20/05/12(火)19:19:06 「ごき... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1589278746144.jpg 20/05/12(火)19:19:06 No.688466164
「ごきげんよう、メアリ様! もしよろしければ今日一日、私のお姉様になってくださいませんか?」 そう言いながら、私と同い年の友人であるソフィア・アスカルト様は、その真紅に燃える瞳を爛々と輝かせてこちらを見上げていました。
1 20/05/12(火)19:19:18 No.688466229
それはちょうど、高く上る陽がまぶしく地に照り返す、夏のある休日のことでした。 私――メアリ・ハントはその日、キース・クラエス様の卑劣な策略に陥って、愛するカタリナ・クラエス様との下町訪問の機会を無念にも逃してしまったのです。 正気さえ疑うその非道に傷心は深く、自室で一人寂しくキース様への報復案を練っていたところ、おもむろにソフィア様はやって来ました。 聞けば、彼女が好み日々収集しているロマンス小説の一つに、それは美しく気高い姉妹愛の物語を見たとのこと。 その素晴らしい物語に深い感銘を受けたソフィア様は、自分にはない姉という理想の存在に憧憬の念を馳せ、とうとうその夢想を現実に求めるようになったということでした。 ですが、何故私の元に? 姉となれば、カタリナ様というこれ以上なく適任の御方がいらっしゃるではないですか。 そう問えば、ソフィア様は「それはそれで胸躍る設定ですが、今日はメアリ様の気分です」と仰りました。一体、どういう気分だというのでしょう……
2 20/05/12(火)19:19:30 No.688466290
そんな風に、何とも言いようの知れない熱意を振るうソフィア様に圧され、私はつい彼女を部屋へと招き入れてしまいました。 どうぞと言うや否や、まるで幼子のように跳ねながら脇をすり抜け扉をくぐるソフィア様を横目に、自分は一体何をしているのだろうと複雑な心境でした。 後ろ手で扉を閉め、ため息を一つ落として振り向くと、ソフィア様はさも待ちきれないといった表情で私に飛びつきました。 「それではメアリ様、たった今から私のことはソフィアとお呼びください!」 ……ぅえぇ……? およそ淑やかな令嬢らしからぬ、間の抜けた当惑の声が口から漏れ出ます。 そんな私に構わず、ソフィア様はお願いしますお願いしますと、その華奢な身体に見合わぬ勢いで私の肩を掴んで前に後ろに揺さぶりました。 ぐわんぐわんと大きく動く視界、ついに喉奥に限界を感じた私は息も絶え絶えになりながら了承しました。 私が首を縦に振ったと見るや無邪気に喜ぶソフィア様に若干の小憎たらしさを感じますが、一度引き受けてしまったからには仕方ありません。 不承不承、望むその名を呼ぶよう努めます。
3 20/05/12(火)19:19:41 No.688466342
……あー、そ、ソフィア……様…… 「それだといつもと変わりません、もう一度」 うぅ……そ、そふぃ……ぁ…… 「ううん、まだまだですね。もう一度」 ……っそ、ふぃあ 「おお! あとちょっとです! その調子!」 ……もう! ソフィア! 「――はい! ソフィアはここにおります、メアリ姉さま!」
4 20/05/12(火)19:19:52 No.688466404
その弾けんばかりの嬉々とした答酬を聴いた途端、今までに感じたことのない感情が胸へとこみ上げました。 それは私がカタリナ様を熱く想い慕う気持ちとはまた別種の、陶酔すら覚える高揚感。 思えば、ハント家の末に生まれ、四女としてこれまでを歩んできた私が誰かに姉と呼び仰がれるなど、これまでに一度もない経験でした。 姉さま――そのあまりにも耽美な響きに、私はたちまち心を奪われます。
5 20/05/12(火)19:20:06 No.688466473
それから、ソフィアは照れくさそうに私の膝に乗りたいと所望しました。 可愛い妹たっての頼み、何を断る理由がありましょう。私はベッドの端に座り、両手を広げソフィアを迎えます。 すると、ソフィアはおずおずと私の上に身を寄せ、しなだれかかるように私の肩へとその白い髪を寝かせました。 私は右手でその背を支えつつ、抱きすくめるように左手を回してソフィアのふわふわとした頭をゆっくりと撫でます。 気持ち良さそうに目を細め、ふにゃりと口元を緩ますソフィアを手中に収めながら、私は再びその名を口にしました。 ――ソフィア。 はい、メアリ姉さま。 ――ソフィア。 なんでしょう、メアリ姉さま。 ――ソフィア。 くすぐったいです、メアリ姉さま。
6 20/05/12(火)19:20:17 No.688466542
