虹裏img歴史資料館

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20/01/28(火)23:20:07 ・・・... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1580221207094.jpg 20/01/28(火)23:20:07 No.658617158

・・・・・ 最初にホップ君が出してきたのは、私の知らないポケモンだった。 図鑑で調べてみたら、『ウッウ』というポケモンだそうだ。 「ウールー君はどうしたんだい」 「……今は、バトルに集中してくれ」 「……そうかい、わかったよ」 彼の相棒にしていつだって一番槍を務めていたウールー君を外した。 その重さがわからないわけがない。 きっと、彼なりに色々な理由があるのだろう。 だから、私は遠慮なく叩き潰す。 初めてみるポケモンだから私の予測はあまり役に立たない。 だけど、 「それでも、今の君に負ける気はしないね」

1 20/01/28(火)23:20:20 No.658617227

その後も彼は『エレズン』、『カビゴン』と、私が初めて見るポケモンを繰り出してきた。 でも、それだけだ。 色々考えてたのだろうけど、もがいていたのだろうけど。 それでも、私は負けなかった。 「やっぱり……強いな、ユウリは」 先ほどよりも日は高くなり、陽射しが私たちを照らす。 だから、私はそれに合うように笑顔を作る。 「そう言ってくれると嬉しいね。それで、今どんな気持ちだい?」 「……悔しいな」 悔しさが滲んだ笑顔。 そんな表情を見ていると、私の胸はどうにもざわついてしまう。 それを払拭するため、私は彼に聞きたかった事を尋ねる。 「……ホップ君、私に何か言う事はあるかい?」 「……ユウリ」 ホップ君は、何かをためらう様に目を伏せ、

2 20/01/28(火)23:20:43 No.658617347

「オレが弱いせいで、アニキの名に、お前たちの名に、泥を塗った」 覚悟を決めたように私を見つめて、 「……本当に、ごめん」 深く、頭を下げた。 「……あっ、あははっ!ホップ君そんな、そんな事、気にしてたんだね!」 私はおどけて、彼の肩をポンポンと叩く。 だというのに、ホップ君は浮かない表情のまま私から目を逸らす。 「そんな事、なんかじゃないぞ……」 「そんな事、だよ」 喉が、引きつるような音を立てた。 「まったく君は本当に、真面目、というかさ!もっとさ、気にするべきところ、がさ!あるんじゃないかな!?」 「……ユウリ?」

3 20/01/28(火)23:20:59 No.658617424

「わ、私はさ!熱いのが好きだけどさ、常に熱くありたいけどさ、それはそれとしてカラっと爽やかにさ、湿っぽくなく、めんどくさくなく、そんな感じでいたいんだよ」 君と、誰よりも近くで一緒に走って、君が気楽に接することが出来る。そんな関係で、愚痴とか、悩みとかそういうのをためらいなく言ってくれる。 私はそれを爽やかに受け止めて、それで君の気持ちが楽になるような。 そんな女の子でいたいのに。 「なのに、なのにさ。君は、君はいっつもそうだよね。私の気持ちなんか気づかずに自分勝手で、そんなんだから、わたっ、私はさ」 そこで、私の言葉が途切れる。 ホップ君が怪訝な表情でこちらをうかがう。 すると、 「……なんだよそれ」 ポツリと、勝手に口が呟いて、 「――――――なんなんだよそれっ!?」 爆発した。

4 20/01/28(火)23:21:19 No.658617539

「何が、何がオレが弱いせいでだよ!?何が私たちの名に泥を塗っただよっ!?そんなの、そんなの知ったこっちゃないよっ!?」 先ほどまでの作り笑いは砕け散って、私はただ怒りのまま彼の胸倉を掴み上げる。 「負けたのは君のせいだよっ!?なんだよっ!?あんなトラッシュトークで焦ってっ!?」 何が起きたかまるで理解できないといった様子で、目を丸くしているホップ君。 それがまた、私の炎に油を注ぐ。 「あんなやつぶっ飛ばしてよ!?何負けてるの!?」 「……ごめん」 「違うよバカっ!?何私に謝ってるんだよ!?」 その的外れで殊勝な態度がまたムカついてしまう。 「君が負けた事なんて知った事じゃないんだよ!?だって、ビート君が何言ったところで、私知らないもの!!弱くなったとか言われても私彼に勝ってるもの!!」 ビート君の言葉になんか何の意味もないのに。

