虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。新しいログはこちらにあります

20/03/07(土)01:23:05 ・・・... のスレッド詳細

削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。

20/03/07(土)01:23:05 No.668944048

・・・・・ パチパチと焚火が音色を奏でる。 夜だってのに月も星も見えない、冷たく暗い世界でも炎だけはこうやって光と熱をくれる。 だから、私は炎が好きだ。 そうやって感慨にふけっていると、 「……んぁ?」 「やぁ、お目覚めかい」 とりあえず私の寝袋で寝かせていたホップ君が間抜けな音を立てて目覚めた。 「あれ……?オレ……」 「君は眠ってたんだよ。少しだけ、記憶を取り戻してね」 「記憶……?」 「『お前が鍵だ』」 私がそう言った瞬間、ホップ君は飛び起きる。

1 20/03/07(土)01:23:18 No.668944107

「ダンデさんが、そう言ったんだよね?」 「……ああ」 「『鍵』ってのはどういう意味なんだい?」 「……わからない」 「……そう」 私がそう言うと、ホップ君は申し訳なさそうに頭を下げる。 「……ごめん」 「なんで謝るんだい」 「オマエ、太陽取り戻したいんだろ?そのために、こんなところに一人で来たんだろ?」 「そうだけど……『こんなところ』って言うのは感心しないな。私から見れば灰だらけの冷たい場所だけど、君にとっては故郷だろ?」 「……」 「……それに、私の祖父母の故郷でもあるからね」 「……ああ、そうだな」 そう言って、ホップ君も焚火にあたりはじめる。

2 20/03/07(土)01:23:39 No.668944204

私は瓦礫から集めた薪をまた一つくべていく。 「……ねぇ、ホップ君。ダンデさんってどこに行ったんだろうね」 「……多分、ナックルシティだ」 ホップ君は確信をもってそう告げる。 「ナックルシティの真ん中から、真っ直ぐ空へとのびる光が見えた。その後、空が真っ暗になって……アニキが俺の所へやってきた」 その説明は、記録に残っているブラックナイトと一致する。 やはり、ナックルシティが事件の中心なのか。 私の中で疑念が一つ確信へと変わる。

3 20/03/07(土)01:23:56 No.668944273

「久しぶりに会ったってのにアニキはなにも言わずただ、『一緒に来い』って……わけわかんないまま、ここまで連れてこられたんだ」 「それで、『鍵』って言葉を言われて、君はあそこに押し込まれた、と」 つまり、ダンデさんは何が起きていたのか理解していた。 だから、災害が本格化する前に弟を保護しに行ったというわけか。 ……ん? 「ねぇ、なんでダンデさんは君をあの棺に入れたんだい?」 「……たぶん、オレを守るために」 「だったら、普通に避難させれば良かったじゃないか」 「それは……」 そう、ガラルの住民には確かに大勢の犠牲者がでた。 それでも無事避難できた人たちもいた。 他でもない、私の祖父母がそうだったのだから。 「安全を考えるならエンジンシティの地下よりも普通に避難させる方がずっといい」

4 20/03/07(土)01:24:21 No.668944367

何と言ったって、ホップ君の言葉が本当ならばダンデさんはいち早くその異常事態に気づいていたのだから。 そこから避難を促していれば恐らく問題なくホップ君はガラルから脱出できていただろう。 「それをしなかった理由は……」 「オレが『鍵』だってことか」  私が言おうとした言葉を先に言われてしまう。 そう、ダンデさんは理由があってホップ君をここに連れてきたのだ。 それも、何十年も眠らせるような装置に入れるために。 その理由にはきっとホップ君が『鍵』だという事が絡んでいる。

5 20/03/07(土)01:24:44 No.668944466

「……でも、今はそれ以上わからない」 「……ああ」 結局のところ、私たちの考えは推論にすら至っていない。 圧倒的に情報が足りない。 ならばもう、これ以上考えても時間の無駄だ。 それなら、今やるべきことは他にある。 「……ご飯にしよっか。カップラーメンでいい?」 「おっ!何十年ぶりだろうなそれ!」 私は久しぶりにポケモン以外と一緒に食事をすることが出来た。

6 20/03/07(土)01:25:18 No.668944588

・・・・・ 朝になった。 なったらしいけど、それは時計を見たからわかったに過ぎない。 相変わらず雲は厚く光なんてほんのわずかにしか届いていない。 薄暗い世界は今日も、私たちを包んでいる。 「これからどうするんだ」 出発の準備を整えたホップ君がそう聞いてくる。 その質問を私は尋ね返す。 「……君は、どうしたい?」 「オレは……ナックルシティへ行く」 「……」 「アニキはきっとそこへ向かった。ブラックナイトを止めるために」

