虹裏img歴史資料館

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20/06/13(土)23:36:43 ダイス... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1592059003213.jpg 20/06/13(土)23:36:43 No.699283116

ダイススレ次元の私お疲れ様です!いつも楽しませていただいています! 映画館行けるようになったので久しぶりにはいふりゲージ貯めて書きましたよ su3970386.txt 消えたの再掲 su3970388.txt su3970390.txt

1 20/06/13(土)23:38:20 No.699283857

賽は投げられた (あと、少し…!) 私は、『それ』を握る右手に力を込める。 この機を逃せば、もう二度とこんなチャンスは巡ってこないかもしれない。 艦長に…岬さんに、勝てる。 だが、ここで油断をすることはできない。 あの時は勝利を確信しながら、なお決着をつけられなかった。 勝ったからと言って、何かを得られるわけではない。 ただ、きっと…ここで勝つことができれば、自分の中で何かが変わるはずだ。 「…行きます!」 私の思いを乗せ、白い立方体は宙を舞った。

2 20/06/13(土)23:38:57 No.699284129

「ミケー!シロー!退屈!遊んで遊んで!」 寮の自習室で作業を進めていた私と岬さんに声をかけてきたのは、スーだった。 海賊事件が解決したとは言っても、父親を捜しているという彼女の問題は残ったままだ。 母さんや姉さん達が色々と手を尽くしてくれたおかげで、今は晴風クラスの寮に居候という身分になっている。 「大きな娘さんができたね」なんて一部のクラスメイトから茶化されたりもするが…。 「すまないが、もうちょっと待っててくれないか?」 二人がかりで取り組んでいるのは、先の事件についての報告書だ。 学校だけでなくブルーマーメイドにも見られることになるので、下手な書類にはできない。 以前は一緒に書類仕事をした知名艦長も、先の作戦で武蔵が旗艦を務めたこともあり、今頃は私達よりも大変な思いをしているだろう。

3 20/06/13(土)23:39:36 No.699284501

「うう~…シロちゃん、ちょっと息抜きしようよぉ~」 自習室に缶詰になってかれこれ数時間。 途中で杵崎さんたちがおやつを持ってきてくれたが、岬さんはすっかり疲れ切っている様子だ。 この辺りで一息入れた方が、後々はかどるかもしれない。 「…わかりました。少し休憩にしましょうか」 「「やったー!」」 岬さんとスーが、一緒になって喜んでいるのを見て、自然と笑顔がこぼれてしまった。 「はは…とはいえ、あまり長時間は遊んでいられませんよ」 「そうだね、それはわかってるよシロちゃん」 「ねーねー、何する何する?」

4 20/06/13(土)23:40:24 No.699284928

さて、どうしたものかと思っていると。 「話は聞かせていただきました!ここは私の出番ですね、シロちゃん!」 「納沙さん?」 いつから待機していたのか、自習室の扉からこちらをのぞき込んでいる。 「何か案があるの?」 私がより先に、岬さんが納沙さんに問いかけた。

5 20/06/13(土)23:40:36 No.699285002

「これです」 そう言って取り出したのは。 「さいころ?」 「はい!時津風の長澤さんから聞いたんですけど、最近さいころを使った遊びがブームだそうでして」 「う、さいころか…」 嫌でも競闘遊技会での図上演習競技の事を思い出してしまう。

6 20/06/13(土)23:40:52 No.699285147

「さいころで遊ぶって言っても、色々あるよね」 「はい。短時間でできる遊びということで、まずはチンチロリンを…」 「待て!子供がいるんだぞ!賭け事的なものは却下だ!」 「まあ、そうですよね。そう言うと思いまして、これを持ってきました」 そう言って取り出したのは…いや、どこに持っていたんだ? 「…すごろくだね」 「至って健全なすごろく(自作)です!」 「凄く胡散臭い!」 納沙さんも趣味が特殊なだけで、良識的なところはちゃんとあるのはわかっているが…。

7 20/06/13(土)23:41:39 No.699285535

「なんでマス目を隠してあるんだ?」 「その方が面白いと思いまして」 「…『至って健全なすごろく』なんだよな?」 ついつい疑いの目を向けてしまう。 「私はボケる時は全力でボケますが、嘘は言いませんよ!」 それはそうかもしれないけど!

