20/02/15(土)01:06:15 「「あ... のスレッド詳細
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20/02/15(土)01:06:15 No.663211924
「「あ」」 ある日の昼下がり。扉を前に、二人の少女が出くわした。 「じゅ、純子ちゃん!?なんしよったと!?」 「さ、さくらさんの方こそ!巽さんに御用なんですか!?」 出会った二人は、さくらと純子。 二人共に焦燥を浮かべ、二人共に何かを隠すように手は背後へ。 そして二人共に、視線が互いの隠している物へ。 「「……」」 お互いに言葉は無かったが、何かに観念したように差し出される手。 おずおずと露になった手に乗っていたのはチョコレート。可愛らしい包装がされたチョコレート。 「…やっぱり、純子ちゃんも?」 「…はい」 「えへへ…」 「あはは…」 頬を朱に染めて。二人は互いのチョコを見つめ、苦笑が漏れた。
1 20/02/15(土)01:06:33 No.663212001
「「…」」 そうして居心地の悪さを誤魔化した後、再度訪れた沈黙。 「……小さくて可愛らしいですね」 その沈黙の中で先に口を開いたのは、純子だった。 「…うん。仕事中でも食べやすいかなって」 さくらが持っているのは小さく纏まったクランチチョコ。 花びらのシールが貼られた袋の中。白と黒が混じった中に、一つだけ入ったピンクがいじらしく主張している。 「ふふっ。気配り上手なさくらさんらしいです」 「も、も~!褒めてもなんも出んよ~!」 頬を掻き、照れ隠しをするさくらを見て笑う純子。 …片方が評価されたなら、もう片方も評価されるという当たり前の展開にも気付かずに。 「純子ちゃんの方は~…」 「あっ!?えっとこれは!」 純子が持っていたのは、手のひらだけでは収まりきらない大きさの、シンプルなハート型のチョコ。 真っ白な包みと青いリボンで、とても大きなハートをラッピング。純子らしい慎ましさと芯の強さが見える。
2 20/02/15(土)01:06:59 No.663212124
「…直球勝負っちゃね…?」 「ち、違うんです!これ以外の形が思いつかなかっただけなんです!本当です!」 顔を真っ赤にして慌てる純子を見て、さくらから苦笑が漏れる。 「「…」」 そして、三度目の沈黙。 「…純子ちゃんくらい、私もハッキリ伝えればよかとかな…?」 「…さくらさんくらい、私も思いやりが見える方が良かったですかね…?」 口が開かれたのは同時。込められた意味も同じ。 「「……ぷっ」」 何処かおかしくて笑うのも、同時だった。 「今更だよね!これも私らしさだもん!」 「そうですね!私らしく、ぶつかっちゃいましょう!」 笑い合って、このままで良いと意思表明。二人で頷く。 …その瞬間、扉が開かれた。
3 20/02/15(土)01:07:36 No.663212276
「…おーん?なんじゃいお前等」 現れた幸太郎により、場の空気は一変。 「えっ!?えっと!あの!」 「そそそそれは~!?」 二人して出していたチョコを背後に隠し、目を泳がせる。 それもその筈。覚悟を決めたとはいえ、自らのタイミングで会うのと向こうから来るのとでは話が違う。 おかしな様子には気付いたが乱れる二人の心に気付く事無く、幸太郎は笑みを浮かべる。 「まぁいい。いや、ちょうどいい!そんな事より、だ!」 背を曲げ上半身ごと顔を突き出して、二人に顔を近づける。 「今日は何の日かぁ~…知っとるか?」 二人が固まった。今自分達がしようとしている事と密接な関係の言葉で、固まった。 「えーっと!?なんやと思う純子ちゃん!?」 「な、なんでしょうねぇさくらさん!?」 さっきの勇気は何処へやら。 思わぬタイミングの思わぬ言葉から、羞恥と困惑が、とぼける事を選んだ。
4 20/02/15(土)01:07:51 No.663212332
