虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 20/01/11(土)22:36:04 No.654045296

出発前にお姉さんに挨拶しようとお店へ立ち寄ると、カウンターにまだお客さんが居るみたいだった。 その人は相当お酒を飲んだらしくカウンターへ突っ伏したままぶつぶつと何か呻いている…お姉さんも呆れ顔だ。 「もう朝よ、タナベさん。起きてちょうだい」 「うう……すまない、水をくれ…」 「タナベさんが潰れるまで呑むなんて珍しいわね」 水を差し出しながらお姉さんがぼやく。 「それも一人で、しかめっ面してがぶがぶ呑んで…何か嫌なことでもあったのかしら？」 「ちょっと…色々考えてしまってね」 タナベさんと呼ばれてるそのおじさんは言うなり受け取った水を一気に飲み干し…またカウンターに突っ伏した。 「はぁぁ……しくじったなァ」 「なんでもいいけど、反省会は一度おうちに帰ってからにして欲しいわ。一回店を閉めたいの」 「ああ……ああ、すまない…」

2 20/01/11(土)22:36:31 No.654045433

「えっと…おはようございます」 会話が一段落したのを見て、私はお姉さんに声をかけた。 「おはよう、よく眠れたかしら？」 お姉さんは食器を片付けながらにこりと微笑む。 「はい。ごはんも美味しかったです…本当にありがとうございました」 「気に入ってくれたなら嬉しいわ。もう出発するの？」 「そのつもりです」 お姉さんは手を止めてこちらに向き直り、もう一度微笑んだ。 「行ってらっしゃい。ジムチャレンジ、頑張ってね」 「ありがとうございます。…行ってきます！」

3 20/01/11(土)22:36:52 No.654045549

「待て、いや……待ってくれ。今ジムチャレンジって言ったか？」 「えっ？ええと、言いましたけど…」 タナベさんが顔を上げて私の方を向く、…その顔に私は見覚えがあった。 「あっ……昨日のポケモン交換の？」 「いかにも」 タナベさんは昨日、あくバッジを貰った直後の私に珍しい海外のバリヤードと ガラルではありふれたタチフサグマの交換という奇妙な申し出を持ちかけてきた人だった。 私がタチフサグマを持っていないので成立しなかったが。 「まだスパイクタウンにいたか……巡り合わせってやつだな」 タナベさんは椅子を引いて、ボールからまたあのバリヤードを出した。

4 20/01/11(土)22:37:15 No.654045691

「頼みがある……このバリさんを、どうかあんたの手持ちに入れてやってくれないか」 「えっ…ええっ！？」 「この通りだ！あんたを腕利きのエスパー使いだと見込んでお願いする！」 「まま待ってください！私別にエスパー使いというわけでは！」 「じゃあフェアリーか！？」 「……そうです！」何故かはわからないが、ここは絶対に譲ってはならないと感じた。 「それなら大丈夫だ、カントーのバリヤードはフェアリータイプでもある！」 「で、でもいきなりそんな…」 「二人とも、一旦落ち着きましょう？」 グイグイ詰め寄るタナベさんを見かねてか、お姉さんが間に入る。 「まず理由から話したらどうかしら。バリさんを手放すなんて…それなりの考えがあってでしょう？」 「そ、そうだな……長話になるかもしれないが、聞いてくれるか？」 「はあ…わかりました…」 私も席に座ると、タナベさんはゆっくりと自分の身の上から話を始めた。

5 20/01/11(土)22:37:38 No.654045809

…俺は元々ジョウトの生まれでな、バリさんはガラルに連れてきた手持ちの一匹なんだ。 かつては俺も流れ者のトレーナーとしてガラルリーグでもそれなりに鳴らしてたもんだよ。バリさんも一緒にな。 それで、ある時縁あってスパイクのジムトレーナーに誘われてな。待遇も良くていい話ではあったんだが… ジムトレーナーを名乗るにはあくタイプ使いになる必要があった。 それであくタイプ以外の手持ちは人に譲ったりして整理したんだが…付き合いの長いバリさんは手放せなかった。 ジムトレーナーになってからも一緒に過ごしちゃいるが…今はバトルに出すことはほとんど無い。 戦う代わりに大道芸を覚えてもらったり、見えない壁で演出をさせたりしてる。 俺はそれでもいいやと思ってた。……しかしだ、昨日のネズさんとあんたのバトル。 同じタイプのポケモンでネズさんと渡り合うあんたを見て…バリさんが羨ましがってるのを見ちまった。

