20/07/04(土)01:02:42 物心つ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1593792162050.png 20/07/04(土)01:02:42 No.705357866
物心ついた時から私と彼は当たり前のように一緒だった。 当たり前のように日々を過ごし、当たり前のように共に学び、当たり前のように共に成長していった。 そして当たり前のように共にジムチャレンジに挑戦し、当たり前じゃない日々を過ごし、当たり前じゃない成果を得た。 彼の夢を私が先んじて手に入れた事に罪悪感を感じなかったと言えば嘘となる。 だけど、それでも彼との日々は当たり前のように続いて行った。 そして、彼は当たり前じゃない自分だけの道を見つけた。 私はそれを当たり前のように応援した。 子供だった私たちはいつの間にか少しだけ大人になっていた。 その後も、私たちは当たり前のように一緒にいた。 勉強も、仕事も全力で頑張った。 そして、私と彼は当たり前のように結ばれた。 当たり前の日々が、かけがえのないものになった。 毎日毎日、彼の顔を見るたびに心の中が幸せで一杯になった。 きっと、永遠にこの日々が続くのだと、当たり前のように思っていた。
1 20/07/04(土)01:02:52 No.705357910
ある日、当たり前のように私と彼との日々は終わった。 何の不思議もない、ただの事故だった。 きっと、この世界で同じ理由で毎日毎日、何百人も死んでいるような、当たり前のように世界にある、ただの不幸だった。 だけど、だけど。 私にとってそれは、当たり前なんかじゃなかった。 私にとって彼は、全てだった。 だから、私は当たり前のように生きる気力を失った。 彼があれほどまでに憧れた夢の舞台を、私は当たり前のように手放した。 もう、彼のいない世界を少しでも感じたくなかった。
2 20/07/04(土)01:03:55 No.705358148
彼と共に暮らした部屋で、私は死んだように生きていた。 何度も何度も死のうとしたけど、それでも死ねなかったのは、私と、彼のポケモンがいたから。 共に旅を越えて行った仲間たちを置いて、彼の大切な仲間たちを置いて、死ねるわけがなかった。 当たり前のように泣いてすごした。 当たり前のように涙は枯れた。 当たり前のように、私は死んだまま生きた。 ある日、日記を見つけた。 彼が、書いたものだった。 秘めていたものを勝手に読む罪悪感は、彼を求める想いに当たり前のように飲み込まれた。 日記の内容は何の変哲もない、日々の事を綴っただけのものだった。 当たり前のように過ぎる日々を、当たり前のように幸せと感じ、 隣にいる女性との日々が何よりもの幸せだと。
3 20/07/04(土)01:04:19 No.705358256
最後のページは、事故の前日に書かれた物だった。 それまでと同じようなその日あった事を書き連ねていた。 最後に、『ユウリを絶対に幸せにする』。そう書かれていた。 私は、当たり前のように泣いた。 一晩中、泣いた。 涙なんて、とっくに枯れたと思っていたのに。 私はまだ、泣けるんだと。そう思った。 次の日から私は彼をもっと知ろうと思った。 彼の部屋の遺した研究ノートを、一から読んでみた。 そこには、ポケモンの事が沢山書かれていた。 私の知っているポケモンも、知らないポケモンも。 その生態、特性、それをどう活用できるのか。 沢山の事が書かれていた。
4 20/07/04(土)01:04:41 No.705358354
彼のノートをすべて読み終えた頃、隠すように本棚の奥へとしまわれていたノートを見つけた。 それは、言ってしまえば彼の落書き帳のようなものだった。 思いついたこと、気づいたことを無軌道に書き連ねていた。 それが微笑ましくて、私はどんどんページを繰っていった。 『タイムマシン』。 彼のノートにその文字列を見つけた時、私の中で何かが動いた。 その記述は理論や論文なんて言えるようなものじゃなくて、ちょっとした計算と端書があるだけだった。 しかし、『これはムリだな』と書かれたその記述に続きもう一つ、落書きのような計算式が書かれていた。 何を元に計算したのか、何を求めた計算なのか。 私にはさっぱりわからない。 だけど、ただ一つ『ムゲンダイナなら?』と。 彼の字でそう書かれていた。 私には、それだけで十分だった。
5 20/07/04(土)01:05:01 No.705358424
私は必死で勉強した。元より、死んだように生きていたのだから。何の苦にもならなかった。 寝食を忘れ、ひたすら学んだ。 倒れなかったのは仲間のポケモンたちが支えてくれたからだった。 そして、何回も季節が廻ったある日、私は『理論』を完成させた。 同時に、彼がこの理論を深めなかった理由にも気づいた。 この理論は、世界を壊すことが前提のものだった。 私は、当たり前のように世界を壊すことを決めた。 彼より大事な世界なんて無かった。 故郷を旅立つ夜、私はポケモンたちを逃がした。 私のすることに、付き合わせたくなかった。 でも、みんな、離れて行かなかった。 その瞳が、私について行くと、そう告げていた。 ――――1匹を除いて。
6 20/07/04(土)01:05:32 No.705358545
深紅の毛皮。 金色の瞳。 大いなるガラルの盾にして、私の大切な仲間だったザマゼンタは、私から離れ、睨みつけていた。 ああそうか。彼は、私を止める気なのか。 そう思った瞬間、彼の眼が驚愕に染まった。 その瞳は、私の隣に注がれていた。 深蒼の毛皮。 金色の王冠。 月光を反射する聖剣。 ザシアンが、ザマゼンタの姉が、私の隣に立っていた。
7 20/07/04(土)01:05:43 No.705358585
ザマゼンタは理解できないといった風に唸る。 そんな弟を姉は一瞥し、私を促す。 ―――行こう、と。 私は、問いかける。いいのかと、分かっているのかと。 彼女は何も言わず頷いた。 それで、理解した。 彼女も、私と同じなのだと。 彼を認め、彼と共に生きていた彼女にとっても、彼は、世界よりも大切なものになっていたのだと。 だから、私は彼女と共に、みんなと共に歩き出した。 ザマゼンタは、私たちを見つめたまま、悲しそうに遠吠えをした。
8 20/07/04(土)01:06:27 No.705358740
書き込みをした人によって削除されました
9 20/07/04(土)01:06:55 No.705358868
su4019680.txt 続きはこれで 今確認したら今年の三月ぐらいにお出ししたやつも消えてるっぽいので再放送です
10 20/07/04(土)01:07:41 No.705359038
見たことあるなーと思ったが続きは知らなかったのでありがたい…
11 20/07/04(土)01:09:58 No.705359572
よりにもよってこれか…おつらい…
12 20/07/04(土)01:12:05 No.705360011
お辛さで殴りつける
13 20/07/04(土)01:12:51 No.705360156
本人は満足し関係者片っ端から全員傷を残す終わりいいよね…おつらい…
14 20/07/04(土)01:15:46 No.705360796
姉上がホップに惚れこんでたからこそ剣を汚すのが好き
15 20/07/04(土)01:30:36 No.705364196
最後どうなったのかは想像に任せるENDは結構好き