20/04/23(木)18:10:22 「はぁ…... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1587633022802.png 20/04/23(木)18:10:22 No.682225205
「はぁ……」 ディスプレイに映るスタッフロールを見つめながら、主人は小さくため息をつく。 時刻はすでに朝方となり、カーテンの隙間からは朝日が差し込んでいる。 スタジアムでのリーグ戦は無期限の延期となり、楽しみにしていた同人イベントも中止。 チャンピオンとして仕事からも同人誌の原稿からも開放された主人は、セール中に買ったものの積んだままだったゲームを消化する日々を送っていた。 「わかってたオチだけれど、やっぱりちょっと来るものがあるわよねこの終わり方……」 SOMA(ソーマ)。それが今しがた主人のクリアした作品だ。 ステルスホラーゲームという触れ込みであり、実際私も主人が怯えながらプレイする様子を横から眺めて楽しんでいたが、シナリオが進むにつれて顕になったこのゲームが持つホラー作品としての本質は、そこではなかったのだ。
1 20/04/23(木)18:10:33 No.682225260
今ここで主人を眺めているこの自分は、感じている世界は、本物なのだろうか。自身の実在性そのものを揺らがせる、哲学的な不安。それがこのゲームの提供する恐怖だった。 「ゲーム性そのものに慣れてきてプレイングによる恐怖が薄れてきた辺りで、シナリオからの恐怖がじっとりと染み出してくる作りが、結構秀逸よねぇ」 短いスタッフロールの後に始まるCパートを挟み、ゲームはタイトル画面へと戻る。主人は少し疲れた様子でそれを眺めながら、しみじみと呟いた。 流石にすぐさま二周目という気分にはなれないようだし、それも納得の重さを持つシナリオだ。 ……ゲームは、2015年のトロントにて、主人公サイモンの自宅から始まる。事故で頭部に傷を負った彼が、治療のために脳スキャンを受ける、というのが冒頭での出来事だ。 指定された医療施設で脳スキャン用の器具と接続された診察椅子に座ったサイモンは、気がつくと見知らぬ施設の中へと移動していた。
2 20/04/23(木)18:10:43 No.682225323
狂ったロボットがうろつき、機械と有機物が混ざりあう蔦のような物体に塗れた深海の施設を、サイモンは手探りで探索してゆく。 見覚えのない規格のコンソールに残るメッセージは、どれも2103年の日付が記されており、今朝トロントの自宅で目を覚ましたサイモンにとっては、受け入れがたい事実ばかりが積み重なってゆくのだ。 まるで人間のように話す狂気に支配されたロボットたちを避けながら、サイモンはなんとか通信設備を起動し、どうやらこの施設で働く研究員らしいキャサリンという女性と連絡を取る。通信画面越しに導かれ目を覚ました施設から脱出したサイモンは、次の探索の場へと辿り着いたところでようやく彼女と直に邂逅する。 ……彼女は、元となった人物の脳スキャンデータを移植されたロボットだった。人と同じように考え、話し、思考する、記憶と人格の完全なコピー。 そしてサイモン自身もまた、かつて存在した人物のデータを移植されただけの動く潜水服だと告げられるのだ。だが、落胆するサイモンへと突きつけられる絶望の事実はそれだけではない。
3 20/04/23(木)18:11:07 No.682225464
今や地球は隕石によって壊滅し、残った人類はこの海底施設で滅びを待つのみ。もはや人類存続の望みなどとっくに潰え、残った人間の脳スキャンデータを仮想世界の箱庭の中で生活させる、ARKと呼ばれる機械を衛星軌道上に打ち上げ、人格のみをその中で生きながらえさせるというのが、残された最後の希望であると告げられるのだ。 自分人格データをそのARKに送り、ともにこの地球から脱出させるという条件で、サイモンは停止された打ち上げプロセスを再実行するという任務を得る。 そしてシナリオを進めるうちに、主人公は必要な部品を奪うために人間の人格をインストールされたロボットを停止させ、パスワードを聞き出すためにスキャンされた人物データをパソコンの中で実行し尋問するという行動を余儀なくされるのだ。 いくらでも複製の効くデータとしてのみ残された人物たち、そしてそれは主人公でも同じであり、深海に運ばれたARKを回収するため、サイモンもまた自己を複製されより高性能な潜水服へとインストールされる。
4 20/04/23(木)18:11:32 No.682225610
