虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

  • iOSアプリ 虹ぶら AppStoreで無料配布中
  • ・・・... のスレッド詳細

    削除依頼やバグ報告はメールフォームにお願いします。 個人情報,名誉毀損,侵害等について積極的に削除しますので、メールフォームより該当URLをご連絡いただけると助かります

    20/02/03(月)23:35:34 No.660266334

    ・・・・・ 遺跡への階段を上り切ると、そこには鮮やかに彩られた大きな壁画がありました。 そして、その前には見慣れた紫のコートを纏った人物がいました。 「もっと!もっと壊しなさい!ねがいぼしを掘り出すのです!」 その人物は、隣に立つポケモンに荒々しく命令をします。 「ねがいぼしを集めれば、委員長が認めてくれます!」 その声にはどこか悲痛な思いが滲んでいます。 「ダイオウドウ!あなたも委員長のポケモンならば、ねがいぼしを探せることを心から喜ぶべきなのです!」 ですが、彼の行いを見過ごすことは出来ません。 「そこまでです」 わたくしが進み出ると、彼はわたくしたちに気づいたようで、以前と同じ見下すような、挑発するような笑みを浮かべます。 「やれやれあなたたちですか……」 その態度は相変わらず不遜で、どうしようもなく苛立ちを覚えてしまいます 「今からでもねがいぼしを集め、委員長に気に入られたい……そういう事ですか」 彼は、一人で納得したかのように独り言を口にします。

    1 20/02/03(月)23:35:47 No.660266398

    「なるほど、考えたものですね。ですが、そんな事は認めません!誰にもジャマは――――」 「わたくしは以前、あなたにこう言いました」 セリフを遮られ、彼は苛立ちを露わにこちらを睨みつけます。 それを気にせず、わたくしは続けます。 「次に会った時があなたの最後だと」 目の前に立つ少年、ビート。 彼はわたくしたちに大きな禍根を残しました。 ホップの敗北と、それに伴う離別を。 「ですが、あんなものただの方便です。あなたと出会わなければそれで良し、出会ったところでこちらに手出ししないのであれば見逃してあげるつもりでした」 ええ、ええ。確かにホップとの別れは辛いものでした。たとえそれが、たかが三日程度のものであったとしても。 わたくしにとっては今も胸に残る傷跡です。 しかし、それはあくまでわたくしたちの問題。 彼がわたくしたちから離れた事も、それによってわたくしたちが傷ついたことも、ビートとやらは関係ありません。 だから、思うところこそありますが、殊更恨みを果たそうなどとは思っていませんでした。

    2 20/02/03(月)23:36:34 No.660266642

    「しかし、あなたはわたくしの目の前で再び狼藉を働いた。残念ですが――――方便にしてあげる事は出来ません」 いかなる理由があれど、町の名物を破壊するなど許されるわけがありません。 例え、生まれ故郷ではなくても、この町を愛する人たちの想いはわたくしにもわかります。 「ビートとやら。あなたを叩き潰します。二度と、こんなマネが出来ないように」 そして、わたくしは構えます。ビートとやらもそれを察し同じく構えます。 その時、わたくしの肩が後ろから引かれました。 「お嬢様。ここは私に任せてくれないかな?」 振り返ると小娘がニコニコと頼んでくるではありませんか。 「下がっていなさい。ここはわたくしが」 「お願い」

    3 20/02/03(月)23:36:56 No.660266748

    小娘は口元の笑みを残したまま、真っ直ぐこちらを見つめてきます。 その瞳に映る意味を察したわたくしは、溜息と共にボールをしまいました。 「……勝ちなさい」 「……うん、わかってる」 その答えに、とりあえず納得をしてわたくしは下がります。 入れ替わるように、小娘とビートとやらが向き合います。 「なんだ、あなたが戦うんですか?別に、二人相手でも良いですよ?」 「あははっ、相変わらず強気だねぇビート君は」 挑発の姿勢を崩さないビートとやらに対してあくまで笑顔を崩さない小娘。

    4 20/02/03(月)23:37:10 No.660266826

    「でも悪いけどさ、さっさと終わらせてあげるよ。だって、ホップ君の試合を見に行かないといけないからね」 「……ああ、彼まだジムチャレンジを続けていたんですか」 わたくしからは彼女の表情は見えませんが――――その時、何かが変わったのを感じ取りました。 「あれだけ無様に敗北したのに、なんとも恥知らずというか、図太いですね」 「あははっ、おかげさまでね。私たちも色々大変だったんだよ?」 「ええ、そうでしょうね。彼のように弱いトレーナーと共に旅をするだなんて同情しますよ。あなただって彼と旅なんかしなければもっと強くなれたかもしれないのに」 ビートとやらはその減らず口を止めません。 わたくしは飛び出しそうになる自分を必死で抑えつけます。

    5 20/02/03(月)23:37:21 No.660266886

    その時、小娘がこの場にそぐわない明るい声を出しました。 「ねぇビート君」 「なんですか」 「私はね、なんというか感情の火力調整が苦手でね、悲しい時は全力で泣くし嬉しい時は本気で喜ぶんだよ」 その語りだしはまるで思い出話でもするかのように優しく、軽やかで。 「でもね?怒る時だけは努めて弱火にするよう心掛けているんだ。  だってさ、怒るたびに最大火力で怒ってたら私の周囲は焼け野原になってしまうからね。  そうなったら周りの人はもちろん、私だって困ったことになってしまうからね。だから、私は本気で怒った事って人生でそんなにないんだよ」 言葉が、どんどんと加速していきます。 「ちなみにその原因はだいたいホップ君でね、一番古いのは3、4年ぐらい前かな?まぁこれは彼のデリカシーの無さが原因なんだけど今となってはなんでそんな事であんな怒ったんだろうなとは思うけど当時の私にとっては本気で憤慨モノでね。  あの時は彼が泣いて謝るまで怒り続けたものだよ。おまけに彼ったら最近またやらかして私を本気で怒らせるしさ。まったくやんなっちゃうよね」 「……なんなんですかさっきから」

