20/06/02(火)00:36:10 「異性... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
20/06/02(火)00:36:10 No.695515018
「異性のパートナーに求める事…アンタはなんかあるわけ?」 「なぁんでそんなモン俺に聞くんじゃい」 「なんとなくだけど」 片手に握った雑誌を眺めている愛は、人に聞いておいて返事に興味が無さそうだ。 そんな愛を見たのなら、俺も安心して仕事に意識を回せる。 「特に無いわい」 「無いってこと無いでしょ」 「いや無い」 「そんなはず無いわよ」 …回せると思っていたのだが。思っていたよりも、愛は折れない。 意識と視線を愛に向けてやれば、視線が合う。 「なぁーーんで聞きたいんじゃい」 「なぁーーんとなくだけどぉー?」 伸ばした語尾に付随して逸らした視線は、恐らく天井の角にでも向いているんだろう。 折角、一度に苦虫を十匹くらい噛み潰したような顔をしているというのに。こんな顔を見ないとは勿体無い。
1 20/06/02(火)00:36:21 No.695515101
経験則から、これはさっさと答えないとうだうだダラダラと長引くタイプのモノだとわかる。 「……俺の手が届く場所に居てくれるだけでいいわい」 溜め息、その後に発する俺の言葉、そして再度溜め息。俺の心情を写す三工程。 「へぇー…アンタって、意外と束縛するタイプなんだ」 そして見事に真ん中だけを抜き取って会話を進めようとする、中抜きの愛。 「俺の意図しない何かが起きて欲しくないだけじゃい」 「怖がりちゃん?」 「言っとれ」 半笑いの愛にあまりにも短い悪態を零したのは、図星だからだろうか。 「ねぇ。今度から助手席、私が座るわね」 愛が告げた突拍子の無い言葉に反応が遅れたのも、恐らくそのせいだ。 「……は?」 「良いでしょ?」 雑誌を後ろ手に、こちらへ前のめりになって笑う愛。 まるで悪戯を仕掛けているような…からかっているような。そんな、ポーズ。
2 20/06/02(火)00:39:23 No.695516355
「なん」 「私なら、無茶とかそういうのわかってるし。早々やらかしたりはしないけど?」 人差し指立て、手を突き出した愛は自信満々に告げる。 「いや、お前」 「更に。移動中にアンタの相談にも乗れるし、助手席に座ればドタバタに巻き込まれなくて済むじゃない」 いや、お前開幕に東京行こうとしただろうが。無茶じゃろがい。 そう言おうとした俺へ、二本目の指を立てて再度遮った。 提案はWin-Win。あくまで、利益が見込めるからだと愛は言う。 「……好きにしろ」 とんでもない要求がされるのなら考え物だが、現状誰も座っていない席に座りたいというだけならば。 まぁ、良いか。冷静に損益計算をした結果、いかにも適当さが透けて見える答えに至った。 「じゃあ、好きにしちゃうから」 また悪戯っぽく勝気に笑う愛は、何処か普段と違って見えた。 まるで何かを謳歌する等身大の少女のような、そんな愛。 何かがわからないのは、気付けないのか興味が無いのか。俺は再度仕事に意識を回す事で、疑問を誤魔化した。
3 20/06/02(火)00:55:38 No.695522088
こいついつも助手席に乗りよんな