飽きることなく、何度も何度もうわ言のように名前を繰り返す私に対し、ずっとソフィアは健気に私を姉と呼んで返し続けてくれました。 そんな健気さが更に愛しさを駆り立て、私はその存在をもっと感じたくて自らの胸に埋めるように抱く手を強めます。 しばらくすると、ソフィアの返答は少しずつ微睡んだものへと変わっていき、ついにはすうすうと深く寝入ってしまいました。 ――全く、手のかかる妹ですわね。 そう苦笑しながらも、その幸せそうな寝顔に煩わしさは欠片も覚えず、ただただ暖かく満たされた気持ちに全身が包まれます。 ああ。今この時間が永遠に続けばいい。 そう願う私は、きっと世界で最も愛に生きる姉であったことでしょう。 しかし、その穏やかな寝息をずっと耳にしていれば。 なんだか、段々と、私まで、眠く――
7 20/05/12(火)19:20:32 No.688466613
……数時間後。 今度の舞踏会に関する打ち合わせのため私の部屋を訪れたアラン様が言う所には、何度扉の前で呼んでも反応の無い私を心配したとのことでした。 この高い外気温です。もしや部屋の中で一人熱さに倒れたのではと捉えるのも無理はなく。 だから、慌てて開け放った扉の先、ソフィア様と二人ベッドの端で折り重なるように寝入っている私を目撃したのは不可抗力だった――そう青い顔で弁明するアラン様に、私は寛大にも酌量の余地を認めます。 もし、これが手打ちの楽な身内でなければ、私は方方への要らぬ根回しに労力を割く羽目になっていたことでしょう。 社交界を生きる淑女にとって、あるまじき失態を軽率に晒してしまったことに私は自分を恥じつつ。 しかし、あの慈しみに溢れたひとときがまた訪れなないものかと密かに待ち望むのでした。
8 20/05/12(火)19:21:09 No.688466821
以上です 書いてる途中でメアリの一人称は丁寧語じゃないと気づきましたが諦めました 許して
9 20/05/12(火)19:21:37 No.688466982
いい…
10 20/05/12(火)19:24:52 No.688467980
メアソフィとは…いいですね
11 20/05/12(火)19:27:10 No.688468713
成長後のメアリはおっかない部分の描写多いしな… こういうのが見れるのは素直に嬉しい…
12 20/05/12(火)19:28:44 No.688469249
間に挟まりてえー
13 20/05/12(火)19:29:16 No.688469432
これはいい… キースなにしてんの…
14 <a href="mailto:野猿">20/05/12(火)19:30:14</a> [野猿] No.688469744
>間に挟まりてえー
15 20/05/12(火)19:30:47 No.688469898
メアソフィ…いいですね……
16 20/05/12(火)19:35:57 No.688471534
メアリはこういう面倒見の良いとこある
17 20/05/12(火)19:36:19 No.688471645
昨日のアラメアといいメアリ怪文書が多くてよき
18 20/05/12(火)19:43:37 No.688474037
わけのわからない熱気のようなものに押さえこまれてしまうメアリいいな
19 20/05/12(火)19:45:45 No.688474729
女性陣の野猿介さない仲良し場面あんまり描かれないからありがたい…
20 20/05/12(火)19:46:44 No.688475039
ところでこのソフィアはもうだめなのでは?
21 20/05/12(火)19:58:00 No.688479078
ソフィアは原作の時点からしてもうだいぶだめじゃねえかな…
22 20/05/12(火)20:03:45 No.688481155
> そんな風に、何とも言いようの知れない熱意を振るうソフィア様に圧され、私はつい彼女を部屋へと招き入れてしまいました。 急に谷口ジロー作画になるんじゃあない!
23 20/05/12(火)20:11:22 No.688483946
疑似姉ごっこは末っ子にやらせるのがいいよね…
24 <a href="mailto:お幸せに……">20/05/12(火)20:14:34</a> [お幸せに……] No.688485175
緑 義 妹 緑 姉 妹 妹 緑緑緑愛妹妹妹 緑 妹 緑 妹 緑 妹 妹 緑 妹妹妹
25 20/05/12(火)20:15:08 No.688485399
>メアリはこういう面倒見の良いとこある カタリナとダンスするソフィアを後ろからアシストしてあげたり優しいよね