ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
20/02/26(水)21:59:14 No.666425276
「寒いな……」 藤丸立香は降り積もる粉雪に包まれながら、身体を摩った。 大学から帰宅する帰り道は、すっかり雪に埋もれてしまっている。 早く帰って、『彼女』の手料理に預かりたい。そんな浮かれたこと重いながら、足早に雪道を進んでいく。 そんな時。 「見ぃつけた…」 子供の声が聞こえた。どこか妖しさがあり、惹き込まれるようで、それでいて鳥肌が立つような、そんな声が。
1 20/02/26(水)21:59:29 No.666425355
「こんなところにいたのね…座長さん」 座長。聞きなれない言葉だ。立香は何かの座の長になったことなどはない。 声のした方を振り返れば、そこには1人の童女が長い金髪を月明かりに照らしながら、立香をまっすぐに見つめていた。 金髪碧眼、つんと尖った鼻。どう見ても日本の出身には見えない。 周りには立香の他に人はいない。こんな雪の夜に、こんな子供が何をしているのだろうか?少し躊躇ってから、 「座長、さん…?えーと、ごめん、人違いじゃないかなあ。君、どこから来たの?外国の子かな?」 立香はおずおずと聞き返す。 その言葉を聞いた童女は少し悲しそうな顔をして、首を振った。
2 20/02/26(水)22:00:03 No.666425547
「ああ…なんてこと…座長さん、あなたは既に…ううん、でも大丈夫。 私と一緒に来てくだされば、全て大丈夫よ。 私の名前はアビゲイル。アビゲイル・ウィリアムズ。座長さ…いいえ、立香さん。 私の手を握って下さる?それだけでいいの。私の手を取ってさえくれれば、私たちはここから逃げ出せる…」 アビゲイルと名乗った少女が、長すぎる袖に隠された手を立香に差し出した。
3 20/02/26(水)22:00:17 No.666425628
いよいよまずいことになったな、と立香は内心頭を抱えた。 このアビゲイルとかいう少女は、どう見てもまともではない。 そして、何故かこちらの名前を知っている。 誰かのいたずらかな?こんなことしそうな子は誰か近所にいたかな。 近くに新しく誰かが新しく引っ越してくる、なんて話は聞いたっけ。 「さあ、早く!」 そんな立香の頭の中を巡る思考を遮るかのように、アビゲイルが急かしてくる。 悪戯にしては、随分と緊張し、強張った面持ちと声色で。 その勢いに圧せられ、立香は思わず右手を差し出しそうになる。 しかし、その瞬間----
4 20/02/26(水)22:00:35 No.666425719
「立香さん? その子は?」 アビゲイルの声とは対照的に、凛とした、低く落ち着いた声が響いた。 両儀式。いつの間にか現れた立香の同居人が二人を見つめていた。 「あ、えっと、違うんだ式さん、これは……」 気まずいところを見られた立香が慌てる。知らない女の子の手を握ろうとしていたなんて、傍から見れば不審者の極みだ。 けれど、そんな立香の焦りをよそに、二人の女性は不自然なほど落ち着いて互いを見据えていた。 「……ごきげんよう、リョーギ・シキさん。」 予想だにしなかった言葉に、立香は驚いてアビゲイルを振り返る。 「え……知り合い……なの?」
5 20/02/26(水)22:01:32 No.666426077
背格好も、容姿も、服装までもまるで正反対な2人が一体どこで知り合ったのか、立香には見当もつかなかった。 「ええ、ちょっとね。ねえ立香、申し訳ないのだけれど、 先に帰って洗濯物を取り込んでこれないかしら? できれば、庭のお花にもお水をやってあげて。 私は…この子と少し『お話』したらすぐに行くから」 「え…?でも…」 「お願い」 普段と変わらず、嫋やかな微笑み。しかし、立香は確かにその笑顔の裏に圧を… いや、恐怖を感じた。 アビゲイルもアビゲイルで、どこか敵意なようなものを滲ませながら、 口を一文字に結んで無表情で二人を見つめている。
6 20/02/26(水)22:01:47 No.666426159
「わ……わかった……」 (……何なんだ、一体……) 両儀式に気圧されたまま、嫌な予感を抱えながら立香はその場を後にした。
7 20/02/26(水)22:02:06 No.666426270
