虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

20/06/10(水)02:46:37 グズマv... のスレッド詳細

削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。

20/06/10(水)02:46:37 No.698049724

グズマvsダンデの後日談を加筆したので再放送するぞ俺 su3960740.txt

1 20/06/10(水)02:47:21 No.698049832

「……もう時間か」 「はい!割とギリギリです」 ちっこい体にデカい荷物を引きずって、ミヅキが笑う。 もともとオレさまの挑戦のために、結構無理をして残っていたらしい。 帰っちまうのは名残惜しいが、そう言うと調子こくから言ってやらねえ。 「講演会、呼んでくださいね!」 「……ああ。ダンデに言や、すぐだろ」 ミヅキの講演会なら、オレさまたちの頭を飛び越えて開催されるはずだ。 「寂しくなるなあ。またおいでね、ミヅキちゃん」 「はい!またです……マスターさん」 ……そうやって抱き合ってると姉妹みたいだ。 んなこと言おうもんなら帰りづらくなるだろうから、それも言ってやらない。 ミヅキには多忙なチャンピオン業がある。帰さなきゃいけねえのは、皆わかってることだ。 それでも、帰っちまう前にどうしても聞きたいことがあった。

2 20/06/10(水)02:47:44 No.698049894

ハウオリの浜辺でミヅキとした約束。"また会うときにオレさまがどうなっているか確かめてほしい"。 「……なあ、ミヅキ。オレさまは……変わったか?」 声が震えた。何故だか返事を聞くのが恐ろしい。変わったと言われるのも、変わってないと言われるのも。 オレさまの問いに、ミヅキは少し驚いた顔をしたが 「いいえ!」 何の迷いもなく、にっこり笑ってそう言った。 「……」 オレさまはガラルに来たって何ひとつ変われねえのか。 自分の不甲斐なさが嫌になったが、ミヅキは相変わらずニコニコしていやがる。 その目は、オレさまが恐れてることが何なのかを見透かしてるような気がした。 「……そうか」 そうだな。オレさまはどこで何してたってオレさまだ。 オレさま自身が納得してさえいりゃ、オマエは認めてくれるんだな。

3 20/06/10(水)02:48:30 No.698049977

将来の夢だとか、なりたいものだとかは、未だにわからない。 いいトシして情けねえって、自分だってわかってる。 でも……譲れない、かけがえのないものを守るためなら、オレさまは自分の限界を打ち破れる。 なら、オレさまはもう少しガラルにいるよ。オレさまの守りたいものが、やっと見つかったからな。 「ジジイと、クチナシのおっさん、それから……ククイさんにもよろしくな。そのうち帰るからよ」 ミヅキがさっきの質問の比じゃねえくらい驚いてやがる。 ガラルの風は、アローラのそれよりずっと冷たく、強く吹きつける。 だがそれがいい。ガラルの厳しさがオレさまを鍛え上げてくれる。 ブッ壊れるくらい自分を鍛え抜いたら、アローラリーグに挑んでやる。 「その時を、楽しみに待ってろや」 「……はい!」 太陽みたいに眩しい笑顔を正面から受け止めて、オレさまも笑い返してやった。

4 20/06/10(水)02:49:00 No.698050043

夕暮れの水平線に、客船が消えていく。 もう太陽は沈んで、月が明るくなり始めている。 「オイ、マスター」 腕時計を見せると、マスターは目を伏せて 「……こんな気分でも、お店は開けなきゃいけないよね」 なんて、気の抜けたことを言いやがった。 「ったり前だろ?しっかりしてくれよな」 「グズマくんがしっかりしすぎなんだよ。昨日の今日なんだからゆっくりしたい、とかないの?」 マスターが大きく伸びをして、踵を返す。 「ねえよ。店開けねえと食ってけねえだろうが」 「グズマくんはマジメだなぁ……」 いやマジでアンタ最近だらけすぎじゃねえのか? ……喉まで出かかった言葉を飲み込む事にかけたら、オレさまの右に出るヤツはいねえな。何の自慢だよ。 「はぁ……とっとと帰んぞ」 「待って、グズマくん」

5 20/06/10(水)02:50:06 No.698050174

マスターが立ち止まる。 「んだよ」 今日は開けないとか言い出したら、オレさまだけで開けてやるからな。 「バトルタワー制覇、おめでとう」 マスターが笑う。その笑顔がとても綺麗で、つい見とれて……声が出せなくなった。 「きみは本当にすごい。私達の訓れ……無茶振りの数々に、よくついてきた。本当に、自慢の弟子だ」 無茶振りの自覚はあったのか。 「正直、私は折れそうだったんだ。あの人の言う通りに、シュートに店を開くのも仕方ないと思っていた。 私なんかじゃ、あの人のやりたいことにNOを突きつけることは出来ないと思ってたから。 そんなとき、きみが来た。きみは真面目で、ひたむきで、何でも吸収して……毎日楽しかった」 おい、ちょっと待て。 「まさかきみが、あの人を倒すなんて。もう私が教えることなんて、そんなにないだろうね」 何勝手にシメに入ってんだ? そんなに、オレさまを追い出したいのか? 「だから、きみはもう、いつでもアローラに行けるね」

