20/02/03(月)01:17:56 いつも... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1580660276252.png 20/02/03(月)01:17:56 No.660041323
いつもの su3620338.txt その他 su3620340.zip ルリナから見たあれこれ su3620342.txt
1 20/02/03(月)01:18:27 No.660041427
───磨きあげられたエメラルドみたいに輝く、碧の湖畔だった。 石造りのそこは墓所のようでもあり、祭壇のようでもあった。 その場所に、冠を戴く二つの人影が進み出る。 『役目は果たされた。これは君達に還そう』 『どうか、静かに眠って欲しい。これや君達を必要とする危機が二度と起こらぬよう、我々は我々のやり方で戦うよ』 剣と盾が石畳の上に安置される。 二人の王の手によって、武具は確かに返還された。 わたしはそれを見ている。 ズレた世界の向こう、水鏡のかなたで、『彼ら』もそれを見ている。 遠吠えがふたつ、聞こえた。
2 20/02/03(月)01:18:54 No.660041513
「───あれ?」 夢がぱちんと弾けて消える。 瞬きの間に景色はかき消えて、目の前はもう霧に煙る森だった。 光も通さない濃密な霧で、侵入出来なかったはずの深部にいると気付く。……一体いつの間に。 遠吠えは聞こえない。 でも、道標のつもりか……カサリと葉擦れの音を立てながら、近付き過ぎず、遠ざかることもないようにわたしを導く気配がある。 (どういうつもり?) 訊ねたい気持ちを堪えて歩き始めると、先を進んでいた二人に追い付いた。 二人の前に例の剣と盾のポケモンが現れたのだという。私は調べた事を教えて、一緒に奥地を目指す。 幻覚はタペストリーに描かれたものに似ていた。だけど石畳に置かれた剣と盾が印象深い。タペストリーの喪失部分にあの光景と同じく、剣と盾があったのだとしたら……それを私に見せてくれた事に、意味があると思っていいだろうか。 だけど……二頭ともここにいたって言うなら、ここまで私を導いたものって一体何だったんだろう。うーん、謎が謎を呼ぶ。
3 20/02/03(月)01:19:10 No.660041566
───いきなり霧が晴れて、碧の光が眩しくて足を止める。 「わぁ……」 ユウリちゃんが感嘆を漏らす。私も、初めて見るんじゃなければきっと同じリアクションになっていたと思う。とても綺麗な景色だから。 果たしてそこは、幻で見た湖畔とそっくりな場所だった。 だけど石造りの建造物も、剣も盾も、経年劣化でボロボロだ。 特に剣と盾は酷い。一見してゴミじゃないのかコレ、ってくらいに朽ちている。 「使えるのかな……」 しゃがみこんで遺物を確認する。錆びて半分くらいは喪失し、周囲には破片も落ちている。普通なら使い物にはならないはずだ。 だけど……さっきの幻覚を考えると、これが要らないとは思えなかった。 「どうかな……。何とも言えないけど、必要だからここに置かれたんだと、思う。大事な遺物だから本当は持ち出しはダメって言うべきなんだろうけど……何しろ緊急事態だからね。可能性があることは全部、試してみよう」 「あのタペストリーみたいに、掲げればいいのかな……」 「多分……さっきから曖昧な話ばっかりだね、頼りにならなくてごめん」
4 20/02/03(月)01:19:30 No.660041621
「落ち込まないでください!分からないのは当然ですよ、新発見祭りですし!……そう、これから分かればいいんです!ワクワクしちゃいますよ!」 「それに英雄の残したものだぞ!使えなくたってスゲーお守りだ!多分!」 励ましは嬉しいけど、危険な場所に行くんだからもう少し気を引き締めてもいいんじゃないかな……。 いや、励まされてる私が言えたことじゃないけど。 「……さ、お喋りはここまでにして、二人とも急いで!とっくに事が終わってるなら、それはそれでいいけど……本当に剣と盾が必要な場合、ダンデくんは物凄く危険な事をしているわけだからね」 「……なら、ソニアさんも!」 「私は二人ほど走れないし、もう戦ったりも出来ない。足手まといにならないように、ゆっくり追いかけるよ」 正直に言えば、付いていきたい気持ちはある。二人を危険な場所に送り出すのは忍びないし、災厄と一人で戦ってるダンデくんの事だって心配だ。 バトルから足を洗った事に後悔はないつもりだったけど……こんな形で悔しさを覚えるなんて思わなかった。 「いいんですか」 ……そんな葛藤が顔に出ていたのか、ユウリちゃんがひどく心配そうな顔で私を見ていた。
5 20/02/03(月)01:19:50 No.660041693
「うん。二人に任せるね」 なるべく力強く見えるように頷く。 ……どんなに悔やんだところで、今が変わるわけじゃない。 だからせめて、二人が憂いなく進んでいけるように背中を押そう。 「……行くぞ、ユウリ!オレ達でアニキを助けるんだ!」 「うん!……でも、必ず来てくださいね、ソニアさん!」 「わかった!二人とも気を付けてね!」 霧に紛れる背を見送って、私はもう一度だけ、湖面を振り返る。 森に入る前、考えていた事があった。 ───異国の伝説によれば、ザシアンとザマゼンタは湖の奥底にある、この世界とは違う場所にいるのだという。 それが時折、こちらからも朧気に見える…… この森の不思議な現象は、もしかしたら彼らがいる異界を覗き見た事で起きていたのかもしれない。
6 20/02/03(月)01:20:06 No.660041753
だとしたら、先の幻のように……彼らは異界にいながらも、ずっとこちらを見ていたんじゃないだろうか。 ……そう、たとえば私を、森から連れ出してくれた時のように。 「……どうか、災厄と戦う二人の助けになってください」 手を組んで祈る。 研究者がオカルト頼みなんて、と言われてしまいそうだけど……それでも、私を助けてくれたものを信じたかった。 さあ、私も二人を追いかけないと。
7 <a href="mailto:s">20/02/03(月)01:22:36</a> [s] No.660042316
前回更新分に継ぎ足した まとめにも入ってるよ su3620349.txt 以前出した窓清掃の話もついでに su3620350.txt
8 20/02/03(月)01:51:00 No.660047335
まとめ追いやすくてありがたい…
9 <a href="mailto:s">20/02/03(月)02:13:29</a> [s] No.660050568
>まとめ追いやすくてありがたい… 自分でも振り返りづらいサイズになってきたから区切りのいい範囲で読めるようにしてみた 長い方もなんか上手いこと分割しようとは思ってるけど今更めんどくさいって気持ちもある…
10 20/02/03(月)02:14:18 No.660050673
イエッサン君かわいいな…
11 <a href="mailto:s">20/02/03(月)02:22:15</a> [s] No.660051573
なんか書いても良さそうなところが何箇所かすっ飛んでるんですがその辺は後で埋めたり埋めなかったりするかも この辺のシーンに盛るもの多すぎる