「……そう。あなたが来たのね。 全ての門を繋ぐ。そういう神様だったわね、あなたのは」 私は目を細めて、彼女を見つめる。アビゲイル・ウィリアムズ。銀の鍵の担い手にして、外なる神の巫女。 「座長さんを……返して」 「ごめんなさい、それはできないわ。 あなたはともかく…… あなたの世界では、立香は…マスターは、幸せになれないでしょうから。あなたが立っている境界は、彼が在るべできはない。 それに……」 私は空を仰いだ。月に見守れながら、せっせと地上に雪を降らせている、私が『貼り付けた』淡い空を。 「それに、この世界を『敷いた』者として、彼を守るのは私の責任でもあるから。 ……あなたには、ちょっと難しいかもしれないわね」
8 20/02/26(水)22:02:19 No.666426346
アビゲイルは俯くとくすくすと笑って、 「ふふ……おかしいわね。 あなたが『境界』を断じるなんて」 「ええ……それもそうね。 けれど……あなたもわざわざ私とこんなおしゃべりをするためにここまで来たわけではないんでしょう?」 「もちろんよ」 アビゲイルが顔を上げる。その額には、先ほどにはなかった『鍵穴』が浮かんでいた。 「あまり時間もないから…… 少しはしたないけれど、原始的な方法を取らせてもらうわ…… イグナ…イグナ… トゥフルトゥクンガ…。」 彼女の呪詛と共に、身を包む黒い衣服が消えていく。女児らしい健康的な肌も青く染まり、まさしく魔女の様相を成した。
9 20/02/26(水)22:02:54 No.666426566
「ふ、ふふふ… 我は門を知れり。 汝、見ること能わず… 我を塗り潰すことなど… 叶わぬことと知れ…」 不敵に微笑みながら、アビゲイルが虚空から取り出した鍵を両手に握りしめた。 私はそんな彼女な『強がり』を軽く笑う。 「あら、わざわざ教えてくれるなんて、意外と優しいのね、貴女」 アビゲイルの『外なる神』は、世界の理の外側にある。『観測者』としての可能性が消えない限り、『なかったこと』にすることはできない。 で、あれば。 「そういうことなら……あなたの言う通り、私も『原始的な方法』を取りましょう。」 私も同じく鞘を取り出し、月明かりを反射して光る白刃を抜刀する。この世界を作って以来、久しい行為だった。
10 20/02/26(水)22:03:11 No.666426653
「あなたのような小さな女の子を斬らなければいけないのは少し忍びないけれど。 私のマスターの安寧のために… その『門』と『鍵』は、 両義の狭間に沈めるわ。 あなたの『父』が、『主』が何者であろうと……」 生きているのならば、神様だって殺してみせるーーーー
11 20/02/26(水)22:03:57 No.666426926
とすんと軽い音を立てながら、頭一つ分軽くなった少女の身体が、鮮血と共に雪の上に斃れた。 「これで、四回目ね。同じ首を四回も斬るなんて初めての経験だわ」 刃に着いた血を払いながら、私は首の無い死体に言う。 それに答えるように、身体から少し離れた場所に落ちた少女の首がころころと転がり、 刎ねられた時の放物線をそのまま逆に描きながら、再び身体と繋がった。 「…………」 地面に突っ伏したままのアビゲイルが、繋がったばかりの首を回して、憎しみの籠った上目で私を睨みつける。
12 20/02/26(水)22:04:47 No.666427227
「また繋がったのね。面白い。それで、どうするのかしら? まだやるというのならば、相手になるけれど」 アビゲイルは悔しそうに唇を噛み締めた。 「……今日のところは、退くわ。 でも忘れないで…私は絶対に諦めない。 それに、例え私が折れたとしても……『彼ら』は、藤丸立香を諦めない」 アビゲイルが背後の空間に鍵を差し込むと、開かれた『門』から現れた触手が、少女の身体を掬い上げ、引き込む。 次の瞬間には、雪を赤く染めた少女の血も、開かれた門も、何事もなかったかのように消えてなくなっていた。
13 20/02/26(水)22:05:19 No.666427433
ところで君は
14 20/02/26(水)22:05:20 No.666427441
私を息をついて、空を見上げる。戦う前に見上げた時と、月の位置はほとんど変わっていない。 私は血の跡が残る刃を見つめる。『彼ら』、とアビゲイルは言い残した。 きっとこの刀を振るう機会は、この先事欠かないのだろう。 そんな不吉な予感を払うように私は血を拭き、納刀して立香さんが待つ我が家へと踵を返した。 「私だって……諦めるつもりはないわ」 もう、後戻りはできない。
15 20/02/26(水)22:05:35 No.666427532
からからと戸を開けると、心配そうな立香さんが駆け寄って来た。 「おかえりなさい、式さん。早かったね?……あの子は……アビゲイルはどうしたの?」 「あの子は……」 しまった。急ぐあまり言い訳を考えるのを忘れていた。何と説明しようか。 そう考えあぐねている内に、私は立香さんが私の顔をじっと見つめている事に気が付いた。
