ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
20/01/28(火)22:12:46 No.658594439
スプリング・エフェメラル。 冬が終わって植物が芽吹き、花の香で森が満たされる、そんなごく一瞬の季節。 「春の妖精、とも言うんですよ」 メカオレンジペコはちょっとだけ得意気に言った。 「いい匂いだね! 来てよかった!」 練習試合の前入りついでにハイキングに繰り出した二人は、少しだけ道を外れて森に入り、この一瞬の季節を全身で楽しんでいた。 梓は歳相応に楽しそうで、にこにこ笑って倒木の間を飛び回る。 そんな梓を、メカメカオレンジペコははらはらと、だが笑いながら見守っていたのだが……。 「ペコさんも! ほら! みてみて! ここ、水が湧き出してる!」 梓が元気よく手を振るので、メカオレンジペコも、少し泥めいた地面をおっかなびっくり歩く。かわいらしいスニーカーが汚れそうで、メカオレンジペコは少しためらった。 一方の梓と言えば、そんなことを気にする様子もなく、倒木に登って新芽に触れたり、せわしない。 メカオレンジペコは、梓を戦車でしか知らない。
1 20/01/28(火)22:13:00 No.658594515
もちろん尊敬している。彼女は一年生で全国大会に出場し、さらに車長の重責を担って見事にまとめあげ、中途半端極まりないM3戦車でドイツの誇る重戦車を立て続けに食い荒らし、その後の大学選抜戦では観覧車を使った起死回生の一手を放った。 今もそうだ。 あの西住みほの副隊長として、これから全国大会に臨もうとしている。 負けてられない。そう思う。そしてそれ以上に、このいささか地味な少女とお友達になりたい。 切磋琢磨、という言葉がある。 「石や角同士をぶつけあって磨き上げることよ。友人同士が互いに励まし合い競争し合って、共に向上すること。よろしいのではなくって?」 梓のことを姉として師として慕うダージリンに話した時、彼女は優しく微笑んで言った。 そんな梓にこんな一面もあったというのは驚きだ。 「これ、食べれるかな」 梓は不思議な形の葉をつまんでしげしげと眺めている。 「わかりますの?」 メカオレンジペコは苦労して乾いたところを選んで彼女に近づくと、スカートが地面に触れないようにつまみあげて身をかがめた。
2 20/01/28(火)22:13:13 No.658594596
「うーん。秋山先輩はわかるんだろうけど、あとかりなちゃん。前にこんなの天ぷらにしてたと思うんだけどなぁ」 「毒草というのもあるんでしょう?」 「うん。なんだっけな、ニリンソウっていうおいしい草がトリカブトそっくりだから、取ってきちゃダメって先輩が言ってた」 「そういえば、鈴蘭も毒があるっていいますものね。綺麗なのに」 「鈴蘭! かわいいよね」 「ふふ。ちょっと澤さんに似てますものね」 「え? 髪型?」 メカオレンジペコは頭に鈴蘭の帽子を被った梓を想像して、思わず吹き出した。 「いいえ、似合うってこと」 梓はきょとんとしてから、それから釣られて笑った。 「見て! ええっと、これは……」 「こぶし。花言葉は”友情”、”有愛”。こぐまたちの上に、花は雪のように落ちてきます、っていうお話、知ってます?」 「熊の親子のお話だよね? うん、読んだことあるよ」 ひょろりと伸びる木に咲く白い花を指差す梓に、メカオレンジペコが暗誦する。
3 20/01/28(火)22:13:25 No.658594667
空が明るくまぶしくて、足のうらがくすぐったくて、子ぐまたちはくふくふわらいます。 かあさんは木にのぼります。なんてじょうずなこと。ほら、もうあんなにたかいところ。青空にゆれるこぶしの花をたべています。 ちょっと調子をつけて歌うメカオレンジペコをよそに、梓がするするとその木に登ってこぶしの花に手を伸ばした。 「うぅーん、もうちょっと……」 「澤さん?!」 メカオレンジペコはびっくりする。活発な所があると知ったばかりで、さらにこんな姿を見せられるとは! 「危ないですよ! もう」 メカオレンジペコが言い終わる前に、バランスを崩した梓が落ちてきて、メカオレンジペコはとっさに両腕で彼女を抱きとめた。 たいした高さからではないから怪我することはないが、二人は絡まるように転んで地面に倒れる。 「いたた……」 「ご! ごめんねペコちゃん!! ケガはない?!」 「大丈夫です……澤さんこそ、大丈夫でしたか?」 「うん。ごめんね、ごめんね」