7 20/03/07(土)01:25:37 No.668944655

ああそうだろう。 私が聞いたのと、ホップ君の話すダンデさん像はそう違いはない。 高潔で、ガラルの事を大事に思っている人物。 そんな人間がガラルの危機を前に何もせずにいるわけが無い。 きっと、事件の中心へと向かって行ったのだろう。 でも、それはつまり、ダンデさんは世界で最も危険な場所へ行ったという事だ。 「……ホップ君、ダンデさんは」 「……分かってる。きっともうアニキは」 私の言葉を遮って、ホップ君は灰色の空を見上げる。

8 20/03/07(土)01:26:02 No.668944761

「でもさ、もしかしたらって。オレがここで何十年も眠っていたように、アニキもどっかで寝てんじゃって」 「……かもね」 「だろ?ならさ、探してやらねーと。このままじゃオレの方が年上になっちまうからな!」 「ああ、それは大変だ」 ああ、彼は強い。 現実を見据え、それでも希望を捨てていない。 あのシェルターの中で、偽物の太陽で満足している人たちとは違う。 そんな彼に、きっと私は――――― 「なら、私も着いて行くとするよ」 「……いいのか?」 「良いも何も、元より私はそのつもり。ブラックナイトを引き起こした『何か』を見つけて、世界に光を取り戻すために私は家族の反対を振り切ってここに来たんだから」

9 20/03/07(土)01:26:39 No.668944899

おばあちゃんもおじいちゃんも必死で止めてきた。 当たり前だ、孫娘が危険な場所へと向かうというのだから。 だけど、私はそれを振り切ってここへ来た。 私の、夢のために。 「だから、私は君を利用するよ。私の目的のために」 太陽を取り戻して、その熱を感じる。 おばあちゃんたちから太陽の話を聞いて以来ずっとそれを願っていた。 そのために、生きてきた。 そのためなら、どんな困難だって乗り越えると誓った。 だから、 「君も私を利用すればいいさ。気にせずにね」 「……あははっ!」 「……今の、笑わせるつもりじゃなかったんだけど」 「悪い悪い!いやな、オマエ……良いやつだなって」 「……ふん」

10 20/03/07(土)01:26:59 No.668944991

私が拗ねてそっぽを向くとホップ君が横顔をまじまじと見つめてくる。 「……なに」 「オマエ見ているとあいつを思い出すな」 「あいつ?」 「オレの友達。きっと無事に逃げたんだと思うけど……」 そう言うホップ君の横顔は友への心配に満ちている。 「……会いたい?」 「会いたいけど……今はまだいい。きっとあいつも爺さんになってるだろうしな。もうちょっと心の準備が欲しいぞ」 「……そっか」 そうだろう。いきなり何十年後の世界に放り出されて、心の整理がついているわけが無い。 きっと、その友達だって同じだろう。 なら、今彼が頼れるのは私だけ。 そう気づいた瞬間、ちょっとだけ、頬が緩んだ。 そんな私に、ホップ君は向き直る。

11 20/03/07(土)01:27:19 No.668945087

「ユウリ、ありがとう」 「っ!?」 「オマエと会えて良かったぞ」 突然告げられた感謝の言葉は、私の心臓を異常なまでに揺らつかせる。 呼吸が乱れ、妙に甲高い声が出てしまう。 「き、君はなんというか……アレだね」 「アレって……なんだ?」 「ダメ男」 「なんでだっ!?」 「うるさいうるさい。ほら、もう行こう」

12 20/03/07(土)01:27:37 No.668945136

それ以上の追及を無視して、私は彼の背中を押す。 目指すはナックル遺せ……ナックルシティ。 そこに、今も『何か』があるのかはわからない。 そこで、『鍵』の意味がわかるのかはわからない。 そこで……ダンデさんがいるかはわからない。 それでも、私たちは行くと決めたのだ。 分からないことを知るために、 求めるものを手に入れるために。 「ホップ君、道案内お願いね」 「おう、任せとけ!」 私たちは灰色の空と大地の間を並んで歩いていく。

13 <a href="mailto:s">20/03/07(土)01:28:12</a> [s] No.668945254

終末ウリまとめたの su3703201.txt とりあえずこの話はここで終わりです

14 20/03/07(土)01:29:02 No.668945427

いいよねボーイミーツガール

15 20/03/07(土)01:34:42 No.668946703

文字化けしとる!

16 20/03/07(土)01:34:47 No.668946716

少年少女終末紀行ですか

17 20/03/07(土)01:34:50 No.668946732

面白かった…あれこれ想像の余地があってそれ考えるのも楽しい

18 <a href="mailto:s">20/03/07(土)01:36:12</a> [s] No.668946972

>文字化けしとる!>文字化けしとる! やべぇマジだ! 上げなおし su3703231.txt

19 20/03/07(土)01:37:20 No.668947201

男主人公だった世界か

20 20/03/07(土)01:37:39 No.668947271

「」サルだったのか…

21 20/03/07(土)01:40:21 No.668947814

けっこうこういう世代差カップル好き

22 20/03/07(土)01:51:29 No.668950203

ダンデさんは何を考えてたんだろうな…

↑Top