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20/06/20(土)23:18:33 スロッ... のスレッド詳細

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20/06/20(土)23:18:33 No.701454893

スロットの音。ルーレットの音。チップの音。 歓喜に震える声。悲嘆に暮れる声。怒りをわめきたてる声。 雑音。 いや、ある意味でこれらはとても『人間らしい』音だ。目先の利益に目を眩ませ、どうしようもなく不利な賭けに財を投じる勝負師たち。 そんな彼らが奏でる狂想曲は、ホールが一番距離が離れているこのテーブルにも届いていた。 この絢爛豪華なラスベガスでも特に良質とされるカジノ・キャメロットでも、客たちの本質は変わらない。 ……けれど、今はそれがどうしようもなく耳障りに聞こえる。 「……はあ」 私はため息をついてまたちらりと時間を確認する。約束の時間からもうすぐ20分が経過しようとしていた。 マスターも忙しい人だ。今日はもう来ないのかもしれない。 そう思い、諦めて席を立ちかけた時、狂想曲を貫いてマスターの声が耳に届いた。

1 20/06/20(土)23:18:50 No.701455016

「式さん!」 私は思わず綻びそうになる顔を保つ。急いで来たであろうマスターは額に浮かぶ汗を拭いながら、 「ごめんね、待ったでしょ?」 「そんなことないわ…と言いたいところだけれど。ええ、待ったわ。もう、ただでさえこの格好で浮いてるのに……」 その名の通り、ブリテンの都市であるキャメロットの意匠が凝らされたこのカジノに私の恰好はひどく場違いだ。 葛飾北斎さんとのちょっとした戯れ…七色勝負が終わった後、マスターとラスベガスで素敵な夜を過ごそうと思って、約束を取り付けた。 けれど生憎にも、楽市楽座の周辺にあった目星をつけていた料亭はお転婆な水着剣豪の空爆で吹き飛ばされてしまった。 これだけでも先が思いやられるというのに、当のマスターと言えば……

2 20/06/20(土)23:19:10 No.701455160

「本当にごめんね。メル…ラムダに付き合っててさ。予定よりずっと長く続いて…… あいつ、俺が途中で帰るとすごく怒るんだ。だから抜け出すのも苦労したよ」 苦笑しながらも、その顔はどこは嬉しそうだ。 彼がこのラスベガスを楽しんでいることは、喜ばしいことに違いないはず。 けれど、その笑顔は、なぜか私の心をかき乱す。 だからだろうか、少し……魔が差してしまった。

3 20/06/20(土)23:19:41 No.701455367

「…楽しかった?」 「えっ?」 わざとらしくそっぽを向いて続ける。 「水天宮のショウ。抜け出したとはいえ、楽しんだのでしょう?私を待たせながら」 「それ、は……」 「アマリリスの花。『スタア』のお眼鏡に適うものが見つかればいいわね。 ああ、それと……空中散歩もしてきたようね。ジェット燃料の匂いが少しきついわ。それもただの燃料じゃない…これは…… ふむ、この感じは804号室のあの子ね。やっぱりあの時クセッ毛を斬り落としておくんだったわ」 「あの……式さん?」 「それに…新入りの彼女……宇津見エリセ、と言ったかしら?彼女にも付きっ切りのようね。やっぱり『後輩』が出来て嬉しいのかしら?」 「……式さん」 「まあ、マスターもお忙しい人ですものね。時間を取れないのも……」 「式さんっ!!」

4 20/06/20(土)23:20:01 No.701455520

がたん、と音を立てながら、声を荒げたマスターが立ち上がった。テーブルの上で二つのグラスが揺れる。 「……時間に遅れてしまったことは、謝ります。けれど、どうしても、今あなたに聞かなければいけないことがある。 ……ここのお客さんは、どこに行ったんですか」 無人のカジノの中に、緊張を増したマスターの声が木霊した。

5 20/06/20(土)23:20:15 No.701455637

私は目を細めて、手を差し出して促す。 「まあ、座って。そんなに怖い顔をされたら、お話もできないわ」 私を見つめながら、ゆっくりとマスターが席に戻る。 その目に映るのは、恐怖、困惑、混乱、-----敵意。 今まで一度も私に向けたことがない鋭い感情。 けれど、そんなじりじりと焼けつくような視線を向けられるのが、なぜか存外に心地いい。 少なくとも、マスターは今私だけを見ている。

6 20/06/20(土)23:20:17 No.701455650

さっきも立ってなかった?