5 20/01/28(火)23:21:32 No.658617607

「なのに君はそんな、そんな言葉を真に受けてさっ!?」 バカにするのも大概にして欲しい。 「私が、私たちがっ、君のせいで弱くなったと思ったの!?君がっ、私たちの邪魔をしたと思ったのっ!?ふざけないでよっ!?」 そんなつまらない事考えてるから負けるんだ。 「私は君よりもビート君よりも強いんだよっ!!バッジだって3つ集めてるんだよっ!!」 だというのにいっちょまえに傷ついているのが本当に腹立たしい。 「この強さは、私がこの旅でっ、たくさんの仲間と出会って、たくさんの人と戦ってっ!!みんなと旅して手に入れたものなんだっ!それを、勝手に君の領分にしないで欲しいねっ!!」 たとえホップ君相手でも、譲れないものが私にはあるんだ。 「だから君が謝るべきことはそれじゃないんだよっ!!そんな事じゃないんだよっ!!」

6 20/01/28(火)23:21:45 No.658617687

「え、えっと……」 ホップ君が何かを言おうと考える。 それを待てるほど、今の私の気は長くはない。 導火線はとっくに燃え尽きてるのだから。 「私が怒っているのは、謝って欲しいのはっ!!――――私たちをおいて行ったことだよっ!?」 霧の中に消えていく彼の背中は、夢に見るくらい私の傷になっている。 何も出来なかった自分と、何もさせてくれなかった彼への怒りが、胸倉を掴む力をより強めていく。 「君が誘ったんじゃないかっ!?私もっ!彼女もっ!?君が始めたんじゃないか!?一緒に旅をしようってっ!?」 君が行かないなら私は行かなかった。 君が行くから私も行こうと思った。 「なのにっ、なのに勝手にいなくなるとかふざけないでよっ!?ちょっと負けたぐらいで私たちを捨てようだなんてふざけないでよっ!?」 「違う、オレはお前たちを捨てようだなんて……」 「おんなじだよっ!?私たちを置いて、どっか行こうとした!!なんも、なんもかわんないよっ!!」 「っ……」

7 20/01/28(火)23:22:30 No.658617939

ホップ君がどれだけ傷ついたのか私にはわからない。 お嬢様みたいにホップ君がどうして欲しいのか理解できない。 だって、だってそんなのお互い様だもの。 私の気持ちを理解してないくせに、自分の気持ちを理解して欲しいだなんてワガママなんだよ。 だから私は、ちゃんと言う。 理不尽かもしれないし、自分勝手かもしれないけど。 いま伝えたいことをちゃんと、言葉にする。 「私はっ……!君が旅に誘ってくれて、本当に嬉しかったのにっ……!!」 家に帰る時。君と別れる時。私はいつだって寂しさを覚えていた。 君と一緒に旅をして、私はその寂しさから解放された。 いつだって楽しくて、いつだってワクワクして。 こんな日々がずっと続いたらなって。そう思ってた。 なのに、ホップ君は私をおいていった。 自分だけで悩んで、私を頼らずに一人になった。 それが、何よりも許せない。

8 20/01/28(火)23:22:42 No.658618000

「その程度の気持ちだったら、最初から旅になんか誘わないでよっ!?」 私たちの言葉を聞かないなら最初から一人で旅していれば良かったんだ。 最初から私たちなんて誘わなければ良かったんだ。 でも、ホップ君は私たちを誘った。一緒に行こうって手を差し伸べた。 だからもう、勝手なんて許さない。 「私がこの三日間どんだけメール送ったと思うの!?どれだけ電話したと思うの!?なのに、なのに君一度も返事くれなかったっ!!」 「……ごめん」 「ああ良いよそれはっ!!君だって色々思うところがあったんだろうさっ!!落ち込んでたんだろうさっ!!」 メールの返信が来なくて、電話の折り返しが来なくて、ロトムが逃げ出しそうになるくらいスマホを凝視してたけど。 「でもね、落ち込むなら私のそばで落ち込んでよっ!?一人にして欲しいならその旨を伝えた上で私の知っている場所で一人になってよっ!?」 勝手にどっか行って一人で悩むなら何のために私たちは一緒に旅してるんだ。 お嬢様の時のように支えてあげて、支えてもらって何が悪いのさ。

