虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

  • iOSアプリ 虹ぶら AppStoreで無料配布中
  • のらち... のスレッド詳細

    削除依頼やバグ報告はメールフォームにお願いします。 個人情報,名誉毀損,侵害等について積極的に削除しますので、メールフォームより該当URLをご連絡いただけると助かります

    20/01/11(土)01:59:55 No.653827779

    のらちゃんと僕っ子メイドますきゃっとのレイのお話

    1 20/01/11(土)02:00:14 No.653827849

     何事も無く平和に年が明けるのは、めでたい事だと言うのは戦後に生まれた僕にもよくわかる。 しかし挨拶周りなど、外でご主人さまの面倒を付きっきりでみないと行けないのは気を使う。 ご主人さまにはそこまで肩肘貼る必要は無いと言われたが僕なりに通したい筋があるのでそこは譲れない。 ただ面倒なだけでなく、二人で行った初詣は楽しい思い出になったと思う。 仕事も遊びも充実とした良い正月を過ごせて満足でした。

    2 20/01/11(土)02:00:56 No.653827959

     3が日が終わり、ご主人さまの出社を見送ると、年末から張っていた糸がプツンと切れてどうにも何かをやる気持ちになれなくなってしまった。 「掃除は後でいいかな……」 ポットにお湯を注いで、紅茶を淹れてからテーブルに着く。 テーブルから見える庭の景色は落ち葉が広がり、また一つやらないといけない事を思い出させた。 「木……切ろうかな……」 春になれば花を咲かせ、楽しませてくれる。だけどそれ以外の季節に庭にある木に存在意義を見出せない。 毎年、落ち葉を出し過ぎだと思う。片付ける僕の身になって葉っぱをつけてほしいものだ。  カップに紅茶を注ぎ、香りを楽しみながら口にする。 暖かさと香りが口の中に広がると、気怠さに支配された心がわずかに解けた気がした。 それでやる気が戻るという訳ではないのだが。

    3 20/01/11(土)02:01:21 No.653828034

    椅子に深く腰をかけて空を見上げる。気温とは対照的に澄んだ空を白い雲が流れていく。 巡るましい日々が終わったんだから、今日位はこういう時間の使い方もいいかな。 そう思って僕は目を閉じた。

    4 20/01/11(土)02:01:48 No.653828113

    ぐっすりと眠っていた僕はチャイムの音で目を覚ました。 時計を見ると12時を超えていた。ああ、しまった。激しい後悔が心に重くのしかかる。 「はーい。今出まーす」 冷たくなった紅茶を一気に飲み干してから玄関へ向かう。 「あけましておめでとうございます。レイさん」 僕が玄関に着くよりも早く扉を開けて入ってきていたのらちゃんが手提げ袋を持って待っていた。 「あけましておめでとう。のらちゃんは元気一杯って感じだね」 「そう言うレイさんはお疲れって感じですね。何かあったんですか?」 「何かって訳じゃないけど、年末からずっと緊張が続いたからさ。今日から日常なんだなって思ったら気が抜けちゃって……」 のらちゃんを迎え入れて、のそのそと歩いてリビングへ通す。 気を抜いた状態とは言え、冷めた紅茶を客人に出すのは躊躇われたのでポットを台所に片付けてると、 のらちゃんも僕に続いて台所までやってきた。

    5 20/01/11(土)02:02:26 No.653828236

    「その様子だとお昼ご飯もまだですよね?」 「うん。というよりも朝ご飯も食べ損なったからお腹空いちゃった」 「それなら丁度良かったです。お雑煮を持ってきてるので一緒に食べませんか?」 のらちゃんはそう言うと、お餅の入ったタッパーと濃い色の汁が入ったタッパーを取り出した。  ご馳走してくれると言うなら、別に断る理由もない。 正直に言えばお腹も大分すいているので一から作る手間が必要ないのはありがたかった。 「私がお餅を焼くので、汁の方を温めてくださいね」 お餅はのらちゃんに任せる事にして、タッパーの中の汁を鍋に注ぐと大きな違和感を感じた。

    6 20/01/11(土)02:02:58 No.653828328

    「あれ?のらちゃんのお雑煮ってずいぶん独特だね」 匂いを嗅いでみると醤油の匂いがする。 「そうですか?そんなにオリジナリティーは出しているつもりありませんけど、レイさんの家は味噌派でしたか? まあそれなら、この機会に醤油も味わって見て下さいよ」 「味噌と醤油……?」 僕とのらちゃんはお雑煮の話をしていた筈だ。汁物の話をしていた訳ではない筈なのに、何故、味噌と醤油の話になるのだろう。 そもそものらちゃんの持ってきた汁の中に、なんで鶏肉とナルトが入っているのだろうか?お雑煮ではなかったのか? 「え?のらちゃんおかしくない?お雑煮って小豆を使う料理ですよね?」 「え?」

    7 20/01/11(土)02:03:25 No.653828396

    お互いの認識の違いに戸惑いを覚えたが、ここは一度落ち着いてインターネットを使い調べてみる事にした。 どうやら小豆のお雑煮は出雲地方の方で食べられるローカルなお雑煮の種類だった。 「なるほど。そういう種類のも有るんですね。少し驚きましたけど、レイさんがおかしくなった訳ではないんですね」 「そこまでおかしな話でもないでしょ?!ちょっと薄めのおしるこみたいな物なんだから! えーー……でもおかしいな……アーカイブで調べてもやっぱり小豆で作る物って出てくるし……」 「アーカイブ?それはアンドロイド用の一般知識アーカイブの事ですか?」 一般知識アーカイブ。アンドロイド用の知識を調べる為の共有クラウドの名称だ。 名詞や料理のレシピなど様々な情報が保存されているので、僕はよく利用している。 「うん。それの事だよ」 僕がそう返すと、のらちゃんは腕を組んで何か考え、なにかを思いついた様子でドヤ顔を作って口を開いた。