7 20/06/20(土)23:20:53 No.701455928

私はグラスを揺らしながら続ける。 「私はお酒を嗜まないから、大それたことは言えないけれど。……とってもおいしいわ、これ。さすがホテル・キャメロットと言ったところね。あなたも飲んでみる?」 「……俺は飲めません」 「今なら誰も見てないわ。誰も、ね」 「式さん、お願いです。教えてください。あの人たちは……」 「その前に。ちゃんと、ね?」 私がすっかり温くなってしまった二本目のカクテルをマスターに差し出してグラスを掲げると、マスターも渋々とそれに倣う。 「乾杯」 「……乾杯」 かちり、とグラスを鳴り合わせ、ようやく私たちの夜が始まった。

8 20/06/20(土)23:21:13 No.701456078

グラスを半分ほど減らした私は語り出す。 「……彼らなら、『休暇』を取っているだけよ。賭け事は熱くなった時が一番危険だと言うでしょう? それに、せっかくのリゾート地なんだから。カジノの外でだって時間を過ごしたいはずよ。 働き者の騎士さんたちも。彼らだって羽目の一つは外したがっているんじゃないかしら?」 「じゃあ、あの人たちは無事なんですね」 「もちろん。 このラスベガスでは、真剣での斬った張ったはなし。彼らにはほんの少しの間お帰り願っただけ」 「そう、ですか……それならよかった」 それを聞くとマスターは文字通り胸を撫でおろして、やっと最初の一口をつけた。 私たちの間に張り詰めていた緊張の糸が切れる。 口を潤したマスターは首を傾げて、 「でも、どうしてこんなことを……」 「うーん……『これ』のせいかしら?」 私は頭の上の兎耳を撫でた。 本当は羽目を外してほんの戯れのつもりでつけたものだけれど。

9 20/06/20(土)23:21:26 No.701456158

「ほら、兎は寂しいと死んでしまうって言うでしょう?だから、ちょっとだけ強引に時間を作らせてもらいました。一人で寂しく死ぬのは嫌だもの」 「…………はは」 そんな私の詭弁を聞いて顔をしかめていたマスターはふっと力なく笑い、 「そっか。それはよかった。俺も式さんの命を救えて嬉しいですよ」 「あら、まだ『救命活動』は終わってないわよ?まだ宵の口。か弱い兎は朝まで守られていないといけないの」 「じゃあ、俺に何ができるのかな」 私は残ったカクテルを飲み切って、マスターの顔を見つめた。 「あなたと夜の街に繰り出したいのも山々だけれど……外は危険がいっぱい。渇いた海賊さんたち、怒ったペンギンさん、乱暴者の聖女さん、お転婆な新選組剣士さん、謎の怪盗さん…… ああ、怖くて身震いが止まらないわ」 自分の口から出る出任せに、笑いがこみ上げそうになる。  この乾いた夏の空気が私を熱くさせているのか、不覚にもカクテルで酔ってしまったのか、それとも----。

10 20/06/20(土)23:21:44 No.701456276

私はカジノの奥に並んだ扉をちらりと見て、 「そう言えば、小耳に挟んだ話だけれど……このカジノには、VIPルームなるものがあるらしいわね。もし本当なら一晩泊めてもらおうかしら?」 「そんな……勝手に入れば怒られますよ」 「へえ?じゃあ、あるのね、その部屋は。もしかして、オーナーのウサギさんに招かれたことがあるのかしら?」 マスターがばつの悪そうな顔をするが、もう手遅れだ。 「……ノーコメントでお願いします」 私は空になったグラスをバーのカウンターに戻しながら、 「その時は、あなたが守ってくれるから大丈夫よ。怖いウサギさん……いえ、ライオンさんが相手でも。ね、そうでしょう?」 私が振り返ると、マスターはしばらく何かを考えるように俯いた後、グラスを一気に傾けて飲み干した。 「分かりました。付き合いますよ、寂しがり屋の兎さん」 彼が少し赤らんだ顔で、私が置いたグラスのすぐ隣に同じく空のグラスを置く。 「ふふ……ありがとう。せっかくの夜だもの、たくさん楽しみましょうね?」 そう、まだ夜は始まったばかり。 私たちはラスベガスに背を向けて、カジノの奥へ消えた。

