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20/06/11(木)19:37:12 No.698508517
「喜べ、レン。お前のために早速仕事を持ってきてやったぞ」 「いや、喜びたくもないんだけど……」 ある日の昼下がり、マリルは部屋に入ってくるとともに、そう俺に伝えた。 「ん~?そんなことを言っていいのか~?せっかくこの私がいろいろなツテを使って取り付けたというのに」 「いやあ、ほら。一応病み上がりだから、しばらくは激しい任務とかは勘弁してほしいかな~、って」 俺がマサダから帰ってきて数日が経つ。しばらくは検査入院をしていたけど、それも昨日までの話だった。せっかく退院したばかりなのだし、しばらくはゆっくり過ごしていたい。いろいろ溜まってたゲームも消化しないとだし。 「安心しろ、任務じゃなくて仕事だ。そんなに激しいことはまあ一応はない」 「一応!?一応ってなに!?というかSIDの任務じゃない仕事って」 「というか、そもそもお前に拒否権はない。もうこれは決定事項だからな」 「俺のことなのに俺の意見が介在する余地は……?」 「私は一応、お前のためを思って行動してやってるわけなんだがな。借金の件、忘れたとは言わないだろうな~?」 「うぐっ」
1 20/06/11(木)19:37:36 No.698508666
声が詰まってしまう。それを言い出されると、こちらには反論するすべはない。 マサダでの一件の時にカジノに参加するためSIDから資金を預かっていたのだけど、いろいろと事情があって俺は独断でそれを手放してしまった。なので、今の俺には途方もない額の借金が存在する。してしまっている。 ああ、俺は何であの時かっこつけてあんなことをしてしまったんだろう。というか、まさか生還したのに二週間も寝込んでしまうなんて。せっかく命を拾ったのに、社会的生命がないんじゃ意味がない! まともに働いても到底返しきれないような額を抱えた今の俺は、マリルのペット扱いもおとなしく受け入れないような弱者だ。普段とあんまり変わってない?そういう指摘は今はいいから。 「私もお前の状態は考慮してやってる。よくわからん状態になってから二週間も昏睡していたんだ。経過観察で異常なしと一応は結論付けたとはいえ、結局あの状態が何であったのかは私たちも把握できていない。だからこうして任務ではなく別の仕事を探してやったんだ」
2 20/06/11(木)19:37:58 No.698508799
それに、とマリルは言葉を繋げる。 「お前が見つけられるような仕事だと一生かかっても返しきらんというのは私もよく知っている。だからこうして割のいい仕事を斡旋してやろうというんだ」 「え、ホント?」 それが本当ならこちらとしてはとてもありがたい。SID長官であり優秀な科学者としての顔も持つマリルなら、俺が受けられないような高給な仕事も用意できるんだろう。 「分かった。マリルが俺のためにそこまでしてくれてるんだから、まずはその仕事っていうのを頑張ってみるよ」 「ほう、その言葉に二言はないか?」 ああ、と返事するとなにやら満足げに頷くマリル。そんなにその仕事を用意するのが大変だったんだろうか。 「そういえばなんだけどさ。今回マリルが用意した仕事ってどんなの?」 よく考えたら内容聞いてなかったと思い質問すると、マリルはその顔をそれはもう愉しそうに歪める。え、なんで? 「なに、そう難しいものではない。ちょっとばかりお前が服を脱いで、他人に触られて、気持ちよくなっているところを撮影するというだけの話だからな」 「はい?」
3 20/06/11(木)19:38:27 No.698508969