16 20/02/26(水)22:06:03 No.666427708
「…立香さん? 私の顔に何かついてる?」 少し顔を赤らめた私とは裏腹に立香さんは不思議そうに首を傾げて。 「顔……っていうか……」 立香さんは頭の側、ちょうどこめかみの上あたりに指を置いて。 「頭のここに何か……」
17 20/02/26(水)22:06:15 No.666427780
「角…? みたいなものが…」 ああ。 本当に。後戻りは、できないのだ。
18 20/02/26(水)22:07:59 No.666428459
書き込みをした人によって削除されました
19 20/02/26(水)22:09:10 No.666428860
書き込みをした人によって削除されました
20 20/02/26(水)22:09:30 No.666428968
ツノなんてあったけ?
21 20/02/26(水)22:10:24 No.666429297
要は犯行が雑だったわけじゃないのこれ
22 20/02/26(水)22:10:45 No.666429440
ビーストの兆し出ちゃったか…
23 20/02/26(水)22:11:47 No.666429848
ビーストの証たる冠でしょう 「両儀式」との新婚生活とか密かに暖めてたからどんなものでも続編はいいものだ
24 20/02/26(水)22:12:26 No.666430113
この前の両儀式(剣)怪文書の後日談みたいなものを書きました。 まとめサイトの件の指摘ありがとうございました。以後気を付けます
25 20/02/26(水)22:12:37 No.666430186
討伐する為に最適な人物が来る奴じゃん!
26 20/02/26(水)22:13:00 No.666430317
>この前の両儀式(剣)怪文書の後日談みたいなものを書きました。 > >まとめサイトの件の指摘ありがとうございました。以後気を付けます 前作はtxtで貼るのがオススメよ
27 20/02/26(水)22:14:04 No.666430737
緊急時だけ呼び捨てにするあざとさを発揮しおって
28 20/02/26(水)22:14:49 No.666431036
まぁ単独顕現持ってるしな…
29 20/02/26(水)22:17:21 No.666431983
冠位やってきたらどうすんの…
30 20/02/26(水)22:20:22 No.666433139
未熟なビーストはどう討たれてきたか考えるとなあ とりあえずいっぱい来ちゃうよね
31 20/02/26(水)22:26:37 No.666435393
>>この前の両儀式(剣)怪文書の後日談みたいなものを書きました。 >> >>まとめサイトの件の指摘ありがとうございました。以後気を付けます >前作はtxtで貼るのがオススメよ なるほど…そういうのもあるのか… su3680454.txt
32 20/02/26(水)22:27:31 No.666435720
アインホだと文字化けして画面が大変なことになったでごさるの巻
33 20/02/26(水)22:28:24 No.666436058
>アインホだと文字化けして画面が大変なことになったでごさるの巻 保存して見たら解決しない?
34 20/02/26(水)22:30:11 No.666436726
バッドエンドなかほり
35 20/02/26(水)22:30:27 No.666436836
続いてくれて凄く嬉しい
36 20/02/26(水)22:32:26 No.666437550
>>アインホだと文字化けして画面が大変なことになったでごさるの巻 >保存して見たら解決しない? ごめん保存がわからないのだ… 大人しく上埜サイト見てくるでござる
37 20/02/26(水)22:32:34 No.666437599
思えば結局マスターの意思を顧みていないんだなあ カルデアのやった事と同じだと言われて今の情に溢れた彼女は耐えられるのかい!
38 20/02/26(水)22:33:19 No.666437893
単独顕現でやってこれる奴が攻めてきたらやべーぞ!
39 20/02/26(水)22:34:03 No.666438180
>カルデアのやった事と同じだと言われて今の情に溢れた彼女は耐えられるのかい! 幸せにしてるんだから良いだろって言われたらそこは誰も言い返せない気はする…
40 20/02/26(水)22:35:25 No.666438747
最終的にはビーストフォーリナー大決戦とかになるんです?
