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    19/11/27(水)01:05:27 No.641907453

    「乾くん!次!何処!?」 「次は!バスで移動!」 「間に合う!?」 「走れば!」 息を切らしながら、二人で歩道を駆ける。 当然男で体躯も大きい俺が先を走る事に。何度も何度も、後ろへ振り返って彼女を確かめて。 リボンを大きく揺らしながら振り乱れる彼女の髪が目を惹く。 瞼を開けず、綺麗な青を見せていないのはきっと、走るのに必死で余裕が無いからだろう。 「次!右!」 「うぇ!?う、うん!」 俺が声をかけた事で、ようやく見えた青。透き通る青。吸い込まれそうになる。 そんな彼女にきっと皆が魅了されてきたのだろう。当然、俺もその一人。 彼女は、源さくら。現役のアイドル。 俺は、乾幸太郎。彼女のプロデューサー。 今日はいつも通りの忙しい日。俺と彼女の日常だ。

    1 19/11/27(水)01:05:48 No.641907519

    「見えた!バス!」 「あわわわわ!もう停まっとる!?」 ようやく見えたバス停には、既に停まっているバス。 間に合うか?間に合わなければいけない。 呼吸を忘れて、ひたすらに足を動かす。 見える物は目的のバスだけ。徐々にそれ以外の全てが遠くなっていく。 ランナーズハイ…というやつだろうか。苦しい筈なのに何処か現実味の無い心地良さ。 「きゃっ」 その中で、ハッキリと聞こえた彼女の声。何度もしてきたように振り返る。 足を縺れさせ、前に倒れ込もうとする彼女の姿。 視界の端が白みがかっている中、迷いは無かった。 前へ進むための足で大地を踏みしめ、ここまでの勢いを殺す。 目を瞑り、来るであろう衝撃に備え手を伸ばす彼女へ、俺も手を伸ばした。 …結果、彼女が地面に触れる事は無く。地面が受け止める筈だった衝撃は全て、俺の胸に。

    2 19/11/27(水)01:06:44 No.641907723

    安堵と疲れから、一気に心臓が高鳴りだす。 そんな俺の胸の中で、未だ震えている彼女。 目をギュッと閉じたまま。いずれ来る衝撃に構えているのが、また彼女らしい。 「…ははっ…源さん」 「………え?」 笑いながら名を呼べば、彼女はゆっくりと目を開く。 「………」 「………」 言葉を発する事も出来ず、彼女の青に引き込まれる。 走ってきた疲労からだろう。赤い顔が、更に青い目を際立たせる。 急いでいるはずなのに、もう少しだけ見ていたい。彼女が何か行動を起こすまで、見ていたい。 走っていた時と同じ感覚。夢のような心地で、彼女を見つめる。 …その夢心地が一向に落ち着かないのは。きっと彼女が見つめ返すからだと思う。 そして暫し、何も考えずに見つめ合う俺たちを引き戻したのは、何処かから聞こえたエンジン音。

    3 19/11/27(水)01:07:06 No.641907806

    「「…あっ」」 二人して我に返った。 しまった。バスだ。時間ギリギリだったのにこんな事をしていれば、もう発車してしまっているだろう。 後悔と少しの未練を込めてバス停を見る。 …そこには、想像と違い未だ停まり続けているバス。 何故だかはわからないが、運が良い。 「源さん、立てる?」 「う、うん…」 俺の胸から離れ、しっかり自分の足で立つ彼女。 今度は転ばぬように、二人でバスまで歩く。勿論、早歩きで。 なんとなくそんな予感はしていたけれど、予想通りに。俺たちが辿り着く前にバスが発車する事は無かった。 「あぁ、ごめんね?ちょっと扉が不調みたいで…もうちょっとで出発できると思うから…」 乗り込む際に、運転手にそう言われた。 …どんな不調かもわからないのに…もうちょっとなんて、言って良いのだろうか? そう思ったが、奇跡的に俺と彼女が乗り込んだ瞬間にドアは役割を思い出し、バスは無事動き出した。