…………はあ!?なんだその仕事!?それってつまり―― 「え、ええ、えええええ、えーぶ……」 ごにょごにょと最後は口ごもってしまったが、俺の発言を聞いてマリルはさらに楽しそうに嗤う。 「先方からはお前ぐらいの年齢というのは需要がある、と言われていてな。初めてでも安心してほしいと、そうも言っていたぞ」 「だ、だからって、何もそんな仕事」 「撮影というのは結構金になるからな。なに、お前はじっとしていれば気持ちよくしてもらえるんだ。楽な仕事だろう?」 だからってこんな文字通り体で稼ぐような真似……。と、というか!俺は男なんだぞ!?なのに男に抱かれるなんて! 「やらない!絶対やらない!死んでもやってやるもんかぁ!」 「さっき二言はないと言ったばかりだろう?ほら」 マリルが手にしている端末を操作すると、そのスピーカーから音声が流れる。内容は、さっき俺が仕事を受けると言った部分。 「い、いつの間に……」 「お前の胸元に埋め込んでいるスピーカーを改良してな。不用意な発言をしないようにと、録音機能も試しに取り付けてみたんだが、さっそく使うことになるとはな」 「そんな……」
4 20/06/11(木)19:39:16 No.698509278
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5 20/06/11(木)19:39:45 No.698509457
用意周到にはめられたことに気づいて絶望する。もう逃げ道はないのか。そう考えていたところで、マリルが言葉を紡ぐ。 「まあ、お前が嫌だというのなら、別にやらなくてもいい。なにも金を返すためにこの仕事が必須というわけではないからな」 「……え、本当に?だったら……」 「だがしかし、先方との契約はすでに成立している。だから、お前が出ないというのなら他の誰かが行くしかない。まあ、アニーあたりが妥当か」 「!?」 そんな。アニーは全く何にも関係ないのに。俺が断ったら、巻き込んでしまう……。 「……分かった。分かった、から。俺がやるから」 「そうか、やる気になってくれたなら私もお前のために仕事を見つけてきた甲斐があったよ」 マリルはまた、愉しそうに嗤った。
6 20/06/11(木)19:40:08 No.698509592
俺は撮影の仕事を終えてそのままSIDへと向かった。マリルに抗議したいことがあったからだ。散々気持ちよくさせられて火照った体を動かす。 「マリルぅッッッ!!!」 「おお、レンじゃないか。ちょうど今、サンプルが私の手元に届いたところだ」 お前も見るか?などとのんきに俺へと声をかけてくるマリルに大股でずかずかと近づいていく。 「そうじゃなくてっ。なんなんだよアレ、聞いてなかったぞ!?」 「アレと言われてもどれか分からん。ちゃんと何のことかをはっきり言え」 「何って、決まってるだろ!絶望しながら指定された場所に向かったら待っていたのが――――」 そう、そこに待ち構えていたのは。 「ただのマッサージ店のCM撮影だったことだよ!」 語気を荒くして叫ぶ。一方のマリルはというと、きょとんとした顔をしていた。 「……言ってなかったか?若い女性もターゲット層に取り込みたいとモデルを探していた先方に、御桜川女子の生徒であるお前を売り込んだと」 「言ってなかったよ!聞いてないよ!俺の覚悟と絶望は何だったんだよ!」
7 20/06/11(木)19:40:34 No.698509761
「すまんすまん。そういえば少し回りくどい言い方だったか。それで伝わると思ってな」 「伝わるわけないだろ……。絶対別のことと勘違いするって……」 「勘違い?一体何とだ?」 「へ?」 思わず素っ頓狂な声が漏れ出てしまう。 「だから、一体何と勘違いしたんだ?それをちゃんと言ってくれないと流石の私でもわからんな~?」 ニヤニヤと、いやらしい笑みを浮かべながら問い詰めてくるマリル。俺は、その内容もあってか、その質問にうまく答えられない。 「え、いや、その。だから、ほら。アレだって」 「アレ?アレってどれだ?さっきも言っただろう?ちゃんと何のことかはっきり言え。一体、健全なマッサージのCM撮影と、なあにを勘違いしていたのかな~?」 「いっ、言えるわけないだろ、そんなこと!」 「おや?そうなのか?まさかそんな言えないようなことだと思っていたのか。そんな仕事を私が取ってくるとでも?お前は私のことをそんな目で見ていたのか?」 スッとマリルの目つきが冷たくなる。こっこれは、冷たい目だ……!まるでいらんことをしでかした愛衣に折檻をしようとする直前のような目だ……!
