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20/02/19(水)21:29:16 No.664517729
ティアマトの本体が顕現した後、私と女神のお二人はウルクに帰還した。そこに先輩の姿はない。ティアマト顕現の衝撃には令呪行使直後で疲労していた先輩では耐え切れず、翼竜から落ちてしまった。 あの時私が先輩の手を掴むことができていれば。悔やんでも悔やみきれなかった。すぐにでも引き返して先輩を探したかったけど、女神のお二人に諭されて、まずはウルクに帰還することになった。 大丈夫、まだ希望はある。だって、先輩と私を繋ぐパスはまだ途切れていない。それはつまり、まだ先輩が生きているということに他ならない。 ウルクに帰還した私たちは事の顛末をギルガメッシュ王に報告した。いえ、正しくはイシュタルさんとケツァル・コアトルさんが報告してくれた。私には、うまく説明できそうにもなかったから。だから、お二人の気遣いが嬉しかった。
1 20/02/19(水)21:29:40 No.664517869
とりあえずまずは身体と心を休めよ、とギルガメッシュ王からの指示があったので、私は仮眠を取るためにカルデア大使館へと戻った。帰ってきた大使館は誰も居なくて、しんと静まり返っていた。普段はそこまで広くは感じなかったのに、私一人しかいない今は、まるで世界にひとりぼっちになってしまったような錯覚を覚えてしまう。そんな心境ではしっかりと休めるはずもなく、だけど少しでもましにはなるだろうと、ベッドに身を投げ出す。ギルガメッシュ王は休み次第先輩の捜索を行う、と仰った。その時の為に少しでも体力を回復しないといけない。 一体、どれくらいそうしていただろう。にわかに、ジグラットの方が騒がしい。こうして横になっていてもあまり休めなかった。少しでも動いていた方がまだ気が紛れるだろうと、私はジグラットに向かって歩き出した。 だけど、そこに待っていたのは凄惨な光景だった。衛兵の方たちが、いえ、そうだったと思われるものが辺りに散らばっていた。どれも人の形を留めていなくて。腕や足はどれが誰のものか分からないくらいバラバラに散らばっていて。零れ出た中身はとっても色鮮やかで。
2 20/02/19(水)21:30:09 No.664518030
あんなに優しかった人たちが。仕事終わりの私たちにいつも気さくに声をかけてくださった優しい人たちが。あんまりにもあんまりな終わり方を見てしまって、心の中に悲しみと怒りが渦巻く。 ジグラットの中腹にはラフムが一体。あれが、この人たちを――。 私はすぐに駆け出した。階段を数十段おきに駆け上がり、急いで後を追った。憎かった。あの生き物が、ウルクの人たちを、シドゥリさんを、もしかしたら先輩も――。私の頭の中では炎が渦巻いて、理性が溶け出して、それ以外何も考えられなくなっていた。 「g@.t@/Zd(64!」 ギルガメッシュ王に襲い掛かろうとしていたそのラフムは、だけどギルガメッシュ王の攻撃に怯んでいた。私にはまだ気づいていない。好機。私はそのラフムの背中に全力のシールドバッシュを叩き込んだ。クリーンヒットが入り、ラフムは吹き飛んでいく。今の一撃で動きが鈍っている。かなりの有効打になったようだった。
3 20/02/19(水)21:30:50 No.664518288
「早く先輩を探しに行かないといけないんです。ここで立ち止まっている暇なんて!」 まだラフムの動きは鈍いまま。ギルガメッシュ王に攻撃を仕掛けられる前に仕留める。流石に躱そうとしたのか、ラフムも動きを見せる。だけど、その前にギルガメッシュ王の魔術による拘束が掛けられた。 ズブリ。十字盾の一端が深々とラフムに突き刺さる。十分な手応えがあった。ラフムは崩れ落ちて、もう力も残ってはいないだろう。それでも私に向かって手を伸ばしてくるものだから、まだ油断せずに警戒をして――。 そして私は目を疑った。ラフムが伸ばしてきたその手に、赤い痣のようなものがあった。それを見て何かはすぐに分かった。だけど、頭は理解しても、理性がそれを理解することを拒否している。 ああ、でも、だって。見間違えるはずがない。 「……令呪?どうしてラフムに令呪が……。……まさか」
4 20/02/19(水)21:31:10 No.664518431
