20/03/15(日)00:46:22 「おっ... のスレッド詳細
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20/03/15(日)00:46:22 No.671166511
「おっ邪魔っしま~すっ!沖田さんが来ましたよ~、っと!」 ホワイトデーの夜、マイルームに底抜けに明るい声が響いた。声の主は、この季節だと言うのに水着姿。念願叶って嬉しい気持ちは我が事のように分かるが、寒い季節に薄着だと心配で仕方がない。ジェットのお陰で体調は良いらしいとは言え、『病弱』持ちの彼女であれば尚更の事だ。 「やあ、いらっしゃい、沖田さん……って、やけにテンション高いね?」 「それはそうですとも!何せホワイトデーですからね!立香さんからのお返しが楽しみで楽しみで!」 軽い足取りと満面の笑みでマイルームに入って来た彼女。そんなに期待してくれると、こちらも用意した甲斐があったというものだ。 「ええ、例えこんなに遅くなっても、ノッブに煽られたりしても……です!」 「あ、あはは……遅くなっちゃって、ごめんね?」 その言葉と拗ねたような視線に罪悪感を煽られ、返す笑顔が若干引き攣る。準備が必要だったとは言え、彼女には申し訳ない事をしてしまった。
1 20/03/15(日)00:46:37 No.671166605
「……ふふっ。冗談ですよ、じょ・う・だ・ん!立香さんがお忙しかったのは重々承知していますし、それくらいで怒る程、沖田さんも狭量ではありませんからね!」 その言葉の通りに再び笑顔に転じた彼女は、ベッドに腰かけてその隣のスペースをぽんぽんと叩いた。それに従って椅子から立ち上がり、ホワイトデーのお返しを持ってそこに腰を下ろす。 「本当に遅くなっちゃって……ごめんね、沖田さん」 「いえいえ。……さ、おふざけはここまでにしまして。肝心のお返しの程は……?」 「はい、こちらになります」 膝の上に置いた少し大きめの包みを差し出す。今日何度もやってきた事なのに妙に緊張するのは、相手が彼女だからだろう。
2 20/03/15(日)00:46:48 No.671166674
「えー、こほん。……バレンタインのチョコ、とっても美味しかったです。ありがとうございました」 「こちらこそ、喜んで頂けた様で何よりです。お返し、ありがとうございます」 「「……ぷっ」」 深々とお辞儀をしてお返しを受け渡した後、顔を見合わせて揃って笑い合う。親しき仲にも何とやらだが、些か仰々しかったかもしれない。 「あはは……改めて言葉にするのも変な感じだね。照れくさいって言うか……」 「ふふっ……そうですね」
3 20/03/15(日)00:47:01 No.671166739
「では……開けてみても?」 視線で肯定の意を返すと、彼女はぺこりと一礼して丁寧にラッピングを剥がしていく。……妙な所で律儀と言うか、何と言うか。嬉しそうな横顔を眺めながらぼんやりと思う。 「おや、ダンダラの染め抜きに……これは、和菓子の詰め合わせですか。粋な事をしてくれますね~」 「そうでしょ?結構頑張ったんだ」 ラッピングの下には浅葱と白でダンダラに染め抜いたお手製の箱。そしてその中にはお団子にお饅頭、金平糖に羊羹、かりんとう等々、多数の和菓子が詰めてある。どれも、月に数度ほどの彼女とのお茶会の中でも特に反応の良かったものばかり。ホワイトデーのお返しとしては中々の自信作だ。 彼女にも気に入って貰えたらしく、喜色満面で頭上ではぶんぶんとアホ毛が揺れている。……風もないのにどういう仕組みで揺れているんだろうか、アレ。
4 20/03/15(日)00:47:19 No.671166820
「ありがとうございます。早速頂いても良いですか?」 「え?あ、ああ、うん。どうぞどうぞ」 等と考えていると、彼女の笑顔がずいと近づいてきた。突然の事で若干しどろもどろになってしまったが、どうやら彼女は和菓子の方に夢中だったらしく気付かれなかった様だ。 「やったっ!では、何から頂きましょうかね~、っと……おや?」 「ど、どうしたの……?」 あれもいいな、これもいいなと一つ一つ指さしている最中、不意にその動きが止まる。頭上のアホ毛も一緒に。……やっぱり謎だ。 「……いえ、何でもありません。では折角ですから、こちらのお団子から頂きましょう!」 頂きますと手を合わせた後、彼女が選んだのは三色のお団子。一串持ち上げて口元に運ぶ。
5 20/03/15(日)00:47:37 No.671166915
「はむっ……もぐもぐ……」 お団子を一つ口に入れて瞳を閉じ、丁寧に味わうように食べている。その様を、ごくりと固唾をのんで見守る。 「ごくん……ふむふむ。ちょっと甘さは控えめですが、それも又良し。美味しいです!」 お気に召したようで、にっこり笑顔にサムズアップと共にお墨付きを貰えた。ほっと胸をなでおろす。 「口に合ったようで何よりだよ。実はそれ――」 「立香さんの手作り……でしょう?」 「え!?」 言い終わる前に、ずびしと串が向けられた。ちょっと得意げに笑っている辺り、気分はさながら名探偵と言った所だろうか。……危ないので出来るならやめて欲しいものだが。
6 20/03/15(日)00:47:47 No.671166982