11 20/06/20(土)23:22:27 No.701456581

マスターとラスベガスの夜を楽しむ『両儀式』さん怪文書です >さっきも立ってなかった? 立てた直後に手直しする箇所が見つかったため立て直しました。すみません

12 20/06/20(土)23:24:35 No.701457551

長いな……

13 20/06/20(土)23:27:27 No.701458791

なんですか 甘える気満々なんですか式さん

14 20/06/20(土)23:27:51 No.701458961

>なんですか >マスター喰う気なんですか式さん

15 20/06/20(土)23:28:14 No.701459090

VIPルームってやっぱりそういう……

16 20/06/20(土)23:28:50 No.701459332

流し読みしかしてないから直された部分がわからん

17 20/06/20(土)23:29:53 No.701459795

かわいい けどカジノの客追い出されて勝手にVIPルーム使われたバニ上の立場は……

18 20/06/20(土)23:31:36 No.701460545

これいろんな水着剣豪敵に回してる気がする

19 20/06/20(土)23:31:45 No.701460620

>けどカジノの客追い出されて勝手にVIPルーム使われたバニ上の立場は…… そこらへんも何か言われたらちゃんとフォローしてくれるだろう 式さんらしい方法で

20 20/06/20(土)23:34:32 No.701461934

>そこらへんも何か言われたらちゃんとフォローしてくれるだろう いやこういうの真剣に読むのなんて作者くらいだろ 自演乙だよ

21 20/06/20(土)23:36:10 No.701462705

804号室って何のことだ……

22 20/06/20(土)23:38:01 No.701463508

>804号室って何のことだ…… 小川マンションでのX

23 20/06/20(土)23:38:52 No.701463855

ゾンビ姉ちゃんみたいな『』だな

24 20/06/20(土)23:40:09 No.701464458

約束に遅れてきた男が着くなり別の女のこと惚気だしたら多分式さんじゃなくても多少怒ると思う……

25 20/06/20(土)23:41:24 No.701465031

なぜかとばっちりを喰らうエリち

26 20/06/20(土)23:41:30 No.701465074

>約束に遅れてきた男が着くなり別の女のこと惚気だしたら多分式さんじゃなくても多少怒ると思う…… 多少の怒りでやることが大事すぎる…

27 20/06/20(土)23:42:22 No.701465445

かなりヤバイ人...人?だよね式さん

28 20/06/20(土)23:44:44 No.701466452

式さんはやろうと思えば自分もスケートしたり飛んだりもできそうだからな…

29 20/06/20(土)23:44:51 No.701466504

お忍びってそういう……

30 20/06/20(土)23:47:32 No.701467565

あのアラフィフですらやらなかったアルハラをするなんて…

31 20/06/20(土)23:48:42 No.701468093

あの特異点の客って本当の客なんだっけ?

32 20/06/20(土)23:49:57 No.701468604

>あの特異点の客って本当の客なんだっけ? 中には怨霊もいるけど特異点に巻き込まれた(あるいは訪れた)だけの一般ラスベガス市民もいるはず まあ本物じゃなくてもぐだは気にかけそうだけど

33 20/06/21(日)00:04:12 No.701474483

今年はお忍びじゃなく一緒にイベント回れたらいいなぁ…

34 20/06/21(日)00:08:30 No.701476361

欲を言えば首切りバニー霊衣は礼装仕様がよかったなあ…

35 20/06/21(日)00:15:30 No.701478921

この後滅茶苦茶

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