信じられない。信じたくない。私は必死にそれを否定しようとした。だけどこれは、間違いなく令呪で。私と先輩を繋ぐ契約の証で。それを持っているのは世界にたった一人で。最悪の想像が頭を離れない。でも、加速度的に萎んでいくパスが、それこそが現実だと否応無く見せつけてくる。 「ま、しゅ……」 以前の姿は、もう面影もない。声だって、まったく別のものに変わってしまっているのに。私には、このラフムが一体誰だったのか、分かりたくもないのに分かってしまった。 「そんな……。嘘ですよね?せんぱい?」 「なん、で……」 その一言を遺して、先輩は崩れ落ちる。伸ばされていた手を、私は反射的に取っていた。 「だめ、だめです!先輩……!」 もうどうにもならないのに、それでも叫んでしまう。だけどその身体は、私の想いなんてお構いなしにボロボロと崩れ去っていく。 「ごめんなさい、ごめんなさい……!私、先輩だって気づけなくて……!」
5 20/02/19(水)21:31:28 No.664518545
どれだけ謝っても、その終わりは止められない。私が握っていたはずのその手も、気づけば塵になってしまっていた。さらさらと、先輩だったものが指の隙間から零れ落ちていく。すべてが崩れ去り、その痕にあったのは人ならざる形に残った塵だけだった。 ひゅう、とジグラットを風が吹き抜ける。その風に、僅かに残った先輩の痕跡がさらわれていく。 「やだ、だめ……!やめて、行かないで……!」 私は手を伸ばす。だけどその手は空を切るばかりで、何一つ掴めなかった。あの時と同じように。 「あ、あ、あ。ああ…………!」 慌てて辺りを掻き漁る。どこかに先輩が残っていないかと、すがりつくように。 だけどそこには、もう、塵ひとつも残っていなかった。
6 20/02/19(水)21:38:24 No.664521055
そっすか では次の方
7 20/02/19(水)21:40:10 No.664521694
なんなのバッドエンド流行ってんの
8 20/02/19(水)21:46:06 No.664523858
昨日のと合わせるとなおお辛い…
9 20/02/19(水)21:47:19 [sage] No.664524364
昨日書いたやつ su3663008.txt
10 20/02/19(水)21:51:34 No.664525836
曇らせを書くと筆が乗るタイプか畜生!
11 20/02/19(水)22:11:21 No.664532153
たとえ人間の姿で冥界に行ってもエレちゃんガン曇りになるわ…
12 20/02/19(水)22:13:03 No.664532697
というか皆もうメンタルがどん底に
13 20/02/19(水)22:14:39 No.664533195
手を掴めない最期とか外道すぎる
14 20/02/19(水)22:14:53 No.664533271
そういやマシュを失ったぐだはちょくちょくみるけどぐだを失ったマシュはあんまり見ない
15 20/02/19(水)22:15:10 No.664533347
こういう時のためのジャガー道場
16 20/02/19(水)22:17:17 No.664534024
失意のマシュの元に新しいチャラ男マスターが派遣されてくるんだよね
17 20/02/19(水)22:17:26 No.664534059
前のスレでも言われてたけど たとえここでフォウくんが全魔力使ってぐだを生き返らせてもマシュが殺した事実は変わらないからメンタルボロボロでどうしようもないな
18 20/02/19(水)22:21:04 No.664535299
バッドエンド怪文書・・・なにか一つぐらい書きたい
19 20/02/19(水)22:21:59 No.664535605
何故グッドエンドはともかくバッドエンドは俺も書くか…って人が増えていくんだ…
20 20/02/19(水)22:25:03 [sage] No.664536554
>何故グッドエンドはともかくバッドエンドは俺も書くか…って人が増えていくんだ… 普段はほのぼの怪文書書いてるから刺激が欲しくなって…
21 20/02/19(水)22:25:59 No.664536841
>普段はほのぼの怪文書書いてるから刺激が欲しくなって… いつもほのぼの書いてるならたまには良いんじゃないかな…