41 20/02/26(水)22:36:14 No.666439090
>思えば結局マスターの意思を顧みていないんだなあ >カルデアのやった事と同じだと言われて今の情に溢れた彼女は耐えられるのかい! 悪のきんにくんみたいな文章なんやな
42 20/02/26(水)22:36:28 No.666439198
>最終的にはビーストフォーリナー大決戦とかになるんです? 主にXXのおかげで台無しになりそう
43 20/02/26(水)22:36:34 No.666439238
アルトリウムレーダーで異常をキャッチしましたよマスター君!!!
44 20/02/26(水)22:37:59 No.666439793
距離が近い 世界観がぶっ飛んでる クソ強いとXXは強敵だな…
45 20/02/26(水)22:39:17 No.666440310
疲れたOLが負けるのはブラックな労働環境だけです覚悟!!!!
46 20/02/26(水)22:39:53 No.666440552
サーヴァントユニバースは別の宇宙の住人だし 自由気ままにやってくるから本当にカオスだぜぇ
47 20/02/26(水)22:40:45 No.666440933
サーヴァントユニヴァース行っても良いかもしれんが 今の責務ぶん投げてはいけないしな…
48 20/02/26(水)22:40:59 No.666441047
Xはオガワハイムで「」さんにビビり散らしてたような…
49 20/02/26(水)22:41:32 No.666441251
オガワハイムでXのアホ毛切り落としたがってたよね
50 20/02/26(水)22:42:57 No.666441845
型月的には恋だの愛だのそういう心の在り様の部分が弱みになってご破算になりそう
51 20/02/26(水)22:44:55 No.666442702
恋さえしてれば基本無敵だよ 但し思い人に絶対負ける
52 20/02/26(水)22:46:21 No.666443249
>恋さえしてれば基本無敵だよ >但し思い人に絶対負ける 何らかの拍子で記憶を取り戻した立香の説得で自分の過ちに気付くみたいな感じかな…
53 20/02/26(水)22:47:42 No.666443777
根源の女主人の目を避けてマスターと接触するスニーキングミッションが始まる
54 20/02/26(水)22:48:41 No.666444130
>型月的には恋だの愛だのそういう心の在り様の部分が弱みになってご破算になりそう 型月だと恋や両想いの愛は強いが一方的に押し付ける愛は崩壊するってそんな感じかな FGOだと前者はメルトリリスやパイセンとかで 後者はスルトやビーストの連中
55 20/02/26(水)22:49:19 No.666444406
>>恋さえしてれば基本無敵だよ >>但し思い人に絶対負ける >何らかの拍子で記憶を取り戻した立香の説得で自分の過ちに気付くみたいな感じかな… ごめんなさい…私消えるわね…ってなる式さんの手をとって一緒に帰るんでしょ!わかってるんだから!
56 20/02/26(水)22:50:12 No.666444731
「」さんはどこだったかでXの事なまらかわいいとか言ってたよな 好みなのかな
57 20/02/26(水)22:50:14 No.666444757
>ごめんなさい…私消えるわね…ってなる式さんの手をとって一緒に帰るんでしょ!わかってるんだから! 良い...
58 20/02/26(水)22:51:14 No.666445169
それはそれとしてあんな思い聞いたら絶対帰せない!って覚悟も決まるからどうなるかな…
59 20/02/26(水)22:51:29 No.666445253
Xはその昔バニー式さんに首撥ねられたトラウマがあるから相性不利 シーズンが変わったXXは設定が多少リセットされた上でスケールアップしてるから相性有利
60 20/02/26(水)22:53:22 No.666445962
こういう時役立ちそうな奴と言うとやっぱアラフィフ辺りになるかな…
61 20/02/26(水)22:56:03 No.666446952
こんな形で人類愛発動してんのか一番ヤバい
62 20/02/26(水)22:56:58 No.666447268
「」さんは基本的に人類はどうでもいいけどコクトーとかぐだとか個人を愛しちゃうからな…
63 20/02/26(水)22:58:45 No.666447919
>「」さんは基本的に人類はどうでもいいけどコクトーとかぐだとか個人を愛しちゃうからな… そして好きな個人の為なら本当になんでもしちゃう…