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20/07/07(火)00:05:32 泥 運命... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1594047932478.jpg 20/07/07(火)00:05:32 No.706291252

泥 運命の夜 https://seesaawiki.jp/kagemiya/ https://zawazawa.jp/kagemiya/

1 20/07/07(火)00:05:44 No.706291319

鈍る感覚の中で聴覚だけが正常に機能していた。 風切り音。自分の身体が横っ飛びに吹き飛んでいく。 悲鳴のようにけたたましく何かが破砕する音が鳴り響いた。 信じられないことに、強化ガラスで出来た相当頑丈なはずの温室の壁が容易く砕け散った音だった。 「が、ぐ――――――っ」 衝撃と共に肺の呼吸が全部抜けきって、それでようやく焦燥感と共に全ての感覚が戻ってきた。 背中から温室の床に落ちて勢いのまま転がったのだ。激痛は身がひしゃげるよう。まるで全身の骨が折れたみたい。 胸を強打しているせいで呼吸をしようと喉を蠕動させたが叶わなかった。 未だ突き刺さる殺意へ立ち上がろうと務めるが、膝が笑ってうまく行かない。 驚くべきことに、これだけ強かに身体を打っていながら手にはバットがまだ握られていた。 だがその形状はくの字に折れ曲がり、もはや原型を留めていない。いや、当たりどころが良かったのか、あの剣に両断されていないのが奇跡だろう。 いつだったか、流姉さんが防犯用と称して持ってきたものが図らずしも役に立つなんて思いもしなかった。

2 20/07/07(火)00:05:48 No.706291345

開戦だ

3 20/07/07(火)00:05:56 No.706291401

とっさに剣閃を受け止められていなければ、今頃俺の胴は泣き別れしている。 赤く明滅する視界で男の様子を探れば、吹き飛んだ俺の背中が破った温室の穴からこちらへまっすぐ向かってきているところだった。 「く――――っ!」 殺意は衰えていない。何もしなければ確実に殺される。 死なないための努力をしなければ。生き残るために可能な限りを尽くさなければ。 どうやって、なんて疑問を浮かべる余裕すら無かった。 男は人間離れしたスピードをたった一呼吸で生み出し、必殺の距離まで彼我の距離を縮めてきた。 「殺されて――――――たまるかっ!」 ぎりりと体内で響いたのは噛み締められた奥歯の叫びだ。 俺はとっさに石畳で出来た温室の床へ掴むようにして触れた。少し湿った石肌の感触がぬるりと指先に伝わる。 「む………――――?」 怪訝そうに唸ったのは男の方だった。 ボクシングのショートブローのような速やかさで繰り出された軽やかな刃。へたり込んだ俺の命を断つために抜き放たれたそれが僅かに鈍る。

4 20/07/07(火)00:06:09 No.706291470

お陰でへし折れたバットでもそれを受け止める余裕ができた。結果としてバットは今度こそ真っ二つになってしまったが、俺の命を守ってくれた。 「うわ………っ!」 だがそれでも衝撃を殺しきれず、広い温室の中を二転三転と無様に転げ回った。 どうにか尻餅をつく形で姿勢を安定させたが、やはり上手く立ち上がれない。本当に骨がどこか折れているのかもしれない。 だがこうしてはいられない。バットはもう俺の身を守ってくれない。何か代わりになる武器がいる。 何か柄が長くてあの剣を受け止められるもの。シャベル。水道管用の鉄パイプ。他に何か―――。 だが、そんな悠長を男が許してくれるはずもなかった。 「今のは何の手品だ?ぼちぼち面白かった。まあ、これで終わりだがな」 顔を上げた俺の目の前には、剣を突き出した男の姿があった。 ほんの一瞬だけ視線を男の足元に落とす。鎧姿の男の具足には植物の蔦が絡みついている。 先程の男の踏み込みを急速に成長した蔦が絡め取り平衡を狂わせたのだ。

5 20/07/07(火)00:06:22 No.706291533

刹那の時間稼ぎにしかならなかったが、俺が長い時間を掛けて取り組んできた魔術が迫る理不尽を微かにでも押し留めたことがこんな時でありながら少し嬉しかった。 「――――――――」 だが、これで詰みだ。 俺が1歩でも動けば男は容赦なく俺の心臓をその剣で串刺しにするだろう。 既知の感覚だ。先程痛感したばかりの死。鋭く、冷たく、そして乾いている。枯れてからからになった花にそれは似ている。 1度枯れてしまえば、その花びらが再び瑞々しさを取り戻すことは決して無い。 「ふむ。それなりの筋の良さはある。が、魔術師らしくはないな。さて小僧、お前は一体何者だったのやら」 剣を構えた男はそのままの姿勢で肩を竦めた。俺には男の言葉も仕草もどうでもいいことだ。 もはや間に寸分の余地なく俺は死ぬ。星明かりに濡れる剣の切っ先に意識が吸い寄せられる。呼吸が浅くなる。 今こうしてその事を考えられるのも、男の気まぐれが感想を口にさせている間のロスタイムに過ぎない。 なら俺はもう死人なのだろう。数秒後に心臓が弾けることが約束されていて、それに抗う術を絶たれているのなら、それはまだ生きているとは呼べはしない。

