ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
20/05/17(日)18:42:51 No.690223297
「あー…行っちまったよ。なんであんなに怒ってたんだアイツ?」 お手上げといった表情で言ってくるデュランに、私とホークアイは軽く顔を見合わせた。思わず苦笑いが漏れる。 「お前ね…いや本当に今更だけど、女心ってヤツがわかってないな」 知ってたけどね、と言いながら、ホークアイは宿屋の扉へと目を向けた。ついさっき、アンジェラが走っていった方向だ。 デュランが怪訝な顔を見せる。 「女心? 今の会話にそんな要素があったか?」 「そういう疑問がノータイムで浮かんでくるのがお前のいいところであり悪いところだ。まあ俺はそういうの好きだけど」 「気持ち悪いこと言うな。つーかそれじゃまた、俺が怒らせちまったってのか? なにがいけなかったんだ?」 「それはちゃんとデュランが気づいてあげないと、アンジェラが気の毒ですよ」 私もアンジェラの方の肩を持つ。これまでにも何度か同じようなやり取りをしているけど、彼女の気持ちは理解できるつもりだから。 …もっとも、私とアンジェラでは、悩みの方向性が少し違うのだけど。 二人を相手にするのは分が悪いと判断したのか、デュランは首を振った。
1 20/05/17(日)18:43:06 No.690223390
「あーはいはい。また俺が鈍感だったのが悪いとか、そういう話ね。わかったよ。とにかく謝ってくればいいんだろ?」 ちょっと違う、と言おうとしたのだけれど、ホークアイがそれを制した。 「いや、この場合はだな…ちょい耳貸せ」 デュランの方に顔を近づけ、ホークアイはなにやら耳打ちしたようだった。 すぐに、デュランが狼狽し始める。 「はぁ!? おま、なんでそんなこと言わなきゃいけねえんだ!?」 「仲直りしたいだろ? 別に隠す必要はないぞ。こっちとしては見飽きた光景だしな。お前もそろそろ学習していい頃だ」 「お、俺はお前とは違うんだよ! なんだってそんな科白を――」 「これでもお前向けにとだいぶマイルドにしてやってるんだぞ? これが俺なら」 「いやいいよ聞きたくねえよお前の口説き文句なんて!」 「そうか? それならさっさと行って来い。王女様のご機嫌を取るのも騎士の務めだ」 「どこの国の話だよそりゃ…」 不満げに漏らしながら、それでもデュランは重い足取りでアンジェラを追っていった。
2 20/05/17(日)18:43:54 No.690223689
――きっと今頃、宿屋ではケヴィンとシャルロットちゃんがアンジェラを宥めているところだろう。あの二人が相手では、アンジェラだって不満の捌け口にしたりはしない。 ホークアイがなにを吹き込んだのかはわからなかったけれど、たぶんうまくいくだろうと私は踏んでいた。 デュランとアンジェラが些細な理由で喧嘩をするのは割といつものことで、私がアンジェラを落ち着かせ、ホークアイがデュランに仲直りの方法を伝授するのもやはりいつものこと。 最初のうちは彼のやり方で拗れることもあったものの、段々と二人の性格を把握していったのか、そのアドバイスは無駄を省いた的確なものになっていった(彼の趣味も含まれているかもしれない)。 情報の把握と活用は、シーフには必須の技能だよ――得意げな顔で、彼はそんなことを言っていた。別に盗賊に限った話ではないと思うけれども。
3 20/05/17(日)18:44:15 No.690223826
ともあれ、私は心配していなかった。それは隣のホークアイも同じだったようで、これ以上面倒を見る必要はないとばかりに、こう言ってくる。 「それじゃ、俺達もどこかで休もうか」 「そうですね」 後で宿屋に行くと、アンジェラが妙に上機嫌だった。代わりにデュランの方が少しだけ疲れているように見えた。 ――俺は女性の味方だよ、基本的に。 何度か耳にした、彼の言葉。決して嘘じゃないのだろうとは思う。 ――デュランは女心がわかってないな。 これも何度となく聞いた言葉。自分はわかっている、とでも言いたげな様子で。 …否定は、しない。実際のところ、彼は相手を楽しませるための話術に長けている(これはなにも女性に限った話じゃない)。それが情報収集などの面で奏功しているのも事実だ。
4 20/05/17(日)18:44:34 No.690223944
けれど私としては――ごく個人的な事情で――異を唱えざるを得なかった。 本当に、女性の気持ちをわかってるんですか? そう文句を言いたくなることが、度々ある。具体的には、身近にいる一人の異性の気持ちを、ということだけど。 わかっているのだとしたら、ちょっとたちが悪い。きちんと理解して、その上で気づいていないふりをしているのであれば。少しばかり恨みがましく思ったとしても許されるだろう。 とは言え、私としても全ての女性を代表するつもりはない。というか私が世間一般から見れば少々ずれているのだということは、旅を通じて思い知らされたことの一つでもある。 だから、彼の自負に文句を述べる筋合いは、私にはないのかもしれない。それでも言いたくなる時というのはある。 ――の気持ち、ちゃんとわかってますか? それを面と向かって言えないのは、恐らく私の方も正確には把握していないから。この気持ちを、他でもない私自身が掴み切れていない。それを整理するには、ちょっと他に考えなければいけないことが多すぎるのが現状だった。だから、聞くに聞けない。
5 20/05/17(日)18:44:46 No.690224016
自分でも持て余しているのだ。それをどうすればいいのかなんて、彼に聞くわけにはいかない。その正体を、自分より先に彼に把握されるなんて、あってはいけない。 いずれ私自身が、この気持ちに答えを見つけたら。その時は、正面から堂々と彼に聞けばいい。なけなしの勇気を動員して。 私の気持ちを、わかってくれますか? と。 「アンジェラしゃんもそうでちけど、あんたしゃんもたいへんというか、めんどくさいことになってるでちね…」 宿屋に戻った後で。 こちらの肩をぽんと叩きながら、シャルロットちゃんがそんなことを言ってきた。
6 20/05/17(日)18:45:00 No.690224107
みたいな怪文書を誰かが書いてくれたりあと公式で6人PTのアフターストーリーとか用意してくれたりすれば捗ります色々と
7 20/05/17(日)18:53:01 No.690227020
しっとリース来たな…
8 20/05/17(日)18:53:17 No.690227114
ステキ
9 20/05/17(日)18:54:54 No.690227737
でち子が一番大人なんだ…
10 20/05/17(日)19:05:20 No.690231181
>しっとリース来たな… 嫉妬リースですって!?
11 20/05/17(日)19:09:58 No.690232955
デュラアン要素もありがたや