8 20/06/13(土)23:41:54 No.699285671

「…まあ、とりあえずやってみましょうか。スー、ルールはわかるか?」 「大丈夫!」 「じゃあ、順番を決めようか。じゃんけんでいいかな?」 私とスーは岬さんに頷き返す。 「「「じゃん、けん」」」 ぽん。結果は、岬さん、スー、私、の順になった。 …まあ、そうなるだろうな、ってわかってたさ。 「相変わらずじゃんけん弱いんですね…」 「…うるさい!」 思わず納沙さんからそっぽを向いてしまうのだった。

9 20/06/13(土)23:42:14 No.699285854

「じゃあ、行くよ。それ!」 岬さんの手を離れたさいころはころころと転がり…6で止まった。 「艦長は艦長で、相変わらずの運の良さですねぇ」 「えへへ…。えっと、じゃあ…1、2、3、4、5、6っと。開けてみるね」 止まったマスに貼られた紙を剥がす岬さん。 「あ、『2マス進む』だ」 さらに自分用の駒を2マス進めた。見事なスタートダッシュだ。

10 20/06/13(土)23:42:35 No.699286019

「次、スーの番ね!えい!」 スーの出目は4。こちらも悪くない出目だ。 「1、2、3、4。開けるね!」 そこに書かれていたのは…。 「えーと…。ミケー!これ、なんて書いてある?」 「『杵崎あかねの革命的新作に挑戦』だよ」 「いや何なんだこのマス…」 どういうことかと問い詰めようと納沙さんの方を見ると、何やら自習室の入口で話をしているようだ。 すると。

11 20/06/13(土)23:43:07 No.699286266

「呼ばれてきましたー」 杵崎さんがいつも通りののんびりした調子で部屋に入ってきた。 その手には、蓋のされたトレイが乗っている。 「スーちゃんには、私の新作の試食をしてもらうね」 「おおー!食べていいのかー?」 スーは目をキラキラさせているが、大丈夫なのか…? スーが勢いよく蓋を開けると、中には…。

12 20/06/13(土)23:43:21 No.699286400

「…おはぎ?」 「おはぎ、ですね」 どこからどう見ても、おはぎとしか言いようがない。 これは、中身が変わってるタイプか。 「いただきまーす!」 スーはそのおはぎのようなものに躊躇なく食らいついた。 「おー?美味しいけど、何これ?」 口をもぐもぐさせながら、スーがこちらにおはぎのようなものの中身を見せてきた。 そこにはもち米ではなく、黄色っぽい何かが…。

13 20/06/13(土)23:43:35 No.699286532

「これは…栗きんとん、か?」 「副長正解!粒あんも普通より甘さを抑えつつ栗の自然な甘さを活かして、もち米よりヘルシー路線を目指してみたの!」 案外悪くないかもしれない? 「他にも私の新作マスはあるから、楽しみにしててね」 「それはいいが、マスを踏まれなかったら作った料理はどうなるんだ?」 「あ、それは考えてなかったかも」 「そこは『スタッフが美味しく頂きました』的な感じで、終わったらみんなで頂きましょうか」 「あはは…そうだね」 この調子なら、妙な物は出てこないだろうか。

14 20/06/13(土)23:44:30 No.699286942

「さて、では私の番ですね」 盤面に転がったさいころを拾うと、私は勢いが付き過ぎないように丁寧に転がした。 出目は…2。…まあ、1じゃないだけマシか。 「動かしますね。1、2と」 まだ開けられていない2マス目の紙を剥がすと、そこに書かれていたのは…。 『終わりまで語尾ににゃあを付ける』

15 20/06/13(土)23:44:46 No.699287065

「なんじゃこりゃあ!…にゃあ」 「ちゃんと言うんだ…」 「流石ですねシロちゃん」 「おおー」 三者三様の反応。 「『至って健全なすごろく』だって言ったよにゃあ!?」 「そうですね。別に猫耳だのにくきゅうグローブだのしっぽだのを付けろとかは言っていませんし」 何も言い返せない…。 「あはは…まあ、とりあえず進めようか」 もうさっさと終わらせてください…。

16 20/06/13(土)23:45:29 No.699287402

そんなこんなですごろくを進めることしばらく。 岬さんとスーは揃って好調な出目を出し続け、ゴール間近に迫っていた。 一方私は、まだまだと言ったところ。 「ようやく終わりそうだ…にゃあ」 「結構時間かかっちゃったね」 納沙さん仕込みの妙に手の込んだイベントを消化していたら、もう1時間以上経過している。 ちょっと休憩しすぎだ。 「次は私だね。それ!」 岬さんが放ったさいころは、またしても6で止まった。これで岬さんはゴールまであと2マス。