8 20/06/11(木)19:41:11 No.698509997
「そそそ、そんなわけないだろ!?俺はマリルを信用してたって!」 「ほう。ならば……そういう願望があったということか」 「はっ、はあッッッ!?!?!?」 いきなり何を言い出すんだ、マリルは!? 「だってそうだろう?私がそんな仕事を持ってこないと信じているのにそういう仕事だと思い込むというのは、お前が本当はそういう仕事をしたかったんじゃないのか~?」 「ち、違っ」 違う、と言いたいけど……直前にマリルを信じてるなんて言っちゃったから否定しづらい! 「なんだ、愛衣の変態っぷりによく辟易していたが、お前も似たようなものじゃあないか。このド変態2号」 「~~~~ッ」 うう、顔が熱い。火が出てしまいそうだ。それとなんか泣きたくなってしまって、気が付くと目じりに涙がたまっていた。 「……まあ、ここまでにしておいてやるか。ド変態2号は冗談だ、気にするな」 気が付くと、マリルが俺の頭をポンポンと叩いていた。
9 20/06/11(木)19:42:05 No.698510345
「ふぇ?」 「そもそもこれはお前がこの前のマサダでのことをちゃんと反省しているかのテストみたいなものだ。まあ、お前の仕事と、あと少しばかり私の趣味も入ってはいるが」 「おい」 「要は、情報や状況をしっかりと把握しないままに軽はずみな言動をしないかを確認するためのものだ。……結果は言うまでもないがな」 「うっ……」 そういわれると立つ瀬がない。具体的な内容も確認せず仕事を受諾して、相手の性根が悪い言い回しがあったとはいえ勝手に思い込んで、今だって言葉狩りを受けてド変態認定を喰らってしまった。これでは反省してないといわれても仕方がない。 「SID職員としてはもちろんだが、普通に生活を送る上でも大事なことだ。ちゃんと反省しろよ」 「……はい」 そうやってマリルに叱られてちゃんと心から反省する俺。これで今回は一件落着――――
10 20/06/11(木)19:42:25 No.698510450
「や~、でもレンちゃんがド変態かどうかはおいておくにしても、えっちぃのは間違いないんじゃないかな~?」 の、はずだった。ヘッドホンを外しながら愛衣がそう言いだすまでは。 白けた視線を愛衣に向ける。せっかく話が終わろうとしてるんだから混ぜ返すな、と抗議の意思を込めて。だけど、愛衣はそんなことは全く意に介していないようで。 「私もレンちゃんのマッサージのCM見てたんだけど、ちょっと気になることがあってね?音声データからレンちゃん以外のものをキャンセルしてみたんだけど~」 ポチっとな、なんて言いながら愛衣がコンピュータのキーボードを操作する。そして――――スピーカーから喘ぐような声が流れてきた。しかも俺の。 「……はへ?」 いつも自分で聞くのとは違う自分の声の、聞いたこともないような声。そんなのがスピーカーから大音量で流れてきたら、誰だって固まると思う。
11 20/06/11(木)19:42:40 No.698510559
「ただのマッサージでこんな声出しちゃうのはレンちゃんがえっちな証拠だとおもうんだよね?そんなに敏感だなんて、もしかしていろいろ溜まっちゃってるのかな?」 「う、うわぁーーーー!?止めろ、今すぐ止めろぉーーーーーー!!!」 愛衣に掴みかかって、無理やりにでもこの音声を終了させようとする。一方マリルは顎に手を当てて、こんなことを呟いた。 「……なあ。この音声データ、売ってみないか?そういう手合いの男にそこそこ売れると思うぞ?」 「ヤダっ!無理っ!絶対イヤ!」 借金は返したいけど、恥と尊厳を売り渡す気にはなれなかった。
12 20/06/11(木)19:44:16 [sage] No.698511138
レンちゃんがSIDに借金作っちゃう展開でむっ!?ってなったので久しぶりに魔女兵器怪文書書いた
13 20/06/11(木)19:58:14 No.698516155
レンちゃんの怪文書久しぶりに見た
14 20/06/11(木)20:02:43 No.698517821
そもそもスレ自体久しぶりに見た
15 20/06/11(木)20:13:10 No.698521773
ありがとう…
16 20/06/11(木)20:13:25 No.698521858
レンちゃんは安易に身体を許しちゃいそうだよね
17 20/06/11(木)20:18:29 No.698523816
書き込みをした人によって削除されました
18 20/06/11(木)20:18:46 No.698523933
マリレン健在で何より
19 20/06/11(木)20:20:33 No.698524614
ついに借金まで作ったレンちゃんいいよね…
20 20/06/11(木)20:21:09 No.698524838
魔女達に金で買われるレンちゃんいいよね…
21 20/06/11(木)20:22:22 No.698525281
聖女を救った看護学生レンちゃんのアイドル活動しそうでワクワクする
22 20/06/11(木)20:30:48 No.698528704
怪文書助かる
23 20/06/11(木)20:32:32 No.698529487
久々に見た