9 20/01/28(火)23:22:57 No.658618079

『彼が、ホップが男だからです』 うるさいよ。 知らないよ。 男だとか女だとか、そんなのどうでも良いよ。 私はただ、3人で一緒にいたいだけなんだ。

10 20/01/28(火)23:23:12 No.658618147

「ねぇ教えてよ、ホップ君はさ……私、たちと一緒に……旅、したくないの……?」 「違うっ!!」 ホップ君は反射的に叫ぶ。 「違うんだ……」 俯いて、私から目を逸らす。 拳をぎゅっと握りしめ、悔しさをにじませる。 「だけど、だけどオレは今のままじゃお前たちと……」 「だったらっ!!」 手を放し突き飛ばす。 バランスを崩してホップ君は尻餅をつく。 それを見下ろして、私は声を絞り出す。

11 20/01/28(火)23:23:27 No.658618216

「だったらっ……!強くなってよ……!!私よりも、ビート君よりもっ……!」 弱いのが嫌なら強くなればいい。 「悔しいならっ……惨めなら……さっさと、強くなってよっ……」 私たちはそのためにジムチャレンジを始めたのだから。 ガラルのトレーナーの頂、チャンピオンを目指して。 「チャンピオン、なるんでしょっ……!?なら、こんなところで立ち止まってないでよ……」 負けたって、終わりになんかしない。 私たちはまだ、そんなレベルに達してない。 「何回だって戦ってあげるよっ!何回だってぶっ飛ばしてあげるよっ!だから……何回だって挑んできてよ……」 絶対に負けたくない戦いのために、私たちは何度だって負けて強くなろうとしてるんだから。

12 20/01/28(火)23:23:41 No.658618282

「……ユウリ」 「何、さ……」 ホップ君が立ち上がる。 大きく深呼吸して、勢いよく頭を下げる。 「……ごめん。許してくれ」 誠意を感じるとかそんな上から目線な事言わないけど、 少なくとも本気で彼が申し訳ないと思ってる。 それぐらいは、信じてあげようと思う。 「……もう、おいていかない?」 「ああ」 「……もしも、次また同じような事したら……地の果てまでも追いかけて私を捨てた事を後悔させてあげるから」 「だから捨てたとかそんなんじゃ」 「うるさい。黙れ」 ポカっと、胸元を殴る。

13 20/01/28(火)23:24:01 No.658618381

「今回ばかりは本気で君の事を嫌いになりそうだったよ。というか、今本気で嫌ってるよ」 「……ごめん」 「軽い」 「……本当に、ごめん」 「許さない」 「……」 「だって、君にはまだ、謝らなきゃいけない人がいるでしょ」 私はナックルシティを指さす。 そこで、待っている人を。 「……彼女、ずっと待ってるよ」 「……ああ。行ってくる」 わき目もふらず走り出したホップ君を私も追いかける。 その背中を、見失わないように。

14 20/01/28(火)23:24:23 No.658618520

前回までの su3606236.txt また長くなった

15 20/01/28(火)23:28:53 No.658620023

ホップが悪いよね

16 20/01/28(火)23:30:17 No.658620411

すげぇ なげぇ

17 20/01/28(火)23:30:37 No.658620520

3人で旅するのが大切になってるのがいいね…

18 20/01/28(火)23:30:45 No.658620563

青春してるねぇ 炎ウリの本領発揮かな

19 20/01/28(火)23:35:19 No.658621892

>ホップが悪いよね 今回はホップが悪い

20 20/01/28(火)23:40:46 No.658623456

やっぱり重くてめんどくさいじゃないか!

21 20/01/28(火)23:41:07 No.658623547

この後シーソーでもう一回折れかけたらどうなんの…

22 20/01/28(火)23:46:49 No.658625132

こんだけやってもお嬢にも気をかけるなんて

23 20/01/28(火)23:57:13 No.658628197

ほのお・じゅうりょくタイプだわアイツ だいたいの「」ウリが第二タイプじゅうりょくな気がするけど

24 20/01/29(水)00:00:03 No.658629009

>だいたいの「」ウリが第二タイプじゅうりょくな気がするけど ブラックホール!ブラックホール!ブラックホール!

25 20/01/29(水)00:00:39 No.658629191

だって重さは「」ウリのアイデンティティなとこあるし…

26 20/01/29(水)00:06:16 No.658630788

うーむこれはダブルヒロインの片翼の貫禄…

27 20/01/29(水)00:18:43 No.658634129

最近の生きがいだ…次はお嬢視点かな?

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