17 20/06/13(土)23:45:54 No.699287580

「大詰めって感じだね。このマスは何だろう?」 そう言いながら紙を剥がしていく。 「『一番後ろの人と場所チェンジ』…えええ!?」 「えっ…?」 「おー!シロ、いちばん!」 岬さんが自分の駒と私の駒の位置を入れ替えた。…あの岬さんが、こんなトラップマスを踏んだ?信じられない。 内心の動揺が隠せないでいるうちに、スーがさっさとさいころを振って駒を進めていく。 特にマイナスになるマスでもなく、これでスーはゴールまであと3マス。 そして、私の番。

18 20/06/13(土)23:46:10 No.699287716

「チャンスですよシロちゃん!ゴールしちゃってください!」 「あ、ああ…」 こういう時こそ、冷静になるべきだ。 「あー、納沙さん、もし今から私がさいころを振って、仮に3以上の目が出たらどうしたらいいかにゃあ?」 本来なら、一緒に遊んでいる岬さんとスーに問うべきだろう。 だが、私はあえてゲーム外にいる納沙さんに問うた。 「はい?えーと、別にゴールにしちゃっていいんじゃないですかね?」 「それでいいと思うよ」 「スーも!」 「そうか…にゃあ」

19 20/06/13(土)23:46:28 No.699287887

我ながら小狡いことを考えてしまったと思うが、これでゴールできないのは1が出た場合だけだ。 確率は5/6。普通なら簡単に突破できる確率だろう。普通なら。 「…」 さいころを握る手が汗ばんでくるのを感じる。こんなものはただのお遊びだというのに。 私は晴風に残ると、あの朝焼けの中で岬さんに宣言した。もう勝ち負けとか気にする必要もないのに。 それでも、と思ってしまう自分がいる。 「…行きます!」 にゃあを付け忘れたのに気付いたのは、さいころを投げた後だった。

20 20/06/13(土)23:46:49 No.699288063

「ついてない…」 最近すっかり言わなくなったその言葉を最後に口にしたのは、いつだったか。 私が投げたさいころは見事に1で止まり、止まったマスの内容は『ふりだしに戻る』。 まさに、今の私にぴったりだ。 最終的には、スーがきっちり3を出してゴールした。 ひとしきりみんなでスーの勝利を祝した後、スーは納沙さんと杵崎さんに連れられて自習室を出ていった。 「ねえ、シロちゃん」 作業を再開する準備をしていると、岬さんが声をかけてきた。

21 20/06/13(土)23:47:20 No.699288351

「何ですか?」 自然に声を出せた、と自分では思う。 「私に勝ちたい、って思っちゃった?」 …見抜かれていた。 「…そうですね。やっぱり、私はまだまだ未熟です」 本当にそう思う。 「岬さんは、スーに勝ってもらいたい、って思ってたんじゃないですか?」 「うん、そうだね」 「やっぱりですか」

22 20/06/13(土)23:47:34 No.699288460

でなければ、岬さんがあのマスを踏むはずがない。 負けるべくして負けたのだな、と逆に清々しくなる。思わず苦笑いを浮かべていると。 「あのね、シロちゃん」 真剣な表情と声色に、私は引かれるように岬さんの方へ向き直った。 「シロちゃんの凄さは私が一番分かってるから。だから、焦らなくて大丈夫だよ」 やっぱり、この人には敵いそうにない。 赤らんだ空に目をやり、もう一度あの日の気持ちを思い出す。 また一から頑張ろう。『ふりだしに戻る』ように。 終わり

23 20/06/13(土)23:48:23 No.699288835

はいふりの怪文書久々に見た 映画良かったよね…これも良かった…

24 20/06/13(土)23:48:24 No.699288840

濃い…いいよね…

25 20/06/13(土)23:52:16 No.699290782

ミケー!シロー! いい…

26 20/06/14(日)00:05:49 No.699296695

読んでくれてありがとうございます! ここではダイススレで盛り上がってますしグッズがちらほら増えてきたりまだまだ続いていってほしいですね!

27 20/06/14(日)00:09:51 No.699298275

劇場版の後の展開も気になるなぁ…

28 20/06/14(日)00:11:40 No.699298975

いい…

29 20/06/14(日)00:26:41 No.699305133

アプリ組とか大和型の先輩たちの活躍もなー!見たいなー!

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