6 20/01/11(土)22:38:03 No.654045949

バトルの面子とも平等に扱ってたつもりだったが、やっぱり肩身の狭い思いをさせてたみたいでな… このまま俺の下にいたんじゃ、バリさんは永遠に日の目を見る事なく終わっちまう。 だから……あんたみたいな見込みのある若者に、連れ出して行って欲しいんだ。 タチフサグマ？どうせ交換するなら、エール団として仲間に加われる奴がいいと思っただけさ。 ……一通り話し終えたタナベさんは、お姉さんに水を頼んでまた一気に飲んだ。 「理由はそんな所だ。返事を聞かせてくれないか」 「えっと……私には断る理由もない話です。けど…」 「けど、なんだ？」 「私が、決めていい事なんでしょうか」 「……」 「バリさんの気持ちはどうなの？って事よね」 お姉さんが補足する。 「バトルが出来なくても、タナベさんと一緒のほうがいいのかもしれないわよ？」

7 20/01/11(土)22:38:43 No.654046164

「……それは、無い」 タナベさんは一度バリさんの方を見て、顔を見合わせてから堂々と言い切った。 「俺も、こいつも、一度はチャンピオンを夢見た男だ」 バリさんが、私の方に一歩歩み寄る。 「俺は適当なとこに落ちついちまったが……昨日わかった。こいつはまだ諦めてねえ」 「チャンピオンを…ですか……？」 バリさんは両手をぴたりと合わせ、私に向かって腰を垂直になるまで曲げて頭を下げた。 「あんたがチャンピオンになれとまでは言わねえ。ただ……出来ればもう一度、夢を見させてやってくれ」 タナベさんはバリさんと一緒になって頭を下げた。

8 20/01/11(土)22:39:03 No.654046274

「わ、わかりました…わかりましたから、そんな畏まらないでください」 「じゃあ……」 「私も、チャンピオンを目指す一人です。どこまで行けるかわかりませんが…バリさんの力を借して下さい」 「………ありがとうよ」 私はバリさんに右手を差し出し、しっかりと握手を交わす。 「バリさん、夢見る男の子だったのね～」 お姉さんは嬉しそうに、いいものを見たとでも言いそうな笑顔で感想を漏らした。

9 20/01/11(土)22:39:37 No.654046458

おわりです これでゲームの続きができる！うれしい！

10 20/01/11(土)22:41:44 No.654047176

お姉ちゃんはフェアリーだからな…

11 20/01/11(土)22:44:17 No.654047991

手持ち全員エスパーですけど…

12 20/01/11(土)22:46:59 No.654048897

お姉さんすき

13 20/01/11(土)22:46:59 No.654048899

>手持ち全員エスパーですけど… そんな理由でバリさんを置いていけないし...

14 20/01/11(土)22:49:55 No.654049867

熱いなバリさん

15 <a href="mailto:s">20/01/11(土)22:53:15</a> [s] No.654050988

最近むやみに文章が長くて話の進みが遅くなりがちなのを気にしてますが 読み辛くなってるとかないかしら

16 20/01/11(土)22:55:17 No.654051657

バリさんは税関通ってるからな…

17 20/01/11(土)22:58:22 No.654052705

>最近むやみに文章が長くて話の進みが遅くなりがちなのを気にしてますが >読み辛くなってるとかないかしら 読みやすくて良いわよ…

18 20/01/11(土)22:59:56 No.654053239

別に読みづらいとは感じないな 情緒を感じられていい文だと思う

19 <a href="mailto:s">20/01/11(土)23:04:23</a> [s] No.654055049

それなら良かった… 何せ文章の経験ないままやってるので思うところあれば言ってもらえるとありがたいです

20 20/01/11(土)23:08:05 No.654056584

バリさんも熱い男だな…

21 20/01/11(土)23:10:35 No.654057676

途中加入ならベテランなほうがいいもんなあ バリさんかっけえ

22 20/01/11(土)23:13:43 No.654058833

バリさんかわいい…

23 20/01/11(土)23:15:49 No.654059655

人情のために帰ったゴリラと夢のために発ったバリさんで対比になってるな

24 20/01/11(土)23:16:00 No.654059750

タナベさんには夢があったんだな

25 20/01/11(土)23:18:24 No.654060728

手元のバリさんも対戦出れる様に育てよう

26 20/01/11(土)23:25:49 No.654063700

お姉さんのキクバリスレベルが高い！