6 20/06/10(水)02:50:32 No.698050230

「まだ行かねえよ」 思ったよりデカい声が出たせいで、マスターを驚かせた。 「黙って聞いてりゃ勝手なこと抜かしやがって。オレさまが何のためにダンデとやりあったと思ってんだ」 一気にそこまでまくし立てて、後悔する。 「……何のため?」 ほら見ろ、聞かれちまった。ならもう、言うしかねえ。 「……アンタのためだ。アンタが辛そうな顔してアイツの話聞いてんのが耐えられなかった」 マスターがぽかんとした顔をしている。そんなに不思議なこと言ってねえぞ。 「気付いたんだよ。オレさまは自分以外の、誰かのためにしか戦えないんだ」 オレさまは、きっとそういう性分なんだ。 思い返せば、今までだってずっと、チームや、世界や、誰かのために戦ってきた。 「今この世界で一番守りたいのはアンタだ。アンタのそばにいりゃあ、オレさまは強くなれる。 だから頼まれなくたってよ、勝手に守るぜ。アンタが嫌じゃなけりゃな」 マスターが、オレさまから目を逸らして、頬を掻いた。 「嫌じゃ……ない、かな。うん、嫌じゃない」

7 20/06/10(水)02:52:08 No.698050400

マスターはあちこち体を触ったり、髪を撫で付けたりして、落ち着かない。 「嬉しい……かな」 頬を染めてそうまで言われると、オレさまだって恥ずかしくなる。 「お、おう……もう行こうぜ。客が来ちまう」 この空気に耐えられそうにない。先に帰ろうとして、マスターに背を向けた。 「待って!」 大声で呼び止められて、さすがに振り返る。 「私も、グズマくんを守りたい」 マスターが頬を染めたまま、マジメなツラでオレさまを見ていた。 「グズマくんが辛い時は一緒にいるよ。グズマくんがちゃんと眠れるように、私もグズマくんを守るよ」 夜のことを知られていると知って心臓が飛び出そうになったが、すぐにあきらめた。 「……ま、そりゃバレてるわな」 オレさまの眠りが浅いこと。ときどき、夢見が悪くてうなされること。 その時、いろいろとロクでもねえことを口走っちまうらしいこと。 財団の連中の説明を聞いて……治らねえもんだと諦めていることだ。

8 20/06/10(水)02:52:50 No.698050488

「ごめんね。ミヅキちゃんから、いろいろ聞き出しちゃって」 「……気味が悪いだろ」 「そうかな。セイボリーも寝言うるさいし、普通だよ」 マスターがオレさまの手首を強く掴んでくる。 「私はグズマくんを捨てないよ。嫌いになったりしないし、興味をなくしたりしない」 「そんなの……わからねえだろ」 人の心なんて、本人がどう思ってたって、簡単にブッ壊されちまう。 「わからないね」 ……そうだ。人の心なんて。 「でもね。私は、今グズマくんが好き。この気持ちは、グズマくん自身にだって否定させない」 「な……」 「グズマくんは1回言ったんじゃ判らないから、何度でも言うよ」 マスターの顔が、オレさまの鼻先まで近づく。 「好き」

9 20/06/10(水)02:53:35 No.698050574

マスターはいつの間にか、オレさまの二の腕に手を回している。 「グズマくんが好き。お店に立つグズマくんも、ポケモンと遊ぶグズマくんも、バトルしてるグズマくんも」 細っこい腕が、両肩に上ってくる。 「甘いもの好きなグズマくんも、お腹出して寝るグズマくんも、ひとりで全部抱え込むグズマくんも、全部全部、大好き」 ひんやりした手が、オレさまの頬を覆う。 いつの間にか、マスターがぼろぼろ涙をこぼしている。 「グズマくんと離れるなんていやだよ。ずっと私のそばにいて」 「……いいのか」 「いいよ。グズマくんの好きにして」 「っ……!」 限界だった。小さな体を抱き寄せて、覆い被さるように、唇を重ねた。 オレさまのにげごしは、いつの間にかこの人にブッ壊されていたらしい。 「……夢じゃねえよな?」 唇を離したあとにそう言ったのが早いか、力いっぱい頬をつねられたのが早いかは、もう覚えてねえ。 とにかく、オレさまがそれ以上寝言を抜かせなくなったのは確かだ。

10 <a href="mailto:s">20/06/10(水)02:54:05</a> [s] No.698050636

◆いじょうです◆

11 20/06/10(水)02:55:10 No.698050763

とうとうやったんスカ…グズマさん…

12 20/06/10(水)02:58:55 No.698051249

グズマさんは幸せ者だよ

13 20/06/10(水)03:01:54 No.698051594

グズマは自分のことをこんな幸せであっていいのだろうかとか思って曇るタイプ!

14 20/06/10(水)03:04:34 No.698051886

スレ画でマスターがまた何か曇らされたのかと

15 20/06/10(水)03:07:27 No.698052180

抱けっ!抱けーーーッ!!………抱いてる!!??

16 <a href="mailto:s">20/06/10(水)03:08:22</a> [s] No.698052279

(まだ抱いてない)

↑Top