シナリオを進めるほどに、命の定義さえあやふやになっていく。『生きている』とはどういう状態を指すのだろうか。自己の連続性を失い、自分というものが複数に分かたれたとき、それは同一人物なのか他人なのか。 それでも人類の、ひいては自分という存在の情報を永らえさせたい。果たしてそれが本当に生き残ったと言えるのか、意味のある行いだと言えるのか、考えるほどに分からなくなっていく。 「ソーマっていうタイトルも、シナリオの内容と照らし合わせると皮肉が聞いてるわよね」 私の考えを見抜いたかのように、主人がそう合いの手を入れる。 ソーマ、それはインド神話における神々の飲み物であり、人が飲めば健康と長寿を得ることが出来る。 滅びに瀕した人類を生きながらえさせようというシナリオ内容からすればピッタリと言えるが、主人が言うようにきつい皮肉も感じられるタイトルだ。 ……その在り方を変質させても、命の定義にすら当てはまらなくなっても、自分の欠片だけでも未来へ遺す事ができたら。人が神の領域を冒してでも、ただ終わるのではなく何かを繋げられるのなら――。
5 20/04/23(木)18:11:44 No.682225682
「ふ……ふわぁ……」 主人が大きく背伸びをしながら欠伸を漏らす。日がな一日室内でゲームをするかBL作品を漁るかの日々で生活リズムは完全に崩壊している。 「ウホ?」 昨日から徹夜でゲームをしていたのだから、そろそろ寝た方が良いのではないかと声をかけると、主人は隈の浮き出た目元をこすりながら小さく頷いた。 「そうね、rimworldも更新来てからまだ手を付けれてないし、積んでるゲーム片付けたら、ついにバルブインデックス開封してHalf-Life alyxもやらなくちゃだし、その前にきちんと休んでないとね」 友人たちはみな外出自粛で暇をしているというのに、主人は引きこもりこそが自分のあるべき姿でも言いたげな様子である。 疲れの残る緩慢な動作で立ち上がり、積み上げられた同人誌に囲まれたベッドへと這い登ると、こちらへと顔を向け、小さく手招きする。
6 20/04/23(木)18:11:59 No.682225747
「春になってもまだ朝は肌寒いし、一緒に寝ましょ。ゴリちゃん」 他の手持ちは引き篭もってゲーム三昧の主人よりもむしろ、美味しい食事を提供してくれる母上の方に懐き始め階下で過ごしており、部屋で時間をともにするのは自分だけになりつつあった。 私はやれやれと肩をすくめながら、しかし彼女と旅に出たばかりの、二人きりの日々を思い出してどうにも頬が綻んでしまう。 少し窮屈なベッドをきしませながらよじ登ると、徹夜の反動か主人はもううつらうつらとし始めていた。 どうせ外出しないからとトリートメントを怠っているボサボサの髪をひと撫ですれば、すぐに細い寝息を立てて眠りに落ちてしまう。 私は苦笑しつつも、それに倣って目を閉じた。
7 20/04/23(木)18:13:57 No.682226292
久々に現れたと思ったらダイマして寝た…
8 20/04/23(木)18:14:57 No.682226529
マジで久しぶりに現れたな
9 20/04/23(木)18:16:45 No.682226952
外出自粛を満喫しすぎている…
10 20/04/23(木)18:18:45 No.682227422
ゴリちゃんはシナリオへの理解深くて頭いいな
11 20/04/23(木)18:23:40 No.682228609
せめて任天堂のゲームをダイマ(ックス)しろよ!!
12 20/04/23(木)18:25:58 No.682229154
リムワールドいいよね アプデで超能力使えるようになったけど楽しいよ
13 20/04/23(木)18:27:52 No.682229621
somaは少し気になってる
14 20/04/23(木)18:29:48 No.682230064
SteamかかりっきりでSwitchが埃かぶってそうなのはポケモン主人公としてどうなの?
15 20/04/23(木)18:33:23 No.682230937
毎回良い話風に締めるのズルいよ…
16 20/04/23(木)18:33:30 No.682230962
>somaは少し気になってる VRゲームに慣れちゃった今プレイするとグラフィックとか物理演算周りがちょっと古い気するけどシナリオは間違いなく一級品の良ゲーよ 出来ることならテクスチャを高解像度に一新してVRリメイク出して欲しいゲームだと思うの 自分がもしかしたら自分じゃないのかもしれないという恐怖はVRの没入感でより高まると思うし
17 20/04/23(木)18:41:31 No.682233125
マジでお前自由だな 怪文書風のただの実体験じゃないのかこれ