    6 20/02/03(月)23:37:41 No.660266996

    一向に終わる様子の無い語りに苛立ちを隠せなくなったビートとやら。 ですが、それを受けても尚小娘の声は明るく、軽いままです。 「ああすまない。つまりね、私は怒るとめっちゃ怒るって事で、私を本気で怒らせたのはホップ君だけだったんだけど、実はね、もう一人いるんだ?それはね、君なんだよ」 声のトーンはそのままなのに、周囲の気温が下がったかのように錯覚します。 「うんつまりね、私は今怒ってるんだよ、君に、本気で」 「……はっ!つまり、ぼくを倒して敵討ちをしたいという事ですか?随分と甘い……やはり、あなた達の旅はお遊びですね」 「違う違うそうじゃないんだ。別にホップ君の敵討ちとかそんな事言うつもりはないんだよ」 「……なら、なんだというのですか」

    7 20/02/03(月)23:37:59 No.660267094

    「だってさ、彼が君に負けたのは彼が弱かったからなんだから。それを理由に君に恨みをぶつけるのはお門違いってやつさ。  だからね?私はね?別にホップ君のために怒っているんじゃないんだよ。  だってそんな事したって彼は喜ぶどころかむしろ傷ついてしまうからね。  自分のせいで私がって。それは私としては望むところではないし、  なら君が遺跡を壊そうとした事に対する義憤かって言うとそれこそあり得ないさ。  私は別にこの遺跡にそこまで愛着があるわけではないし、まぁもちろん貴重なものなんだろうなーという事ぐらいはわかるけどさ、  だからといってそれを壊そうとした君にそこまで怒りを覚える!とかではなくてだね、  じゃあ何のためにって言うと、つまるところ私のためなんだよ」

    8 20/02/03(月)23:38:17 No.660267179

    小娘は言葉を一気に吐き出した肺に、次弾を装填するかのように息を吸います。 そして、きっと微笑んだまま、彼へと向き直ります。 「君は、私の大切な人を侮辱した。彼の大切なものをあげつらって、彼の心を傷つけた。だけど、ホップ君はそんな事で敵討ちなんか望むわけない。  きっと、そこにいるお嬢様なら、この事で君をどうこうしてやろうなんて考えない。  だけど、だけどね?私は怒っているんだよ。ムカついているんだよ。  この怒りは彼や彼女のものじゃなくて、私のものなんだよ。だから、なぜ君に喧嘩を売ったのかと言えば簡単な話、私個人の恨みって事だね。八つ当たりって事だよね。  だからおめでとう!君は、私の瞬間最大火力を更新させたんだよ!」 「……なんなんですかさっきからっ!?勝負するのなら、さっさとかかってきなさいっ!!彼のように、叩き潰してあげますよっ!!」 とうとう限界に達したのでしょう、ビートとやらが怒りをあらわに叫びます。 ですが、やはり小娘は笑みを崩さぬまま答えます。

    9 20/02/03(月)23:38:54 No.660267354

    「あははっ、ごめんごめん。どうにも口が軽くなっちゃってね。私としてもびっくりなんだよ、まさか自分がこんな反応しちゃうとはね。  なんていうか、出来るだけ乙女らしく柔らかーく伝えたかったんだけど……どうやら私には無理みたいだね。  もっと、カラっと爽やかに行きたいのにね。めんどくさくなくて、重くない。彼が気軽に隣にいてくれるようなそんな女の子でいたいのにね。  でも、うん、まぁ、しょうがないよね。仕方ないよね。だから、つまりだね。えっと……あんまり強い言葉を使いたくは無いのだけど……まぁ、良いか」 その時、冷めていた空気が湧き上がる錯覚を覚えました。 まるで、冷水に真っ赤な焼き石を落としたように。 そして、彼女の、笑顔が消えた事を感じました。 ……ビートとやら。

    10 20/02/03(月)23:39:16 No.660267454

    「―――――おい若白髪。今からお前を焼き尽くす。私の大切な人を、私たちの旅を否定したお前の全てを。今ここで否定する――――覚悟しろよ、消し炭にしてやるからなッ!!」 たぶん、わたくしの方がマシでしたわ。

    11 20/02/03(月)23:39:42 No.660267587

    前回までの su3622158.txt

    12 20/02/03(月)23:46:18 No.660269590

    草ウリじゃなくて炎ウリちゃんのほうだったかー それももっと火力たかいよこれ

    13 20/02/03(月)23:51:02 No.660271032

    これビートくんそのままドロップアウトしそう…

    14 20/02/03(月)23:54:51 No.660272113

    ダイオウドウ!で笑ってしまったけど俺は悪くない

    15 20/02/03(月)23:57:43 No.660272952

    炎が燃えている…

    16 20/02/03(月)23:58:17 No.660273148

    >「―――――おい若白髪。今からお前を焼き尽くす。私の大切な人を、私たちの旅を否定したお前の全てを。今ここで否定する――――覚悟しろよ、消し炭にしてやるからなッ!!」 たぶんこのへんで炎ウリの目から炎でてる

    17 20/02/03(月)23:59:05 No.660273372

    ピンク堕ちしたらどうなるんだこのビート君...

    18 20/02/04(火)00:11:49 No.660276978

    絶対にここで潰すという覚悟を感じる