    8 20/01/11(土)02:03:49 No.653828466

    「なるほど……これからの話は確定情報の無い、私の考察も含まれるのですが…… 何故、レイさんが小豆のお雑煮が一般的な物だと勘違いしていたのか。その原因について聞きたくありませんか?」 「その言い方には少し引っかかるけど、とりあえず聞かせてよ」 「レイさんが生まれる前の話なんですけど、地球に巨大なあずきバーが落とされた事は知ってますよね?」 話には聞いた事がある。直接見た訳ではないのでいまだに信じられない話だがどうにも事実らしい。 「そのあずきバーなんですけどね。どうにも作り過ぎていたらしいんです。 想定よりも打ち出す本数が少なかったらしく、今でも残された巨大あずきバーは宇宙空間で保存されているとかいないとか……」 戦時中に使われなかった兵器がどこかに眠っている。都市伝説としてはよくありそうな話だ。 それと僕のお雑煮がどう関係するのだろうか?

    9 20/01/11(土)02:04:15 No.653828545

    「終戦当初、超圧縮されて作られたあずきバーの弾丸をどう処理するべきか。 散々話し合われたみたいですけど答えが出ないまま月日は流れました……だけどある日、画期的な解凍技術が発明されたのです。 それにより兵器になってしまったあずきバーは……なんという事でしょう!大量の餡子に大変身してしまいました。 結果、あずきバーは少しづつ数を減らしながら地上に大量の餡子を提供する様になったのです」 「そんな宇宙空間をさ迷ってた物を食べさせられてたんだ……え?ご主人さま死なない?」 「真空ですから腐りませんし、ちゃんと検査もしてるので人間が食べても大丈夫ですよ。 そういう訳でイムラは恒久的に餡子と小豆の在庫を抱えてるらしいです。そしてここからは私の想像の話になるのですが……」 「ちょっとまって?今までの話は実話なの?」 余りにも理解しがたい話なのでここまでの話がのらちゃんの妄言だと思っていたが、のらちゃん曰く現実の話らしい。 友人が妄言を語る狂人でない事は嬉しいが、狂った現実の事実に眩暈を覚えた。

    10 20/01/11(土)02:04:55 No.653828658

    「それで本題なんですが、恐らくレイさんの勘違いはイムラの陰謀です!」 「頭痛のする話の後に陰謀論を持ち出すのやめてくれる?」 僕の制止を無視してのらちゃんは語り続ける。 「まず、イムラは大量の餡子を手に入れてこう考えました。この大量の餡子を売り払えば元手を無しに儲けられるんじゃないかと…… しかし。残念な事に戦争の人口減少により、そもそも餡子の需要が少ないと言う致命的な欠点がこの計画にはあったのです! それでも創業から会社を支え続けてくれた小豆を無駄にするなんて出来ない……そうだ!需要が無いなら増やせば良い! イムラはそう考え、少しでも需要を伸ばす為にお雑煮は小豆で作る物。そうアンドロイドが思い込む様にアーカイブをいじったのです」 「地道過ぎるでしょ……引っかかった僕が言うのもなんだけど」 出雲地方の人が記述しただけじゃないか?そうツッコミを入れそうだったけど、これ以上頭のおかしい話をしたくないので黙る事にした。 「とりあえず早くお雑煮食べようよ。醤油味も美味しそうだし」 「そうですね。くだらない話をいつまでしててもしょうがないですし」

    11 20/01/11(土)02:05:28 No.653828741

    丸いかわいらしいお餅が二つ。それにナルトと鶏肉が添えられており、乗せられた三つ葉も目に嬉しい。 あまりにも普段食べていたお雑煮にかけ離れた物で比べる余地は無いがとても美味しかった。 素直に美味しいと伝えると、のらちゃんは嬉しそうに笑った。  食器を片付けてどうしようかと話し合ってせっかくだからと、のらちゃんに誘われて初詣に行く事にした。 「僕はもうご主人さまと行ったけどね」 「私ももう行きましたけど、レイさんと一緒に行くのは初めてなので初詣には違いありませんよ」  三が日も過ぎてはいたが、神社にはまだ人がいた。 溢れるほどにいる訳ではなく、少しの時間並ぶだけで参拝する事が出来た。 パンパンと手を叩き、前に来た時と同じ願いを祈る。 今年もまた平和であります様に。

    12 20/01/11(土)02:06:45 No.653828956

    あいつ

    13 20/01/11(土)02:07:00 [sage] No.653829003

    正月ネタをやるにも少し遅い気がするけど ギリギリ鏡開きには間に合ったからセーフ

    14 20/01/11(土)02:07:43 No.653829121

    ゲリラ放送でもやってんのかと思った

    15 20/01/11(土)02:12:28 No.653829877

    屋根裏以外で初めて見た

    16 20/01/11(土)02:16:31 No.653830531

    ネズミさん特有のノラニウムの自家発電

    17 20/01/11(土)02:24:49 No.653831827

    そんな種類の雑煮もあるんだね…

    18 20/01/11(土)02:32:04 No.653832963

    放送前に良質なノラニウムを摂取できたよありがとう

    19 20/01/11(土)02:44:23 No.653834647

    いい…

    20 20/01/11(土)02:47:02 No.653834961

    イムラはそういうことする

    21 20/01/11(土)03:04:29 No.653836872

    撃ち出さないだけ優しい