    4 19/11/27(水)01:08:06 No.641907996

    バスに乗っている間は、二人で息を整えるのに必死。 幸いにも他に乗客は居ない。少し声に成りながら、空気を肺に取り込む。 しかし中々肺は我儘を止めない。冷静に考えてみれば、俺も彼女も十分以上は走っていた。走りすぎだ。 結局息が完全に落ち着いたのは、目的地の一駅前で。 なんとなく言う事も無く、二人して黙ったままで残り一駅も過ごす。 『次は~終点~…お降りのお客様は~お荷物のお忘れが無いよう~…』 そして何も話す事が無いまま、バスが停まり扉が開いた。席を立って、扉へ向かう。 歩道に降り立ってみると、ここまでの活躍を思い出したかのように軽く痛みが走る足。 …明日に響かなければ良いが。 「乾くん!」 背後からかかる声に、また彼女の方へ振り返る。 「…乾くんとなら私、もっともぉーっと輝けるよね!」 満面の笑みを浮かべる彼女。もう輝いているさ、なんて言う勇気は無くて。 バスと歩道の間にある段差に躓かないように手を伸ばしたのが、返事代わり。 俺の手に、輝く笑顔を浮かべる彼女が手を伸ばした。

    5 19/11/27(水)01:08:19 No.641908042

    天井に手を伸ばしたまま、目が覚めた。 暗い俺の部屋。眠るためだ、当然暗い。 …彼女の輝きは、本当に夢だったのだと言わんばかりの真っ暗闇。 あぁそうだ。あれは、夢。なんてことない夢。 所詮現実には無かった事で、俺がこうして辿り着いた現実は違う。 ………それでも。目から何かが溢れる。 拭っても拭っても止まる事は無い。 「…ヒッ…グゥ…あぁ…」 なんて情けない嗚咽。まるで子供…あの頃の弱い自分のままじゃないか。 …だけど、だけど。 “もしも”だなんて魅力的に見えるに決まっているのに。 そんな事わかっているのに、弱さが滲み出してしまうのは。 その夢に見たモノが、あまりにも。 あぁ、あまりにも眩しくて。 どうしようもないほどに、輝いて。

    6 19/11/27(水)01:14:24 No.641909244

    切なか…

    7 19/11/27(水)01:19:00 No.641910093

    『輝いて』も『宣誓!~』もどちらも輝いてや輝かなきゃってフレーズが入ってたな…

    8 19/11/27(水)01:19:53 No.641910263

    巽幸太郎のリベンジはまだ始まったばかり

    9 19/11/27(水)01:21:23 No.641910528

    祝福でもあり呪いでもある光

    10 19/11/27(水)01:24:07 No.641911027

    乾くん…

    11 19/11/27(水)01:27:22 No.641911650

    さくらがゾンビィとして目覚めた時本当に嬉しかったんだろうなあ…

    12 19/11/27(水)01:28:39 No.641911870

    神への復讐じゃーい!

    13 19/11/27(水)01:35:37 No.641913068

    幸太郎はんには幸せになる義務がありんす

    14 19/11/27(水)01:36:48 No.641913273

    いつか必ず報われてほしい

    15 19/11/27(水)01:38:24 No.641913559

    青春だ…

    16 19/11/27(水)01:38:34 No.641913577

    お辛い

    17 19/11/27(水)01:42:33 No.641914233

    なぜ神様は無垢な少年少女にお辛い現実を与えるんです?

    18 19/11/27(水)01:44:38 No.641914579

    多感な時期にこういうお辛い経験すると一生引きずるよね引きずってた

    19 19/11/27(水)01:51:28 No.641915660

    おつらいけどよか…

    20 19/11/27(水)01:55:20 No.641916236

    幸せな夢が夢だとわかった時の残酷さよ…

    21 19/11/27(水)01:59:20 No.641916825

    おつらい…