「な、何でそれを……!?はっ!まさか沖田さん、俺をストーキングして……!?」 「清姫さんじゃあるまいし、しませんよそんな事っ!?……こほん。簡単な話です。他の物に比べてほんの僅か……和菓子マイスターの沖田さんでなければ見逃しちゃう程にほんの僅かだけ、不格好だったものですから。それに、私が食べ終わった時のリアクションが、買ってきた物に対するソレにしてはオーバーだった、というのもありますけど」 「な、成る程……」 「……それと、こちらの羊羹もお手製ですよね?」 「ぎくっ……」 「漫画じゃあるまいし、口で言いますか、それ……」 「いやまあ……これがホントの『語るに落ちる』と言う奴だね。あっはっはっ」 「全然上手くないですからね?……お団子は美味しいですけど」 「お、うまい。お後がよろしいようで」 「漫才やってるんじゃないんですよ……」
7 20/03/15(日)00:48:00 No.671167056
「……それより立香さん。一緒に食べましょう?」 「え?俺も一緒に食べていいの?」 「当たり前じゃないですか。美味しいものは、誰かと一緒に食べた方が美味しいですから」 「じゃあ、遠慮なく……」 実を言えば、お返しを選ぶ段階で結構試食したりしていたのだが、貰えるというなら話は別。お気に入りだったかりんとうに手を伸ばす―― 「ひょい、っと」 しかしその手は目的のものを掴む事なく空を切った。彼女が箱ごと膝の上から逃がしたからだ。 「……?あの、沖田さん?くれるんじゃなかったの……?」 「いえ、勿論あげますよ?ええ、あげますとも……」 自分に言い聞かせるように呟いた彼女の顔は、少し赤かった。
8 20/03/15(日)00:48:11 No.671167122
「すぅー、はぁーっ……よしっ!」 それが何を意味するのかと首を傾げていると、彼女は深呼吸を始めた。上下に動く大きなモノに目を奪われそうになっていると、目の前にかりんとうが差し出される。 「えっ、と……これは?」 「…………あ、あーん……とか、やってみたりして……」 「……!?」 「っ……ほら!バレンタインの時にはマスターにあーんしてもらったわけですし!?そのお返しなら、私もあーんしてあげるのが道理かな、と……すみません、何でもないです」 普段奥手な彼女からのまさかのお誘いに驚いて固まっていると、それを拒絶と感じ取ったのか、彼女は殊更に顔を赤くして言い訳の言葉を並べ始めた。 「違っ!ちょっ……ああ、もう!」 「――ひゃあっ!?」 こちらも弁明の言葉を並べ始めると同時、かりんとうが引っ込んでゆく。逃してなるものかと慌てて食いつくと、勢い余って指先に唇が触れてしまい、驚いた彼女の高い声が響いた。
9 20/03/15(日)00:48:27 No.671167203
「ひ、ぁ……りつか、さん……」 弱々しい彼女の言葉に、かりんとうを口に咥えたまま彼女の指からゆっくりと口を離す……誤って、それ以上の事をしてしまわないように。 「……うん、あの……美味しかった、です」 「そ、それは、良かった、です……?」 咀嚼をし終えた後、訳が分からなくなって聞かれてもいない感想を述べた。今更この程度、誰に咎められる関係でもないはずなのに、突発的に起こった事態と二人きりという状況から妙な緊張が場を支配した。何だか居た堪れなくなって互いに顔を伏せる。
10 20/03/15(日)00:48:45 No.671167305
「「…………あ、あのっ!」」 次に顔を上げた時、互いの言葉は重なっていた。お先にどうぞという彼女のジェスチャーに従い、咳払いをしてから話し始める。 「さ、さっきはごめんね?変な事しちゃって……悪気があった訳じゃあなくって……」 「わ、分かってます、分かってますとも……っ!」 膝の上で手を合わせて俯いた彼女の耳は相変わらず真っ赤だった。多分、彼女ほどではないにしろ、自分の顔も赤くなっている事だろう。 「それで、その……良ければ、もうちょっと食べたいなぁ、なんて……」 「!……は、はい……っ!えと……ど、どうぞ……っ」 ――当然と言えば当然だけれど、結局、その日の逢瀬は一晩では収まらなかった――
11 20/03/15(日)00:51:33 No.671168159
こういう純情なの凄く良いですよね
12 20/03/15(日)00:56:25 No.671169687
沖田さんは健全なお付き合いが似合っていいよね…
13 20/03/15(日)00:56:50 No.671169837
>――当然と言えば当然だけれど、結局、その日の逢瀬は一晩では収まらなかった―― 二日間ヤりっぱなし!?!?!?
14 20/03/15(日)00:57:03 No.671169922
イチャイチャしやがって…
15 20/03/15(日)00:57:17 No.671170001
むっ!いいねぇ…
16 20/03/15(日)00:59:24 No.671170641
ホワイトデーはセックスの許される日だからな…
17 20/03/15(日)01:07:36 No.671173076
>こういう純情なの凄く良いですよね 凄く良い…是非とももっと流行ってほしい…
18 20/03/15(日)01:14:02 No.671174851
なんというか沖田さんはこういうのが似合うな!
19 20/03/15(日)01:41:48 No.671182431
いい…