「な~んじゃい知らんのか!おっくれとるのぉ~!」 あからさまにおかしな二人に、何やら上機嫌な幸太郎は気付かない。 「今日は!バレンタインデーじゃろがぁい!ほれ!」 二人がここまでおかしな事になっている原因を高らかに叫び上げ、幸太郎は二人の手を取る。 幸か不幸か。前に差し出されるように連れ出された手は、チョコを隠している方とは逆の手。 その華奢な手に、幸太郎は何かをゆっくりと乗せた。 「…これって」 「…ロメロちゃん?」 器用にもツギハギが刻まれた茶色の犬。幸太郎が乗せたのは、ロメロを模したチョコであった。 「幸太郎さん、これは…」 「いやぁ!折角だから甘い物食べようと思ったんだがな!?作ってる内に興が乗ってきてなぁ!」 「興が…乗った…」 片や、走る姿。片や、跳ねる姿。 躍動感あふれる…まるで日常の1コマをそのままチョコに切り出したかのように、完成された形。 それは最早、芸術と言っても過言では無い程に、洗練されていた。
5 20/02/15(土)01:08:10 No.663212401
「…」 「ハリウッドに行った時に小道具に使えないかと思って学んだ技術が、ここで輝くとはな!」 「…」 「時間も相応にかかったが、はー満足!はい俺すごーい!」 「…」 「仮にも世間はバレンタインデーだからな!やっぱこれくらい力込めんとな!フッフー!」 「…」 胸を張って高らかに叫ぶ幸太郎。手にした物に黙り込む二人。 「……幸太郎さん」 「どうしたさくら!心配せんでも、感想なら作文用紙5枚程で良」 「ちょっと、キッチン借りますね」 「え?どうし」 「巽さん」 「はい?」 「絶対、入らないでくださいね?」
6 20/02/15(土)01:08:52 No.663212545
手にしていた自分のチョコが見えないように幸太郎へ背を向け、二人は歩きだす。 ((絶対に、これに見合う程完成されたチョコを渡す)) 全く同じ考えで、並んで歩く。 廊下を漂う甘い香り。それの原因がキッチンへ向かって進んで行く。 その香りと共に、少女の決意が二つ。 負けられない。なんていう、甘さに似つかわしくない対抗心が、道を強気に進んで。 やがてキッチンの中へと消えた二つ。次に出るのは果たして何時頃か。 ……そして、置き去りにするように。甘い香りの中に男の困惑が、一つ残った。
7 20/02/15(土)01:11:59 No.663213281
青春でありんす…
8 20/02/15(土)01:12:37 No.663213423
巽は何でも出来るから…
9 20/02/15(土)01:15:11 No.663214021
巽の手先はハリウッド仕込みだからな
10 20/02/15(土)01:15:33 No.663214086
ロメロチョコは商品で売って欲しい
11 20/02/15(土)01:16:03 No.663214207
この男無敵か
12 20/02/15(土)01:21:07 No.663215405
本来の目的を見失ってる気がしなくもない
13 20/02/15(土)01:23:47 No.663216015
なんなんじゃいあの二人…
14 20/02/15(土)01:26:19 No.663216633
ライバルとは思えないほどほのぼのしてたのに…
15 20/02/15(土)01:28:50 No.663217172
手先が器用な人ほど凝ったもの作り出すからな チョコレート作りはある意味工作みたいなものだから…
16 20/02/15(土)01:32:04 No.663217805
その日は一日中猪口齢糖の香りが漂い続けていたでありんす
17 20/02/15(土)01:33:20 No.663218021
去年の未通女バトルは目も当てられなかったけどこっちは平和だな!よし!
18 20/02/15(土)01:39:22 No.663219215
ある意味修羅場か…?
19 20/02/15(土)01:40:55 No.663219546
(バリボリ)もっと作りなんし
20 20/02/15(土)01:43:44 No.663220134
せめて事前に作ったチョコは渡そうよ!
21 20/02/15(土)01:47:32 No.663220800
その日中に渡せるんだろうか…
22 20/02/15(土)01:55:21 No.663222193
なぜかスポ根を感じた… バレンタインなのに…