4 20/01/28(火)22:13:40 No.658594765
全身を泥だらけにして、顔を赤くして謝る梓に、メカオレンジペコはもう一度吹き出す。今度は本当に面白くて、声を出して笑う。いつのまにか「ペコさん」から「ペコちゃん」になっていて、それが嬉しかった。 「え?」 「だって……泥だらけで、おかしくって……」 「もう、ペコちゃんだって!」 二人は春の香りの中で、地面に足を投げ出して、笑った。 「どうして木に登ったんですか?」 一息ついて立ち上がり、おしりを手ではたきながら、メカオレンジペコが聞く。もういまさら服の汚れは気にならない。 「うん、こぶしの花びらが一枚欲しくて」 「花びら?」 梓の手に、一枚の白い花弁があった。白い素朴な花。 「どうして?」 「だって、気になるじゃない! くまさんがおいしそうに食べてたから、どんな味がするのか」 そんなの、青臭くておいしくないに決まってるじゃないですか、と喉まで出かかって、それをメカオレンジペコは飲み込む。
5 20/01/28(火)22:13:50 No.658594829
決まっているじゃないですか、というのは可能性を狭める言葉だ。 やってみて、体験してみて、彼女はそうして世界を広げてきたんだろう。戦車も、それ以外も。 それは聖グロリアーナでは重視されなかった。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。これは鉄血宰相ビスマルクの言葉だ。 でも今のメカオレンジペコには、体験してみようとすることが、とても素敵なことに思えた。 梓はそんなメカオレンジペコの思考をよそに、花びらの埃をはらって、ぱくっ、と口にくわえる。 眉をひそめて難しい顔をしたあと、舌をだして顔をしかめながら花びらを口から離す。 「どうでした?」 メカオレンジペコがくすくす笑いながら聞くと、梓は首を振った。 「……おいしくない……」 でしょうね、と言うかわりに、メカオレンジペコもひょいと花びらを取り上げて口に運ぶ。 青臭い渋みが口に広がって、彼女は心底後悔し、そしてその後悔を楽しんだ。 だってやってみなければ後悔もできないもの! 口いっぱいに広がる春の味に、二人はまた笑った。 それからしばらく散策を楽しんで、二人は合宿所に戻った。
6 20/01/28(火)22:14:04 No.658594900
ちょうど玄関を通りかかったエプロン姿の武部沙織が二人を見つけ、びっくりした顔で寄ってくる。 「どうしたの? 泥だらけじゃん! 転んだ? ケガは?」 「大丈夫です!」 二人は自分たちの姿を改めて思い出して、顔を見合わせて笑う。 その二人に沙織は安心して苦笑すると、「じゃあお風呂はいっちゃいなさい。服、洗濯しといたげる。食堂、ごはん六時だからね」とお母さんめいたことを告げる。「今、ごはん作ってるからね」 「先輩が作ってるんですか?」 「去年までなら会長がやってくれたんだけど、今年はみんなで作ってるよ。こころちゃんが思ったより使い物になって助かっちゃう」 「て! 手伝います!」 「いいからお風呂はいってきて。大丈夫よ」 「すみません、何から何まで……」 と、メカオレンジペコが恐縮する。 「いいって、だって聖グロの人に頼むと、うなぎゼリーとか出てくるんでしょ?」 「そんなの出るの?!」 「……たまに、ですよ?」 沙織は笑いながら立ち去って、二人は着替えのジャージを持って、連れ立って浴場に向かった。
7 20/01/28(火)22:14:17 No.658594974
