ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
20/06/20(土)20:49:51 No.701390348
―――――泣く、なよ…… ―――――女がさ、泣いていいのは……嬉し涙と……惚れた男が、死んだ時にしておけ…… 私、あなたがそんなことを言ったから泣くのをぐっとこらえたんですよ?カナヲはボロボロと泣いていましたけれど。 別にあなたを好きになった訳ではないそうです。これは自分の思うままに泣かせろとあなたに対する最初で最後のわがままとの事で。 非常に良い気味ですね。 あなたはいつもそうでしたね。おちゃらけて悪ぶってそのくせ根っこはお人好しで。 不死川さんの弟くん―――玄弥くんはあなたから貰ったロザリオで皆を上弦の壱から守りきりました。 竈門くんだってあなたからの小太刀で上弦の陸を倒しました。 もっと言うなら村田さんという隊士の方まで過去にあなたに助けられたそうで。
1 20/06/20(土)20:50:47 No.701390709
鬼舞辻無惨との戦いが終わって落ち着いた頃にあなたの葬儀をしたんです。 そうしたら色んな方がいらっしゃいました。みんなみんな、あなたが助けてくれたって、あのときはありがとうって泣きながらお礼を言って行くんです。 カナヲにちょっかいかけてばっかりだと思ってたのにどこでこんなに交遊関係を広げていたんでしょうね。 玄弥くんは今でもあなたが死んだことが信じきれないそうです。いつの日かひょっこり戻ってきそうだなんて言って。 他の皆さんも同意してらっしゃいましたよ。 私とカナヲだけは、あなたの身体から体温が失われていくまでずっとそばにいたのでそんなことはないんですけれど。 あなたがもういないことをこれでもかとあなたから教わりましたけど。 勝手にいなくなって、勝手に死んで。猫ですかあなたは。
2 20/06/20(土)20:51:47 No.701391088
あなたと過ごした時間は短かったけれどそれでも他の人よりは長かったと思ってたのに、私が知っていたのはほんの一部でしか無かったのでしょうか。 姉さんを殺した鬼―――上弦の弐の話をしたときに見せたあなたの真っ直ぐな眼。普段のおちゃらけた表情が剥がれて真面目な顔を見せたあの一瞬。 私、場違いにも嬉しかったりしたんですよ? 私の本当をさらけ出した代わりに、あなたの本当も見せてくれた気がして喜んで。 あなたの過去の話、ひとつも聞いてないことにも気がつかなくて。そうしてあなたはあの糞野郎と刺し違えて死んで。 どうしてあの時あなたは笑っていたんですか。それもあんな子供のような笑顔で。どうして―――――
3 20/06/20(土)20:52:33 No.701391395
「あら……?」 「」さんの葬儀を終えて、部屋の片付けでもしようかと机の引き出しに手をつけたとき、それを見つけた。 胡蝶しのぶ様。そう宛名が書かれた封筒だった。 >「これ……」 >筆跡からして死んでしまった彼のものだろう >今でも信じられない、振り返ればすぐあのニヤついた笑顔があるような気がしてならない >何かが欠け落ちた気がして、ならない >しのぶは封を切った >手紙は……日本語で書かれている
4 20/06/20(土)20:53:53 No.701391848
>そこに書かれていたのは……どうか胸を張って生きるように >「貴方と言う人は……」 >しのぶは思わず苦々しく笑った。 >「……わかりました、考えてみましょう」 >しのぶは手紙をしまおうとした。 >何か同封されている。 >それはカナヲに宛てられたものだ。 >そこには綺麗な文字で書かれていた。 >我が最愛の君に贈る―― >小さな押し花が差し込まれた栞だった。
5 20/06/20(土)20:54:54 No.701392218
ジョンブル野郎はさぁ…
6 20/06/20(土)20:54:56 No.701392233
「ああ……本当に……」 目の前の光景が歪む。声が震える。ぽたぽたと何かが落ちる音がする。 「本当に……どいつも、こいつもですよ……!!」 胸を張って、笑って生きろと言った側からこんなものを見せたあの英国野郎も。 今この瞬間になるまで自らの気持ちを自覚できていなかった自分にも腹が立った。 だがそれ以上に悲しかった。 目の前にもうあの人がいないことが辛かった。 軽い調子でカナヲにちょっかいを掛けて。カナヲがそっけなく振って。それでもまだ追いすがるあなたに私がお仕置きをして。 あの騒がしくも楽しかった日々はもう戻ってこない。 この日私は久しぶりに声を上げて泣いた。 葬儀とは亡くなった人を送る以上に残された人たちの心の整理を付ける意味もあるらしい。 ならば「」さんに対する私の葬儀はいまようやく始まって、そして終わるということなのだろう。
7 20/06/20(土)20:55:57 No.701392597
あの人が私に残した言葉。 胸を張って、笑って生きる。 今の今まで死ぬために戦っていたような人間には難しいことをさらりと言ってのけるあの英国野郎をあの世で躊躇いなくぶん殴るために、 私はこれからを生きなければならない。しっかりと前を向いて。
8 20/06/20(土)20:57:36 No.701393274
兄上…「」壱のジョンブルに向けた怪文書だ…… 気持ちが先走って拙い文章になってると思うが許してほしい…… 本当になにゆえ死んだのですか……なにゆえ……
9 20/06/20(土)21:01:57 No.701395128
悲しいな…
10 20/06/20(土)21:05:37 No.701396854
もう一度泣く