6 20/07/07(火)00:06:33 No.706291593

「案外お前が七人目だったのかもしれんな。それはそれで手間が省けて結構な話だ」 さしたる感慨もなさそうに、男の剣が突きこまれた。 刃が走る。 これまで何度もそうしてきたとばかりに手慣れた様子の殺意が俺の心臓へ駆ける。 迫ってくるそれを俺は記録された動画を遅回しで観察するようにじっと見ていた。 ここで終幕。他者によって価値や意味の保証もないまま生かされてきた俺の命は、やはり何かを示すこと無くここで終わる。 だって、それは先程経験したことだ。 絶望感すら手荒く拭い去って全てが暗く閉じていくあの死の手触りを味わうのはこれで二度目。 認められない。どうして俺がこんな目に合わなきゃいけない。なんで屑籠にゴミを投げ入れるような気軽さで死ななきゃならない。 ………なんて他愛のない。

7 20/07/07(火)00:06:47 No.706291657

「―――まだ死ねない………!」 ここにあって怒りが込み上げてきた。立ち昇った憤りに任せて俺は胸中に叫ぶ。 「こんなところでちっぽけに死ぬことだけは許されない………!」 莫大な対価を費やされた果てに俺はここに生きている。それが何も成せない命だったとしても。 ここで死んでは、俺が在った意味はマイナスで、ゼロにすらなれない。 「せめて、何かのために費やされなければ………俺は死んでも死にきれない………!」 理不尽を弾劾したところで剣が止まることはない。 次の瞬間には切っ先は俺の心臓へと到達し、血と命の熱が傷口から吹き出るに違いない。

8 20/07/07(火)00:07:00 No.706291719

「―――」 頭に来る。 そんな簡単に人を殺すなんてふざけてる。 そんな簡単に俺が死ぬなんてふざけてる。 一日に二度も殺されるなんて、そんなバカな話もふざけてる。 ああもう、本当に何もかもふざけていて、大人しく怯えてさえいられず、 「ふざけるな、俺は――――」 こんなところで意味もなく、 おまえみたいなヤツに、 殺されてやるものか―――!!!!!!

9 20/07/07(火)00:07:11 No.706291771

「え――――?」 それは、本当に。 「なに………!?」 魔法のように、現れた。

10 20/07/07(火)00:07:22 No.706291835

何が起こったかなんて分かるはずがない。 それは、突然温室の中央から光を纏いながら現れた。 目が眩むような輝きの中では視界はきちんと機能することはなく、辛うじて分かったのはそれが少女の形をしていることだけ。 耳だけがずっと正しく稼働していて、直後にそれが拾った音はまるで重たい鉄塊に鉄塊をぶつけたような鈍い金属音だった。 それは纏った光を切り裂くような裂帛の踏み込みで男の目前にまで詰め寄ると、手にした剣で男の剣を搗ち上げた。 「おのれ、七人目のサーヴァントだと………!?」 男の雰囲気が一変した。明らかに焦りを覚えた様子で弾かれた剣を構え直すが――― 轟音。少女はその場でくるりと身体を回転させる体捌きで、凄まじい剣の強打を男へと横殴りに叩きつけた。 先程俺が男の剣を受けて吹き飛ばされたように、今度は男がその鋼の強襲を受けて温室に開いた穴から叩き出される。 掠ったガラスが割れる音を注意深く視線で追ってから、呆然としている俺の目の前で、それはゆっくりとこちらに向き直った。

11 20/07/07(火)00:07:34 No.706291918

空を覆う厚い雲のせいで今晩は新月だと勘違いしていたが、どうやらそうではなかったらしい。 上空を流れる風が雲を流させ、このたった一瞬のみ地上に月光を降り注がさせる。 水晶を溶かし込んだような透き通った光が、俺の目の前に立つ少女の輪郭をその場に浮き上がらせていた。 「――――」 息を呑んだ。 時間が静止したように感じ、呼吸することすら忘れた。 強く打った胸の痛みだとか、目まぐるしく移り変わった状況についていけないとか、そういうことではない。 突然現れて俺を見つめるその少女に心の底から見入ってしまって、他のことを気にするすべを失った。 「――――――――」 不純物の一切無い氷のようなアイスブルーの瞳が少女の眼窩の中できらきらと光っている。 少女はその目で俺の眼差しを真っ向から受け止めると、

