20/05/20(水)20:01:58 「ナバ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1589972518999.jpg 20/05/20(水)20:01:58 No.691280416
「ナバール盗賊団は今、砂漠の緑化活動に力を注いでる。もちろん俺も、それに力を貸してた。で、大分軌道に乗り始めたんだ。フレイムカーン様の体調もすっかり良くなったし、もう俺がいなくても大丈夫だろうと思ってね」 私は無言のまま、彼の言葉を聞いていた。大体は、ローラントにいても知ることのできていた情報だ。最後のひとつを除いて。 「一身上の都合ってヤツで、俺は抜けることにしたんだ。どこに行くかは決まってないんだけど、まあニキータが――」 既に私は聞いていなかった。頭の中でぐるぐると、なにかが渦巻いている。 …予想は、していたはずだ。彼があのままナバール盗賊団にすんなり戻るなど、できるはずがない、と。 目の前のホークアイの表情は旅の間ずっと見せていたのと変わらない平然としたものだったけれど、それでも私にはわかった。こうしている今でもまだ、彼は後ろめたさを払拭しきれていない。それどころか、旅をしていた頃よりも、ずっと―― どことなく言い訳がましく話し続ける彼を見ながら、私は。 「…です」 「え?」 知らず、口にしていたのだ。 「いや…です」
1 20/05/20(水)20:02:55 No.691280755
「リース?」 私の様子がおかしいことに気づいたのか、ホークアイがこちらを見下ろしてくる。 「嫌ですっ!」 思わず叫んだ瞬間、私の中でなにかが弾けていた。なにかが、一斉に。 「なんなんですか!? ちっとも連絡を入れてくれないと思ってたら、別れの挨拶とか! なにを考えてるんですか!? そんなに、私のことなんてどうでもいいんですか!? 旅をしてた時は、あんなに…!」 「ちょ、リース、落ち着け! 周りに聞こえるって!」 珍しく慌てふためいて、ホークアイが宥めようとしてくる。けれど私は止まらなかった。 「私が今日まで、どんな気持ちだったか…! それなのにあなたは、こんな時間にいきなり窓から入って来て、長々と言い訳みたいなこと言って!」 「え、言い訳? ちょっと待ったリース。なんか誤解が――」 「誤解もなにもありません! 要は私と会えなくなる言い訳じゃないですか! 会いたくなくなったのなら、はっきりそう言ってくれればいいんです!」 「…っ」
2 20/05/20(水)20:03:53 No.691281092
彼が少しだけ、言葉に詰まる。私はさらに捲し立てた。 「私が嫌いになったんですね!? 確かに私はジェシカさんと比べるとちょっと筋肉質ですし、胸だって大きくありません! 毎日毎日槍ばかり振ってて、女性らしいことなんてほとんど――」 徐々に支離滅裂な言動になっていることには、恐らく自分で気づいていた。明らかに、おかしなことを口走っている。だって、そんな理由でホークアイが私を嫌うはずがないと、わかっているのに。 それでも、止められなかったのだ。言葉も、涙も。 「あなたに口説かれたことだって、一度も…! でも、それでも、私は…」 「いや、それは…参ったな」 こちらの肩に届く寸前のところで手を止めたまま、彼はつぶやいた。最初に会った時の事は憶えてないのか…とかなんとか、聞こえたような気もしたけれど。 私の体に触れてこようとしない彼に向かって身を投げ出しながら、私は。 「わ、私…あなたにとって、ジェシカさんみたいな存在には、なれないかもしれませんけど…それでも」 それでも。 あなたの傍に、いたい。 あなたの力になりたいし、力になってほしい。 できることなら、この先もずっと。
3 20/05/20(水)20:04:22 No.691281283
――どうにか、それを口にすることができた。 彼の手は、やっぱり私の肩に触れようとはしていなかったけれど、しかし私を押しのけるようなこともなかった。 「リース」 「…はい」 囁くような声音で私を呼ぶ彼に、答える。 「自分がなにを言ってるか。ちゃんと理解してるか?」 「してますよ。馬鹿にしないでください」 この城の中のこと以外、なにも知らなかった頃とは違う。私は弱くなってしまったかもしれないけれど、それでも知っていることは確実に増えた。 だから自分がなにを言っているのか、なにをしているのか――しようとしているのか。ちゃんと、わかっている。 「なら、そいつがどれだけ難しいことか。それもわかってるんだよな?」 「…わかって、ます」 そうだ。それもちゃんとわかっている。間違いなく、多くの問題が立ち塞がるだろう。それこそ、考えるだけで頭が痛くなるほどに。 でも、差し当たっての問題は。 「返事を…聞かせてもらえませんか」 それに尽きた。
4 20/05/20(水)20:05:11 No.691281555
