」 「アレですよアレ！」 ハッキリと言わないさくらを前に考えてみれば、思い当たる節が一つ。 「…何の事じゃい」 それでも、俺は聞きなおす。確信にも似た嫌な予感を、本当に？と確かめるように。 「…あ、アレですよぉ！聞いたんです！愛ちゃんにしてたっていうア」 全てを明かそうとしたさくらの口を塞ぎ、周りを視認。 左、良し。右、良し。前方後方共に良し。ついでに確認、上も良し。 誰も居ない事を確認した後、深い溜め息が口から零れながら、手をさくらの口から外した。 「……聞いたのは、愛か？」 「は、はい！」 期待に満ちた笑顔と共に答えが届いた。それを聞いて、先程よりも更に深く、溜め息。
1 20/07/15(水)00:54:20 No.708621611
「頑張ったご褒美なんですよね！わ、私！今日センターで、頑張りましたよ！」 （あの、バカ…） 初めは、冗談。ふざけていただけだ。 愛も同じで、反応も全て…言うなれば、悪ノリというヤツだと思っていた。 …だが。どうやら、本当に効果があったらしい。 思い返してみれば、アレをした後の愛はパフォーマンスが良かったし、いつにも増して溌剌としていた。 （だが、だが！黙っとけって言っただろうがぁ！もう！） いくら心の内で悪態を吐こうとも、現状は変わらず。さくらの期待も変わらず。 黙りこくった俺にさくらが視線を注ぎ始めてから、どれ程の時間が経っただろうか？ 「……他の面々には秘密にするんだぞ？」 …少なくとも、俺が折れるくらいには経ったというのは、間違いない。 「や、やったぁ！」 「しー！」 「あっ…ごめんなさい」 唇に指を当てるジェスチャーで静かにしろと注意。意気消沈してくれれば良かったが、目の輝きは変わらない。
2 20/07/15(水)00:54:52 No.708621772
「んっんんっ！んー…あー、あー」 まずは喉のコンディションを整える。 軽い咳のように喉を鳴らした後、低い声から高い声まで、しっかりと出す。 「さくら」 そうやって暫くして、整ったと満足したなら、さくらを呼ぶ。 「ちょっと耳を貸さんかい」 「耳ですか？はい！」 ブチッと音が鳴った。さくらから両手が差し出され、見てみるとその掌の上には耳が二つ。 「だぁーれが耳を千切って渡せって言ったんじゃボケェ！！」 渡された耳を掴み、頭をサンド。元居た辺りへ力強く叩きつける。 …我ながら、上手い事成功したようだ。耳は見事、混乱しているさくらにしっかりとくっついた。 混乱しているなら、都合が良い。恥ずかしさが少しは減るだろう。 目を回しているさくらの頬に手を添え、少し低い位置にある耳へ向け背を曲げ、顔を寄せた。 髪と髪が触れ合う程の距離。俺の息遣いすら聞こえるだろう距離で、口を開けて言葉を送る。 「よくがんばったね、さくら」
3 20/07/15(水)00:55:23 No.708621883
「ン゛ッ！！！！！！！！！！」 珍妙な断末魔を一つ残し、さくらは死んだ。 その場で倒れ伏せ動かないさくら。背を曲げて猫背のままの俺。 この場に流れる、奇妙な沈黙。 それが俺にはとてもじゃないが、恥ずかしい。恥ずかしすぎて、帰った。 部屋に入り、ベッドに入り、毛布に包まって目を閉じた。 全て夢だ。死んださくらも覚えていまい。 そう願い、意識を手放した。 翌日。恐ろしい程にキレ良く動くさくらを見て、俺は絶望した。 いや、それだけならば良い話だった。だが、問題はその後だ。 「幸太郎さん！私頑張りました！」 「…なんじゃい」 「アレ！お願いします！！」 ……変な癖がついたようで、本当にどうしたものか。あー、恥ずかし。
4 20/07/15(水)01:02:59 No.708623594
かーっ かーっ
5 20/07/15(水)01:12:12 No.708625418
連続殺人事件の香りがします
6 20/07/15(水)01:15:31 No.708626071
>「ちょっと耳を貸さんかい」 >「耳ですか？はい！」 >ブチッと音が鳴った。さくらから両手が差し出され、見てみるとその掌の上には耳が二つ。 ダメだった
7 20/07/15(水)01:15:59 No.708626164
あの。。。
8 20/07/15(水)01:24:50 No.708627939
これがゾンビの殺し方か…
9 20/07/15(水)01:30:41 No.708629089
これただイチャついてるだけでありんす！
10 20/07/15(水)01:30:56 No.708629141
はいお前ら可愛い
11 20/07/15(水)01:32:59 No.708629512
>>「ちょっと耳を貸さんかい」 >>「耳ですか？はい！」 >>ブチッと音が鳴った。さくらから両手が差し出され、見てみるとその掌の上には耳が二つ。 >ダメだった こういうゾンビっぷりがすっかり板についちゃってる描写に弱い