12 20/07/07(火)00:07:45 No.706291973

  「―――問いましょう。あなたが、私のマスターですね」 凛とした声で、そう言った。

13 20/07/07(火)00:08:00 No.706292056

14 20/07/07(火)00:09:00 No.706292364

その日、運命に出会う

15 20/07/07(火)00:10:33 No.706292899

ライダーチンピラみたいなムーブ似合うな

16 20/07/07(火)00:11:45 No.706293332

https://www.youtube.com/watch?v=Fl7rejEmHno

17 20/07/07(火)00:13:23 No.706293852

美しいものを見た

18 20/07/07(火)00:18:17 No.706295549

やっぱりいいものですね 問おう

19 20/07/07(火)00:21:10 No.706296654

いい… 他の面子の召喚シーンも見たくなる…

20 20/07/07(火)00:23:45 No.706297564

こんなにカッコいい登場したのに独占欲強くてすぐ焼き餅焼く…

21 20/07/07(火)00:24:25 No.706297813

>こんなにカッコいい登場したのに独占欲強くてすぐ焼き餅焼く… かわいいでしょう?

22 20/07/07(火)00:25:17 No.706298088

かわいい

23 20/07/07(火)00:25:18 No.706298098

見なよ黒瀬 典河はちゃんとした召喚してるよ?

24 20/07/07(火)00:25:42 No.706298209

>かわいいでしょう? かわいい

25 20/07/07(火)00:27:37 No.706298830

ちゃんとしてるかな…ちゃんとしてるかな…

26 20/07/07(火)00:28:07 No.706298966

見なよ典河 あれがきっちり運命の夜を描かれて得意満面 平気を装ってるけど鼻高々のドや顔が隠しきれてないセイバーさ

27 20/07/07(火)00:30:38 No.706299703

これからライダーと戦って手傷を負ったりてんかくんと反りが合わなくて対立したり命知らずにも飛び出したてんかくんに本気で怒ったりもするんだ その後なんやかんやでだけんになるんだ

28 20/07/07(火)00:32:25 No.706300275

>平気を装ってるけど鼻高々のドや顔が隠しきれてないセイバーさ 分かりますよ この先このシーンのオマージュが定番になると 分かりますよプレイヤーの1番印象的なシーンになると 私とテンカの出会いがですね ふふふふふ

29 20/07/07(火)00:36:03 No.706301394

>その後なんやかんやでだけんになるんだ 居候として住み着き毎食美味しい食事を出され甲斐甲斐しく世話をされる 散歩に誘ったりすると尻尾を振ってついてくる だけん…

30 20/07/07(火)00:36:04 No.706301395

>>平気を装ってるけど鼻高々のドや顔が隠しきれてないセイバーさ >分かりますよ >この先このシーンのオマージュが定番になると >分かりますよプレイヤーの1番印象的なシーンになると >私とテンカの出会いがですね >ふふふふふ キャスターはマスターが説明書音読したら指切って血が飛び散って召喚って事故みたいな召喚ですからね! 羨ましいのも無理はないでしょう!

31 <a href="mailto:てんかくん">20/07/07(火)00:37:48</a> [てんかくん] No.706301891

>分かりますよプレイヤーの1番印象的なシーンになると 俺の1番印象的なシーンだよ

32 20/07/07(火)00:38:58 No.706302282

>俺の1番印象的なシーンだよ (下を向いてごにょごにょと口籠る)

33 20/07/07(火)00:40:13 No.706302636

あざとい…

34 20/07/07(火)00:41:54 No.706303130

爆ぜて典河くん!

35 <a href="mailto:てn">20/07/07(火)00:44:39</a> [てn] No.706303917

>(下を向いてごにょごにょと口籠る) 一目惚れだったよ 一生忘れない

36 20/07/07(火)00:48:52 No.706305083

てんかくん割とガン攻め気質だよね

37 20/07/07(火)00:50:45 No.706305642

………

38 20/07/07(火)00:51:59 No.706306003

見なよ黒瀬 あれが主人公だよ

39 20/07/07(火)00:52:23 No.706306118

……同じことを言えということか?

40 20/07/07(火)00:53:11 No.706306369

似合わね―って吹くのはやめたげてよぉキャスター…

41 20/07/07(火)00:55:13 No.706307000

先生も美しいとか言っちゃってるし... あとは血に狂った後(地獄で)も思い出せれば完璧だな!

42 20/07/07(火)00:58:39 No.706307922

でもキャスターと先生はなんかそういう関係にはならなさそうなイメージがあるというか hollowのラストで背中合わせで戦ってるのが似合う相棒感がある

43 20/07/07(火)01:00:35 No.706308379

>でもキャスターと先生はなんかそういう関係にはならなさそうなイメージがあるというか >hollowのラストで背中合わせで戦ってるのが似合う相棒感がある 同僚とか姉と弟って感じの関係性になりそうだよな

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