合宿所の浴場はそれほど広くなくて、二人は並んで湯船に浸かる。 お湯を顔にぱしゃぱしゃ当てる梓の横顔を、メカオレンジペコはぼんやりと眺めた。 活発な割に白い肌には、今は朱がさしてほんのり赤い。 「ねぇ、ペコちゃん」 「! はい!!」 急に声をかけられて変な声が出る。見ていたのに気づかれたかと、メカオレンジペコは別に後ろ暗くもないのにどきりとした。 「明日、負けないからね!!」 屈託なく笑顔を向ける彼女に、メカオレンジペコは大きく頷いた。この爽やかな勝負を受けて立つことができることが嬉しかった。なるほど、これがダージリン様の言う切磋琢磨なのだろう。 「私も!」 スプリング・エフェメラル。 一瞬だけの青い春の季節。
8 20/01/28(火)22:18:46 No.658596603
(みかのおっぱいもみたい…)
9 20/01/28(火)22:20:00 No.658597041
めかぺこさんからいいかんじにいっさくかけるってすごくない…?
10 20/01/28(火)22:20:41 No.658597288
めかぺこさんにのっとられてる・・・
11 20/01/28(火)22:21:11 No.658597450
こいつ しゃべるぞ
12 20/01/28(火)22:21:57 No.658597729
どうしてこのちからをさわぺこにつかえないんだろうなー ふしぎだなー
13 20/01/28(火)22:24:46 No.658598721
サワメカモイイモンダナタイショー メタノールオカワリ
14 20/01/28(火)22:28:06 No.658599859
いつの間にメカオレンジペコさんなんて爆誕したの…?
15 20/01/28(火)22:30:15 No.658600610
ペコさんがしゃわしゃんから逃れるためにデコイにしたら…
16 20/01/28(火)22:33:50 No.658601889
ちょっと待てや!!
17 20/01/28(火)22:34:44 No.658602197
これからの澤ペコはメカペコさんでやらなきゃ…
18 20/01/28(火)22:35:18 No.658602414
生身のペコさんがどうなってるのか気になる
19 20/01/28(火)22:35:37 No.658602489
これ本来私が欲しかったやつだろ!?どうなってんだよ!
20 20/01/28(火)22:36:23 No.658602729
この澤ペコはもらった!
21 20/01/28(火)22:38:12 No.658603300
これはめかぺこさんのものだよ めかぺこさんはしはらいもいいしね
22 20/01/28(火)22:38:55 No.658603537
もともと私の身代わりをするだけの機械だろうが…!
23 20/01/28(火)22:40:12 No.658603990
貴様はもう用済みだ…!
24 20/01/28(火)22:41:10 No.658604279
ぺこさんのおもいでが せんびきやのぱふぇも はつもうでも めかぺこさんにうばわれてゆくんだね
25 20/01/28(火)22:43:58 No.658605207
もしさいしょからさわさんひとりにしぼっていれば…ぺこさんもさわさんとらぶらぶできたかもしれないのに
26 20/01/28(火)22:44:36 No.658605408
待てや大将! こんなデクノボーに…
27 20/01/28(火)22:45:20 No.658605616
オリジナルオリジナル ハイボクシャ
28 20/01/28(火)22:45:31 No.658605669
ペコちゃんのことデクノボーなんて言わないでよ!
29 20/01/28(火)22:45:50 No.658605753
ひえっ しゃわしゃん…
30 20/01/28(火)22:56:44 No.658609293
そこ代われやメカ私!
31 20/01/28(火)22:57:28 No.658609510
コトワル