彼がゆっくりと、口を開く。 「すまない」 ――頭の中が、真っ白になった。あるいは真っ黒に。 けれど口だけは、勝手に動いていた。 「…謝らないで、ください」 顔を反らし、脚が微かに震え出すのを自覚しながら、それでも精一杯の強がりを口にする。自分の都合ではなく、彼を気遣うための言葉を。 できることなら、今すぐ床に突っ伏して、泣き喚きたかった。あるいは彼の胸に顔を押し付けて、あらん限りの罵声を浴びせたかった。 そうしなかったのは、私に残っていた最後の虚勢――ではなくて。 「今すぐには、答えられない」 彼のそんな言葉が聞こえたからだった。はっとして、顔を上げる。 ホークアイの顔は――苦しそうな色に見えた。 「一身上の都合って、さっき言っただろ? 俺は今、自分のことしか考えられない。他のことを考えてる余裕は、ないんだと思う、きっと」 「あ…」
5 20/05/20(水)20:05:28 No.691281664
言われて思い出した。そうだ。私はわかっていたはずなのだ。旅をしている間も、そしてその後も。彼がずっと、自責の念から抜け出せないでいることに。 でも、それならどうして――彼はわざわざ、私に別れを告げになんて来たのだろう。自分のことだけで手一杯だと言うなら、そんなことをする必要はないはずなのに。 疑問には思ったものの、私は努めて、ものわかりのいいふりをした。しようとした。 「そう…ですよね。ごめんなさい、私、自分のことばっかりで…」 「いや、リースこそ謝らないでくれよ。こういうのは大概、男の方が悪いもんだ」 「そうなんですか? でも…」 「いいんだって、俺が悪いってことにしておけば。まったく、リースは本当にいい子だな」 ――いい子にしててくれよ。 以前に聞いた彼の言葉が、脳裏にフラッシュバックする。
6 20/05/20(水)20:05:46 No.691281792
私は涙を拭って、少しだけ、笑ってみせた。ちょっとひきつっていたかもしれないけれど。 「今すぐには、って言いましたね。じゃあ、いつなら答えてくれるんですか? いつまで待たせるつもりなんです?」 「う。それは――断言は、できないんだけど」 彼は弱ったように顔を背けた。しかしすぐにこちらへと向き直り、 「あのリースにここまで言わせたんだ。返事は、必ずする。俺の方から、きみに会いに来る。今夜みたいに窓から忍び込んで来るよ」 「絶対、ですよ? あともしその返事が私の望むものとは違ったら、その時は覚悟しておいてくださいね?」 「ああ、肝に銘じておくさ。だから、それまで」 「はい。それまで――」 私は彼の顔を見据えて。 さっきよりも、もう少しだけましになった笑顔を浮かべた。 「いい子にして、待ってます」
7 20/05/20(水)20:06:01 No.691281877
みたいな怪文書を誰かが書いてくれるとどうにか書き終えた安堵感で死にそうになります 長くなり過ぎたのは本当に反省しているので誰かホークリ怪文書書いてください
8 20/05/20(水)20:07:08 No.691282302
くっ…今日も来たかしっとり文書! ありがたい…
9 20/05/20(水)20:07:56 No.691282610
お前が書くんだよ!
10 20/05/20(水)20:10:43 No.691283699
1000tより重い王女
11 20/05/20(水)20:12:51 No.691284599
一応言っておきますが さっき上げたやつの続きですコレ
12 20/05/20(水)20:20:33 No.691287822
やはりホークリはいいものだ…
13 20/05/20(水)20:21:27 No.691288222
で?後日談はあるんです?
14 20/05/20(水)20:24:09 No.691289409
あんたのホークリのおかげで生きていける
15 20/05/20(水)20:24:53 No.691289727
抱けー!抱けでち!!
16 20/05/20(水)20:27:12 No.691290741
やっぱり口にするのって大切なんだなって…
17 20/05/20(水)20:27:39 No.691290921
とりあえずキスしろマウストゥーマウスでな
18 20/05/20(水)20:27:47 No.691290980
もうフリですよね?
19 20/05/20(水)20:34:21 No.691293689
書き終えた安堵感ってなんだまだ終わってないぞ
20 20/05/20(水)20:35:44 No.691294238
ギャグじゃないリース怪文書はとても助かる
21 20/05/20(水)20:41:21 No.691296565
真面目に書くとどんどん湿っぽくなるホークリ
22 20/05/20(水)20:44:34 No.691297908
>くっ…今日も来たかしっとり文書! >ありがたい… 実は今日2本目だから後でログを見るのだ
23 20/05/20(水)20:46:16 No.691298629
え?最終回じゃないよね? 明日もあるよね? 続いてくださいお願いします!
24 20/05/20(水)20:50:02 No.691300253
はやくだけでち
25 20/05/20(水)20:54:50 No.691302237
毎晩の楽しみだよありがとう…
26 20/05/20(水)20:59:19 No.691304181
2人がくっついて幸せなところもみたいな(チラッチラッ